平成二十六年五月七日(水曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 神山 佐市君
菅野さちこ君 木内 均君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 桜井 宏君
新開 裕司君 冨岡 勉君
永岡 桂子君 野中 厚君
馳 浩君 比嘉奈津美君
福山 守君 牧島かれん君
宮内 秀樹君 宮川 典子君
村井 英樹君 菊田真紀子君
細野 豪志君 吉田 泉君
遠藤 敬君 椎木 保君
三宅 博君 中野 洋昌君
柏倉 祐司君 井出 庸生君
宮本 岳志君 青木 愛君
吉川 元君 山口 壯君
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文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
参考人
(奈良学園大学学長)
(学校法人奈良学園理事)
(学校法人聖ウルスラ学院理事長) 梶田 叡一君
参考人
(NPO法人地方自立政策研究所理事長)
(元埼玉県志木市長) 穂坂 邦夫君
参考人
(名古屋大学大学院教授) 中嶋 哲彦君
文部科学委員会専門員 久留 正敏君
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委員の異動
五月七日
辞任 補欠選任
菅野さちこ君 福山 守君
桜井 宏君 牧島かれん君
同日
辞任 補欠選任
福山 守君 菅野さちこ君
牧島かれん君 村井 英樹君
同日
辞任 補欠選任
村井 英樹君 桜井 宏君
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本日の会議に付した案件
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)
地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出、衆法第一六号)
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、三人の参考人の先生方、本当にありがとうございます。
三人の先生方のお話を聞かせていただいて、政治的中立性の重要さ、これはもう議論の余地なく、お三方とも冒頭にもお述べになりました。非常に大事なことだと思うんです。
まず梶田参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど少し触れられた京都の革新府政時代のものについては、これは私は事実も見解も若干異にいたしますけれども、おっしゃるとおり、やはり首長に権限を集中するというのがいかがなものか、こういう問題意識は共有したいと思っております。私たちも、首長、政治家による教育への政治介入はだめだというふうに思うんです。
それで、提出されている政府法案を見ますと、確かに、教育委員会制度は残りますし、教育委員会の職務権限もそのままになっているわけでありますけれども、首長が教育長を任命し、教育施策の方針となる大綱を定める、こうなっております。これでは、教育委員会は首長による政治支配をなかなか排せない、教育委員会は首長に従属する危険があるのではないか、私たちはそういうふうに感じております。
それで、先ほど参考人も、梶田さんも、独走を許さないチェック・アンド・バランスが必要だ、それから、現場主義という点では教育委員会があって、大事だ、やめてしまえというのではなく、それを強化するにはどうしたらいいか、こういう御発言がありました。
率直に、どういうふうに教育委員会を強化すべきだとお考えなのか、御意見をお伺いしたいと思います。
○梶田参考人 一つは、やはりもう少し権限を明確にしなきゃいけないと思うんです。これは、権限をということは、逆に言うと、責任範囲をということになると思うんです。これが今の議論の中で、今の法案の中で少し明確になってきましたけれども、もう少し、もう一歩も二歩も明確にしていかなきゃいけないんじゃないか。それが一つあります。
それから、教育委員やら新しい教育長の任免ということ、これは、実質的にはそれは首長さんが名前を出すというのはあってもいいけれども、先ほど私申し上げたように、議会で所信を表明して、議員さんとのやりとりをしながら、この人が委員にふさわしいかどうか、あるいは新しい教育長にふさわしいかどうかを議会としてやはりきちっと見ていく。同じことで、罷免の場合もそうです。これは最小限要るんじゃないかなということを思っております。
もう一つ、もっと根本的になりますけれども、教育委員という方々を選ぶときに、かなりもっともっと広範に、その町に関係した人からいい人を見つけてほしいな。つまり、先ほどちょっとありました。常勤でないからとかお金が余り出ないからと言うようなそういう人はもう絶対これはいけないだろうと。そうじゃなくて、だから、本当に四六時中仕事をしている人にはなかなか頼みにくいですけれども、しかし、少し教育のためにボランティア的に走り回りたいというような方がおられたら、広範にやはり考えてほしい。
最後は、これも人の問題があると思うんですよ。私は、大津の場合も基本的には人の問題もあったんじゃないかな、こういうふうに思っております。
○宮本委員 ありがとうございます。
次に、穂坂参考人にお伺いしたいんです。
先ほど、現状はやっていることと建前との乖離が多い、こういうお話がありました。穂坂さんは著書などで、義務教育は中央集権的な制度だ、全ての権限が文科省にあると言ってよい、文科省という指揮官から現場の部隊にさまざまな形で指導助言が下される、しかも、指導助言は実質的に命令であり、反論はおろか、意見をさえ言うことができない、これらの副作用が現場の意思や創造性を奪い、実施主体全体を受動的機能に特化させている、こう述べておられます。
この中央集権的な部分の評価、これは私もまさにそのとおりだと思いますし、その点で見れば、今回の改定案はこの問題を真に解決するものになっていないと言わざるを得ないと思うんです。
この点で、中央の教育行政、これをどう見直すべきか、穂坂参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○穂坂参考人 私の中央集権の定義といいますか考え方は、役割分担が不明確なんだというに尽きるんですよ。
さっきも再三言っているように、教育であろうと何であろうと、国のやるべき仕事、都道府県のやるべき仕事、市町村のやるべき、仕事というのは役割と権限というふうに置きかえてもらっていいと思うんですが、が一つです。
それからもう一つは、教育委員会、例えばもっと具体的に言えば、教育長と首長との関係、役割分担、こういうものがしっかりしていないと、建前では、お互いに平等な立場で、お互いにいろいろ話し合ってやっていきましょう、決して日本は中央集権的な制度ではないとは言いながら、役割分担が決まっていないと、やはり最終的な財源は、例えば学校を新しくつくるにも、例えば耐震の設計をするにも、やはり国にお伺いを立てなければいけないわけですよ。
二十五人学級のときに、いいというのは教育委員会も物すごく賛成している。議会も賛成している。でも、みんな心配したのは、意地悪されるんじゃないか、例えば都道府県からですね、市町村の場合には都道府県が一番近い直近の上級官庁ですから。何でそういうことが起きるのかというと、結局、先生の人事権は全部都道府県にありますから、アンダーの中で意地悪をされるんじゃないか、あるいは、今度は国に箇所づけで、例えば何かの申請をしたときに、恣意的に、おたくはどうも余り言うことを聞かないからだめだと言われるんじゃないか、そういうことを言われたんです。
ですから、そういうことを含めて言うと、やはり、分権とかよく言いますが、私は、そういう表現よりもむしろ、役割分担を明確にする。できるだけ現場の創意とか自主性とか、そういうものを大事にしてもらう。こういう制度が、この教育行政についてもそれはそうあってほしい、こう思っております。
○宮本委員 ありがとうございます。
教育の地方分権というのは一九四八年の教育委員会発足当時からの大原則でありますから、私たちも、上意下達で国から学校現場にあれこれ指示するようなやり方というものは大問題だというふうに思っております。
さて、中嶋参考人にお伺いをいたします。
現状の教育委員会に問題があるというのは、これはほとんどの皆さんの認識の一致するところであって、それをではどう改善するのかということが問題だと思うんです。
中嶋参考人が犬山市の教育委員を務めておられたときの取り組みについては、先ほど、学力テストへの不参加問題、これは有名でありますけれども、このほかにもさまざまな取り組みがあったと思うんです。短い時間でありますけれども、二、三、例を挙げて御紹介いただけますでしょうか。
○中嶋参考人 犬山市は全国学力テストの不参加でマスコミで大きく報道されたわけですけれども、一九九九年ぐらいから教育改革の取り組みは独自に行ってまいりました。私が教育委員になったのは二〇〇〇年からですが、その少し前から始まっていました。
その中では、例えば愛知県では、各学校の教務主任あるいは校務主任というのが、校務主任というのは愛知県だけの制度ですが、があるんですが、これは本来校長が選任する職なんですけれども、都道府県教委があらかじめ予定者を決めて学校に配置してしまうということをしていました。その中で、市町村教育委員会が本来有している内申権、教員人事に関する内申権が実質存在していないような状況が生まれていました。
これに対して教育委員会から、これは法に照らして問題があるんだということを提起し、内申権の実質化を図るということで愛知県教育委員会に対して申し入れをし、それを実現しました。
これは、要するに、地方教育行政法が定めている教育委員会の権限が必ずしも市町村教育委員会によって十分に行使されていないという問題です。
行使されていないのは、多くの場合、恐らく、教育長さんも教育行政についての専門性は非常に低いと思っています。つまり、教育行政に関する専門的な知識をどこで身につけているかといえば、例えば、校長先生として勤務していたときの経験、あるいは、指導主事として教育委員会事務局に勤務していたときの経験に基づいていると思うからです。
今のことからいって、教育委員会を強化するという点では、教育長の教育行政専門性を担保する仕組みを確保するということが一つ重要だと思っています。
今回の閣法の中では、教育行政に関する識見を有するものということになっていて、極めて曖昧な規定の仕方になっているんですけれども、例えばアメリカでは、教育行政学の学位を有している者を公募して教育委員会の教育長に選任するということを行っています。
それから、もう一度犬山市に戻りますが、犬山市では、少人数授業を行ったり、あるいは少人数授業を行うに当たっては、習熟度別によらない共同の学習を行ってまいりました。これは、市町村として、自分たちの町の学校教育をどのように編成していくかということにかかわる問題です。
基本的にはこれは学校の自主性に任されるべき問題であると思っていますけれども、犬山市教育委員会は、習熟度別ではない共同学習が重要であるということを学校教員に対して指導助言を行い、それに応える形で学校が授業改革を進めていったというものです。
それに対して教育委員会として、教員を配置するであるとか、首長に対して予算を請求し、首長から予算を獲得するというような活動をしてまいりました。
つまり、国や都道府県によって大きな枠組みがつくられている中で、市町村の教育委員会が自主的に教育をつくっていくことができるんだ、あるいは教育行政を地方自治的に行っていくことができるんだということが、必ずしも現在の教育委員会関係者によって適切には理解されていない。したがって、本来みずからが有している権限を十分に行使していない。そのために役割が十分果たせていないという問題があると思います。
以上です。
○宮本委員 非常に貴重なお話、ありがとうございました。
今、そういう点では、教育委員会の役割というのはむしろ非常に大きいというふうに私も実感をいたします。
それで、この議論なんですけれども、政府案、閣法にしても、それから野党案にしても、なぜそういう改定が必要なのかという点ではまだまだ議論がわかりにくい、尽くされていないという面があるわけです。それにはやはりそれなりの理由があって、狙いがあって、では、実際にこの教育委員会制度の改悪によって何をやろうとしているかというのがまだまだ見えてきていないからだろうと私は思うんですよ。
先ほど中嶋先生は、新自由主義によるグローバル人材の育成ということにお触れになりました。もちろん、子供たちの間に競争を進めるためには、学力テストの結果の公表等々、教育委員会が抵抗しているという面もありますから、ここを取っ払って、もっと学力テストで競争させようという面がある。これは事実だと思います。
同時に、やはり愛国心教育というものを今進めていこうとしているんじゃないかと。先日、文部科学大臣とも、大臣が教育勅語が至極真っ当と御発言になったことをめぐって随分激しい議論をやったんですけれども、こういう面で、やはり今の政府の教育政策、私は不安が大きく感じられるわけですけれども、最後に中嶋先生の御意見をお伺いして、終わりたいと思います。
○中嶋参考人 今委員のおっしゃったとおり、愛国心教育であるとか、愛国心に限らず、特定の道徳を、これが国民としてあるべき姿なんだという形で国民に示すというような教育が行われるということは、あってはならないことだと思います。
今は地方教育行政法が法案として出ていますけれども、この後、教育再生推進法案が準備されているということを報道で知っています。それらにおいても、この愛国心と、それから、先ほど私が申し上げましたような、教育制度そのものの基本的な新自由主義改革というものが準備されていると思いますので、そこに十分警戒をしなければいけないと私は思っています。
以上です。
○宮本委員 ありがとうございました。以上で終わります。