145 – 参 – 交通・情報通信委員会 – 6号 平成11年04月13日
平成十一年四月十三日(火曜日)
午前十時三分開会
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委員の異動
三月二十四日
辞任 補欠選任
森山 裕君 鹿熊 安正君
畑野 君枝君 筆坂 秀世君
三月二十九日
辞任 補欠選任
山内 俊夫君 石川 弘君
内藤 正光君 櫻井 充君
三月三十日
辞任 補欠選任
石川 弘君 山内 俊夫君
櫻井 充君 平田 健二君
三月三十一日
辞任 補欠選任
平田 健二君 内藤 正光君
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出席者は左のとおり。
委員長 小林 元君
理 事
加藤 紀文君
景山俊太郎君
寺崎 昭久君
森本 晃司君
渕上 貞雄君
委 員
岩城 光英君
鹿熊 安正君
田中 直紀君
野沢 太三君
山内 俊夫君
山本 一太君
若林 正俊君
内藤 正光君
本田 良一君
松前 達郎君
鶴岡 洋君
筆坂 秀世君
宮本 岳志君
戸田 邦司君
岩本 荘太君
国務大臣
運輸大臣 川崎 二郎君
郵政大臣 野田 聖子君
政府委員
外務省欧亜局長 西村 六善君
外務省経済協力
局長 大島 賢三君
運輸省自動車交
通局長 荒井 正吾君
運輸省海上交通
局長 宮崎 達彦君
運輸省海上技術
安全局長 谷野龍一郎君
海上保安庁長官 楠木 行雄君
郵政大臣官房長
事務代理 鍋倉 真一君
郵政省郵務局長 濱田 弘二君
郵政省通信政策
局長 金澤 薫君
郵政省電気通信
局長 天野 定功君
郵政省放送行政
局長 品川 萬里君
事務局側
常任委員会専門
員 舘野 忠男君
参考人
日本放送協会理
事 酒井 治盛君
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本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○電波法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○郵便法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
○船舶法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき
、関東運輸局栃木陸運支局の自動車検査登録事
務所の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出
)
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<合理性がない電波利用料の料金体系>
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
電波法改正案について質問いたします。
先ほど委員からの、なぜ携帯電話の端末を引き下げないのかという質問に対して、均等負担の共益費という話もございました。私の方では、まず少し電波利用料について御質問をさせていただきます。
そもそも共益費均等負担というものについて、私はこれは合理性に欠けるのではないかということを一つ指摘をしたいと思うんです。やはり無線局の利用実態、例えば出力であるとか、また周波数帯などを一切無視した議論になっているように思われるんです。
例えば、一定の周波数帯を全免許人で共同で使用しているアマチュア無線局と、あるいは周波数を独占利用する放送局の電波を同じに位置づけるということになっております。また、同じ放送局でも、首都圏をカバーするような東京タワーからの大きな出力の電波の共益費、これと過疎地での数十世帯を相手にした中継局も同じ料金。これはどうも整合性がないように思われるわけなんです。無線局の免許申請の手数料、また検査手数料、こういうものは利用実態に合わせた料金体系になっていると思います。また、公共性のある放送局あるいはアマチュア無線局も、またそれとは別にNTTドコモなど携帯電話の営業で利益を上げている無線局も関係なく同じ料金になっている。これも全く不公平だというふうに思います。
同じ電波で、しかも無線局の区分も同じで、手数料、検査料と利用料で料金体系が違うというのは筋が通らないというふうに考えるわけであります。電波手数料と同様に、出力やあるいは使用周波数帯を基礎にして無線局の利用実態に応じた利用料金体系を考えるべきだ。また、無線局の利用実態については、電波を営業用として利用しているか否か、あるいは公共性が高いかどうかなども考慮した体系を検討すべき時期に来ていると思うんですが、いかがでしょうか。
政府委員(天野定功君) 電波利用料につきましては、制度の創設時より、一つは必要な電波利用共益費用を無線局全体で公平に負担するように算定するということ、もう一つには算定方法につきまして徴収する側から見てもまた負担する免許人側から見てもできる限り簡明なものにすることという観点から算定方式を定めたわけでございます。
具体的に言いますと、まず電波利用料の使途のうち電波の監視などは空中線電力の大小や周波数帯域によらず公平に実施されるものであり、電波の監視等の受益はすべての無線局に均等に及ぶと考えるのが適当でございまして、これらの費用につきましては全無線局が均等に負担することにしております。
また、無線局を管理するためのデータベースである総合無線局管理ファイルにつきましては、無線局の局種によりこのファイルに記録する免許申請書類のデータ量に多い少ないがあるわけでありまして、この多寡があるため、データ量に比例して負担することが適当であるといった考え方で算定しているわけでございまして、このような考え方にぜひ御理解をいただきたいというふうに考えております。
宮本岳志君 やっぱり東京タワーと数十世帯を相手にしたようなアンテナが全く同じ料金体系になっているというのは、普通の感覚からいって整合性に欠けるというふうに国民も感じられると思うんですね。そういう点での御理解というものを我々は少し考える必要があるんじゃないかというふうに思っております。
<利用料収入は国民全体に還元すべき>
九六年の改正で導入した技術試験事務の予算、これまでの三年間で約百十二億円を取ってきましたけれども、今後三年間で四百二十八億円にするという計画だというふうに思います。研究開発は実用化一歩手前だから現在の電波利用者に恩恵があるという理屈で、それは共益費の範囲内だという説明になるんだと思うんですけれども、私は電波利用料の使途についても、これは先ほどの議論と全く逆になるんですけれども、受益者負担という考え方をそもそも考え直す必要があるのではないかというふうに思っております。
そもそも電波とは何か、また電波利用料というのは一体どのようなものであるのかということを改めて考えてみる必要があるというふうに思うんです。そもそも電波というのは国民共有の資源であり財産だと。だれのものでももともとなかったわけです。しかも、それは有限なものでありますので、だれもが全員が使うというわけにいかないわけです。それを電波利用者は排他的、占有的に使用するわけですから、その利用料というのは、当然国民全体の資源であり国民全体の財産であるものを特定の電波利用者が排他的、占有的に使用するに当たっての課金と考えるのが相当だというふうに思います。
受益者負担ということは、裏返せば負担者受益ということですから、負担した者に受益がいくということだと思うんですけれども、負担者受益ということでは国民共有の財産であり資源であるという性格からいうと少し問題があるのではないか。つまり、電波利用料の使途については、やはり国民全体に還元されるべきであるというふうに思うわけであります。
三年前の法改正時に、当時の日野郵政大臣は、我が党の上田議員に、「今後の課題として、」「いろいろな検討をやってまいりたい」と答弁をされました。また、衆議院では矢島議員に対して、「まだ三年でございますから、検討の課題という形にさせていただければと思います。」と、こう答弁されております。
それから三年たちましたけれども、検討はどうなっておりますか。
政府委員(天野定功君) 電波利用料の使途でございますが、これは、電波法第百三条の二に、「電波の適正な利用の確保に関し郵政大臣が無線局全体の受益を直接の目的として行う事務の処理に要する費用」に充てる旨規定されております。
すなわち、電波利用料は、税金と異なりまして、無線局の免許人が電波を適正に利用できるようにする、いわば健全な電波利用社会の維持運営のための事務に必要な費用につきまして、受益者負担の考え方に基づき免許人から徴収する、そういう考え方で構成されております。
したがいまして、電波法上、現在の電波利用料の性格を前提とすれば、国民全体に利益が及ぶような事務に充てることは認められないわけでございます。
宮本岳志君 先ほど質問がございましたように、今年度予算でもやはり三つの使途の、その他という考えに基づいてさまざま新たな施策に取り組んでいるということでもございますので、できるだけそういう方向で広げていく。そして、もちろん必要とあれば、三年前に質問をし大臣の答弁があったように、改めてこれはきちっと検討して、国民全体にその受益が行き渡るようにすべきだと私ども思うわけです。
私どもは、そういう広げるという点では、テレビ難視聴の解消であるとかあるいは過疎地における電波利用の拡大など、国民全体が電波の利用で恩恵を受けるような方向でぜひ検討していただきたいというふうに思っております。
<電波の健康リスクについて研究が必要>
各地で無線基地建設ラッシュで地域住民とのトラブルが起きております。郵政省の資料によれば、携帯電話基地局の設置数は本年二月末現在で推計約二万三千局となっております。その結果、全国各地で電波を中継する無線基地局の建設をめぐって住民の反対運動が起きております。
郵政省は、九七年二月二十日、携帯電話事業者を集めて、携帯電話基地局のための土地の選定及び地域住民への説明等は工事業者任せにすることなく携帯電話事業者が責任を持って対応する旨の要請を行っています。
ところが、その後もトラブルが続発しております。私の地元、大阪の交野市でも、NTTドコモが住民に十分説明しないまま工事会社が工事を始めようとするなど、現場では全くルールがないという状況もございます。
今後、携帯電話等の急増でこの問題はさらに重大になることは明らかだと思うんですが、建設を急ぐ余り、住民の了解なしで建設を強行するということは避けるべきだし、この点で事業者をきちんと指導すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
政府委員(天野定功君) 携帯電話基地局の建設をめぐりまして、地元の周辺住民と電気通信事業者との話し合いがスムーズに進んでいないケースが一部の地域で生じているということは承知いたしております。
このため、郵政省では、携帯電話事業者に対しまして、土地の選定や地域住民への説明に際しましては、下請工事業者に任せることなくみずからが誠意を持って対応するとともに、周辺住民の方々の御理解を得るよう努めていただきたい旨、要請をしております。
また、地域住民の方々から基地局建設に係る要望等をお受けした場合には、関係の携帯電話事業者にその内容を連絡しますとともに、基本的には双方の十分な話し合いにより解決されるよう要請もいたしているところでございます。
宮本岳志君 とてもみずから誠意を持って対応するというような実態になっていないですね。住民にすれば、例えば住宅地に、家の前に高さが三十メーター、五十メーターという鉄塔をある日突然建設するということが伝えられると。鉄塔の倒壊の危険、景観の悪化、電磁波の人体への影響等、不安を持つのは当然だというふうに思います。それに対し事業者や建設者は、建築基準法や電波法など法的に見ても問題ない、電磁波は人体への影響はない、こう強弁するだけで、強行的に建設しているというのが各地の実情なんです。
神奈川県小田原市の移動通信社の小田原北局携帯電話基地局の鉄塔については、建設前には住民に対する説明会はなかった、建設後、付近の住民の強い要望で初めて説明がされたという始末であります。その鉄塔の撤去を求めて今住民運動が起きております。
郵政省は、住民の了解が得られていない携帯電話の鉄塔など基地局についての無線局申請は許可しないなど、携帯事業者が責任を持って対応して住民の了解を得るように指導すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
政府委員(天野定功君) 電波の免許、無線局免許に当たりまして、建設をめぐる住民とのトラブルを回避するためのそのような住民対策を要件といたしておりません。しかしながら、私どもとしましては、スムーズな地元の建設を取り運ぶために、先ほど申しましたように事前の住民への理解を徹底してほしいという要請をしているところでございます。
今御指摘のような法律上の要件とすることは困難かと考えております。
宮本岳志君 住民が心配している点の一つは電磁波による人体への影響だというふうに思います。
今までも携帯電話事業者は、例えばNTTドコモ九州、これは佐賀市兵庫町に建設予定の鉄塔ですけれども、電波の強さはどれだけなのか、範囲はどの程度なのか、こういうことも説明していない。人体には影響ないと今話がありましたけれども、どこかでもうはっきりしたという一点張りであります。
郵政省は、九八年三月、電波防護指針の運用の在り方に関する調査研究会の報告を出し、九〇年六月の電気通信技術審議会答申、電波利用における人体の防護指針の強制規格化を打ち出しております。また、九八年九月二十九日に、携帯電話の短期暴露では脳に障害を与えないとの生体電磁環境研究推進委員会の研究結果を発表しております。
しかし、現在の防護指針は、電波の生体影響でいいますと熱作用が支配的だ、熱作用の生じない低レベルの暴露は健康に障害を与えることがないということで熱作用以外の作用は無視しているとの専門家の指摘もございます。九六年、九七年にかけて、非熱作用研究でがんとの関係も指摘をされ不安が広がりましたけれども、防護指針を満たしていても電波が絶対に安全という証明はないわけであります。
電波に対する国民の信頼感を高めるためには、郵政省が非熱作用の研究をさらに進めながら、電波の安全性について不安を取り除くための研究を本格的に進めていくべきだと考えておりますが、最後に郵政大臣、こういう方向での研究への決意をお伺いして、私の質問を終わります。
国務大臣(野田聖子君) 実は、今先生御指摘の電磁波の影響というのは、私がちょうど二年前、政務次官のときにかなり大きな問題になりまして、取り組んできているところでございます。
今ちょっと御指摘もありましたけれども、電波の人体に与える影響については、もう既に四十年以上の研究の蓄積がございます。基準値というのが策定されておりまして、世界保健機構、WHOと連携して活動している国際非電離放射線防護委員会が平成八年四月、電波防護指針値を下回る電波によりがんを含め健康に悪影響を発生する証拠はないとの見解を声明として発表しておるところでございまして、電波防護指針を満たせば安全性が確保できるという考え方が国際的にも専門家の認識となっているところです。
この指針は、平成五年から民間のガイドラインとして電気通信事業者の施設整備等に用いられていますが、より安全な電波利用を確保し、国民の不安にこたえるために、電波法に基づきまして無線局の開設者が守るべき技術的な基準として定め、本年の十月から施行することとしています。
さらに、この問題は人の健康にかかわる問題でありますから、より万全を期すために、平成九年度から関係省庁や大学の研究者等の協力を得まして、安全性評価に関する研究を五カ年計画で推進しており、平成九年度においてはその成果として、短期間の携帯電話の使用では脳内への毒性物質の侵入を防御している機能が損なわれないことを確認し、その研究成果を広く公表させていただいたところでございます。
今後とも、積極的にこの分野の研究を推進するとともに、国民に対して電波の人体に与える影響について広く周知をしてまいりたいと思っています。