187-衆-文部科学委員会-2号 平成26年10月17日
平成二十六年十月十七日(金曜日)
午前十時開議
出席委員
委員長 西川 京子君
理事 櫻田 義孝君 理事 冨岡 勉君
理事 萩生田光一君 理事 福井 照君
理事 義家 弘介君 理事 中川 正春君
理事 鈴木 望君 理事 浮島 智子君
青山 周平君 池田 佳隆君
石原 宏高君 神山 佐市君
菅家 一郎君 菅野さちこ君
木内 均君 木原 稔君
工藤 彰三君 熊田 裕通君
小島 敏文君 小林 茂樹君
桜井 宏君 新開 裕司君
新谷 正義君 末吉 光徳君
根本 幸典君 野中 厚君
馳 浩君 ふくだ峰之君
堀内 詔子君 三ッ林裕巳君
宮内 秀樹君 宮川 典子君
山本ともひろ君 菊田真紀子君
松本 剛明君 笠 浩史君
遠藤 敬君 椎木 保君
中野 洋昌君 田沼 隆志君
中山 成彬君 柏倉 祐司君
山内 康一君 宮本 岳志君
青木 愛君 吉川 元君
山口 壯君
…………………………………
文部科学大臣 下村 博文君
文部科学副大臣 丹羽 秀樹君
文部科学大臣政務官 山本ともひろ君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 藤山 雄治君
政府参考人
(内閣官房地域活性化統合事務局長代理) 富屋誠一郎君
政府参考人
(内閣府政策統括官) 日原 洋文君
政府参考人
(総務省情報通信国際戦略局長) 鈴木 茂樹君
政府参考人
(文部科学省大臣官房文教施設企画部長) 関 靖直君
政府参考人
(文部科学省生涯学習政策局長) 河村 潤子君
政府参考人
(文部科学省初等中等教育局長) 小松親次郎君
政府参考人
(文部科学省高等教育局長) 吉田 大輔君
政府参考人
(文部科学省科学技術・学術政策局長) 川上 伸昭君
政府参考人
(文部科学省スポーツ・青少年局長) 久保 公人君
政府参考人
(文化庁次長) 有松 育子君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 福本 浩樹君
政府参考人
(経済産業省商務情報政策局長) 富田 健介君
政府参考人
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長) 木村 陽一君
政府参考人
(気象庁地震火山部長) 関田 康雄君
政府参考人
(環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長) 鎌形 浩史君
文部科学委員会専門員 行平 克也君
―――――――――――――
委員の異動
十月十七日
辞任 補欠選任
青山 周平君 菅家 一郎君
木原 稔君 ふくだ峰之君
小林 茂樹君 新谷 正義君
新開 裕司君 末吉 光徳君
比嘉奈津美君 三ッ林裕巳君
宮川 典子君 根本 幸典君
柏倉 祐司君 山内 康一君
同日
辞任 補欠選任
菅家 一郎君 青山 周平君
新谷 正義君 小林 茂樹君
末吉 光徳君 新開 裕司君
根本 幸典君 宮川 典子君
ふくだ峰之君 木原 稔君
三ッ林裕巳君 小島 敏文君
山内 康一君 柏倉 祐司君
同日
辞任 補欠選任
小島 敏文君 堀内 詔子君
同日
辞任 補欠選任
堀内 詔子君 比嘉奈津美君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
文部科学行政の基本施策に関する件
――――◇―――――
○櫻田委員長代理 次に、宮本岳志君。
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
下村大臣は、先日の所信的な挨拶で二〇二〇年のビジョンというものに触れられました。家庭の経済状況や発達の状況などにかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子供、若者や社会人が質の高い教育を受けることができる社会の実現、こう語られましたし、その先のビジョンとして、誰もがいつでも希望する質の高い教育を受けられる生涯学習社会の実現、こう述べられました。
大臣がこの六月に出版された御本「九歳で突然父を亡くし新聞配達少年から文科大臣に 教育を変える挑戦」、この第八章に「教育立国のグランドデザインを描く」という章がありまして、全く同じ表現で二〇二〇年のビジョン、そして二〇三〇年のビジョンというものが出てまいります。
また、大臣がことし五月十六日の第二十一回教育再生実行会議に提出をした資料「二〇二〇年 教育再生を通じた日本再生の実現に向けて」の中にも二〇二〇年のビジョンというものが出てまいります。
これは基本的には同じものだと理解してよろしいでしょうか。
○下村国務大臣 私の本を読んでいただきましてありがとうございます。
今の御指摘の点は、私の私案ではありますが、昨年の暮れから、経済学者の方々二十人近く、経済界の方々もいらっしゃいましたが、文部科学省の中で勉強会を積み重ねてきた中でつくったものでございます。
つくったそのものは私自身がつくったわけですが、勉強会の積み重ねの中でつくったものでございまして、これをさらに深掘りをし、また、より公的なものにするために、現在、教育再生実行会議第三分科会で、教育における公財政支出のあり方等の中でこれをさらに議論をしていただいて、この教育再生実行会議、来年の通常国会が終わるぐらいまでには、正式に教育再生実行会議の提言として、これに沿った取りまとめをしていただきたいというふうに考えているところでございます。
○宮本委員 私はかねてから、大学の高学費の問題、それから奨学金制度の問題を取り上げてまいりました。きょうもそのテーマについて大臣と議論したいと思うんです。
きょうは皆さんに資料でお配りをさせていただきました。我が党は、去る十月七日、「学生が安心して使える奨学金に 奨学金返済への不安と負担を軽減するために」と題した政策提言を発表させていただきました。
これはおさらいですけれども、今、奨学金の返済に行き詰まって自己破産とか、夫婦で奨学金を返済していてとても子供どころでない、こういう声があって、本来若者の夢と希望を後押しするはずの奨学金が逆に若者の人生を狂わせるという、かつては考えられなかったような事態が生まれているわけです。
今、奨学金を借りますと、学部平均で三百万円です。大学院、博士課程にまで進学すれば、一千万円もの借金を背負うことになります。一方で、非正規雇用の増大などで卒業後の雇用、収入は極めて不安定で、政府の統計を見ましても、大学、短大などを卒業した三十代から五十代の三分の一以上が年収三百万円以下という賃金で働いている、こういう結果が出ております。その結果、奨学金を借りた既卒者の八人に一人が、滞納あるいは返済猶予という事態が起こっている。
奨学金の返済は、期日から一日でもおくれますと、昨年までは一〇%でしたけれども、今でも五%の延滞金が上乗せされる。滞納が三カ月以上続けば、金融の個人信用情報機関、いわゆるブラックリストに掲載をされることになる。そのことから、多額の借金を恐れて進学を断念するとか、あるいは、奨学金を借りずに進学した学生が学資の捻出のために長時間のアルバイトに追われるといった事態になっております。
それで、文部省が置いた学生への経済的支援の在り方に関する検討会の最終報告書でもそういう状況が指摘をされておりますけれども、大臣もこの認識は一緒だというふうに理解してよろしいですか。
○下村国務大臣 私も、高校、大学と二つの奨学金を借り、当時は、今の学生支援機構ですが、前身日本育英会は半分返せばいいという給付型でしたからまだよかったと思いますが、御指摘のように、今、有利子奨学金になっているということもありますし、また、大学を卒業しても、あるいは高校を卒業しても非正規雇用で働かざるを得ないという人たちにとってはこの奨学金返済が、当時、我々の学生のとき以上に大変大きな重荷になっているというふうに思います。これが格差社会をさらに拡大することにもなりかねない、また、若者たちの未来を潰すことにもなりかねないという思いを持っております。
文部科学省の学生への経済的支援の在り方に関する検討会の報告書、今御指摘ありましたが、「意欲と能力のある学生等が、学校種の別、設置者の別に関わらず高等教育段階への進学を断念することのないよう、また進学した学生等が学資の捻出のため長時間のアルバイトを強いられることなく、学業に十分に専念できるよう、学生等の学びを社会全体で支えることが極めて重要である。」と指摘があります。
この指摘についてはしっかり受けとめながら、学生等の経済的負担の軽減にしっかり取り組む、そして奨学金事業の充実、これを図っていかなければならないというのは、文部科学行政においても大変重要な課題であるというふうに認識しております。
○宮本委員 ことしの二月に全国大学生活協同組合連合会が発表した第四十九回学生生活実態調査、九千人ほどの学生から回収した調査結果によりますと、アルバイトの就労率は六八・二%、自宅生七五・六%、下宿生六一・八%、一昨年に比べて自宅生が四・二ポイントの増、下宿生も二・七%の増加、こういう状況であります。
それで、大臣はさきの通常国会の当委員会での質疑でも、時として、我が国の大学は大学生の学習時間がアメリカの学生の二分の一以下である、こういうふうに述べられて、大学のレジャーランド化という指摘についても口にされるわけですけれども、前回も私ちょっと指摘したと思うんですけれども、もちろん私も、今日の大学教育のあり方とか、あるいは学生の勉学意欲に全く問題がない、そうは言いませんよ。
しかし、同時にこの生協連の調査などを見れば、社会的に学生の学びを支えるという点で奨学金その他弱いものですから、やはり、アルバイトに追われるという現状もこれは見なきゃならないと思うんですが、ここは大臣、いかがですか。
○下村国務大臣 学生もいろいろな層がありますから、レジャーランド化している、勉強もしていない、そういう学生もアメリカ等に比べるとかなりいるということはやはり事実だと思います。
ただ一方、苦学生で、本当に幾つものアルバイトをしなければ学生生活ができないというせっぱ詰まった学生もいるのではないかと思います。
私自身も、学生時代は三十種類を超えるようなアルバイト等をしまして、それが逆にいい体験になった、プラスになったとは思っていますが、しかし、あすの生活、きょうの生活のためにアルバイトをしなければならないというほど深刻でない中で、もうちょっと余裕があったと思います。
今の学生のどれぐらいの率かわかりませんが、相当の学生がアルバイトに明け暮れて苦労して、大学に行って勉強することがなかなか難しいという人たちもいるということについては、できるだけ早く奨学金等の充実を図っていかなければならないというふうに思います。
○宮本委員 そのとおりだと思うんです。大臣のころと比べて今は、バイトにもブラックバイトと言われるような、一たびシフトに入ると休めない、やめられないというふうな事態が起こっていて、非常に学生を勉学よりも実労働力としてこき使うというようなこともありますから、そういう点では、大臣の時代、私たちの時代とも違った現状がある。
そういう、バイトもなかなかやめられない一つの原因に、学資を稼がなきゃならないんだ、奨学金を借りたら借金になるから、借りずに頑張るんだという現状があるということも私たちは聞くわけです。
さて、日本の大学教育にとって奨学金の役割はますます重要になっております。
奨学金は、一九九八年から二〇一四年の間に、貸与額で四・九倍、貸与人員で三・七倍に急速に拡大をして、今や、学生の二人に一人が何らかの奨学金を借りております。この間、勤労者の所得は平均年収で六十万円も減って、親からの仕送りも、さきの大学生協連の調査によりますと、下宿生の平均では月額十万円から七万円に減った。その一方で大学の学費は上がり続けて、初年度納入金は今日、国立では約八十三万円、私立大学文系百十五万円、理系では百五十万円にもなっているわけです。
ところが政府は、この奨学金依存度の高まり、奨学金への期待の高まりに、真の奨学金制度の整備ではなくて、専ら有利子奨学金の拡大という、奨学金の教育ローン化で対応してきた。これについては下村大臣も、ことし三月十九日、当委員会で、現状の有利子奨学金は、「奨学金とは名ばかりの学生ローンだと私は思います。ぜひ本来の奨学金制度にできるだけ早く充実、移管をしていく必要がある」、そういう認識を示されました。
我が党の政策では、新規に貸与する奨学金を無利子にするとともに、在学中の学生の有利子奨学金を無利子奨学金へと借りかえる制度をつくり、国が利子補給を行って全員に無利子化を実現することを提案しております。
大臣が「本来の奨学金制度にできるだけ早く充実、移管をしていく」とおっしゃるのであれば、こういう方向が当然のことだと私は思うんですが、いかがでしょうか。
○下村国務大臣 宮本委員とはよって立つ思想信条は相当違うところがありますし、連日、宮本委員の所属をされている政党の機関紙には批判をされておりますが、このことについては全く同感であります。
○宮本委員 それで、これは文科省に確認しますけれども、大臣がおっしゃるとおり、有利子を無利子に大きく動かす、変更するということになっておりますか。
○吉田政府参考人 文科省の奨学金の政策としては、今、有利子から無利子へと、そういう流れを加速するということになっております。
○宮本委員 概算要求を見せていただくと、三万人ふやす、こう書いてありました。ぜひその概算要求が認められるべきだと思いますけれども、たとえ全面的に認められたとして、それで第一種無利子奨学金と第二種有利子奨学金の比率は何対何になるか。また、これを一対一、少なくとも半々にするためには、あと何万人を有利子から無利子に変換する必要があるか。お答えいただけますか。
○吉田政府参考人 平成二十七年度の概算要求におきましては、無利子奨学金を四十七万一千人、有利子奨学金につきましては九十三万九千人の貸与人員を要求しているところでございまして、その比率は三三・四%対六六・六%という形になっております。
したがいまして、比率的にはおおよそ一対二ということになりますので、この比率を一対一にするためには、二十三万四千人を有利子から無利子の方に転換をする必要があるということになります。
〔櫻田委員長代理退席、委員長着席〕
○宮本委員 この検討会の報告書でも、昭和五十九年の衆議院文教委員会における日本育英会法案に対する附帯決議を引用して、「奨学金の本旨に立ち返れば、機構の貸与型奨学金は無利子奨学金が根幹となるべきものであって、有利子奨学金はその補完的な役割を担うべきものである。」と述べ、「原則に立ち戻り、無利子奨学金を基本とする姿を目指すべきである。」と指摘しております。先ほど大臣からも、それは当然だ、全く同じ意見だというお話がありました。
一対二でありますから、三万人を動かしても全然焼け石に水で、二十三・四万人これを動かさなきゃならないわけですけれども、大臣、これは一体いつまでに、では、少なくとも根幹の方が多くなる、そこまで持っていくおつもりなのか。大体のこのグランドデザインをお聞かせいただけますか。
○下村国務大臣 例えば、有利子奨学金を無利子奨学金に全額借りかえた場合に必要となる追加財源額、一般会計負担額ですが、これが五兆七千百三十三億円かかるんですね。これは、今の文部科学省の全ての、科学技術を含めた予算よりも超える。ですから、五兆七千億というのは国家財政に占める割合からしても大変な額ですから、これは赤字国債を発行して有利子を無利子にするということは、やはり国民の理解は得られません。
しかし、できるだけ早く無利子にするということは、これは重要なことでありまして、そのために、相当野心的なことでありますが、二〇二〇年ビジョン、それからその先の二〇三〇年ビジョンの中で考えているわけでありますが、しかし、ここまでの五兆七千億の財源ということは、対財務省だけの問題ではなくて、やはり国民的な理解、賛同も必要ですから、政府としてしっかり取り組みながらシフトしていくということを政府の政策としてやっていくような努力を、文科省だけの問題ではなくて、ぜひ取り組んでいきたいと考えております。
○宮本委員 今の有利子奨学金をその原資から含めて全部借りかえると今おっしゃったような、それは莫大な額になると思うんです。
それで、現状生じている利子分を単純に利子補給するといった場合にはもっと額は小さくなると思います。私がいただいたペーパーでは一千億という額が出ているんですが、これはちょっと通告していないですが、ここを高等教育局長。
○吉田政府参考人 今先生が御指摘のありましたことで、今後、有利子奨学金の貸与人員が平成二十六年度予算の九十六万人というベースを維持した上で、かつまた財政投融資資金等の金利が約一%で推移をする、こういった前提を置きましたときの有利子奨学金の利息分が約一千億円ということになります。
○宮本委員 ですから、やはり一千億、もちろん小さいとは言いませんけれども、それだけのお金があれば、少なくとも、大臣も全く賛成だ、この在り方検討会も根幹にすべきだ、根幹と言う以上は、半分以上がやはり無利子でないと、半分以上が有利子の状況を今後何年も続けるというのではまずいわけで、基本的にはやはり無利子にきちっと年次を追って転換していく。そのためには、利子補給できちっと手当てすることも含めて検討する必要が私はあると思うんです。
それで、かねてから指摘をしてまいりましたように、そもそも今日の貸与型奨学金制度というのは、大学に進学する十八歳の若者本人に、担保もとらず、数百万円に上る学資金を貸し付けるという制度なんですよ。
同じように、日本政策金融公庫の国の教育ローンというのがありますけれども、これは、御承知のとおり、学生本人ではなく、学生を持つ親に対して貸し付けるものでありまして、貸付時には、勤務状況、所得の状況、借り入れ状況、住宅ローンや公共料金の返済、支払い状況などから返済能力をきちっと審査して貸し付けております。
しかし、支援機構の奨学金は、学生本人が大学入学前に将来の所得を見通して奨学金の借り入れと返済の計画を立てるというようなことは、これは事実上不可能でありまして、奨学金がローン地獄への入り口になるというようなことは早急に解決、緊急に解決しなければならない、そういう立場でこの提言もつくられております。
そこでまず、私は思うんですが、奨学金を返済中の既卒者全てを対象にした減免制度の創設が必要だと思うんです。
日本学生支援機構が実施した平成二十四年の奨学金の滞納者に関する属性調査結果によりますと、延滞者の場合、年収二百万から三百万円未満が二〇%、百万から二百万円未満が二五・六%、そして百万円未満も三七・四%で、実は奨学金の滞納、延滞者というのは、実に八三%が年収三百万円未満となっているわけです。
ところが現状は、延長したとはいえ、十年が上限の返還猶予制度があるのみでありまして、十年たてば年収が大幅にアップする保証はありません。このままでは、猶予期間を延ばしてもらっても、また、この延ばした期間が終了したらそこで自己破産というような事態が続出する危険すらあります。
支援機構は、平成二十四年度から、本人が卒業後年収三百万円を得るまでの間は何度でも返還を猶予するという所得連動返還型無利子奨学金制度というものを始めておりますけれども、本来これは、無利子に限らず、有利子も含めて、奨学金返還者、返済中の全ての人にやはり適用すべき制度ではないかと私は思うんですが、大臣いかがですか。
○下村国務大臣 その前に、先ほどの一千億円の話になりますが、有利子奨学金と無利子奨学金で、その財源として、財政投融資から、先ほど私が申し上げましたが、一般会計負担額にかえる必要がある。無利子の場合ですね。そうすると、やはり五兆七千億ということについては、金利だけで解決できる問題ではない。制度の問題、それはちょっと御指摘をさせていただきたいと思います。
そして、御指摘のように、意欲と能力のある者が将来の奨学金の返還を懸念する余り奨学金の貸与をちゅうちょしないよう、きめ細やかな対応をすることが重要であるということは、そのとおりであると思います。このために、平成二十四年度から所得連動返還型無利子奨学金制度を導入したところであります。
現在、所得把握が容易になる社会保障・税番号制度、マイナンバー制度ですね、これの導入を前提に、平成二十九年度進学者からの適用を目指して、返還月額が卒業後の所得に連動するよう、より柔軟な所得連動返還型奨学金制度の導入を目指して具体的な検討を進めているところでございます。
この制度においては、返還中の者も含め奨学金の返還者全員を対象にすることを想定しておりまして、返還者にとってより利用しやすいものとなるよう、さらに検討を進めてまいります。
○宮本委員 時間が随分迫りましたので、ちょっと問いを減らしますけれども、一つは、やはり金融的なやり方で、さっきブラックリストという話もやりましたけれども、とにかく取り立てるというやり方ではなくて、奨学金の趣旨にふさわしく、懇切に窓口で相談に乗るような制度をもっと充実させる。
先ほどの延滞者に対する属性調査結果を見ても、猶予制度を知らなかったと回答した人が延滞者で五七・一%、無延滞者で五三%、減額返還制度を知らないと回答した人が延滞者で五四・八%ですから、やはり半分以上はそういう制度を、知らせていると言うんでしょうけれども、実際は知らなかったと。だから、三百万以下で本当を言えば猶予されるような人も、猶予手続せずに滞納になってしまっているという面もあるわけです。
ですから、しっかり相談窓口をつくって、その人に即して、もちろん払える人から払ってもらう、払えない人からは金融商売みたいな形での取り立てというのはやはりこの際見直さなければ、もう奨学金じゃないと大臣がおっしゃるとおり、学生ローンそのものだということになってしまいますから、これはしっかり見直していただきたいというふうに思っております。
それから、所得連動返済型奨学金をより柔軟なものにする、これは私たちも賛成です。現状のものでよいとは思いません。
ただ、その際、現状でも年収三百万円以下の層は猶予ということになっているわけですから、柔軟にするといって、今でも猶予されている三百万円以下のところからも無理に取り立てるというような制度設計はおかしいんじゃないかということを思いますから、三百万円以上のところをよりなだらかにするということは賛成でありますけれども、しっかりやはり実態に即したものにしていただきたいというふうに思っております。
時間がないので最後の問題群に入るんですけれども、何よりも大事なのは、私はやはり給付制奨学金、給付型奨学金だと思います。OECD加盟国で、大学の学費があって、返済不要の給付奨学金がないのは日本だけでありますから。アメリカでは、最高で年間約六十万円、平均約四十万円の連邦ペル給付奨学金を全学生の三分の一以上が受けている。アメリカだって、ちゃんと三分の一は返済の必要がない奨学金を受け取っているわけです。日本では、それがないという状況で来ました。
二〇一二年度の予算編成の過程で、民主党の政権が一度百四十六億円という学生向けの給付制奨学金の概算要求をしましたけれども、それっきりで、実らずに来ているわけです。先日の文科省の調査でも、経済的理由で中退する学生がふえております。
きょうは資料の二枚目に、大臣の著書の二百六十九ページに掲げられた図五「二〇二〇年教育再生実現に向けたグランドデザイン」というものをつけておきました。下線を引いたところ、「二〇二〇年のビジョン」では「大学生・専門学校生等の奨学金について、全体の半分を給付型に、半分を無利子に転換」とこうなっております。
これは、要するに二〇二〇年には給付制が半分ぐらいまでいかないかぬという話になるんですが、大臣、これはどういうふうにお進めになるおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○下村国務大臣 この二〇二〇年ビジョンを全て実現をするためには約五兆円の財源が必要であります。そのためには、特定の財源だけではとても確保できない、ありとあらゆるレベルのことが求められます。
これを一つのたたき台として、ぜひ教育再生実行会議第三分科会で議論をしていただいて、これは私個人の考えということではなくて、教育再生実行会議の考えになるような、たたき台としてこの方向で進めていただきたいと考えております。
○宮本委員 二言目には財務省の抵抗ということが出るんですけれども、私ははっきり申し上げて、抵抗の前にそもそも要求すらしていないのではないかと言わざるを得ません。民主党政権は、それでも二〇一二年度、一度きりではありましたけれども、要求はしたわけです。
では、ちょっとこれは事実関係ですが、文部科学省に聞きますが、自民党政権に戻って下村大臣になってから、学生向けの給付型奨学金を概算要求したことがあったか、今度の平成二十七年度予算概算要求では要求しているか、事実をお答えいただけますか。
○吉田政府参考人 概算要求の中には給付型奨学金は含まれておりません。
○宮本委員 要求しなければ戦いようがないですから、戦わずして負けている。いやいや、それはそうですよ。要求して、それをかち取るために頑張るというのじゃないとこれは筋が通らない。
それで、日本の教育の公的な支出がOECDの中で五年連続の最下位だと大臣も繰り返しこの本の中でそう述べられております。そして、政府や財界は、大学の競争力の強化、こうおっしゃるわけですけれども、教育への支出が先進国の最低でどうやって競争力を強化するのか、そういう声が現場からも聞こえてきますよ。
日本の大学教育はこれまで、家計の重い負担、小林雅之検討会主査の言う無理する家計によって支えられてきましたけれども、もはやそれも限界になっているというのが今の現状です。
ですから、このビジョンで、二〇三〇年までにOECD平均まで引き上げて新たに十兆円、二〇二〇年までにはその半分の五兆円、こう書かれておりますけれども、これを本気でやるんだと言うのであれば、まさに戦うんだと言うのであれば、私は評価もするし応援もしたいと思いますよ。しかし、二〇二〇年までに四兆とか五兆となれば、毎年八千億から一兆円の予算の増額が必要なんですよ。しかし、来年度平成二十七年度の概算要求を見てもそんな姿になっていないじゃないですか。
大臣、これで本当にこんなふうに進むんですか。いかがですか。
○下村国務大臣 まず、やはり戦略、戦術は必要です。要求をすればそれで済むという話ではないわけで、順番としては、有利子から無利子に、そして給付型と考えております。
それから、これは私のまだ個人的な見解ですから、私の個人的な見解を文部科学省の概算要求で桁が違って要求するということは、これはまだそのようなことができる状況ではありません。
ですから、教育再生実行会議等を通じてしっかりとしたグランドデザインをつくって、そして対応していきたいと考えております。
○西川委員長 宮本岳志君、既に持ち時間が経過しておりますのでよろしくお願いします。
○宮本委員 はい。
大臣の本は今も書店で平積みで売っているわけですから、これを読んだ国民はさぞかしこういうふうに進むんだろうと思っているわけですから、やはりこのとおりやれば……(発言する者あり)いや、それはやるか、あるいは、やれないんだったらこんな本は本当に恥ずかしくて売っていられない。私ははっきりそう申し上げて、きょうの質問は、時間ですから終わります。