186-衆-文部科学委員会-20号 平成26年05月23日
平成二十六年五月二十三日(金曜日)
午後一時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 大西 英男君
大見 正君 勝沼 栄明君
神山 佐市君 菅野さちこ君
木内 均君 熊田 裕通君
小林 茂樹君 小松 裕君
斎藤 洋明君 桜井 宏君
新開 裕司君 鈴木 憲和君
武部 新君 冨岡 勉君
永岡 桂子君 野中 厚君
馳 浩君 比嘉奈津美君
藤原 崇君 牧島かれん君
宮内 秀樹君 八木 哲也君
菊田真紀子君 細野 豪志君
吉田 泉君 伊東 信久君
遠藤 敬君 椎木 保君
三宅 博君 中野 洋昌君
柏倉 祐司君 井出 庸生君
宮本 岳志君 青木 愛君
吉川 元君 山口 壯君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 吉田 大輔君
文部科学委員会専門員 久留 正敏君
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委員の異動
五月二十三日
辞任 補欠選任
青山 周平君 勝沼 栄明君
木内 均君 大西 英男君
工藤 彰三君 大見 正君
馳 浩君 小松 裕君
宮川 典子君 藤原 崇君
椎木 保君 伊東 信久君
同日
辞任 補欠選任
大西 英男君 武部 新君
大見 正君 牧島かれん君
勝沼 栄明君 青山 周平君
小松 裕君 馳 浩君
藤原 崇君 鈴木 憲和君
伊東 信久君 椎木 保君
同日
辞任 補欠選任
鈴木 憲和君 斎藤 洋明君
武部 新君 木内 均君
牧島かれん君 八木 哲也君
同日
辞任 補欠選任
斎藤 洋明君 宮川 典子君
八木 哲也君 工藤 彰三君
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五月二十二日
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
そもそも大学は、十三世紀に西ヨーロッパで生まれ、世界各国で高等教育機関として発展をしてまいりました。その歴史の中で、国家権力の干渉から学問研究と教育の自由を守るために大学の自治というものを形成してきた、これは世界共通の原則でもあります。
昨日の本会議で指摘いたしましたように、我が国の大学は、戦前、官吏養成機関として出発し、帝国大学令第一条では、「帝国大学ハ国家ノ須要に応スル学術技芸ヲ教授シ」、こう定められていたわけです。
しかし、敗戦を迎え、戦後の大学は、国家目的への奉仕機関から学術の中心の機関に転換をいたしました。憲法二十三条が定める学問の自由と、そこから要請される大学の自治は、その保障だと言わなければなりません。
そこでまず冒頭、大臣に確認するんですが、大学の自治というものは、大学における学問の自由を保障するために、大学の自主性を尊重する制度と慣行であると言われておりますけれども、これは一般論として、大学の自治を最大限に尊重するのは当然だと私は考えますが、よろしいですね。
○下村国務大臣 おっしゃるとおりです。
○宮本委員 では、その大学の自治にとっての教授会の役割とはどういうものかということであります。
学校教育法は、この大学の自治を具体化し、第九十三条で、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」と定めております。
学校教育法制定当時、昭和二十二年三月二十六日の貴族院教育基本法案特別委員会の会議録によりますと、教授会が中心で大学の自治というものをやらせるのかとの質問に、当時の剣木亨弘文部省学校教育局次長は、原則としては、大学の自治のためには教授会が当たる、積極的にそういう意味をもってここに法律上規定したと答弁をしております。
我々は、大学の自治は本来大学の全構成員の参加で行うものである、こう考えておりますけれども、学校教育法制定時の政府の立場は、大学の自治の中心的な担い手として教授会を位置づけて、それをこの現行九十三条の条文に法律上規定したというのが当時の答弁であります。
これは局長に確認いたしますが、間違いないですね。
○吉田政府参考人 昭和二十二年三月二十六日の貴族院教育基本法案特別委員会の剣木文部省学校教育局次長の答弁の部分は、このようになっております。
只今大学に付ては或は職員組合、或は学生運動等が起りまして、甚しきは学生が大学の行政にまで参加すると云ふやうなこと迄も言ひ出して居るやうな趨勢であります、そこで矢張り原則と致しましては、大学の自治の為には教授会が当ると云ふことを、積極的にさう云ふ意味を以ちまして、此処に法律上規定した方が宜いのぢやないかと云ふ気持もあつた訳であります
と答弁しております。
○宮本委員 余計なところまで答弁されましたが。だからこそ私たちは教授会の自治に限らないということを申し上げているわけですが、少なくとも、教授会の自治が中心である、こういう答弁だったわけですよ。
それで、この九十三条の言う、教授会が審議すべき重要な事項の範囲とは何か。あなた方が中教審大学分科会組織運営部会の第三回に提出した資料、「教授会に関する法令上の規定」というペーパーによりますと、「教授会が審議すべき「重要な事項」の範囲は、各大学の判断に委ねられている。」こう書かれてありますけれども、これも局長、間違いないですね。
○吉田政府参考人 御指摘の資料は、昨年九月九日に開催されました中央教育審議会大学分科会組織運営部会第三回の会合におきまして、論点整理補足資料として事務局から提出した資料にあったものでございまして、現行法における九十三条の状況について説明したものでございます。
○宮本委員 現状は、教授会が審議すべき重要な事項の範囲は各大学の判断に委ねられていることが確認されました。
大学ごとに異なりますけれども、教授会は、教育研究費の配分や教員の業績評価、教員採用などの人事、学部長の選任、カリキュラムの編成や学部、学科の設置、廃止など、大学の重要な事項について幅広く審議をしております。
ところが、実態がそうであるにもかかわらず、あなた方は、新制大学発足時の文部省答弁の原点すら投げ捨てて、一貫して教授会の権限を弱めることに躍起になってきたと言わなければなりません。
それでも、旧国立学校設置法七条の四の四では、教育課程の編成や、入学、卒業または課程の修了その他在籍に関する事項や学位の授与など、教育研究に関する重要事項についての教授会の審議権を認めてきましたし、また、法人化前は、教育公務員特例法第三条では、学長や学部長の選任、教員の採用など、人事についても教授会の議に基づくことが定められてまいりました。これも事実としてはそのとおりですね、局長。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
現在廃止されておりますけれども、旧国立学校設置法第七条の四第四項におきましては、国立大学の教授会の審議事項として、
一 学部又は研究科の教育課程の編成に関する事項
二 学生の入学、卒業又は課程の修了その他その在籍に関する事項及び学位の授与に関する事項
三 その他当該教授会を置く組織の教育又は研究に関する重要事項
が規定されたところでございます。
また、教育公務員特例法第三条におきましては、大学の教員の採用及び昇任の方法について規定をしておりまして、学長の採用のための選考は、評議会の議に基づき学長が定める基準により、評議会が行うこと、学部長の採用のための選考は、当該学部の教授会の議に基づき、学長が行うこと、学部長以外の部局長の採用のための選考は、評議会の議に基づき学長の定める基準により、学長が行うこと、教員の採用及び昇任のための選考は、評議会の議に基づき学長が定める基準により、教授会の議に基づき学長が行うこと等が規定をされたところでございます。
○宮本委員 教授会の議に基づきということも定められていたわけですね。
ところが、次にあなた方は、大学のガバナンス改革などという看板のもとで、学長のリーダーシップの確立、こういうふうに言って、中教審大学分科会に、大学自治の土台である教授会をいわば骨抜きにし、学長独断の大学運営に道を開く審議まとめなるものを出させたわけですよ。
局長、そこで聞きたいんですが、ことし二月十二日に発表されたこの中教審大学分科会の審議まとめでは、学校教育法九十三条に基づいて教授会が審議することが求められる重要な事項をどのように述べておりますか。
○吉田政府参考人 御指摘の、二月十二日にまとめられました中央教育審議会大学分科会の審議のまとめにおきましては、「教授会が審議すべき「重要な事項」の具体的内容として、1学位授与、2学生の身分に関する審査、3教育課程の編成、4教員の教育研究業績等の審査等については、教授会の審議を十分に考慮した上で、学長が最終決定を行う必要がある。」と記述しております。
○宮本委員 先ほどの教育公務員特例法第三条が定めていたような人事に関する関与などはどこにもなくて、大幅にその審議の範囲や権限が弱められてしまっております。
我々はこれ自身が大問題だと考えるわけですけれども、政府が出してきた法案は、さらに教授会の権限、役割を狭めております。
改正案九十三条では、教授会が審議できる事項を、学生の入学、卒業及び課程の修了と学位の授与の二つに限定し、その他は、学長が意見を聞くことが必要であると認める場合に限るとしております。
これも局長に聞くんですが、審議まとめから法案作成に当たって、教育課程の編成や教員の教育研究業績等の審査を除外したのは一体どういう理由ですか。
○吉田政府参考人 これは先ほど大臣の方から御答弁もいただきましたけれども、改正案の九十三条の第二項では、学位の授与とそれから学生の入学、卒業及び課程の修了、そして、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聞くことが必要と認めるものについて、学長が決定を行うに当たり教授会が意見を述べるものとするというふうにしております。
これにつきましては、教育課程の編成、それから教員の教育研究業績の審査については各大学におきまして多様な実態があることから、法律上は規定はせず、大学に対する新たな法律上の義務については限定的にしたものでございます。
○宮本委員 いや、この審議まとめは、四つの事項を並列して明示して、その間に区別を置いていないんですよ。にもかかわらず、法案は、学生の入学、卒業及び課程の修了と学位の授与の二つだけを、学長が教授会の意見を聞くことを義務づける、まさに二項の一号、二号に定めて、他の二つは三号に落として、学長が意見を聞くことが必要であると認める場合に限ってのみ意見を述べることができる、こういうふうに差をつけているんです。
なぜこのように差をつけたのか。審議まとめでは四つとも大事だと言っているのに、なぜ多様だからということでこれを落とせるのか。そこを聞いているんです。
○吉田政府参考人 改正案の九十三条の二項というのは、学長も一定の事項については教授会の意見を聞かねばならず、また、教授会はそれに対して意見を述べなければならないという義務づけをしているものでございます。
その観点からいたしますと、先ほど申し上げたように、教育課程の編成ですとかあるいは教員の教育研究業績の審査、これは大学におきましてさまざまな実態がございます。例えば、学長が主導いたしまして実験的な教育プログラムの策定をするとか、あるいはプロジェクト型授業の実施に伴いまして特任教授を採用するとか、そういったものにつきましては必ずしも既存の教授会での審議を必要とするかといいますと、必ずしもそうではないというふうに考えられます。そういった柔軟な運用も許すという意味で、ここのところでは明記をしなかったということでございます。
○宮本委員 おかしいじゃないですか。この審議まとめでは、四つを並列した上で、「教授会の審議を十分に考慮した上で、学長が最終決定を行う必要がある。」つまり、教授会の審議が十分考慮されなければならないと言っているのに、勝手な解釈でそうやって落としてしまったわけですよ。
大学の自治を最大限に尊重すると大臣はおっしゃるけれども、新制大学発足時には、貴族院の答弁にあったように、教授会が審議すべき重要な事項とは大学に関するほぼ全ての事項、まさに教授会が中心になって決めていくんだというところから出発したはずなのに、事あるごとにそれを切り縮めて、そして、みずからが中教審の大学分科会に出させたこの審議まとめが出てもなお、そこよりもさらに絞り込んだ。だから、教授会の審議内容の権限、審議権は狭ければ狭いほどいいという、まさにあなた方のずっとこの間やってきたやり方がここに示されていると言わなければならないと思うんです。
そこで、一つ別の視点で聞きますけれども、審議まとめの「学生の身分に関する審査」というものと法案の「学生の入学、卒業及び課程の修了」というものは決して同じことではありません。現行学校教育法施行規則第百四十四条では、「入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、教授会の議を経て、学長が定める。」とされております。
この両者を比べたときに、退学、転学、留学、休学というものが抜けているわけですけれども、これは一体どこに行ったんですか、局長。
○吉田政府参考人 御指摘のように、九十三条二項第一号では、「学生の入学、卒業及び課程の修了」ということについては、学長が決定を行うに当たり、教授会が意見を述べるものというふうにしております。一方、学校教育法施行規則第百四十四条では、それ以外に退学、転学、留学、休学ということについても、「教授会の議を経て、学長が定める。」というふうな規定を置いております。
これの関係につきましては、この改正法案が成立した際には、法律と省令との関係をいま一度見直しをしておきたいというふうに思っております。
○宮本委員 いや、いま一度見直すということは、先ほど私が申し上げたようなものは抜け落ちるということを意味していると思うんですけれども。
では、逆の聞き方をいたしましょう。学長が教授会の意見を聞くことが必要でないと判断すれば、教授会の議を経ずに学生を退学させることができることになりますね。
○吉田政府参考人 そこのところは、まさにその法律と省令との関係を再検討する際の一つの論点として考えております。
○宮本委員 いやいや、法律がそうなれば、省令の方を法律に合わせるんでしょう。
○吉田政府参考人 法律では、入学、卒業、課程の修了という、まさに一つ身分が大きく変わる部分を、代表的なところを捉えてやっております。
もちろん、例えば退学とかそういったものも身分の変動は伴いますので、そこの部分について、今省令で書かれている事項、それについて引き続き省令でどのような形で定めるのかということについては、この法律改正と連動させながら見直しを図ってまいりたいと思っております。
○宮本委員 いやいや、退学も大きく身分が変わるわけですが、そうしたらあれですか、省令を変えずに、退学についても議を経るということを残すということを今おっしゃっているんですか。
○吉田政府参考人 その点は、そういうものも選択肢としてあって、検討したいと思っています。
○宮本委員 もしもそれが入るんだったら明示すればいいんですよ、今までどおり。全く入っていないじゃないですか。入学と卒業、それしか入っていないから、では退学については教授会の議を経ずに学長が勝手に決められる、そうとしか条文上は読めないわけですから、これは大問題だと私は言わなければならないと思います。これは引き続き徹底的に、はっきり答弁いただいて審議を進めなきゃならぬと思うんですね。
それで、改正案は、国立大学法人法の当時の審議での政府答弁とも矛盾をしております。国立大学法人法の審議の際に、我が党の児玉健次衆議院議員が教授会の審議事項について質問をしたのに対して、当時の河村副大臣はこの当時どのように答弁しておりましたか。局長、お願いいたします。
○吉田政府参考人 御指摘の平成十五年五月十六日の衆議院文部科学委員会の会議録で、当時の河村副大臣が児玉健次衆議院議員の教授会の審議事項についての質問に対して、次のように答えております。
法人化後は、非公務員型の法人ということでございまして、教員の任命権者は文部科学大臣から学長になるとともに、教育公務員特例法の適用がなくなって、人事については教授会の議に基づいて行うということの規定の適用はなくなるわけでございます。したがって、教員人事については、今後は各国立大学法人の創意工夫にゆだねられる、これが原則になるわけでございます。
ただ、その国立大学法人制度は、各法人の自主性、自律性を高めて自己責任の拡大を図っていくという面もございまして、こうした観点から、内部組織については可能な限り法人の裁量にゆだねていきたいということでありまして、今回の法律等では規定されておりません。これまで教授会の設置の単位とされておりました学部や研究会については、法律上、規定はないわけでございます。こうした点を踏まえて、どのような教育研究組織の単位にどのような形で教授会を置くか、これについては法人の定めにゆだねることになるわけでございます。
そういうことを考えますと、法人化後の大学に教授会の形があって、それがどのような形でこれから運営されていくかということについては、それぞれの大学が自主的にお決めをいただくことになる、このように考えております。
との答弁がございます。
○宮本委員 法人化のときの約束は、「それぞれの大学が自主的にお決めをいただくことになる、」と。法人化は、各大学の自主性、創意性を最大限発揮するための法人化だ、こう言って、やったわけですよね。
そのときの議論に照らしても、今やられている教授会の審議内容を法律で一層絞り込むというのは、本当にひどい、明確に反していると言わざるを得ません。
本会議で大臣は、教授会の審議事項が経営に関する事項にまで及ぶのは問題だと言わんばかりの答弁をされました。教育研究に関する事項と経営に関する事項がそんなに明確に分けられるのか。
これは審議まとめでもそのことについて触れてございます。審議まとめの二十七ページ、下から三行目以降には何と書いてあるか。局長、お答えいただけますか。
○吉田政府参考人 審議まとめ二十七ページの下から三行目以降、このような記述がございます。
もっとも、大学の目的が教育研究そのものにあることから、教育研究に関する事項と経営に関する事項を明確に分けることは困難な面がある。例えば、学部・学科の廃止やキャンパスの移転といった事柄については、純粋に経営的な事項であるとする指摘もあるが、大学における教育研究―そこで学んでいる学生の教育環境や、研究の多様性・継続性の維持等―に大きく影響する事項でもある。
ただ、その後、引き続きまして、
問題は、本来学長や理事会に最終決定権がある事項について、直接責任を負う立場にない教授会の議決によって、学長や理事会の意思決定が事実上否定できるような、権限と責任の不一致が生じる場合である。
との記述もございます。
○宮本委員 ここでは、明確に切り分けることは困難な面があると述べた上で、キャンパスの移転等についても、では完全に経営的な問題かといえば、そう言い切れない面もあるんだというふうに触れているわけですよ。
大臣は、昨日の本会議答弁でも、あたかもキャンパス移転等について教授会が意見を述べることが問題であるかのような答弁でありましたけれども、これは本当に、この審議まとめでも、別にキャンパス移転が完全に経営だけにかかわるものではないというふうに言っているわけですね。
それで、経営の面についてもきちっと教授会が審議をすることが可能であるということは、国立大学法人化時の政府答弁でも出ております。
二〇〇三年七月八日の参議院文教科学委員会、国立大学法人法の審議で、野党議員が「教授会が審議する重要事項には経営的な事項が含まれていると考えるが、どうか。」と質問したのに対して、遠藤純一郎高等教育局長はどのように答弁しておりますか。
○吉田政府参考人 平成十五年七月八日の参議院文教科学委員会における当時の遠藤純一郎高等局長の答弁の内容では、このようになっております。
法人化後の国立大学におきましても、学校教育法第五十九条
これが今、現行の九十三条になっておりますけれども、この
第五十九条の規定に基づきまして教授会が置かれるということには変わりがないわけでございます。教授会におきましては、引き続き当該教授会が置かれている学部や研究科の教育研究に関する重要事項を審議するものでございまして、そうした事項を審議する中で予算や組織編制など経営的な事項について議論することもあるというふうに考えておるわけでございます。
と答弁しております。
○宮本委員 遠藤局長は「予算や組織編制など経営的な事項について議論することもある」とはっきりこのときは答弁しております。法案は、法人化の際の、教授会の役割は変わらないとした政府答弁にも反するものだと言わなければなりません。
法案の提出理由として、政府は、学長のリーダーシップを確立して大学改革を進める、こう言っております。しかし、教授会の権限を弱め、学長選考にも教授会の意向を反映させることを否定すれば、学長のリーダーシップが逆に発揮できなくなるのではないかと私は言わなければなりません。こんな法改悪をやれば、上意下達で強権的に改革なるものを断行することになるだけであって、結局、その改革なるものも成功するはずがないと思うんです。
大学は、多様な見識や価値観が存在するからこそ学問の府と言われるわけです。そうした多様な立場からの意見の中で、全学的な合意を形成する能力、そういう資質、それこそが学長に求められる本当のリーダーシップだと私は思うんですが、これは、大臣、そうお思いになりませんか。
○下村国務大臣 今回の改正案は、権限と責任の一致の観点から、大学の決定権者である学長がリーダーシップを発揮し、教授会を初めとした学内の組織との適切な役割分担のもとで、責任ある大学運営を行っていくことを目指すものであります。
改正案では、教授会が教育研究に関する事項について字義どおり審議することを規定しておりまして、教授会の審議権そのものを奪うというものでは全くありません。
また、学生の入学、卒業や、学位授与権に関する事項については、学長が決定を行うに当たり、教授会が意見を述べるものとしておりまして、学長が教授会の意見を踏まえて意思決定を行うようにしており、学長の独断を認めるということにもならないということであります。
○宮本委員 前段でやりとりしてきたように、事実上、教授会の審議内容をどんどんどんどん狭めてきたことは客観的な事実なんですよ。中教審大学分科会の審議まとめで、「我が国の大学が国際的通用性のある大学として評価されるためには、アカデミックな事項についての教員参加は必須」、こうもちろん述べております。
皆さん方が中教審に提出した資料でありますけれども、「外国の大学における教授会に相当する組織の状況」というこの資料も私いただきました。この諸外国の状況を見ると、こうなっております。
フランスでもドイツでも、大学運営は、主に教員から構成されている評議会が行っております。学長の推薦や学長部の選挙、予算案の作成、学部の設置廃止、教授の招聘に至るまでの権限を持っているわけです。
それから、イギリスやアメリカでも、アカデミックな事項については、教員を主たる構成員とする大学評議会やセネトというものが決定権を持っているというふうに、これは文科省が出している資料ですよ、書かれております。
英国オックスフォード大学、これは世界ランキング二位とされておりますけれども、「全教職員約四千五百人から構成されるコングリゲーションが、大学の諸規定の承認、カウンシルからの提出案の修正・廃止、学長の承認・任命等」を行っている、これは文科省がここで説明をしております。
アメリカのカリフォルニア大学バークレー校、これは世界ランキング八位でありますけれども、全学的な教員組織である大学評議会が、「学生の入学、カリキュラム、学位授与、」はもちろんですけれども、「予算、教員人事について学長執行部に助言・推薦する権限を、理事会から認められている。通常、学長や理事会が大学評議会の見解を無視することはない。」これは、文科省が組織運営部会に提出した資料にそう書いているわけですね。
あなた方は、日本の大学が世界の大学ランキングでおくれをとっているということを盛んに言って、世界の大学トップ百以内に十校を、こうおっしゃるわけですよ。しかし、それならば、その世界の百のランキングに続々と送り出している欧米の事例、これはみずからお調べにもなっているわけで、調べてみたら、まさに人事やあるいは教員の採用に至るまで、予算案に至るまで、ちゃんと教員が参画する仕組みがある、そして、学長や理事会はその見解を無視することはない、こういう形でやられている。
本当に日本の大学を世界レベルに引き上げたければ、こういうものをしっかり踏まえて学ぶ必要があると思うんだけれども、やろうとしていることは、全然、世界から見てもこれは逆じゃないですか。大臣、一体何をやりたいのか私は理解ができませんが。大臣、いかがですか。
○下村国務大臣 非常に都合のいいところだけとっているとしか思えないですね。世界百大学全てがそうだと言いかねないような発言ですけれども、具体的には一つ、二つの大学の事例をおっしゃっていたわけですけれども、そうでない大学もたくさんあるわけでありまして、もちろんそれ自体を否定するわけではありません。
ですから、今回の九十三条の教授会の役割の中においても、例えば三号におきまして、前号に掲げるもののほか、つまり、学位の授与とか学生の入学、卒業及び課程の修了ですが、それ以外のほか、「教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」、そういうことが入っているわけで、別にアカデミックなものを含めて全て否定されているわけでは全くないわけでありまして、当然、先ほど申し上げましたように、最終決定は学長でありますが、しかし、教授会の審議等を聞きながら大学経営をしていくということは大変重要なことだと当然考えております。
○宮本委員 これは明確に、中教審大学分科会第三回組織運営部会に文科省が出した各国の資料ですよ。私が勝手にどこかから持ってきたものじゃないですよ。だから、それに基づいてやるというんだったら全然逆の結果になるではないかということを私は言いたいんです。
結局、あなた方がやりたいことは、財界の強い要望に応えて、政府、財界、文科省言いなりの大学に変えよう、文句を言うような教授会には物を言わせないようにしよう、それがこの法案のまさに狙いだと言わざるを得ません。それでは教育研究への教職員の主体性や活力が失われ、トップ百どころか、逆にむしろ大学の教育研究の質の低下は免れないということを申し上げて、きょうの質問は終わりたいと思います。
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