186-衆-文部科学委員会-22号 平成26年06月06日
平成二十六年六月六日(金曜日)
午前九時開議
出席委員
委員長 小渕 優子君
理事 中根 一幸君 理事 丹羽 秀樹君
理事 萩生田光一君 理事 山本ともひろ君
理事 義家 弘介君 理事 笠 浩史君
理事 鈴木 望君 理事 稲津 久君
青山 周平君 池田 佳隆君
小此木八郎君 鬼木 誠君
神山 佐市君 菅野さちこ君
木内 均君 工藤 彰三君
熊田 裕通君 小林 茂樹君
今野 智博君 桜井 宏君
新開 裕司君 冨岡 勉君
永岡 桂子君 野中 厚君
橋本 英教君 馳 浩君
比嘉奈津美君 宮内 秀樹君
宮川 典子君 菊田真紀子君
寺島 義幸君 細野 豪志君
吉田 泉君 遠藤 敬君
椎木 保君 三宅 博君
中野 洋昌君 柏倉 祐司君
井出 庸生君 宮本 岳志君
青木 愛君 吉川 元君
山口 壯君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
文部科学大臣政務官 冨岡 勉君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 吉田 大輔君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 久保 公人君
文部科学委員会専門員 久留 正敏君
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委員の異動
六月六日
辞任 補欠選任
池田 佳隆君 今野 智博君
小此木八郎君 橋本 英教君
宮内 秀樹君 鬼木 誠君
吉田 泉君 寺島 義幸君
同日
辞任 補欠選任
鬼木 誠君 宮内 秀樹君
今野 智博君 池田 佳隆君
橋本 英教君 小此木八郎君
寺島 義幸君 吉田 泉君
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六月五日
大幅な私学助成増額に関する請願(馬淵澄夫君紹介)(第一一七八号)
教育費負担の公私間格差をなくし、子供たちに行き届いた教育を求める私学助成に関する請願(田嶋要君紹介)(第一一七九号)
同(武村展英君紹介)(第一二一〇号)
同(宮本岳志君紹介)(第一二四九号)
学校司書の法制化に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一二一一号)
同(宮本岳志君紹介)(第一二五〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)
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○小渕委員長 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
前回に引き続き、きょうは学長の選任について質問をいたします。
日本において大学の自治に関する最高裁判所判例をもたらした事件に、東大ポポロ事件がございます。東京大学の公認学生団体ポポロ劇団が演劇発表会を行った際に、学生が会場にいた私服警官に暴行を加えたという事件であります。一審も二審も、被告人学生の行為は大学の自治を守るためのものであるがゆえに正当であるとして学生を無罪といたしましたが、一九六三年五月二十二日、最高裁大法廷は、原審判決を破棄し、審理を東京地裁に差し戻しました。
ここにその最高裁の判決を持ってまいりましたけれども、判決はこう述べております。「大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている。この自治は、とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。」
これは局長に確認しますが、この判決は承知しておりますね。
○吉田政府参考人 今言及されました最高裁判決については承知をしております。
○宮本委員 東大ポポロ事件は被告人学生が敗訴した刑事裁判でありましたけれども、同時に、その判決は、大学の自治は、「とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される。」こう判示したわけであります。
大臣に聞きたいと思ったんですが、大臣はいらっしゃいませんか。そうですか。では、また後で聞きましょう。
憲法二十三条が定める「学問の自由」を保障するために大学の自治が認められているわけでありまして、前回、大臣も私に、この自治を「最大限に尊重するのは当然だ」というふうに答弁をされました。その自治の内容というのは、まさにこの判決に示された、学長、教授その他研究者の選任が大学の自主的判断に基づいて行われなければならないという、ここにあると言わなければなりません。
その点で、我が国の大学では、大学の自治を形成する中で、学長は選挙で選ぶ、こういう民主主義の制度が根づいてまいりました。国立大学では、二〇〇四年の法人化により、学外者が参加する学長選考会議が学長を選ぶ仕組みに変えられましたけれども、教職員の意向投票は多くの大学で残っております。
そこで、これも事実を聞くんですが、現在、国立大学の学長を選任する際に学長選挙はどれぐらい残っているか。文科省が調べた二〇一三年六月の速報値を答えていただけますか、局長。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
先生が言及されました二〇一三年六月の速報値では、国立大学の九五%が学内選挙及び選考会議の議を経て学長を選考し、また、残り五%が選考会議等の議のみによって決定をしているということでございます。
○宮本委員 大臣、先ほどいらっしゃらなかったので、冒頭、私は東大ポポロ事件を紹介して、大学の自治の内容というのは、この判決によると、特に教授や研究者の人事、大学の学長、教授や研究者の選任が大学の自主的判断に基づいて行われなければならない、こうなっておりますけれども、この判決の趣旨はもちろん大臣もお認めになりますね。
○下村国務大臣 そのときにはおりましたが、承知しております。
○宮本委員 先ほど局長から答弁があったように、文科省の調査でも、国立大学の九五%が学内選挙及び選考会議の議を経て学長の決定をしております。
これは単なる人気投票ではありません。多くの大学では、所信表明書や履歴書等を学長選考会議に提出をして、それに基づいて意向投票が行われております。教職員組合などが立会演説会のようなものを企画して、そして、学長選挙を通じて、求められる大学改革を議論して選挙を行っているところもございます。これは、伝統的に形成されてきた大学の自治のあり方だと思うんです。
ところが、今回の法案は、国立大学の学長は、各大学のミッションに沿った学長像など、基準を定めて選考するとしております。しかも、その基準を決めるのは、学外者が半数を占める学長選考会議ということになっております。
これは、大臣、学長選考会議に学外者を引き入れることによって、投票結果にかかわりなく、国立大学のミッションの再定義など、政府、文科省の方針どおりの大学改革を進める人物を学長に据えようということではないか、ポポロ判決に言う大学の自主的判断がゆがめられるのではないか、私はそう思いますが、いかがですか。
○下村国務大臣 国立大学法人の学長選考は、学内のほか社会の意見を学長選考に反映する仕組みとして、学内者、学外者が同数となることを原則として各国立大学法人に設置される学長選考会議の権限と責任のもとで選考されるものであり、今回の法改正におきまして、学長選考会議が定める基準により選考を行うことを義務づけることとしております。
学長選考会議委員のうち学外者については大学が自主的に選任するものであり、また、具体的な基準については、学長選考会議が各大学の特性やミッションをみずから検討、勘案しつつ主体的に定めるものであり、文部科学省が定めるものでは当然ないわけであります。
このため、大学の自主的判断がゆがめられるのではないかという御指摘は当たらないと考えます。
○宮本委員 では、本当にそうかを見てみたいと思うんです。
全国的に、国立大学法人の学長選考会議の学外委員に政府関係者、中央省庁の経験者が何大学、何人入っているか、経営協議会の学外委員には政府関係者、中央省庁の経験者が何大学、何人入っているか、これをぜひ局長、お答えいただけますか。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
文部科学省としては、国立大学法人の学長選考会議の学外委員及び経営協議会における政府関係者、中央省庁の経験者ということになりますと把握をしていないんですけれども、学長選考会議委員の学外者における文部科学省出身者は、三十一大学、延べ三十三人、また、経営協議会委員の学外者における文部科学省出身者は、四十五大学で延べ五十人となっております。
○宮本委員 三十一大学三十三人が学長選考会議に学外委員として加わっている。経営協議会には四十五大学五十人もの政府関係者、元中央官庁経験者が学外委員として選出されておる。
こういう形になっていることによって、大学の自主的判断というものは阻害されていると私は思うんですけれども、大臣、これは全く問題ないという立場ですか。
○下村国務大臣 多数派を占めているということであれば問題があるというふうに言えると思いますが、一人いるからといって、それほど影響力があるというふうなことは考えられないと思います。
○宮本委員 では、個別具体のことを聞きたいと思うんです。京都大学の総長選考会議に入っている政府関係者について聞きたいと思います。
京都大学の総長選考会議に入っている政府及び独立行政法人関係者は、一体どなたとどなたですか、局長。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
現在の京都大学の総長選考会議の委員となっている者のうち、政府及び独立行政法人の関係者としましては、お一人は独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター副センター長の有本建男氏、また、独立行政法人日本学術振興会理事長の安西祐一郎氏の二名でございます。
○宮本委員 有本建男氏は元文部科学省科学技術・学術政策局長、そして安西祐一郎氏といえば、まさに中央教育審議会の現会長であります。
安西氏は、国立大学法人化後、まず東北大学の学長選考会議の学外委員に入りました。そこで、二〇〇五年一月には学長選挙の廃止を行いました。さらに、昨年六月に京都大学の総長選考会議の議長についた後、会議の議事録は非公開にいたしました。その後、秘密裏に意向投票の廃止が検討されてきましたけれども、昨年末にそのことが明らかになり、学内外から批判が広がり、結局、総長選挙制度は存続するということになりましたけれども、学外委員によるこうしたまさに大学自治の動きは、極めて重大だと言わざるを得ないと私は思います。
大臣、これのどこが問題ないと言えるんですか。いかがですか。
○下村国務大臣 個別具体的な、安西さんが中教審の会長ということでの指摘かもしれませんが、それは別に文科省が大学に対して要請したわけではなく、京都大学等がみずから選任したことでありまして、何ら政府が影響力を行使しようと思って得られた人選ではこれはないわけであります。
○宮本委員 では繰り返して言いますけれども、この安西祐一郎氏は、まさに中央教育審議会の会長でありますね。本法案のもとになったこの「大学のガバナンス改革の推進について」という審議まとめは、その中教審の大学分科会がまとめたものであります。この中をみんな読んでいると思うんですが、審議まとめでは学長選考について、「過度に学内の意見に偏るような選考方法は適切とは言えない。」というふうに述べて、意向投票をまさに敵視をしている中身も出てまいります。
安西氏は、みずから京都大学の総長選考会議の学外委員、さらには選考会議の議長として、この政府方針を先取り的に京都大学でやろうとしたと言わざるを得ないんです。学内から、「自治、民主主義のないところに京都大学の自主性すなわち創造力の源泉は存在しなくなる」、「教職員の投票権剥奪の暴挙に出ることをわたくしたちは絶対に容認しない」という声が上がったのは、当然のことだと思います。
大臣、中教審の現職会長が国立大学の総長選考会議に学外委員として入って、ましてやその会議の議長になって、そして総長選挙の廃止を策動する、こういうやり方にいささかの問題もないと大臣はお考えになりますか。
○下村国務大臣 それは、京都大学が自主的、主体的に人選もされているわけでありますが、私は、京都大学の取り組みは、これからの未来を見据えた大学教育なり経営を的確に考えて、ほかの大学においても参考になるような事例をたくさん先導的につくっている、すぐれた大学改革をしている、我が国を代表する大学であるというふうに評価しています。
○宮本委員 中教審の会長が大学の選考会議に入り、学長選挙廃止の策動をしても問題ない、こういうことであれば、政府関係者が学長選考会議に学外委員としてどんどん入って、政府の方針に沿う学長を選ぶような基準をつくっても構わないと言っているのと等しいですよ。
基準は学長選考会議が自主的に決めると言うけれども、学長選考会議の判断が大学の自主的判断などと言える保証はどこにもないと言わなければなりません。現に、政府関係者が三十三人も学外委員として入っているじゃありませんか。学長選考が政府の意向に左右されかねないということが明確になったと私は思います。
しかも、あなた方は、さらなるおどし文句まで用意してあります。法案の附則には、「施行後適当な時期において、」「学長選考会議の構成その他国立大学法人の組織及び運営に関する制度について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とあります。
文科省、これは局長に聞きますけれども、これは、学長選考会議の学外委員の割合を現在の半数から、今後の検討によっては過半数へ、あるいは三分の二へとふやすことも排除されないということですね。
○吉田政府参考人 御指摘の法案の附則の意味合いでございますけれども、これは、今回の改正法の施行後一定の期間の経過後に、その施行状況や社会経済情勢の変化等を勘案して、学長選考会議の構成を含めて国立大学法人の組織や運営に関する制度について政府として検討を行い、検討の結果、必要性が認められる場合には制度上の措置を講じる、こういう意味でございます。
学長選考会議についてあらかじめ何か結論があるというものではございません。
○宮本委員 学外者の比率をふやすということを排除しませんね。
○吉田政府参考人 先ほど申し上げましたように、あらかじめ結論があるわけではございません。
○宮本委員 これは、実はふやすことをあらかじめ想定した話なんです、そういう場合には。
昨年五月八日に開催された第七回教育再生実行会議に三菱重工取締役相談役の佃和夫氏が資料として提出した「産業界の立場から大学に望むこと」というペーパーがあります。この六ページ、「4.大学の制度改革の実現」の「(2)学長を中心としたガバナンス体制の構築」の一つ目には何と書いてありますか、局長。
○吉田政府参考人 御指摘の資料の中では、このように記述がございます。
・大学における学長の権限と責任を明確化し、学長が十分にリーダーシップを発揮するために、現在の実質的に教員(又は教職員)による意向投票で学長を選ぶ仕組みを見直す必要がある。学長選考会議のメンバー構成を見直し、学内:三分の一、学外有識者(産業界、評論家・文化人、他大学関係者など):三分の二とした上で、学長の選考は名実共に学長選考会議が行うこととすべきと考える。なお、学長の権限強化に対応し、役員会の業務執行チェック機能に加え更に何らかの監査権限を持つ組織を新たに設置することも検討する必要がある。
と記述されてございます。
○宮本委員 まさに、三分の二にふやせということをここで言っているわけです。まさに産業界の要望そのものだと言わなければなりません。
そして、法改正後も従来型の意向投票重視の学長選挙を続けていたら、今度は、半分どころか、学外者を三分の二にふやしてでも財界の意向どおりの学長を選ばせるぞというのがこの附則の意味だと言わなければなりません。
結局、あなた方の意図は、大学を財界が望む方向に大改造することにある。安倍首相は、五月六日、OECDの閣僚会議の基調演説で、経済成長とイノベーションのために高等教育改革を行うという立場を表明した上で、学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な職業教育を行う、そうした新たな仕組みを高等教育に取り込みたいと考えていますなどと発言をいたしました。そのことは、私はこの間の経緯からも明瞭だと思うんです。
法案の提案理由として学長のリーダーシップの確立ということが語られますけれども、法案のもととなった中央教育審議会大学分科会の審議まとめの二ページ、上から六行目を読みますと、「社会の各方面から」「学長がリーダーシップを発揮して、機動的な大学改革を進めていくことを期待する声が出されている。」こういう記述がありますけれども、これは、注釈によると、具体的には一体誰からの声だということになっておりますか。
○吉田政府参考人 この審議のまとめでの声というのは、まさに社会の各方面から出ているわけでございますが、今委員御指摘の、いわゆる注というところについては、そのような社会の声の例の一つとしまして、「公益社団法人経済同友会による「私立大学におけるガバナンス改革 高等教育の質の向上を目指して」(平成二十四年三月)」という資料を挙げております。
○宮本委員 「私立大学におけるガバナンス改革 高等教育の質の向上を目指して」、二〇一二年三月の経済同友会の提言、まさに実物はこれであります。
この経済同友会の提言では、学校教育法九十三条の改定を求めております。「検討すべき法改正等」の「4教授会の役割・機能の明確化」では、学教法九十三条について、この同友会の提言はどのような提案を行っておりますか。
○吉田政府参考人 お答えいたします。
御指摘の箇所につきましては、「学校教育法九十三条一項「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」を削除し、「大学には、教授会を置く。教授会は、教育・研究に関する学長の諮問機関とする。」に変更する。」と記載されております。
○宮本委員 九十三条一項を削除して、「大学には、教授会を置く。教授会は、教育・研究に関する学長の諮問機関とする。」これに変更せよというのが、この同友会の提言が述べていることです。まさに、政府の法案と基本的に一致をしていると言わなければなりません。
大臣は繰り返し、教授会は審議はするけれども、決定権限は学長にある、これまでもそうだと言っているわけですけれども、まさに審議だけを行う諮問機関に明確にすべきだということを求めているわけです。
財界の要望に沿った大学の改革が目的ではないかと私は繰り返し指摘してきましたが、まさにこれは事実で示されているんじゃないですか、大臣。
○下村国務大臣 まず、基本的な認識が幾つも間違っていることについて私は指摘を申し上げたいと思います。
まず一つは、先ほど京都大学の事例をおっしゃっていましたが、京都大学の名誉のためにあえて私が申し上げると、これは別に国が例えば安西さん等を押しつけたわけではなく、まさに大学側が主体的に選考しているわけでありますから、そういうことは、それはまさに言いがかりとしか言えないと思います。
それから、同様に、本来、この教授会の位置づけでありますけれども、現行法の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」というその法の趣旨そのものが、これは言葉で言えば審議的なものであって、決議決定機関ではないということでありまして、それを法の上で今回明らかにするという意味の改正案でありまして、これは、経済界から押しつけられたとか云々というレベルでは全くない話であります。
○宮本委員 言いがかりでも何でもないですよ。
では、大臣の今おっしゃったことは、大学の自主性を侵すことはないとか、大学が自律的に学長を選ぶということは、今もそうだし、これからも変わらないと言うけれども、安西氏が京都大学でやった程度のことは、別に全国の大学で行い得る、今、三十三人OBが学外委員として加わっているけれども、こういう人たちがそういうことをやったとしてもそれは構わないとおっしゃっているのと等しいわけであって、私は、そういうことを続けるならば、冒頭の言明にも反して、東大ポポロ事件判決がはっきり述べているような、大学の自律的なまさに人事ということがやれなくなるということを指摘せざるを得ないと思うんです。
重ねてもう一つ聞きたいと思うんです。
文科大臣は、五月二十三日、自民党中根委員への答弁で、「今回の大学ガバナンス法案、当初は省令改正の予定だった」と答弁しておられます。当初省令改正の予定だったものがなぜ法律改正案を今国会に提出することになったんですか、大臣。
○下村国務大臣 繰り返すようでありますけれども、大学に対して国が強制的に理事等を送り込んでいるわけではない、大学側が主体的に判断してそのような人選をされているということを申し上げておきたいと思います。
今回の、省令をなぜ法令に変えたのかという話でありますが、当初は、現行法でも学長の権限や教授会の役割等について規定されていることを踏まえ、曖昧な点は省令で明らかにすることを一つの選択として考えておりました。その後、中教審での審議や、大学関係者、与党などからさまざまな御意見を伺う中で、広く関係者に趣旨を徹底するためには法律そのものを改正することが最も重要であるとの認識に至り、法律改正案を国会に出させていただいているものであります。
○宮本委員 大臣が繰り返しおっしゃる、権限と責任のあり方が明確でないとか、意思決定に時間を要し、迅速な対応ができていないとか、学内の都合の方が先行して、十分に地域や社会のニーズに応えるような大学運営が行われていない、繰り返しそういう指摘をしているのは、つまり財界なんですよ。
中央教育審議会の大学分科会でも、省令の改定なのか法律改正なのかが議論になりました。昨年の十二月二十四日の第百十六回大学分科会で法律改定を求めたのは、経済同友会終身幹事の北城恪太郎氏でありました。
北城氏は、全私学新聞二月三日によると、ことし一月二十八日に開かれた自民党の日本経済再生本部と教育再生実行本部の合同会議で、学校教育法九十三条を改定して教授会は教育研究に関する諮問機関であることを明記することなど、さきの経済同友会の提言の中身とまさに同じ法律改定を提案しております。
大臣、結局、当初、省令改定で進めるつもりだと一旦は雑誌でもそのようにお書きになった。それが学校教育法等の法律改定に踏み切ったのは、まさに、北城氏など財界筋の要求に応えた結果ではありませんか。
○下村国務大臣 何か財界が悪の権化のようなイメージで語られておりますけれども、私は、社会認識においてこれからの我が国における大学はどうあるべきかということについては、例えば、日教組の団体であっても共産党を支持する団体であっても、適切なものであったら、政府は法案改正の中で入れることは当然のことだというふうに思います。
財界に言われてとかいうことではなくて、私自身が世界のいろいろな大学の学長等に会ってきた中で、このままでは日本の大学はもう衰退化してしまうという危機感を覚えたわけであります。そういう中で、財界に言われて法律改正をつくったというような受け身ではなく、これは、私を含め文部科学省、もちろん議院内閣制ですから、与党にも相談する中、主体的に判断したことでありまして、財界に言われてやっているなんということは全くありません。
○宮本委員 あなた方は否定するわけですけれども、客観的にはそうなっているということを申し上げているんですよ。
財界の要望に沿って大学のガバナンス改革の方針をつくり、財界の要望どおりの中教審審議まとめを出させ、そこではまだ省令改正も選択肢に入っていたものを、財界の要望に沿って法改正案を提出した。そして、中教審の会長は、京都大学で先取り的にその意向に沿って既に動いている。
財界からの要望は、経済同友会だけではありません。この日本経団連の提言では、国立大学の運営費交付金を中長期的には全て競争的配分に移行させること、教員の年俸制への移行とともに、ガバナンス改革と称して、学長選挙の見直し、教授会の役割の見直し、そして、やはり学校教育法九十三条の改定を求めております、経団連も。
そしてあげくの果てには、国立大学授業料の自由化、国立大学授業料の収入の料金設定の自由度向上という項目がここにありますよ。これを見ますと、「授業料の設定の自由度を更に向上させる」。もっと高い授業料を取れるところは、国立大学でも高く取ればいいんだ。今みたいに一二〇%なんということを言っていずに、天井知らずに、高くても来ると言うんだったらやればいいじゃないかと、そこまで財界筋は求めているわけです。
そんなことをやったら、大臣とはもう随分学生の貧困問題をやってきたけれども、今でさえ高い学費が進学の妨げになっているというときに、一層学生たちにその深刻な被害が及ぶと言わなければならないと思うんです。
大学自治を破壊し、大学を政府、財界言いなりの機関に変える、このような重大な法案は廃案以外にないと私は思います。徹底審議、審議続行を求めて、私の質問を終わります。
○小渕委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○小渕委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮本岳志君。
○宮本委員 私は、日本共産党を代表して、学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案並びに修正案に対し、反対の討論を行います。
まず冒頭、けさの理事会で、数々の論点が残されているにもかかわらず、私の反対を押し切って質疑終局、採決を決めたことに強く抗議いたします。
また同時に、大臣が別の質疑者への答弁で私に対する反論を行ったことはフェアでなく、断固抗議いたします。
反対する理由は、本法案が、大学の自治の土台である教授会を骨抜きにし、学長のリーダーシップの確立と称して学長独断の大学運営を許す大学自治破壊法案だからであります。
本法案は、教授会が審議できる事項を、学生の入学、卒業及び課程の修了と学位の授与に限定し、教授会の審議権を大きく制約しています。これでは大学自治の組織上の保障がなくなり、学問の自由が脅かされます。修正によっても審議事項を学長が決めることに変わりはなく、到底賛同できません。
さらに法案は、国立大学の学長選考に当たって、大学のミッションに沿った学長像など、基準を定めて選考するとしています。学長は、教職員の支持を得たかどうかではなく、この基準に合うかどうかで選ばれることになります。つまり、文科省の方針に沿った人しか学長にさせないということです。
これでは、学長独裁ともいうべき上意下達の運営がまかり通り、大学から自由と民主主義が失われ、教育研究への教職員の主体性や活力が低下し、教育研究の質さえも危うくしかねません。
私が質疑で指摘したように、安倍内閣が大学自治の破壊を進めるのは、財界の強い要望があるからです。幾ら否定しても、政府、財界言いなりの大学に変えるのがこの法案の狙いにほかなりません。
財界は、大学が産業競争力強化に貢献する人材を育成すべきだとして、大学の再編統合、企業経営の論理を大学に導入することを求めてきました。さらには、国立大の学費設定の自由化まで主張し、学費の際限のない値上げまで要求しています。そのようなことになれば、最大の被害者は大学で学ぶ学生にほかなりません。
学問研究と教育は日本社会の未来を支える大切な営みであり、大学は教育研究を通じて社会の進歩に貢献すべき国民共有の財産です。大学は、政府、財界言いなりではなく、憲法に基づき国民のために教育研究を行う機関です。
国がなすべきは、大学自治の破壊ではなく、学問の自由を保障し、大学の多様な発展に必要な条件整備を行うことです。そのためには、世界で最低水準の高等教育予算を抜本的にふやすことこそ急務ではありませんか。
日本共産党は、安倍内閣の大学自治破壊を許さず、貧困な大学予算の抜本的拡充に全力を尽くすことを表明し、討論といたします。