平成二十六年三月二十六日(水曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 神山 佐市君
菅野さちこ君 木内 均君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小島 敏文君 小林 茂樹君
桜井 宏君 新開 裕司君
冨岡 勉君 中谷 真一君
中山 展宏君 永岡 桂子君
野中 厚君 馳 浩君
比嘉奈津美君 福山 守君
藤原 崇君 宮内 秀樹君
宮川 典子君 菊田真紀子君
中川 正春君 細野 豪志君
吉田 泉君 遠藤 敬君
椎木 保君 田沼 隆志君
三宅 博君 中野 洋昌君
柏倉 祐司君 井出 庸生君
宮本 岳志君 青木 愛君
吉川 元君 山口 壯君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
文部科学副大臣 西川 京子君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
政府参考人
(内閣法制局第二部長) 林 徹君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 前川 喜平君
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委員の異動
三月二十六日
辞任 補欠選任
桜井 宏君 藤原 崇君
新開 裕司君 中谷 真一君
比嘉奈津美君 福山 守君
吉田 泉君 中川 正春君
三宅 博君 田沼 隆志君
同日
辞任 補欠選任
中谷 真一君 新開 裕司君
福山 守君 小島 敏文君
藤原 崇君 桜井 宏君
中川 正春君 吉田 泉君
田沼 隆志君 三宅 博君
同日
辞任 補欠選任
小島 敏文君 中山 展宏君
同日
辞任 補欠選任
中山 展宏君 比嘉奈津美君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
沖縄県八重山地区の教科書採択問題で、文部科学省は十四日、竹富町教育委員会に対して教科書を選び直すよう、地方自治法に基づく是正要求を出しました。国が市町村に直接是正要求を出すのは初めてのことであり、厳しく抗議したいと思います。
八重山地区では、二〇一一年、採択地区協議会が、調査員による調査結果を踏まえない育鵬社版の採択を答申したことが混乱の出発点であります。石垣市、与那国町、そして竹富町の三市町教育委員長が協議し、二〇一一年九月八日に、沖縄県教委の助言、指導のもとで三市町教育委員全員による協議を行って、一致する選定が行われました。
ところが、文部科学省は、石垣市教育長、与那国町教育長の一方的な、無効であり協議を拒否する判断に肩入れをし、竹富町のみが法律に違反しているとして、昨年十月に地方自治法第二百四十五条の五第二項に基づく是正の要求を沖縄県教委に対して行い、さらにことし三月、下村文科大臣が直接竹富町教育委員会宛てに是正要求を行うという、前代未聞の事態となったわけであります。
竹富町教委は、一昨日の定例会議で、現場に混乱はないとして大臣の是正要求に従わない方向で一致したと報じられているが、当然のことだと私は思います。我が党は、三市町教委の主体的な解決を阻害し、現状で何ら問題の起きていない教育現場にかえって混乱を持ち込むような是正要求を直ちに撤回することを求めたいと思います。
その上で、本改正で、採択地区協議会を法定化し、あらかじめ規約を定めることになっております。規約の内容等は政令に委ねられておりますけれども、どういう内容を予定しているのか、これは文部科学省からお答えください。
○前川政府参考人 政令におきましては、委員の構成等に関する事項あるいは協議会における議決の方法など、規約に定めるべき事項などについて規定することを想定しております。
委員の選任の方法や協議会における議決の方法など、各事項の具体的な内容につきましては、各教育委員会が協議して規約において決定するものでございまして、政令において一律に規定することは考えておりません。
○宮本委員 あらかじめ規約に協議方法を定めることを求めるというわけですけれども、是正要求まで行った八重山採択地区協議会も、役員会での再協議も行われ、九月八日には、先ほど申し上げた、沖縄県教委の指導、助言のもと全教育委員による協議が行われました。そこでついに同一教科書の採択に至りました。しかし、石垣市や与那国町の教育長が決定は無効と主張して、以降の協議を拒んできたわけであります。
大臣、その一方に国が肩入れをし、一方を違法だと決めつけることで、国や文部科学省自身が協議を妨げてきたというのが実態ではありませんか。
○下村国務大臣 まず冒頭、宮本委員が、現場が今うまくいっている、混乱はない、問題ないからいいのではないかと言うことについては、今までの宮本委員の発言からするとこれはいかがなものかと。
違法状態であるということは、別に政権交代の後決めたことじゃなくて、民主党政権のときからこれはもう指摘されたことでありまして、違法状態であるにもかかわらず、現場がいいと言っているからいいんだということは、これは法治国家としては成り立たない理屈だということをまず申し上げたいと思います。
沖縄県八重山採択地区においては、教科書無償措置法第十三条第四項の規定による協議を行うための組織として、関係市町教育委員会の合意により、規約を定めて八重山採択地区協議会が置かれております。また、九月八日に開催された三市町の全教育委員による協議については、関係市町教育委員会の合意がなく無効であり、八重山採択地区協議会の規約に従って平成二十三年八月にまとめられた答申及び再協議の結果が、教科書無償措置法の規定により行われた協議の結果であります。
教科書無償措置法では、関係市町村教育委員会が協議して同一の教科書を採択しなければならないと定めておりまして、同法に違反している竹富町教育委員会に対して教科書無償措置法違反の是正を求めているというものであります。
○宮本委員 今大臣が説明されたそういういきさつは百も承知で聞いているんです。
なるほど、九月八日のこの決定が無効だとしたのは、けさ質問に立たれた、当時民主党政権下の中川正春文部科学大臣でありました。私は、そのときにも中川大臣と当委員会で議論をやりました。
違法違法とおっしゃるんですけれども、採択地区協議会の答申と違う教科書を採択した例というのは、これまでも幾らでもあるんですね。
例えば、平成二十一年、愛媛県今治地区の教科用図書採択協議会、ここは東京書籍を選定したわけですけれども、実際に採択された各教育委員会での決定は扶桑社を採択している。このときは何ら問題になっていないわけです。なぜかというと、それは全部そろって同一の扶桑社を採択したから。つまり、答申と採択が食い違っても同一ならば違法でないという説明に、このとき、二〇一一年十月二十六日のやりとりで出ているわけですよ。
端的に聞きますけれども、答申と採択の結果が食い違っているのが違法とおっしゃる中身なのか、同一でないということが違法とおっしゃっている中身なのか、どちらですか。
○下村国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、教科書無償措置法では、協議して同一の教科書を採択しなければならない定めになっている。それを竹富町は守っていないということで、教科書無償措置法違反であるということであります。
○宮本委員 だからおかしい話になる。このときも私は言っていますけれども、同一になっていないというだけでいえば、竹富町もそうかしらないが、石垣市や与那国町も同一になっていないんですよ。それを、片方が違法で片方が違法でないと片方に肩入れするから、問題が混乱して今日まで来ている。
なぜそうかと聞くと、協議会の答申と違う採択をしたからだとこう言うから話がおかしくなって、違う採択をした事例というのは、今治地区で既にあったんだ。このときは、全く違っていても問題になどなっていないわけですよ。そういう点では、私は、今回のあなた方の措置というのは、筋が通らないと言わざるを得ないと思います。
そもそも教科書採択は、子供の最善の利益の立場に立って、その地域、学校の子供たちの学習に最もふさわしいものを教育の観点から選んでいくことが何よりも大事だと思います。子供のための最善のものを選ぶということを考えれば、現場で教えている教師が積極的な役割を果たさなければなりません。これは国際的な大原則であります。
具体的には、一九六六年十月五日に、日本政府代表も賛成して採択をされたユネスコの教員の地位に関する勧告に、教員が専門職として果たすべき役割が述べられております。このパラグラフ六十一にはどのように定められているか、文部科学省、お答えいただけますか。
○前川政府参考人 御指摘の条項には、次のように規定されております。
教員は、職責の遂行にあたって学問の自由を享受するものとする。教員は、生徒に最も適した教具及び教授法を判断する資格を特に有しているので、教材の選択及び使用、教科書の選択並びに教育方法の適用にあたって、承認された計画のわく内で、かつ、教育当局の援助を得て、主要な役割が与えられるものとする。
以上でございます。
○宮本委員 こういう原則が国際的には確立をされております。
ここで改めて、では世界ではどのようになっているかということを確認しておきたいんです。
国立教育政策研究所の調査研究で、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、フィンランドでは教科書採択の権限は一体どこに存在しているか。これも文部科学省、お答えいただけますか。
○前川政府参考人 国立教育政策研究所が行った平成二十一年三月の調査によりますと、教科書採択の権限は、アメリカ、ドイツでは学校、イギリス、フランスでは教師、フィンランドでは学校と教師にあるということになっております。
○宮本委員 先ほど紹介したユネスコの教員の地位に関する勧告というのは、アメリカでもドイツでも、イギリス、フランス、フィンランドでも、やはり教師のところに、あるいは学校にしっかり選定の権限があるというふうに具現化されているわけです。
それで、日本においても、いい教科書を選ぶために、実際に教えている教師が役割を果たす、とりわけ学校の役割ということが強調されてまいりました。
二〇〇九年三月三十一日に閣議決定された規制改革推進のための三カ年計画(再改定)では、教科書の採択についてどのように言われているか。これも文部科学省、お願いいたします。
○前川政府参考人 御指摘の閣議決定におきましては、次のように述べられております。
公立小・中学校の教科書は、市若しくは郡の区域又はこれらの区域を合わせた地域を採択地区として設定することとされているが、適正かつ公正な採択を確保しつつ、学校教育の自主性、多様性を確保することの重要性も踏まえ、将来的には学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れて、教科書採択地区の小規模化を検討する。
以上でございます。
○宮本委員 「将来的には学校単位での教科書選択の可能性も視野に入れて、」こういう文言が入っているわけですが、こういう検討課題は一体いつから閣議決定されておりますか。
○前川政府参考人 平成九年三月二十八日に閣議決定されました、規制緩和推進計画の再改定からでございます。
○宮本委員 平成九年、一九九七年からこういう決定がされているわけですね。
それで、文部科学省としてはこれまでどのような検討を進めてきたか、検討内容をお答えいただけますか。
○前川政府参考人 教科書の採択地区につきましては、平成八年にまず行政改革委員会から意見が出され、先ほどの平成九年の閣議決定がございました。それ以来、平成二十一年に閣議決定された規制改革推進のための三カ年計画まで、累次にわたり、小規模化等に関する指摘がなされております。
これを受けまして文部科学省におきましては、これまで、各都道府県の教育委員会に対しまして、「市町村教育委員会の意向等を的確に踏まえ、採択地区がより適切なものとなるよう不断の見直しに努めること」を指導してきたところでございまして、採択地区数につきましては、平成八年度の四百七十八地区から平成二十四年度には五百八十五地区と増加しておりまして、採択地区の小規模化が進行しているものと考えております。
ただし、これはむやみに採択地区の小規模化を促してきたものではございませんで、共同採択制度の趣旨を踏まえた上で、適切な採択地区となるよう指導しているものでございます。
○宮本委員 今、確認をしてきましたように、国際的には学校採択が主流であり、ヨーロッパでは、ユネスコの勧告どおり、教員が教科書を選択しているわけです。
先ほど採択地区の小規模化という話もありましたけれども、求められているのは、現場の教員の調査研究結果をきちんと尊重することがやはり必要だというふうに私は思うんです。
これは、この間、文科省が出している累次の通知を見ても、十分な調査研究に基づき適正かつ公正に採択、こういうふうに強調されているわけでありまして、大臣にこれは聞くんですけれども、やはり、十分な調査研究に基づいて、とりわけ調査員の調査結果に基づいて教科書採択がされることが大切だ、これは異論がなかろうと思うんですが、いかがですか。
○下村国務大臣 学校教育の主たる教材である教科書の重要性に鑑み、地域の教育に対して責任を負っている教育委員会が教科書を採択することが重要であり、地教行法第二十三条第六号に基づきまして、公立学校の教科書採択は当該学校を設置する地方公共団体の教育委員会が行うこととしております。
このような趣旨に照らせば、教科書の採択に当たっては、調査員の意見等についても十分に踏まえた上で、あくまでも、教科書採択権者である教育委員会が権限と責任において適切に行うことが必要であると考えます。
○宮本委員 十分に調査結果を踏まえた上で、当然、教育委員会の権限でとおっしゃるわけですけれども、現に通知を見ると、「教職員の投票によって採択教科書が決定されるなど、採択権者の責任が不明確になることがないよう、採択手続きの適正化を図る」という文言も同時に入れているわけです。
こういうふうにわざわざ通知に書くから、もちろん、投票によって、人気投票のようなことで決めていいと私は言うつもりはないんですよ。しかし、わざわざこう書くものだから、今度は逆に、調査員の意見を完全に排除して採択するという事態が起こっているわけですよ。
これは、当然、十分に調査結果を踏まえた上で、独自の権限によって採択するというのは当たり前であって、この点でのしっかり原則に立った運用をお願いしたいと思っております。
本法案は、大臣が昨年十一月に公表した教科書改革実行プランがもとになっているわけであります。このプランでは、採択だけではありません、編集、検定の段階においても重要な変更がされることになっております。しかも、この四月からの中学校用教科書の検定を前に、既に矢継ぎ早に実施をされております。
そこで、この教科書改革実行プランについても聞きたいと思うんです。
まず、これまでの教科用図書検定審査要項では、合格または不合格の判定方法として、まず、検定意見相当箇所の数が百ページ当たり何カ所あるかという具体的な基準を二つ示した上で、3として、「教科用図書としての基本的な構成に重大な欠陥が見られるものや一単元や一章全体にわたる極めて重大な欠陥が見られ、適切な修正を施すことが困難と判断されるもの」が挙げられております。
まず確認するんですが、この3に該当する教科書は、1とか2とかで規定されているような個々の記述の適否を見ないで、もう一括して不合格にする、こういう理解でよろしいですか。
○前川政府参考人 教科書検定におきます申請図書の合格または不合格の判定方法につきましては、教科用図書検定審査要項に示されておりまして、検定意見相当箇所の数による判定方法のほかに、教科書としての基本的な構成に重大な欠陥が見られる場合などには検定審査不合格と判定する旨が定められているのは、御指摘のとおりでございます。
これは、ある申請図書について、検定基準に照らして教科用図書として不適切な箇所とその内容を特定していく調査審議の流れにおいて、仮にそういった検定意見相当箇所の数は不合格となるべき数を超えない場合であったとしても、例えば、学習指導要領に示す事項を全く取り上げていなかったり、教科の目標に一致していないというように、記述の欠陥が基本的な構成に及び、重大であると評価される場合には、検定意見相当箇所の数による判定方法によらずに、不合格と判定するという趣旨でございます。
この重大な欠陥が見られるかどうかの判断につきましては、今も申し上げましたような調査審議の流れの中におきまして、個別の申請図書の記述の欠陥に即して判断していくことになるということと考えております。
○宮本委員 これは再度確認しますけれども、1や2で掲げられている百ページ当たりでの検定意見相当箇所の数にかかわらずということは、それも見ずに、全体として構成に重大な欠陥があると判断すれば不合格にする、こういう理解でよろしいですか。
○前川政府参考人 そのとおりでございます。
○宮本委員 これまでに、この3が適用されて不合格になった教科書がございましたですか。
○前川政府参考人 これまでに事例はございません。
○宮本委員 私は当たり前だと思うんです。教科書としての基本的な構成に重大な欠陥が見られるというような教科書が教科書会社から申請されてくるということは、もうほとんどあり得ない話であります。
ところが、今度はこの3の中に新たに、教育基本法の目標等に照らして重大な欠陥がある場合を検定不合格要件として明記する、こうしております。
ということは、今度は、教育基本法の目標等に照らして重大な欠陥があるとみなされれば、教科書としての基本的な構成に重大な欠陥などがなかったとしても、個々の記述の適否を見ないで、門前払い、不合格にする、こういうことですね。
○前川政府参考人 教科用図書検定審査要項の改正につきましては、今後開催されます教科用図書検定調査審議会で決定されることになると考えておりますが、教育基本法に示す教育の目標等に照らしまして、明らかにこれに反するものであるというような重大な欠陥が見られるかどうかの判断につきましては、教科用図書検定調査審議会におきまして、提出された申請図書の内容の全体を確認した上で、個別の申請図書の記述の欠陥に即して判断していくことになると考えております。
○宮本委員 いやいや、答えてもらっていないんですよ。
この3のところに教育基本法の目標等に照らして重大な欠陥がある場合というものを入れた場合には、先ほど来冒頭で確認したように、1、2で問題になるような百ページ当たりの検定意見相当箇所の数にかかわらず、一括して不合格にする、こういうことですね。
○前川政府参考人 おっしゃるとおりでございます。検定意見相当箇所の数等によらずに判断するということでございます。
○宮本委員 まさに、この判断によってそういうことが行われる。これは審査会で審議すると言うわけですけれども、最終的に不合格の判定を下すのは文部科学大臣であります。
ですからこれは大臣に問うんですけれども、下村大臣がこの申請図書は教育基本法の目標に照らし重大な欠陥があると判断すれば、もう個々のページをチェックすることなく不合格にできる、こういうことじゃないですか、大臣。
○下村国務大臣 教科書検定は、教科用図書検定調査審議会における専門的、学術的な調査審議の結果に基づいて文部科学大臣が検定の合否を決定するものでありまして、教育基本法に示す教育の目標等に照らして重大な欠陥があるかどうかについても、教科用図書検定調査審議会での審議の結果に基づいて判断するということになります。
○宮本委員 恣意的な判断はしないというふうに受けとめますけれども、この点も重大だと思います。
さらに、この間、検定基準も改訂をされております。審議会での議論を二回立て続けに開催し、パブリックコメントも、通常三十日かけて行われるところを、わずか二十日に短縮してまで急ぎに急いで手続を進めてまいりました。
まず事実を確認しますが、二十日間に短縮したパブリックコメントでは何件の意見が寄せられましたか。
○前川政府参考人 今回の教科書検定基準の改正につきましては、昨年十二月二十五日から本年一月十四日の間、パブリックコメントを実施いたしまして、総計六千四百七十八件の御意見をいただいたところでございます。
いただいた御意見の内容につきましては、賛成意見がおおむね三割、反対意見がおおむね三割、その他がおおむね四割でございました。
○宮本委員 二十日間で六千五百件ですから、この問題への国民の関心の高さが示されていると思うんです。
そこで、この検定基準の改定でありますけれども、閣議決定その他の方法により示された政府の統一的見解や最高裁判所の判例がある場合には、それらに基づいた記述がされていること、こうされております。
ここで言う「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」というものの中身でありますけれども、ここには質問主意書に対する答弁書も入る、こういうことでよろしいですか。
○前川政府参考人 質問主意書に対する答弁書は、閣議決定を経て質問者に回答されるものでございますので、検定基準に示す「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」に該当するものと考えております。
○宮本委員 質問主意書に対する答弁書は閣議決定されているので入る、こういう御答弁でありました。
では大臣にお伺いするわけですけれども、この「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」の中に、いわゆる日本軍慰安婦についての河野官房長官談話、あるいは一九九五年の村山首相談話、これは入りますか。
○下村国務大臣 改正後の検定基準における「政府の統一的な見解」は、現時点で有効な閣議決定等に示されたものを指すということであります。村山内閣総理大臣談話、河野官房長官談話自体は閣議決定されたものではありません。検定基準における「政府の統一的な見解」には当たらないものであります。
○宮本委員 驚くべきことだと言わなければなりません。一方で質問主意書に対する政府答弁書が入りながら、安倍内閣が変更しないと国際社会に公約した河野談話や村山談話は入らない、こういう答弁でありました。
河野談話というのは極めて重要なものであります。この間、自民党総裁特別補佐が新しい事実が出てくれば新しい談話を発表すればいいと発言しただけで官房長官から注意されるぐらい、重大なものであります。村山談話は、外務省のホームページに、日本語とともに、英語、中国語、韓国語で掲載されている。これが政府見解でないと言って誰も納得しないと言わなければなりません。
大臣、そうじゃありませんか。いかがですか。
○下村国務大臣 私は事実関係を申し上げているわけでありまして、閣議決定されていないということは、これは事実であります。
ただし、それらに示されている基本的な立場については、安倍内閣においても継承している旨、質問主意書の答弁においては、これは閣議決定はされております。
○宮本委員 私は、この点でも検定基準の内容も全く恣意的で、しかも事実上の国定教科書化の道を進むことになりかねないと言わなければならないと思うんです。
こういうやり方は断じて許されないということを指摘して、私の質問を終わります。
○小渕委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。菊田真紀子君。
○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 私は、日本共産党を代表して、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。
義務教育教科書無償措置法の目的は、憲法第二十六条の義務教育無償の原則を実現することです。教科書の無償供与によって義務教育の場における児童生徒の学習条件を同一とし、教育の機会均等を保障しようというものであります。無償措置を教育への国家介入のてことすることは許されません。
教科書の採択、選定は、憲法の精神に立って行われるべきであり、大事なことは、学校現場で実際に教育実践に当たっている教員による十分な調査や研究を踏まえ、地域住民の意見も尊重し、地域が自主的に決めることです。これが本来のあるべき方向だと考えます。
ところが、今回の改正は、無償措置法が採択手続として定める広域の共同採択地区においては、採択地区協議会を設置することを法律で義務づけ、教科書採択権を持つ各教育委員会に対して、採択地区協議会の協議の結果に基づき、同一の教科書を採択する責務を課そうというものであります。
これは、憲法の義務教育無償の原則を実現するという無償措置法の本来の目的を逸脱し、共同採択地区の協議でまとまらなかった場合に、同一教科書を各教育委員会に押しつける仕組みを強化するものです。地方教育行政の自主性を踏みにじり、教育の国家統制を招くものであって、到底認められません。
本法案の契機として、二〇一一年の沖縄八重山採択地区での中学校公民教科書の採択問題が挙げられています。
八重山の教科書採択問題は、地区協議会会長が、特定の教科書を選定しようとして、独断的な規約改正や運営を行い、調査員の調査で最もマイナス点の多かった教科書を議論もなく選定したところに問題の根本があります。それに対して、文科省が地方教育委員会の権限に属する採択方法にまで立ち入って介入したことが、問題をこじらせた原因です。今回、竹富町教育委員会に直接是正要求をするという強権を発動したことは、異常としか言いようがありません。
改めるべきは文科省の介入であり、法まで変えて介入を正当化することは本末転倒も甚だしいと指摘しなければなりません。
八重山の問題は、当該教育委員会の話し合いと努力に委ねるべきであり、現にそうした努力が続けられてきました。文科省は不当な強権的介入を直ちにやめることを重ねて強く主張し、討論を終わります。