平成二十六年四月四日(金曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 神山 佐市君
菅野さちこ君 木内 均君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 桜井 宏君
新開 裕司君 末吉 光徳君
田中 英之君 武井 俊輔君
冨岡 勉君 中川 郁子君
中山 展宏君 永岡 桂子君
野中 厚君 馳 浩君
福山 守君 宮内 秀樹君
宮川 典子君 武藤 貴也君
菊田真紀子君 中川 正春君
細野 豪志君 岩永 裕貴君
遠藤 敬君 椎木 保君
田沼 隆志君 三宅 博君
中野 洋昌君 柏倉 祐司君
井出 庸生君 宮本 岳志君
青木 愛君 吉川 元君
山口 壯君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
国立国会図書館長 大滝 則忠君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 渡辺 克也君
政府参考人
(文化庁次長) 河村 潤子君
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委員の異動
四月四日
辞任 補欠選任
池田 佳隆君 田中 英之君
新開 裕司君 末吉 光徳君
永岡 桂子君 武藤 貴也君
比嘉奈津美君 福山 守君
吉田 泉君 中川 正春君
遠藤 敬君 岩永 裕貴君
椎木 保君 田沼 隆志君
同日
辞任 補欠選任
末吉 光徳君 新開 裕司君
田中 英之君 中山 展宏君
福山 守君 武井 俊輔君
武藤 貴也君 永岡 桂子君
中川 正春君 吉田 泉君
岩永 裕貴君 遠藤 敬君
田沼 隆志君 椎木 保君
同日
辞任 補欠選任
武井 俊輔君 中川 郁子君
中山 展宏君 池田 佳隆君
同日
辞任 補欠選任
中川 郁子君 比嘉奈津美君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうはまず、視聴覚的実演に関する北京条約にかかわって質問したいと思うんです。
実演家を保護する最初の国際条約は、一九六一年、ローマで作成されたローマ条約、実演家等保護条約であります。実演家の権利の国際秩序を見直す動きが、一九九三年から、レコード製作者の権利の見直しとともにWIPOで始まりました。視聴覚実演に関する保護と音の実演に関する保護が議論されてまいりましたが、音の実演については、一九九六年、WIPO実演・レコード条約、WPPTが作成されたものの、視聴覚実演は条約作成が取り残されてまいりました。
その後、二〇〇〇年にジュネーブで外交会議が開かれ、WIPO視聴覚実演条約作成が期待されましたが、合意に達せず、二〇一二年の今回の北京外交会議に至ったものであります。これによって、視聴覚実演の保護に関する国際ルールが十二年の歳月を経てようやく合意に達し、映画など視聴覚実演に関する国際秩序が五十年ぶりに新しくなりました。
そこでまず大臣にお伺いするんですが、この北京条約の意義について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
○下村国務大臣 近年、情報関連技術の発達に伴い、著作物等の複製やインターネットを通じた送受信が容易に行われるようになったわけでございます。
本条約は、こうした状況に対応し、既存の国際条約で規定されていなかった視聴覚的実演に係る実演家の人格権や、デジタル化等の進展に対応した権利保護について、国際的な規範を確立するものであります。
我が国が本条約を締結することは、このような視聴覚的実演に係る実演家の保護のための国際的な取り組みに貢献する観点から、重要な意義を有するものと考えております。
○宮本委員 実演家保護の国際的な取り組みに我が国が貢献する、こういう意義があるという御答弁でありました。
では、北京条約では、俳優、舞踏家など視聴覚的実演家についてどのような権利が規定されているのか、これは文化庁次長にお答えいただきたいと思います。
○河村政府参考人 視聴覚的実演条約においては、視聴覚的実演に係る実演家の権利、俳優、舞踊家の人たちの権利として、一つには、氏名表示権及び同一性保持権を内容とする人格権、それから二つに、生の実演の放送、録画等を許諾する権利、さらには、DVD等の視聴覚的固定物に録画された実演の複製、譲渡、放送やオンデマンド送信等を許諾する権利が規定されております。本条約の締約国は、他の締約国の国民である実演家に対し、これらの権利を保護する義務を負うこととされております。
また加えて、視聴覚的実演に係るコピープロテクション等の技術的手段の回避や、電子透かし等により付加された権利管理情報の改変等を防止するための法的な措置について定めなければならないこととされております。
○宮本委員 そこで改めて現状を聞きたいんですが、我が国著作権法上、実演家の人格権は明確にされております。しかし、歌手など音の実演家と、俳優などの映画、映像の実演家では財産権においては違いがございます。文化庁次長、どのような差異がございますか。
○河村政府参考人 音の実演については、実演家に録音権や放送権等が付与されており、また、実演家の許諾を得て録音されている商業用レコードを用いて行われる放送や有線放送について実演家が報酬請求権を有するほか、商業用レコードの貸与について排他的許諾権や報酬請求権を有することとなっております。
これに対しまして映像の実演については、実演家に録画権や放送権等はございますものの、実演を一旦固定したものの二次利用に関する一般的報酬請求権等はないということがございますし、また、映画の著作物については、映画の円滑な流通を図る観点から、実演家の許諾を得て実演が一旦録画された場合には、実演家の録画権や放送権等に関する規定が適用されないこととなっております。
○宮本委員 同じレンタルショップで音楽CDを借りれば、歌手には報酬請求権がございます。しかし、映画のDVDであれば、出演している俳優には何も権利がない。こういう現状になっているわけです。
そこで文化庁は、二〇〇二年四月の段階で、将来、映像の実演家の方に権利を付与するということを前提にして検討を進める、こういう答弁をしておられますけれども、これは間違いないですね、次長。
○河村政府参考人 二〇〇二年、平成十四年ということでございますが、その当時の世界知的所有権機関において、映像の実演についても音の実演と同様の権利を付与することについての新たな条約、これがすなわち視聴覚的実演に関する北京条約となったわけでございますが、その検討が行われておりました。
この時期、国内においては、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会が開かれて、映像の実演家に権利を付与する前提となる契約システムのあり方について検討が行われておりました。
このような当時の検討状況を踏まえ、今お話しのありましたような答弁が行われたと承知いたしております。
○宮本委員 映像の分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会というものが当時開かれていたと。
では、映像の実演家の財産権についてこれまでどのような見直しを進めてきたのか、その後の経緯をお話しください。
○河村政府参考人 実演家の財産権につきましては、国際条約に対応して権利の充実が図られてまいりました。
具体的には、実演・レコード条約の締結のための法改正として、これは、平成九年法改正でまずは実演家に送信可能化権を付与するとともに、平成十一年法改正で、コピープロテクション等の技術的保護手段を回避して実演を録音、録画することを防止するための措置の導入や譲渡権の創設等が行われました。なお、平成十四年の法改正では、実演家に対する実演家人格権の付与が行われております。
実演・レコード条約につきましては、実は、音の実演のみの保護が求められていたわけでありますけれども、我が国においては、映像の実演についても権利の充実の対象としたものでございます。
○宮本委員 いやいや、権利の充実の対象としたのでございますとは言うものの、権利に大きく違いがあるから今ここで議論しているわけです。
端的に聞きますけれども、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会は、その後どういう検討を進めてまいりましたか。
○河村政府参考人 映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会は平成九年に設置をされました。この懇談会では、作業部会として、実演家の権利の在り方検討グループを設けまして、世界知的所有権機関、WIPOにおける映像の実演に関する新たな条約の検討状況を踏まえつつ、映像分野における実演等の保護のあり方について検討を行ってまいりました。
当時、この映像の実演に関する新たな条約は、実演家の権利を我が国の著作権法による保護以上に強化する方向での国際的な検討がなされておりましたが、結局、その点については国際的な合意が形成されませんでした。そして、一昨年の視聴覚的実演条約の成立に至ったわけでございます。
我が国としても、このような国際的な検討の経緯を見守ってきたという認識でございます。
国内の検討においては、平成十五年一月の懇談会の会合において、実演家団体及び映画製作者団体から、それぞれ契約システムに関する案というものが示されまして、それぞれの案をもとに検討が進められたのではございますが、双方の合意には至らず、現在に至っているという状況でございます。
〔委員長退席、萩生田委員長代理着席〕
○宮本委員 では、平成十五年一月を最後に開かれていないわけでありますけれども、双方の合意に至っていないことは重々わかっているんです。しかし、合意を目指して協議の必要性、その促進のために頑張りたいと言ったものが、平成十五年以来の十年以上にわたって、そういう場を設定することすらやられていないのはどういう理由ですか。
○河村政府参考人 この懇談会の検討は、映像の実演に関する新たな条約の国際的な検討ということも念頭に置いての検討となっておりましたけれども、先ほど申し上げましたけれども、この条約に関しては、我が国の著作権法の保護以上の強化ということでは合意が形成されませんでしたので、その懇談会に関しましても、それ以上の検討が進められない状況で置かれているという認識でございます。
○宮本委員 これはなかなか驚くべき答弁でありますけれども。
それではあれですか、国際条約で我が国の著作権法以上に実演者の財産権を保護する方向で検討されそうだったから検討したわけであって、北京条約では実際そうならなかったのでもう検討の必要はない、こう文化庁が考えておられるというふうに理解してよろしいですか。
○河村政府参考人 著作権法はさまざまな立場の人たちのその権利義務にかかわってくる法律でございますので、その検討の過程では、やはり、関係当事者の合意が形成されながら進めていく必要があるものと考えております。
先ほどはその国際的な状況ということを御説明申し上げましたけれども、この懇談会の検討状況そのものについても、実演家団体と映画製作者団体から契約システムの案が示されましたものの、それ以降の合意に至らなかったということも踏まえての懇談会の状況ともなったということでございます。
○宮本委員 冒頭、大臣からも、実演家保護の国際的な取り組みに我が国は貢献する、こう御発言があったわけですから、国際条約がどうあれ、しっかり検討が必要だと思うんです。
念のため確認しますが、平成十五年、二〇〇三年、これは十一年前のことでありますけれども、その前年の平成十四年六月にこの議論が国会で交わされております。このとき、「現在、文化庁が映像懇等で進めております検討も、映像の実演の財産権の実現に向けての合意形成の促進ということ」だと答弁をされております。現状でもこの立場に変わりはない、これは確認していただけますか。
○河村政府参考人 映像の実演に音の実演と同様の権利を付与するということの検討についてでありますけれども、関係者の合意形成の状況や円滑な利用への影響等を踏まえつつ、今後、必要に応じて検討を行っていくべきものと考えております。
○宮本委員 本当に変わらないのであれば、この十年間、一体何をしてきたのかと言わなければなりません。確かに、今回の北京条約で我が国の著作権法上の規定が決して問題になるわけではありませんけれども、条約において、国際的に実演家の財産権が明確にされたことは事実であります。
そこで、聞くところによると、協議が膠着して進まない原因の一つに、映画会社側が、映像の実演の財産権の問題は北京条約で決着済みだ、こういう態度で協議にも応じようとしないという話も聞いております。
そこで、念のために文化庁に確認しますが、確かに、北京条約は第十二条で権利の移転について定めております。しかし、この条項の意味するところは、国内法の定めるところにより、複製権からインターネット送信権に至る権利を映画製作者に移転することができるということであり、国内法、つまり、我が国著作権法の改正等によって映像の実演の財産権の実現を図ることは決して妨げられるものではないと思いますが、これはそういう理解でいいですね。
○河村政府参考人 この条約は、視聴覚的実演に関する実演家に関して、各締約国が共通に保護しなければならない権利の水準について定めたものでございます。この条約によって求められる水準以上の権利の取り扱いについて、各国において規定することは可能でございます。
我が国著作権法は、文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図るということでございまして、もって文化の発展に寄与することを目的としておりますが、そうした考え方のもとでの検討ということになろうかと存じます。
○宮本委員 そこで大臣にお伺いしたいと思うんです。
北京の外交会議には、日本芸能実演家団体協議会の野村萬会長も出席をし、次のようなメッセージを述べたと聞いております。
世阿弥は「能の出でくる当座に、見・聞・心の三つあり」という言葉を残しています。視覚美による成果、聴覚に訴える成果、感覚美を超えた内面性による成果を挙げ論じたものですが、現代に敷衍してなお、芸能のすべてを包含し、その真髄を的確に言い得たものとして、広く芸能に関わる者の傾聴すべき論であるように思われます。「見」を主とする芸能、「聞」を主とする芸能、その主眼とするところは異なろうとも、所詮「心」なくしては成り立つべくもなく、はたまた、その比重はともかくも三者具備してこそ真の芸能というべきではなかろうかと思うのです。
このことを条約に転じて考えると、一九九六年には「聞」に関するWPPTが成立しており、今回の外交会議で「見」に関する条約が生まれると、今度は「心」が課題になりましょう。「心」は国内法にあります。この三者具備することこそ実演家にとって肝要であります。
野村会長は、心は国内法だと言っております。国内法の一層の再検討が必要になっている。文化芸術振興基本法には、芸術家の地位向上も規定されております。
今こそ実演家の財産権の付与について検討を進めるべきだと考えますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○下村国務大臣 お聞きしていて、世阿弥の例えは、大変に説得力がある例えを使われているなというふうに思いました。
今、例えばCDなどに録音されている歌手の歌などの音の実演と、それから、DVDなどに録画されている俳優の演技などの映像の実演について、その取り扱いには差異が設けられているわけでございます。
具体的には、CDなどに録音されている音の実演については、これを複製、販売したり放送などで利用する場合には、歌手などの実演家の許諾を得るか、報酬の支払いが必要であると。これに対して、映画の著作物に録画されている俳優の演技などの映像の実演については、当該録画物をさらに録画する場合や放送などで利用する場合には、実演家の許諾や報酬の支払いは必要ないとされているわけでございます。
これは、映画の著作物は、通常一つの著作物に多くの実演家による実演が含まれている場合が多いということで、当該映画の著作物の二次利用について、個々の実演家の許諾を不要とすることで映画の著作物の円滑な利用を図り、実演家は、最初の録画の際に、その後の二次利用も含めて対価を得ることとしたものであります。
この対価が適切かどうかというのは議論があるところでございますが、そういうふうに、映像の実演と音の実演、同様の権利を付与するということについては、先ほどから次長から答弁をさせていただいていますが、まずは関係者の合意形成、その状況、それから円滑な利用への影響、そういうことを踏まえながら、必要に応じて検討を行うべきものであると考えておりまして、そういう部分から、今後しっかりと注視しながら、対応について検討を考えていきたいと思います。
〔萩生田委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本委員 十年間とまったままというのはゆゆしきことですから、しっかりと進めていただきたいと思います。
映画については、実演家だけでなく、著作者である映画監督にも同様の問題がございます。
映画の著作物については、著作権法上、プロデューサー、監督、撮影監督、美術監督など、映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者が著作者となります。
これも次長に確認しますが、では、映画の著作物については、著作者の権利のうち、財産権はどのような取り扱いになっておりますか。
○河村政府参考人 今、著作者についての御説明を頂戴いたしましたが、映画の著作権は、著作者が映画製作者に対してその映画の著作物の創作に参加することを約束しているときは映画製作者に帰属するものとされております。
これは幾つか理由がございまして、従来から、映画製作者と著作者との契約により映画製作者の権利行使にゆだねられていた実態があったことや、映画は、映画製作者がその製作に巨額の製作費を投入し、企業活動として製作、公表するものであること、また、映画監督以外にもプロデューサーや撮影監督など著作者と認められる人々が多数あって、これらの者全てに権利行使を認めるという形にすると円滑な市場流通が阻害されるという事柄が理由となっていると承知しております。
○宮本委員 映画会社が外部の監督等に依頼して映画をつくった場合に、映画の著作物については、もちろん監督も著作権者でありますけれども、その著作者の権利のうち財産権の部分が自動的に監督等の著作者から映画会社に移る、これは著作権法第二十九条の規定でありますけれども、映画会社が財産権を持ち、監督等は著作者人格権のみしかないということになっております。
映画の場合は、俳優などの実演家、著作者である映画監督も、これは財産権がないという非常におかしな状況になっているわけです。
これもやはり、少なくとも財産権を付与することも含めて、きちっと当事者間の協議を先ほどの問題と同じように進めるべきだと私は思うんですが、これも大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○下村国務大臣 映画監督は映画の著作者としての地位を有してはおりますが、映画の著作権は、著作者が映画製作者に対してその映画の著作物の創作に参加することを約束しているときは映画製作者に帰属するものとされているわけでございます。
このように、映画製作者に著作権を帰属させているのは先ほど次長から答弁があったとおりでございますが、映画製作者の権利行使に委ねられていたというこれまでの実態が、つまり映画製作者と著作者との契約等にあって、今までの経緯、それから、映画は、映画製作者がその製作に巨額の製作費を投入し企業活動として製作、公表するものである、また、映画監督以外にもプロデューサーや撮影監督など著作者と認められる者がたくさんいて、これらの者全てに権利行使を認めると円滑な市場流通が阻害される、そういう理由だったわけでございます。
今後の映画の著作物の著作権を映画監督に与えることについてでありますが、関係者のそういう意味でのやはりこれは合意形成の状況、また、映画の円滑な市場流通への影響、こういうことを踏まえながら、今後必要に応じて検討を行うべきものであるというふうに考えます。
○宮本委員 先ほどのワーキンググループがつくられていたときには、映画監督の権利に関する法制、契約システムの整備のための協議の場というものも置かれておったわけです。これもとまったままになっています。しっかりそういう場を設けるように求めておきたいというふうに思うんです。
今回の法改正とは直接関係ないんですが、先日の参考人質疑で、写真家の瀬尾参考人と写真の著作権の問題を取り上げてやりとりがあったので質問しておきたいと思います。
写真の著作権をめぐっては、保護期間が文芸作品に比して短くなっております。特に、現存者の一九五六年以前の著作権が消滅する事態が生じているという問題があります。一昨日の参考人質疑でも、私が我が党の山原健二郎議員のかつての質問を紹介して、日本写真家協会の田沼武能会長が、この作品は著作権が切れているので使用料は払いませんと言われ、私はまだ生きているんだよ、ただで使われちゃたまらないとおっしゃったというエピソードを紹介してお聞きしたら、瀬尾太一参考人も、これは引き続き強い要望だと答えておられました。
写真の著作権の保護期間、特に、現存者の著作権が消滅する問題について権利として確立することが必要だと思いますが、これは文化庁次長、これについてはどういうことになっておりますか。
○河村政府参考人 写真の著作物の保護期間については、平成八年の著作権法改正によって公表後五十年から著作者の死後五十年に延長されましたが、旧著作権法下、旧著作権のもとで創作された写真の著作物であって、現行法施行前、これはつまり、昭和四十六年一月一日施行日ですので昭和四十六年一月の施行前ということですが、このときに既に著作権が消滅していたものについては現在の法律による保護は与えられないという整理となりました。
この、一旦消滅した写真の著作権を復活させるべきかどうかという問題については、平成十一年の当時の著作権審議会において検討が行われましたが、一度権利が消滅したものについて保護を復活させるということについては、既存の定着した利用関係に重大な影響を与えることなどの理由から、著作権の保護を復活させるという結論には至らなかったものでございます。
この結論は今も尊重されることになろうかと存じます。
○宮本委員 レコードの場合は遡及が行われたわけでありますから、決してやってできないことではないんです。引き続き検討を求めておきたいと思います。
今回は、この問題だけでなく、当然、新たな出版権の整備ということでありますけれども、紙媒体の書籍だけでなく、電子書籍がこれだけ急増しているわけですから、同時に、違法な複製、違法配信といった海賊版被害も増加をしております。こうした状況に対応した新たな出版権の整備自体は必要なことだと考えておりますし、これには賛成をしたいと思っております。
最後に大臣、きょうのやりとりを聞いていただいて、やはり実演家の権利を一層拡充する必要がある、この点についての大臣の御決意をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
○下村国務大臣 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、これはぜひ、我が国は文化芸術立国として、あわせて世界に発信をしていきたいと思います。そういう意味では、文化芸術関係の方々を大切にしているということを国として示していく必要があるというふうに思います。
先ほどの宮本委員のあの問題提起については、関係者間の合意等いろいろな課題はありますが、国としては、文化芸術関係の方々を大切にするような施策を進めるという方向については、ぜひこれからも進めてまいりたいと思います。
○宮本委員 ありがとうございました。