186-衆-文部科学委員会-21号 平成26年06月04日
平成二十六年六月四日(水曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 大見 正君
鬼木 誠君 勝沼 栄明君
神山 佐市君 菅野さちこ君
木内 均君 工藤 彰三君
熊田 裕通君 小林 茂樹君
桜井 宏君 新開 裕司君
武井 俊輔君 冨岡 勉君
中谷 真一君 中山 展宏君
永岡 桂子君 野中 厚君
馳 浩君 比嘉奈津美君
星野 剛士君 細田 健一君
前田 一男君 宮内 秀樹君
宮川 典子君 八木 哲也君
菊田真紀子君 細野 豪志君
吉田 泉君 椎木 保君
三宅 博君 中野 洋昌君
柏倉 祐司君 井出 庸生君
宮本 岳志君 青木 愛君
吉川 元君 山口 壯君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
政府参考人
(文部科学省大臣官房長) 戸谷 一夫君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 吉田 大輔君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 久保 公人君
参考人
(国立大学法人大阪大学総長) 平野 俊夫君
参考人
(早稲田大学理事)
(早稲田大学政治経済学術院教授) 田中 愛治君
参考人
(名古屋大学名誉教授) 池内 了君
文部科学委員会専門員 久留 正敏君
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委員の異動
五月二十七日
辞任 補欠選任
宮本 岳志君 志位 和夫君
同月二十九日
辞任 補欠選任
志位 和夫君 宮本 岳志君
六月四日
辞任 補欠選任
青山 周平君 中谷 真一君
池田 佳隆君 中山 展宏君
木内 均君 勝沼 栄明君
熊田 裕通君 星野 剛士君
比嘉奈津美君 鬼木 誠君
宮内 秀樹君 武井 俊輔君
同日
辞任 補欠選任
鬼木 誠君 大見 正君
勝沼 栄明君 木内 均君
武井 俊輔君 宮内 秀樹君
中谷 真一君 青山 周平君
中山 展宏君 前田 一男君
星野 剛士君 八木 哲也君
同日
辞任 補欠選任
大見 正君 比嘉奈津美君
前田 一男君 池田 佳隆君
八木 哲也君 細田 健一君
同日
辞任 補欠選任
細田 健一君 熊田 裕通君
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五月三十日
首長や国の権限を強め教育への政治支配を強化する地方教育行政法改正反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇五七号)
同(笠井亮君紹介)(第一〇五八号)
同(穀田恵二君紹介)(第一〇五九号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇六〇号)
同(志位和夫君紹介)(第一〇六一号)
同(塩川鉄也君紹介)(第一〇六二号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇六三号)
同(宮本岳志君紹介)(第一〇六四号)
教育予算の増額、教育費の無償化、保護者負担軽減、教育条件の改善に関する請願(玉城デニー君紹介)(第一〇七七号)
私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(吉川元君紹介)(第一一〇六号)
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(秋本真利君紹介)(第一一四三号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
きょうは、三人の参考人の先生方、まことにありがとうございます。
まず、平野総長にお伺いしたいと思うんです。
実は、ことしの二月にまとめられた中央教育審議会大学分科会の審議のまとめでは、九十三条にかかわって、教授会が審議すべき重要な事項の具体的な内容というのは、四つ挙げられておりました。学位の授与、学生の身分に関する審査、教育課程の編成、教員の教育研究業績の審査等について、これは、教授会の審議を十分に考慮した上で学長が最終決定をする。
今回の法案九十三条では、そのうち、「学生の入学、卒業及び課程の修了」というのと「学位の授与」というのを明示しているほかは、今掲げられたものから抜け落ちているわけです。そしてそれは、「教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」というふうに落とされているわけです。
そこで、現に総長でいらっしゃる平野参考人に、「学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」、先ほどの審議まとめが挙げたようなものがこの中に入ってくるんだろうと思うんですけれども、平野さんはどういうものが必要と認めるものに入るとお考えになるでしょうか。
○平野参考人 今御指摘がありましたように、今御指摘に挙げたものは、全て意見を求めるようなものだと思います。
それ以外にも、教授会というのは部局ですよね、部局というのはいろいろな専門性が違うわけです、その部局によって。当然、その専門性にかかわることは意見を求めないと学長が判断できるはずはないわけです。だから、一般的には、例えばいろいろな部局の人事とかそういうのも含めて、人事というのは、当然その専門分野の教育研究の専門領域の人を選ぶわけですから、それを学長がああせいこうせいと言うことは、能力的にもできませんし、それはやってはいけないことだと思います。
そういう意味で、重要であるということを認めて意見を聞くということの中には、いろいろな大学運営に関することも含めて、大学の志とか理念を追求するために全構成員が価値を共有しなければならない。そのためには、いろいろな意見を聞く。それの中に、一言でここに入っている「教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要である」というのも、ほとんどに入ってくると思います。そういう合意形成をする上で重要であります。
○宮本委員 ありがとうございました。
それで、次に田中参考人にお伺いしたいと思います。
私は、実は前回の文科大臣との質疑で、中教審に文科省自身が示した「外国の大学における教授会に相当する組織の状況」というものもお示しをして、イギリスやアメリカでも、アカデミックな事項については、教員を主たる構成員とする大学評議会やセネトというものが決定権を持っている、とりわけ、英国のオックスフォード大学それからアメリカのカリフォルニア大学バークレー校と二つの大学を挙げて、オックスフォードでは四千五百人から構成されるコングリゲーションが、大学の諸規定の承認やカウンシルからの提出案の修正、廃止、学長の承認、任命等まで行っていると具体的にお示しして、世界の大学の中に日本の大学が余り入っていない、これをふやしたいと言いながら、世界の名立たる欧米の大学が現に教員の参加という点ではこういう形でやっていることが参考にされていないじゃないか、今やろうとしていることは逆じゃないか、こういう御指摘をいたしました。
そうしたら大臣からは、非常に都合のいいところだけとっているとしか思えない、一つ、二つの事例だけ挙げて、全てがそうであるかのように論じるべきでない、こういう答弁をいただいたので大変驚いたわけであります。
先生は、先ほど来、欧米の、とりわけイギリス、アメリカの大学の事例をたくさん研究されてきたことを御紹介ございました。欧米の大学では、この教員の意思決定の参加という点で、今私が紹介したような例は一つ、二つの特殊な事例なのか、それとも一般的なのか、どうぞお聞かせいただきたいと思っております。
○田中参考人 御質問ありがとうございます。
今御質問の点、コングリゲーション、そのオックスフォード大学の例については、私も読み聞きはしておりますが、それがどのくらい一般的であるかということについては、実は不勉強で、存じておりません。
ただ、オックスフォード大学がイギリスの中でも例外的に分権化が進んでいる、そしてまた、コングリゲーションという、多くの教員の参加というものが認められてきたという、そういう伝統があるということは存じております。
それが、私の見聞きしている範囲では、ある意味では一般的ではないように伺っております。オックスフォードという、教員のレベルが非常に高い、世界的に最も高いレベルの教員を集めているところで行われてきた、長い伝統の、九百年の伝統の中で行われてきたというふうに存じておりまして、アメリカの大学とは非常にそこは異なっているんですね。
異なっておりますが、先ほど申し上げましたように、アメリカの大学は、比較的トップダウン、トップダウンといっても緊張関係があるわけですけれども、その非常に健全な緊張関係が、部局、いわゆる学部や研究科と学長サイドの間にあるわけでございますけれども、それでもアメリカの方が、学長の方が発揮するイニシアチブというものが強く出ている。イギリス、特にオックスフォードは、それが非常に分権化されているということはあると思います。
ですから、どちらをとってこれが一般的というふうに世界を決めるのはなかなか難しいと思いますので、日本には日本のやり方というものがあると思いますが、そのどこの部分が重要か、うまく機能した原因かというのを分析することが必要だろうと思っております。
オックスフォードの場合は徹底的な分権化をしたわけですけれども、各部局に責任と権限の一致を明確にしたということで、失敗すればそこは潰れるという覚悟で自分たちで運営をしたというふうに聞いております。オックスフォードでは潰れたカレッジも潰れたデパートメントも一つもないというふうにおっしゃっていましたけれども、そこにはかなりの緊張した運営があったというふうに聞いております。
それに対してアメリカの、例えばコロンビア大学などは、大学の方が相当モニターをして、失敗がないように相当注意をしているということですので、非常に対極的だと思いますが、ただ、その目的は、それぞれ教育と研究の質をいかに上げていくかということに注がれておりますので、全教職員が同じ価値観を持つということが大事だと思います。
もう一点だけ申し上げますと、ハーバード大学で非常に感銘を受けた言葉が一つあります。ハーバード大学は、学部、ロースクールとかビジネススクールとかが非常に独立性が高くて、分権化している。総長、プレジデントの言うことは誰も聞かないが、プレジデントが何も言わなくても、二つの点だけは全教員が一致していると言っていました。それは、世界でベストの教員を採用すること、それから、世界でベストの学生を集めること、入学させること、この二つについては、妥協はせずに、どれだけのエネルギーと時間でもかけるということ、決意を全員が持っているということを言っておりました。
そういうような価値観が共有されたところでは、例えばオックスフォード、ハーバードのようにかなり異なる制度でもうまくいくように思われますけれども、その価値観がうまく共有されていないところでは、ほんのちょっとしたことでも暴走が起こったり、それからまた停滞も起こるということがあるように思っております。
一発のお答えができなくて非常に恐縮でございますが、欧米の大学を見てまいりますと、やはり、どうすればよくなるかということについては徹底的に考えていると思います。それで、そのための努力を惜しまないということであろうかと思っております。
○宮本委員 ありがとうございます。
アメリカにおいてもイギリスにおいても、そういう点では、本当に、共有するために民主的な議論が尽くされていると思うんです。だから、そういうものと比べても、私は、今回の改正案というものは、やはり、教授会の意欲というものをともすれば失わせることになるんじゃないかということを指摘せざるを得ないと思っております。
次に、池内先生にお伺いをいたします。
今日、世界と伍して、競争で日本の大学をとおっしゃるけれども、むしろ欧米では教員の参加を広げている。どうもそれが直接の狙いというか、思いではないのじゃないかと言わざるを得ないですね。私たちは、背景に財界や大企業の要望があるということを指摘せざるを得ないと思っているんです。
学問の府たる大学を、目先の利益、成果優先、産業競争力に必要な人材づくりの場に変えていくのではないか、こういう危惧を私は持っているんですが、先生の御見解をお伺いしたいと思います。
○池内参考人 私の考えを申し上げますと、やはり日本の方がいかにも底の浅い改革、要するに、手っ取り早くとにかく学長にリーダーシップを発揮させるように、ややこしいものは落としましょうなんというそういう発想ですよね。今言われたように、ヨーロッパ、アメリカでは、それなりに意見を徴収していろいろな議論を尽くすということが常態になっているわけです。日本は非常に安っぽい議論であると僕は思っております。
その一例は、要するに、日本は今、国立大学等を初めとして大学は専門学校化しているんではないかと私は思っております。とにかく手っ取り早く企業に役立つ人間を育てよう。衆知を集めてじっくりと考えて、長い目で見て知的生産物をつくり上げていくという、そういう大学の本来の役割を放棄して、とにかく早く資格を取らせる、早く専門化させる。今、少しは揺り戻しがあって、教養部改革、教養部を復活させようなんという声も出始めておりますけれども、要するに、大学が本来つくるべき人材を忘れて、手っ取り早くとにかく使える人間だけをつくる。その場合は、ある意味では学問は死に絶えますよ。数年間はうまく回ったとしても、本当に根底から物事を考え改革する、変えていく、そういう人間をつくることができなくなるわけです。
だから、その意味では、今の経済界等の圧力で文科省が変えていっているのは、安直に過ぎる。もっと衆知を尽くして、より大学らしいものを。それで、迅速ということを常に言われますが、無論、ある一定限度の時間的な制約は課して構わないとは思いますが、その間でどれだけ衆知を尽くすかということ、それを学長としてやっていくか、それこそがリーダーシップではないかと私は思っております。
今、お答えになっているどうかわかりませんが、そういうことであります。
○宮本委員 ありがとうございます。
もちろん私どもも、日本の大学が大いに世界で評価されるということは必要なことだし、喜ばしいことだと思っているんです。
それで、先ほど田中先生が御紹介いただいたような、ハーバード、オックスフォード、スタンフォード、あるいはMIT、ケンブリッジ、カリフォルニア大学バークレー校、イエール大学、コロンビア大学、全て日本の東大よりも上の順位に、ランキングを見ても行っているわけです。
そういう点では、では、本当に日本がそういう立ちおくれた状態から国際的に通用する大学にしていくために、どういう改革が必要か。これは池内先生、どのようにお感じになりますか。
○池内参考人 先ほどちょっと言いましたように、日本社会全体が、いわゆる国際化に対して寛容でないということが決定的に欠陥があるというふうに思います。
しかしながら、そうは言っていてもどうしようもないので、大学自身がもし可能ならば、私自身は、特に外国人の教員とか学生を集めていく場合には、それなりの条件を、例えば学生に対しては、寮とか、生活の基本的な奨学金を、返さなくていいものをきちんと措置する、誰彼構わず希望者には措置する、そういう状況をつくる必要があると思います。教員に関しては、教員のしかるべき義務とともに、学生に対してどれだけのことを寄与できるかということをきちんと書いていただいて、それに応じて給与を認定する。
教員とか学生とかそういう人たちが、気楽にと言ってはおかしいんだけれども、自分たちの力が発揮できる条件が整えられているということが見える大学でなければならない。そういうことであればどんどんふえてくると思うし、先ほど言いましたように、総研大では二六%以上になっているのは、やはり各研究機関がそれなりの奨学金等をきちんと措置して、学ぶ条件をまずつくってやっている。
日本の高い物価の中で、アルバイトをしなければならない学生なんというのをつくらないということ、これは無論、留学生だけじゃなしに、日本の学生諸君全てに対して適用すべき事柄であり、私自身が先ほど言いましたように、高等教育に対して〇・五%しか出していないということがやはり決定的な問題であって、それはこの委員会としてきちんと政府に言っていただく義務があるんではないかと私は思っております。
以上です。
○宮本委員 時間が参りました。まことに貴重な御意見、ありがとうございました。