平成二十六年四月二日(水曜日)
午前九時四十分開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 大見 正君
神山 佐市君 菅野さちこ君
木内 均君 工藤 彰三君
熊田 裕通君 小島 敏文君
小林 茂樹君 桜井 宏君
笹川 博義君 新開 裕司君
瀬戸 隆一君 冨岡 勉君
中谷 真一君 中村 裕之君
永岡 桂子君 野中 厚君
馳 浩君 比嘉奈津美君
宮内 秀樹君 宮川 典子君
菊田真紀子君 中川 正春君
細野 豪志君 吉田 泉君
遠藤 敬君 椎木 保君
三宅 博君 中野 洋昌君
柏倉 祐司君 井出 庸生君
宮本 岳志君 青木 愛君
吉川 元君 山口 壯君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
財務副大臣 古川 禎久君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長) 原 敏弘君
政府参考人
(文化庁次長) 河村 潤子君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 大橋 秀行君
参考人
(一般社団法人日本書籍出版協会理事長)
(株式会社小学館代表取締役社長) 相賀 昌宏君
参考人
(日本大学大学院知的財産研究科教授) 土肥 一史君
参考人
(写真家)
(一般社団法人日本写真著作権協会常務理事) 瀬尾 太一君
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委員の異動
四月二日
辞任 補欠選任
青山 周平君 笹川 博義君
工藤 彰三君 瀬戸 隆一君
小林 茂樹君 中谷 真一君
比嘉奈津美君 大見 正君
吉田 泉君 中川 正春君
同日
辞任 補欠選任
大見 正君 小島 敏文君
笹川 博義君 青山 周平君
瀬戸 隆一君 中村 裕之君
中谷 真一君 小林 茂樹君
中川 正春君 吉田 泉君
同日
辞任 補欠選任
小島 敏文君 比嘉奈津美君
中村 裕之君 工藤 彰三君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは三人の参考人の皆様方、まことにありがとうございます。私の方からもお礼を申し上げます。
まず、出版者の代表である相賀参考人にお伺いをしたいんです。
今回の法改正が、一方で、違法な複製やファイル共有ソフトを利用しての違法配信という、つまり海賊版対策、これのために打ち出されてきたということを先ほどから聞いておるわけですけれども、まずは事実問題として、現状で海賊版による被害はどのようなものがあって、被害額がどれぐらいになっているか、わかる範囲でお答えいただけますでしょうか。
○相賀参考人 被害額として今資料を見ますと、五年間なので、つまり累積したものなので、千五百から三千億ぐらいという、要するに、ではその間の数字は何だというぐらいちょっと把握し切れていないというのが真実で、つまり膨大な数の海賊版があって、何か抑えると、すぐにまた消えてどこかからあらわれるというモグラたたきのような存在であるので、ちょっと正直言って把握し切れていない。できるところでやっている、できないところはもう諦めている。
例えば台湾では、日本の出版界はコミックスの大体九七、八%、台湾地域で出しておりますが、大陸の方ではそれが全部繁体字のまま、いわゆる簡体字に直さないでそのままインターネット上で見られておりますが、私どもにとってはそこのところは手が出せない。台湾とは契約上ちゃんとしているんですが、デジタルはどこへ飛んでいくかわからない。こういったことが全世界で起こっていまして、北米の漫画で五年間が三千億円、これは事実なんです。
結局、日本語版よりも、英語版に直した瞬間に、それぞれの本当に優秀な翻訳者以上に世界じゅうの優秀な翻訳者たちが、こぞってマニアが各国語に訳していくんですね。そういった漫画だけじゃなくて、今は文学作品も同じように、お互いにここはおかしいんじゃないと言いながら、どんどん翻訳をして勝手にやっている。
これをどうやって抑えていくかというのは、やはり、今回の法改正によってデジタルバージョンを我々が出版権としてはとれるということは大変な武器になります。これをいかに生かしていくかということはこれからの大きな課題なので、まずその取っかかりに入ったというか端緒に入ったということで、本当にありがたく私は思っております。
どうもありがとうございます。
○宮本委員 ありがとうございます。
そういう海賊版に対する対処ということは、私どもももちろん必要だということで受けとめております。
それで次に、小委員会に参加をされた瀬尾参考人にお伺いしたいんです。
小委員会では、出版者への権利付与のあり方として、著作隣接権の創設、それから電子書籍に対応した出版権の整備、それから訴権の付与、あるいは契約による対応、四案が示されて検討が行われました。
著作権者の中では、積極的に著作隣接権の創設を支持する立場もあれば、現行のまま契約での対応を望む消極的な立場もあったように、私、中身を見せていただいて感じるわけです。
それぞれどのような背景からそういう積極的な立場あるいは消極的な立場が出てきているのか、御紹介いただければありがたいと思います。
○瀬尾参考人 今の御質問なんですが、非常に長い長い道のりを経て、私も、実は公な会議以外の会合というのが多数ございまして、もう本当に三年も四年もこれにかかわり合ってまいりました。
その中で、今御指摘をいただきました四つの案について、まず著作隣接権についてですけれども、これは自動的に発生してしまう権利ということで、これだけ多種多様なつくり方と内容がある出版物全てに自動的についてしまうということで、なかなか合意が得られなかったということがあります。これは審議会内でも合意が得られませんでしたし、それまでの検討会の中でも合意が得られなかった部分でもあります。
その次に出てきました出版権ということなんですけれども、これについては、最後に残っている案で、ちょっとおきます。
あと、それから訴権と、もう一つは契約によるということで、実は著作者の中では、契約だけでいいじゃないか、契約してちゃんとすれば、どうせ契約しなきゃできないんだから、契約だけでいいんじゃないという話がたくさんございました。
ただ、出版さんとパートナーシップを持っていく上で、きちんとその要望があったものについてはお応えすべきというふうなことから、やはり、それは契約から一歩進んできちんとステータスをお認めしましょう、そして一緒に進んでいきましょうということで、一歩進んだ内容としてまとまった、それに合意をしたということで、契約のみというところから一歩進んでおります。
訴権につきましても、基本的な権利というよりは、先ほどから海賊版のお話も出ておりますが、実際に訴訟に至ってしまうというのは、実は最後の最後でございまして、もっと事前に海賊版は阻止することが望ましいという考え方がございます。最後まで行ってやっと防止できるということではやはり弱いということがございます。ということは、訴権というのは最後の部分でございますので、これもまた御要望とも沿いかねる部分もございますし、なかなか難しいだろうと。
そこら辺を勘案いたしまして出版権ということで、出版権につきましても多種多様な案がございまして、きょうは皆様に御条文をごらんいただいていますけれども、これをまとめるために本当に長いこと関係者は苦労してまいりました。譲り合うところを譲り、そして出すべきところを出ししてきたものでございます。
ですので、一言で出版権というふうに申しましても、非常にデリケートな部分を含んでいるということで、ここら辺が、著作者にも納得でき、かつ、出版者の皆様にしても一緒にやっていくためのあかしとして使えるものであるということで、ここにおさまったということでございます。
ですので、この出版権の設定と内容につきまして、正直申しまして、全員がフル満足しているわけではございませんが、ここでしか落としようがなかったという結論、みんなの善意の結晶だというふうにお考えいただいてもよろしいかなというふうに私は思います。
以上でございます。
○宮本委員 本当に長い間の議論が、私も議連を通じて皆さん方との議論にかかわってきたわけですけれども、その中で、出版関連小委員会で主査を務められた土肥参考人にお伺いしたいと思うんです。
そういう四つの案から検討を始めて、そして今回、出版権の整備ということになりました。その点で、著作隣接権の創設であるとか、現行のままで、契約でいいじゃないかという対応といったものではどういった不都合が存在したのか、この点について土肥参考人にお伺いしたいと思います。
○土肥参考人 御質問ありがとうございます。
どういう不都合ということも確かに議論の一つではあるんですけれども、例えば、出版権制度というのは昭和九年、ですから一九三四年、そこで生まれているわけです。隣接権制度というのは現行法になって生まれましたので、一九七〇年以降ということになります。
旧著作権法の時代に、いわゆる情報を一般ユーザーに伝達する者に権利が与えられていたのは、出版者だけなんです。つまり実演家は、当時は桃中軒雲右衛門のケースもありましたので著作者というふうに扱われておりましたし、それから、レコード製作者はみなし侵害で対応されるということになっておりました。
そういう意味からすると、出版者は、一九三四年にそういう権利を他に先駆けて認められていたわけです。そういう権利があるという歴史的な意味も相当あるんだろうと思うんです。
つまり、そういうものをうっちゃって、従来どおり契約でいいじゃないかとか、あるいは隣接権というものを導入したらどうだろうか、そういう考え方のアイデアは非常におもしろいといいますか、いいものがあると思うんですけれども、法律というのは、どうしても社会的な利益主体の調整手段としての役割というのが大きゅうございますので、やはりクリエーター、パブリッシャー、そういう方たちが寄り添って、こういうものでいきたいと。
例えば隣接権の場合でありますと、先ほど瀬尾委員もおっしゃっておりましたように、クリエーターの意思に基づかないそういう権利になってくるわけです。それはそれでもちろんいいんでしょうけれども、恐らく御案内だろうと思うんですが、では、原版の作成あるいは固定というんでしょうか、そういうようなところで権利が自動的に発生する場合の権利のスコープみたいなものは、実はそんなに広くないんですね。
そういうようないろいろなことを考えますと、クリエーターの方、パブリッシャーの方が自然に歩み寄れて一つの制度をつくっていこうじゃないかということになったのは、やはり出版権制度、出版制度の長い伝統の中の知恵として採用されたんじゃないかな、このように考えております。
以上です。
○宮本委員 長い議論の上に立った一つの知恵として出されたということがよくわかりました。
それで、ここで、写真家でもございます瀬尾参考人にお伺いしたいんです。
先ほど、日本は日本のやり方でよいということも別の質疑者に対しておっしゃっていましたけれども、今回の法改正とは直接関係はないんですけれども、写真の著作権をめぐっては、保護期間が文芸作品に比して短くなっているという問題があります。とりわけ、現存者の一九五六年以前の著作権が消滅する事態が生じているという問題があるんです。
古い話で、私も議事録を持ってまいりましたが、我が党の山原健二郎議員が九九年六月の文教委員会でこの問題を取り上げて、日本写真家協会会長の田沼さんの言葉も引いて、この作品は著作権が切れているので使用料は払いませんと言われ、私はまだ生きているんだよ、ただで使われちゃたまらないという言葉を引いて、田沼会長の、幸い、良識のある日本の出版界では、旧法を機械的に当てはめず、写真も文学、美術並みに扱っている。しかし、電子出版やインターネットなど、ニューメディアのユーザーが参入してくると、現在のような良識を期待することは困難になってくるだろう。こうおっしゃった言葉も紹介をしております。
そこで、やはり権利者と写真の利用者との契約などは、良識に頼るのではなくて、きちっと権利として確立されることが求められていると思うんですけれども、写真の著作権の保護期間の問題、特に現存者の著作権が消滅する問題について、残った時間、お話しいただいて、私の質問は終わりたいと思います。
○瀬尾参考人 ありがとうございます。
非常に私ども積年の問題についてお触れいただきまして、ありがとうございます。
ちょっと事態を説明いたしますと、ほかの文芸作品や何かは、著作者の死後五十年の保護期間ということで保護されておりました。ただ、写真に関しましては、その公表後十年という非常に短い保護期間で扱われておりました。現行の著作権法では死後五十年でほかと同じになってございます。これは、先生方に本当に御尽力をいただいて法改正をいただいて、今では写真もきちんとそういった権利がいただけるようになっていますが、昔のものについて遡及をしないという法不遡及の原則から、生きている人間のものであっても、田沼の名前が出ましたけれども、我々の会長でもございます田沼武能の写真の著作権はかなりの分で切れております。御本人は健在で、きょうも事務所で仕事をしておりましたけれども、そういう状況がございます。
これにつきまして何らかの手当てをということでお願いをしてまいりました。その願いは今でも変わりません。ただし、なかなか、法を遡及して適用することの難しさということもございますのと、もう一つは、それを立法するまでの経緯を考えると、残念ながら、高齢に至った写真家の皆様がお亡くなりになってしまうような状況も出てきております。
実際には、できるだけ速やかにこれを具体的に実現するということで、やはり契約によって、あるというふうな形のように御配慮いただく場合とか、何らかの御配慮をいただくような形でお使いいただく。またもしくは、御本人が存命であれば著作者人格権は存在しておりますので、当然、人格権を尊重していただくということで、出版さんと非常にお話し合いをさせていただいております。
その結果、実質的には、今の段階で大きな侵害もしくは、気分の悪い方は何人かいらっしゃったというふうに聞いておりますけれども、実質的に大きく問題になってはいないということでありますので、我々としては、そのお願いはしつつも、やはり、それを実際実現するプロセスにおいて周りの皆様にかける労力と効果を勘案した中で、主義主張としてはお願いをしつつも、具体的な解決策を進捗するという形で今解決を図っております。
この一件を見ましても、出版さんといかに密接にお話しして契約していくかが重要だということは、その件についてもあらわれているかというふうに思います。
ぜひ、この問題がございますことにつきましては、先生方皆様につきましても、写真の著作権が非常に不当に、不当と申し上げてよろしいでしょう、短かったことにつきまして問題が起きていた。著作権行政というのは非常に微妙なものでございますが、そんな過去の部分についても、写真についてはぜひ御承知おきいただけたらというふうに思います。
宮本先生、これは感謝申し上げて終わりたいと思います。
以上でございます。
○宮本委員 ありがとうございました。以上で終わらせていただきます。