145 – 参 – 交通・情報通信委員会 – 2号 平成11年03月09日
平成十一年三月九日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
三月四日
辞任 補欠選任
千葉 景子君 内藤 正光君
三月八日
辞任 補欠選任
筆坂 秀世君 林 紀子君
三月九日
辞任 補欠選任
林 紀子君 筆坂 秀世君
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出席者は左のとおり。
委員長 小林 元君
理 事
加藤 紀文君
景山俊太郎君
寺崎 昭久君
森本 晃司君
渕上 貞雄君
委 員
岩城 光英君
鹿熊 安正君
田中 直紀君
野沢 太三君
山内 俊夫君
山本 一太君
若林 正俊君
内藤 正光君
本田 良一君
松前 達郎君
林 紀子君
宮本 岳志君
戸田 邦司君
岩本 荘太君
国務大臣
運輸大臣 川崎 二郎君
郵政大臣 野田 聖子君
政府委員
運輸大臣官房長 梅崎 壽君
運輸省運輸政策
局長 羽生 次郎君
運輸省鉄道局長 小幡 政人君
運輸省自動車交
通局長 荒井 正吾君
運輸省海上技術
安全局長 谷野龍一郎君
運輸省航空局長 岩村 敬君
郵政大臣官房長 高田 昭義君
郵政省郵務局長 濱田 弘二君
郵政省貯金局長 松井 浩君
郵政省通信政策
局長 金澤 薫君
郵政省電気通信
局長 天野 定功君
郵政省放送行政
局長 品川 萬里君
事務局側
常任委員会専門
員 舘野 忠男君
説明員
金融監督庁監督
部保険監督課長 樋口俊一郎君
大蔵大臣官房参
事官 窪野 鎮治君
大蔵省主計局主
計官 佐々木豊成君
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本日の会議に付した案件
○運輸事情、情報通信及び郵便等に関する調査
(運輸行政の基本施策に関する件)
(郵政行政の基本施策に関する件)
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<NTT両地域会社の経営基盤に格差>
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志でございます。郵政大臣の所信表明に対する質問を行います。
まず、NTTの分割・再編問題についてお伺いをしたい。
二月の十六日にNTTから「日本電信電話株式会社の事業の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する実施計画案の概要」、これが発表されました。三月十八日まで国民、関係業者などの意見を聞き、実施計画を六月ごろまでにまとめるということであります。
初めに、まず、NTTの分割・再編法案の国会での審議において、当時の堀之内郵政大臣、またNTTの宮津社長は、国民に対して、東西地域会社間の料金格差はつけない、現行の国民サービスの水準を維持する、現行の職員の雇用は継承する、こう明確に約束をされる答弁をしてまいりました。
野田郵政大臣は、この立場を堅持して実施計画の審査に当たっていただけると考えますが、いかがですか。
国務大臣(野田聖子君) 私も、NTTの再編につきましては、大臣に就任した平成十年十月一日の衆議院逓信委員会の共産党の矢島先生の御質問で、まさに前の大臣の意見を承継してまいるということをお約束させていただいているところで、変わりございません。
宮本岳志君 NTTの実施計画の概要によりますと、「利用者利便の確保に関する具体的措置」というのが十ページから書かれております。
一つは、「利用者に対し日本全国につながる通話を引き続き確保すること」。二つは、「料金を含むサービス水準を全体として低下させないこと」。「承継会社は、再編成時において料金を含む電気通信サービスの水準を再編成前と同等又は全体として低下させないよう」措置をとる。これは文書で明確に書いてございます。
しかし、東日本地域会社、西日本地域会社の概要を比較いたしますと、一見、総資産や予想売上額は真っ二つに分けたように見えますけれども、しかし、この両地域には歴然とした経営基盤の差があり、このままでは東西地域会社間の格差が起きることは明瞭だと思います。西日本は予想売上高が東日本よりも一千四百億円低い。その一方で予想人員数は六千五百人多くなっている。ですからそれだけ費用が多くかかるということですから、三年間かけて人を減らすか、売り上げを伸ばすかしかないということになります。
結局、三年間の補てん期間が過ぎると料金の格差が生まれてくるおそれがあるのではありませんか。
政府委員(天野定功君) NTTの再編成に当たりましては、再編成によりまして新たに設けられる西日本の地域会社につきましては、再編成直後には赤字が見込まれるということでありまして、この西会社が経営改善の効果が生じるまでの間、三事業年度までの間に限りますけれども、東会社の方から利益の一部を西会社の方へ赤字の補てんを行うという負担金制度が用意されております。この負担金制度を活用しますとともに、東会社との比較競争を通じまして西会社が一層増収努力や経営の効率化を図ることが期待されますことから、西会社の経営基盤は早期に安定するものと考えております。
したがいまして、再編成を契機としまして、一方の地域会社による料金の値上げなど、料金水準やサービス水準が現在よりも悪化する形で東西格差が生じるというふうには考えておらないところでございます。
宮本岳志君 早期に安定するという答弁でありましたが、国民や利用者との関係で、支店や営業所、こういうものはどうなるのかということが大変心配されているわけであります。
<営業窓口の統廃合でサービスが低下>
宮本岳志君 電電公社時代のピーク時、八四年ですか、支店は千七百支店、九一年にはこれが二百三十支店になりました。九五年には百十支店。今回の分割・再編案を見てみますと、東日本が十七支店、西日本が三十支店、実に合計四十七支店。これはピーク時の二・八%まで支店を減らす。
支店のもとに置かれる営業所はどうなるか。例えば西日本についての私の調査をきょうお持ちしましたけれども、大阪では営業窓口が現在三十八カ所あるものを二十三カ所に集約する、京都では二十カ所を八カ所に、兵庫では三十三カ所を十二カ所、奈良では十二カ所を四カ所に、滋賀では八カ所を二カ所に、福岡では二十二カ所を十一カ所に軒並み集約をして大幅に減らす計画を現場に示しております。
NTTの窓口のない市町村が数多く生まれる。つまり、電話の申し込みとかあるいは料金請求書の再発行、未払いで通話が停止された場合の通話停止解除の手続など、営業所に出かける必要のたびに隣の市まで足を運ぶ必要が出てまいります。これは明白な国民サービスの低下ではないですか。
政府委員(天野定功君) NTTは、再編成に向けまして、ただいま先生おっしゃいましたように、全国十一の支社をすべて本年の一月二十五日に廃止いたしました。これは、NTT本社部門と支店部門の間に存在する支社組織を廃止しまして経営をスリム化し、支店への権限移譲を図るために実施されたものと承知しております。
また、営業窓口についてでありますけれども、同様の経営効率化の観点から集約化を進めているわけでありまして、サービス水準の維持や利用者利便に十分配意しつつ実施されているものと聞いております。
具体的に言いますと、立地条件だとかあるいは来客数などの地域事情を考慮して営業窓口の見直しが進められているところでありまして、営業窓口が廃止されるエリアの利用者に対するサービスの確保につきましては、一一六番による電話注文受け付けの一層の促進等を図っていると聞いております。
宮本岳志君 現実に窓口が廃止されて、電話で済まない、一一六番で済まないような手続もあるわけですから、その点はしっかりと見ていただきたいというふうに思うんです。
そこで、郵政大臣にお伺いしたいんですが、NTTが発表した今回の実施計画案どおりにこのまま進めば、まさに、大臣の東西料金格差はつけない、サービス水準を維持する、職員の雇用は継承する、この三つの約束も守れなくなるのではないかと私は思います。経営基盤にこれほどの差がありながら、ただ単純に真っ二つでいくならば、結局西日本会社は職員を削ったり窓口を減らしたり国民サービスを切り捨てざるを得ないか、そうでなければ料金で格差をつけるしかない。いずれにしても、結局大臣の三つの約束をほごにすることになるのではないか。
大臣、私は、改めてそういう経営基盤の格差ということを勘案したものに再編実施計画案を再検討すべきであるというふうに思いますが、いかがですか。
国務大臣(野田聖子君) この改正NTT法において、再編成の実施計画については、平成九年十二月に定めてあります再編成に関する基本方針に従ってNTTが作成することとされています。これは御存じのとおりだと思います。
既に定められている基本方針は、繰り返しになりますけれども、利用者利便を確保するとともに、電気通信市場における公正有効競争を促進することを目的としており、実施計画の認可に当たってはこれらの点を改めて確認した上で適切に対応してまいりたいと考えております。
<「郵政民営化はない」と野田郵政大臣>
宮本岳志君 次に、郵政の問題について質問をいたします。
経済戦略会議は、去る二月二十六日に最終答申を出しました。「日本経済再生への戦略」、これでございます。そこで、「中央省庁等改革基本法に基づき郵政事業庁、郵政公社への改革を予定通りすすめる。しかし、将来的には郵政三事業の経営形態のあり方を見直す。」と書いてございます。
二月二十七日の日経を見ますと、この最終答申の原案では郵政公社に移管した後郵貯、簡保を民営化に移すことを検討すべきだとなっていたものを、引き続き経営形態のあり方を見直すと玉虫色の表現に差しかえられた、そう日経新聞は報道しております。
しかし、中央省庁等改革基本法では、第三十三条で、郵政三事業を一体として国営の新たな公社を設立するとして、その第六号、「民営化等の見直しは行わない」とはっきり法に明記してあるわけですから、したがって、今回、経済戦略会議が言う経営形態の見直しというのは民営化については含まないと理解してよろしいですね。
国務大臣(野田聖子君) 経済戦略会議の最終答申にありました「将来的には郵政三事業の経営形態のあり方を見直す」、この書きぶりなんですけれども、具体的にどのような見直しを意味しているか必ずしも明らかでありません。だけれども、今おっしゃったとおり、私たちは郵政三事業については基本法に沿って粛々と今進めているところでございまして、まさに結論を申せば、民営化はないのかということであれば、ありませんと、そういうことを申し上げたいと思います。
宮本岳志君 私どもも、郵政三事業を守る、民営化反対という立場はもちろんはっきりとしたものでございます。
しかし同時に、先ほど紹介した日経報道ではこういうことも書いてありました。「首相周辺が「四月の統一地方選を前に自民党の有力な集票組織である全国特定郵便局長会などの協力が得られなくなる」と強く抵抗」して玉虫色になったと書いてあるんですね、この報道では。こういう圧力に頼っていたのでは、民営化論を打ち破ることは絶対にできないと私は思います。我が党ももちろん民営化には反対ですが、それは国民が信頼でき安心できる郵政三事業を守る、このことがどうしても必要だと考えるからであります。
九七年の行革会議での郵政三事業民営化論議以来、連日マスコミで民営化の大合唱が繰り返されました。これを許さなかったのは私は国民世論の力だったと思うわけであります。国民は一貫して現行の三事業を信頼して、そして現状以上の国民サービスを期待して、それで民営化に反対してくださっている、この点を片時でも忘れれば、もう国民は信頼しない、守ってはくれないと私は思うんです。
郵政大臣は所信表明で、国民共有の生活インフラである郵便局ネットワークを最大限に活用するとともに、情報通信の高度化を一層推進し、日本経済の再生と国民一人一人が豊かで幸せに安心して暮らせる社会の構築に貢献していく決意を述べられました。
改めて大臣に、国民のための郵政事業を守り抜く決意をお伺いしたいと思います。
国務大臣(野田聖子君) 行政改革の議論があった当時、私は郵政政務次官でございまして、そこでまさに郵便局、郵政三事業の重要性、または国民からの信頼というのを目の当たりに実感させていただいた一人でございます。これからも国営三事業一体という中にあって、郵便局サービスがあまねく全国の皆さんにすばらしいサービスを提供していくこと、それがひいてはやはり国への信頼の一助になるのではないかということで、先生のおっしゃったとおり、一生懸命郵便局の皆さんと力を合わせて頑張ってまいりたいと思います。
宮本岳志君 また、郵政大臣は所信表明の中で、「郵政行政は多くの職員に支えられて初めて成り立つものであり、意欲に満ちた創造性ある職員なくしてその発展は期待し得ない」とも述べられました。
ところが、その郵便局の窓口で今何が起きているか。予算委員会の資料を私いただいて、驚きました。郵便局の窓口での過不足金の事故の多さであります。
郵政省にお伺いしたいんですが、郵便局の窓口等で過不足金は毎年何件、そして幾ら発生しておりますか。
政府委員(松井浩君) お答え申し上げます。
まず、直近の平成九年度の状況について申し上げます。過剰金、たくさん入り過ぎたお金でございますが、件数が六十四万七千五百四十一件、金額は六億二千八百七十九万円でございます。それから欠損金として処理されたものでありますが、件数は一千五十五件、金額は三億三千五百五十万円でございます。また職員による自発的な任意弁償という形で処理されました件数が三十九万五十三件でございまして、金額は十一億五千四百十万円となっております。
また、お尋ねの最近の状況でございますが、過剰金につきましては平成六年度以降はおおむね六十万件台で推移しております。金額につきましては、若干年度の変わり目で特殊な要因があったこともありますが、基本的には九億円台で推移しております。横ばいと言えるかと思います。それから欠損金でございますが、平成元年度以降は発生件数では年々減少しております。金額では年度によりまして増減している状況がございます。また任意弁償でございますが、平成六年度以降、件数は漸減しておりますけれども、平成五年度以降、金額で申しますと十一億円台ということで推移しておる状況でございます。
宮本岳志君 平成九年度で見ましても、不足金が年間三十六万件、過剰金が六十五万件、合計百万件に上っております。合計すれば毎日大体約四千件という計算になると思うんです。全国二万四千六百の郵便局で年間四十件ということになりますので、平均すれば週一回の割で起きているということになります。
郵政大臣にお伺いしたいんですが、この問題を解決しなければ、やはり国民との信頼を失うことにつながりかねない、そういう御認識はございますか。
国務大臣(野田聖子君) 確かに郵便局で郵便そして郵便貯金、簡易保険のサービスを提供しているわけですけれども、その間で取り扱われるお金にミスがあってはならない、そういうふうに思っております。
宮本岳志君 問題は、こういう現金の過不足という事故が何によって起こっているのか、過不足金事故はどうして起きているのかということが問題だと思うんです。さらには、その原因の究明は果たしてなされているのか、また、一つ一つの過不足事故についてその原因が究明できるようなシステムになっているのか、そしてそれが解明されて減りつつあるのか、ここが問題だというふうに思います。
郵政省、原因は何ですか。そしてどういう対応をし、どういう処理をしておりますか。またその結果、過不足件数は減っているんですか。
政府委員(松井浩君) 全国で二万四千六百、簡易局を含めたものでございますが、膨大な局所で日々膨大な件数の事務を処理しております。受け払いの金額で申しますと三百兆円を超えます。それから件数でいきましても一年間で二十億件をやや下回るぐらいの膨大な事務をやっております。そういう中で、実際に忙しい中でお客様と直接お金のやりとりをさせていただくという中で、間違いがあってはなりませんが、神様ではありませんので全くゼロということもまた難しかろうと思います。
そこで、過剰金が出る場合でございますが、実際に証拠書、お客様の申込書だとかそういった書類の金額よりも過剰に多く現金を受け入れたとき、それからお客様にお支払いする現金が不足する場合、当たり前の話でございますが、あるいはつり銭が不足している場合、それからお金はしっかりいただいたんですが受け入れ証拠書がその後亡失した場合、そういうときには不符合、一致しない場合が出てまいります。
欠損金の場合は、このほかに盗難だとか、あるいは強盗でお金を盗まれれば当然それは欠損金になるわけでございますし、それから窓口とお客様とのやりとりの中でいただく現金が少ない場合、あるいはつり銭を過剰にお支払いする、そういうパターンが多うございます。
それで、先生お話しのそういったことがある程度は、体諒的に言えば全く出ないとは限らないわけでございますが、いずれにしろ、そういうものをなくすべく努力をしていかなけりゃなりません。
それで、私どもがどういう取り組みをしているかということでございますが、一つは、やはり過剰金にしろ不足金にしろ、そういった事故の発生を防止するために必要なことといたしまして、職員による慎重で適正な現金の取り扱いが必要だということでございます。そのために、平成九年度から現金過不足事故防止のための特別のビデオをつくりまして、全国の郵便局に配付しております。しっかりと手続を守るだとか、例えばお札を勘定しておるときには雑談をしないだとか、そういうある意味ではイロハのことがよく出ております。
それから、事故防止のためのマニュアルをもうちょっと詳しくしまして、私今手元に持っておりますこれなんですが、全国のこうした現金を取り扱う職員すべてに一冊ずつ配付しております。
それから、そのほかに、実際に窓口で大変忙しい中でも間違いなく仕事ができるようなものとして機械化を進めております。具体的に申しますと、紙幣の計算機、それから硬貨の計算機を全国の郵便局に配備しております。これは平成八年度までに配備が終わっております。
それから、そのほかに、郵便局の窓口の実際に事務処理をするオンラインでつながっている端末機と現金の出し入れが自動的につながる仕組みとしてオートキャッシャーというものがございます。ATMが窓口の端末機にそのままくっついているようなものということで御理解いただければいいかと思いますが、事務処理と金の出入りとが端末で即つながっておりまして、非常に正確にできるものでございます。これの配備を平成三年度から順次やっておりますけれども、今御審議いただいております平成十一年度の予算の中ではさらに改善を加えて増備すべく、今予算を織り込んでおるところでございます。
そうした中で、実際に事故の発生がどうかということでございます。事務量的には全体的には漸増している状況はございますが、ここ数年発生の状況は大きな変化はございませんが、先ほど来申しました職員指導の充実、それから窓口における現金取扱事務の機械化を推進していく中で、今後その効果が発揮されることを期待しているところでございます。
<過不足の原因がわからないシステム>
宮本岳志君 今説明があったわけですけれども、私はこれをいろいろ郵政省からお伺いして痛感いたしましたのは、こういう事故が発生したときに、一体どこで過不足が生じたのか、どのお客さんとの関係で生じたのか、このことがほとんどわからないことが多いということだと思うんですね。それは先ほど御紹介いただいた資料からも歴然といたします。
例えば、不足金については、欠損金となっているのは一千件でありまして、理由がわからないまま任意弁済というものが三十九万件に上る。あるいは過剰金の方はもっと歴然としておりまして、発生件数が六十八万八千という発生件数に対して、過剰金として処理されたのは六十四万七千ですから、この差、つまり発生したが過剰金処理でなくお返ししたというものが四万件。つまり九割以上はどのお客さんの間違いなのかがわからないという状況になっていると私は思うんです。
これがなぜそうなっているのかということを私は他の銀行などの民間金融機関のシステムを調べ、現場の方々からもお話を子細にお伺いいたしました。民間銀行では、窓口職員がどこのだれからどういう目的で幾ら受け取り幾ら払ったのかという詳細な情報をきちっと受け払いごとに記録しておくというのが当然の常識になっているわけです。しかも、その際、現金の総額だけではなくて、金種、枚数まで全部書く。これはもう現金管理の常識だと民間銀行の方はおっしゃっておりました。
そして、三十年近く前からテラーズマシン等の機械も入って、オートキャッシャー、先ほどおっしゃられたそういう機械も今ではどの銀行も入っている。郵政省も入れると言うんだけれども、まだ今年度の予算分足しても一千台とお聞きをいたしました。どこでもあるという状況ではないです。ところが、そういう状況のもとで銀行ではほとんど現金の過不足事故がなくなっている。また起こっても、この機械を使えばどのお客さんとのやりとりで起こった事故なのかが特定できるとお伺いいたしました。
ところが、郵便局では一回一回の現金の受け払いごとに書類を書くということになっておりません。金種とその枚数まで記録するシステムになっていない。一日の終わりの日締決算のときに受けの総額あるいは払いの総額、残金の総額を合わせて記帳する。これは東京郵政局が出している例規類集にもそうなっております。
つまり、窓口業務が終了して一日分を計算してみて初めて過不足金が生じていることがわかるわけです。それから振り返っても、どのお客さんとの間にミスがあったかは書類などへのメモ書きとかあるいは職員の記憶を頼りに調べるほかはないというのが実態じゃないですか。私、何人も現場の方から話を聞きましたが、これが実態だということであります。こんなやり方でどのお客さんとの間にミスがあったかわかるんですか。
政府委員(松井浩君) 一日に大変大勢のお客様をお迎えして、的確にまた愛想よく親切にサービスをさせていただくという中で、いろんなことがあると思います。
それから、先生の御指摘のように、銀行につきましては、郵便局と比較いたしますと、比較的大きな店舗でかつお客さんについても恐らく札束の数も非常に枚数も多いとか、そういった違いもあろうかと思います。郵便局というのは非常に簡易でみんなが利用しやすいということがコンセプトでできております。そうは申しましても、先ほど大臣答弁にございましたように、そういったミスがないように最大限の努力をするというのが私どもの使命であろうかと思います。
そういう中で、私どもできる限りの措置として何をやっているかということについてちょっと申し上げたいと思います。
一つは、いろんな業務を、先ほどのオートキャッシャーの例でもございますように、機械化を推進していきますと、それは個別の取り扱い内容が記録に残ります。そうはいいましても、実際にいただいたキャッシュの枚数が多かったり少なかったりとかいうふうなことはそれとはまた別問題のケースもございますが、後刻対査する場合に、やはり証拠書類等取り扱い内容がしっかりしているということがその後で調べるときの記憶とマッチしやすいということなんだろうと思います。その観点から機械化をできるものはどんどん推進していかなきゃならぬと思っております。
私どもの郵便貯金について申しますと、窓口端末機とオートキャッシャーがついていれば現金との関係もきれいにいきます。それから、そうでなくてもオンラインですから比較的きちっと記録内容が残ります。それから、例えば郵便でも最近ではポスタルスケールだとかあるいは郵便窓口事務機を使いますと、切手にしてもどういう処理をしたんだということがはっきり残るような仕組みが出てきています。そういった取り組みはこれからも進めていかなきゃならぬと思います。
そうは申しましても、どうしても機械化になじみにくい仕事が残ります。その点につきましては、先生の御指摘のようにきちっと対査がしにくいということはそのとおりだろうと思いますが、しかしながら、実際に職員の方が窓口で仕事を取り扱った中で、いろんな証拠書類と対査する中で、その間の取り扱いを再確認することによりまして過不足の発生の原因を調査するように努めております。
もちろん、わかるものとわからないものとが出てまいりますが、ただほかの人は触らないようになっていますので、そういうことで、あと職員に対する指導を徹底させる中で低減を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。
宮本岳志君 銀行の場合は取り扱いの額が大きいということもおっしゃいましたけれども、郵便局は三百兆円を超えるお金を扱っているわけですから、大きな額を扱っているという点では銀行よりはるかに大きいわけです。だから、それだけきちっとしたシステムが求められているというふうに思います。
ところが、これがなかなか調べにくい。これからもっと努力していくという今お話でしたけれども、現状では民間銀行に比べてもまだまだシステムとしてそういう点が後々原因が特定しにくいという状況にありながら、その結果生まれた過不足、特に不足については職員の任意弁償という形で解決を、職員の任意弁償あるいは最終的には弁償命令という形で解決していると思うんです。
原因が特定されないのに、なぜ職員の弁償に押しつけるわけですか。
政府委員(高田昭義君) 不足金が出た場合の責任の問題でございますが、原因がどうかということと担当職員が扱っていた時間帯に発生した事故かどうかというのは別問題でございますので、先生御案内のとおりのことでございますが、現行の会計法の規定では一応取り扱った出納職員に責任ありということになっているということで責任の問題は対応をさせていただいている、そういうことでございます。
宮本岳志君 つまり、不足金については、不足金が生じた以上、どこで狂いが生じたかは特定できないがその職員の責任であることは間違いない、こういう論理だと思うんです。だから、国会の答弁でも、これを国庫に負担をおかけするわけにいかない、こういう御答弁も衆議院などでございます。
<責任を現場の職員に押しつけている>
宮本岳志君 郵政大臣にこれは聞きたいんですが、それなら、私は逆に過剰金のことをお伺いしたい。
不足金は確かにそういう論理もあるでしょう。では、過剰金はどうなるのか。過剰金というのは結局お客さんが払い過ぎたあるいは受け取りが少なかった、受け取り忘れたというお金、本来お客さんに返さなければならないお金じゃないですか。不足金の原因が特定できないということは、過剰金の原因も特定できないしょう。つまり返すべきお金が返せないままお客さんに迷惑がかかっているということじゃないですか。これは一体どうやって国民の理解を得るんですか。
政府委員(高田昭義君) 結局、過剰金もその他の国庫に入った金の帰属がはっきりしない場合にどういう対応をするのが一番適正かということだと思うんです。
先生が言われるように、本来は、個々人が特定されれば我々も過剰金についてはそのお客さんに返すということでございますが、相手が特定しない場合は結局郵政事業全体の国庫金扱いにすることによって、間接的になりますけれども郵便局の利用者の皆様に国庫金の収益という形でお返しをするという以外に返しようがないということで一応国庫金の扱いにさせていただいている、そういうことでございます。
宮本岳志君 つまり、原因を特定するためのシステムをつくる努力、きちっとそれがわかるようにする努力、それを結局不足金については任意弁済あるいは弁償命令という形であいまいにしてきたから、過剰金についてもこうして国民に具体的にそれを払い過ぎたり受け取り忘れたお客様に直接お返しすることができないようなシステムになっているということを私は指摘しているわけです。私がきょう過不足金という問題を取り上げたのは、まさにこういう点にこそ郵政事業に対する国民の信頼が問われていると考えるからであります。
あなた方は、郵政民営化が議論された行革会議に、ヒアリング資料としてこういうものを出しております。この中で、郵便と銀行の経費率というグラフまで出して、民間銀行よりも郵便貯金は経費が低い、銀行の三分の一で郵便はやっておりますと力説しております。
それはそうでしょう。民間銀行がやるような当然のシステムをつくらない、民間銀行では常識だと言われているような機械も使わせない、郵便、郵貯、簡保、全部窓口で一人の職員にやらせているじゃないですか。それもそろばんや電卓でやらせている。これではまさにそういう基本的に必要なシステムもあなた方はつくる努力をしていないと言われても仕方がないと思うんです。
そんな状況のもとで、不足金が出たら全部職員の負担だ、善管注意義務違反だ、職員負担だと。しかし過剰金だったらお構いなしだと、そんなばかな話がありますか。私は、こういう状況が続けば、大臣が所信で述べられた、意欲に満ちた創造性ある職員なくして郵政事業の発展はない、そのお言葉に反して職員の意欲もそがれる、こういうことではまさに国民の信頼は得られない、それでは民営化するなという国民世論の支持も得られなくなるのではないか、私はここを指摘しているわけであります。
最後に、郵政大臣、現金過不足事故の根絶へシステムそのものを見直す、少なくとも後から原因がきちっと特定できる、調べようがある、そういうシステムを検討する、そのことへの決意をお伺いしておきたいと思うんです。
政府委員(松井浩君) ちょっと一点だけ、たくさん申し上げません。
郵便局の窓口で大勢のお客様を相手にして多額の現金の受け払いを連続して正確に処理するというのは、大変職員の方には精神的な緊張を期待しているということになると思っております。それにつきましては、別の次元でありますが、そういった仕事だからということで特殊勤務手当として現金出納手当というのを郵便局のそういった職員には支給しております。
そういう手当の支給と、それと先ほどの国の機関だから会計法の適用を受ける、だから銀行と違うという部分とをいろいろ総合的に御判断いただくべきものなのかなというふうに、事実だけまず申し上げます。
宮本岳志君 システムの問題、大臣、どうぞ。
国務大臣(野田聖子君) 今先生の方からは、民間の銀行さんのやり方についてもお話をいただきまして、ありがとうございました。
先ほどの民営化されちゃうよという話の中で、国民の信頼もさることながら、私がよく郵便局の皆さんに言っているのは、やはり皆さんの働きぶりが評価されているんだと。一つには、いろいろほかの民間ではもっとぜいたくもしているだろうけれども、ぐっとこらえて非常にシンプルに節約をしながらやっている姿勢とか、一生懸命取り組んでいる姿勢というものに対して国民の皆さんが共感を、そして感謝をしてくれているんじゃないか、そういうことを申し上げているのです。
まさに、現金過不足事故とかを初めとするそういう根絶については、まず郵便職員の皆さんにさっき局長が言ったイロハを徹底して、職場内でみんなでチームワークよろしくどうしたらなくなっていくかというようなことをやっていただくこと。また、負担なんじゃないかという話に対しては、先ほどのオートキャッシャーの話とか、やはり機械化を私どもとしては進めていく、そういうことを考えています。
宮本岳志君 終わります。