145 – 参 – 交通・情報通信委員会 – 7号 平成11年04月15日
平成十一年四月十五日(木曜日)
午前十時開会
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出席者は左のとおり。
委員長 小林 元君
理 事
加藤 紀文君
景山俊太郎君
寺崎 昭久君
森本 晃司君
渕上 貞雄君
委 員
岩城 光英君
鹿熊 安正君
田中 直紀君
野沢 太三君
山内 俊夫君
山本 一太君
若林 正俊君
内藤 正光君
本田 良一君
松前 達郎君
鶴岡 洋君
筆坂 秀世君
宮本 岳志君
戸田 邦司君
岩本 荘太君
国務大臣
運輸大臣 川崎 二郎君
郵政大臣 野田 聖子君
政府委員
運輸省運輸政策
局長 羽生 次郎君
運輸省自動車交
通局長 荒井 正吾君
運輸省海上交通
局長 宮崎 達彦君
運輸省海上技術
安全局長 谷野龍一郎君
運輸省港湾局長 川嶋 康宏君
郵政省通信政策
局長 金澤 薫君
事務局側
常任委員会専門
員 舘野 忠男君
説明員
運輸省自動車交
通局技術安全部
長 下平 隆君
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本日の会議に付した案件
○道路運送車両法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
○船舶法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき
、関東運輸局栃木陸運支局の自動車検査登録事
務所の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出
)
○特定公共電気通信システム開発関連技術に関す
る研究開発の推進に関する法律の一部を改正す
る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○通信・放送機構法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
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<「不具合車両」の増加を運輸省も予測>
宮本岳志君 宮本です。質問いたします。
自動車の保有台数は今や七千四百万台と先ほどお話もございました。毎年二%から三%の増加を見ております。先進諸国と比較しても可住地面積当たりの自動車台数というのはかなり多くなっております。こうした状況のもとで、交通事故件数は七十八万件、死亡者は約一万人、負傷者は約九十六万人と増加傾向にございます。環境汚染、交通渋滞等も大きな問題になっているわけであります。それだけに、自動車の安全の確保対策、公害対策が極めて重要な課題となっておりますけれども、そのことを担保していく上でも車検制度の果たす役割は大きなポイントと言えると思います。
今度の改正は、八トン未満のトラックの新車に限って車検期間を一年から二年に延長するものでございます。ただ、この延長によって、先ほどから議論がございますように、安全確保や公害対策が後退することになってはならないと思うんです。
ところが、この運輸省の調査、資料を見せていただきましても、一つはふぐあい率、先ほど来議論になっている点ですが、これが六%ふえるという調査結果が出ております。つまり、八トン未満トラック全体で言いますと、二年目で七〇%がふぐあい車両ということになってまいります。
二つ目は、整備不良による交通事故、死傷者数がどれぐらいふえると調査の結果予想されるかと言いますと、トラック全体では、自家用で一・一%から二・一%、事業用では二・五%から四・三%ふえる、こういう結果も出ております。その他、整備不良による交通渋滞、自動車排出ガスの環境汚染など、社会的影響が出てくることを指摘をしているわけであります。
九七年三月の閣議決定に照らしましても、安全確保そして公害防止、これに後退があってはならないというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
政府委員(荒井正吾君) 今度の車検期間の延長、点検整備の簡素化は、規制緩和という面でユーザーの負担軽減ということを大きな流れの中で目標としておるところでございますが、一方、車の加害性にかんがみまして、車の安全の確保、環境の保全ということが後退のないようにということでございます。
今回の車検期間の延長に際しましては、延長による社会的な影響、特に交通事故、環境影響の少ない車種について限定して実行するということが答申の中で盛り込まれておったところでございます。数字の説明がなかなかうまく納得感のいくようにならないという先ほど寺崎委員の指摘されたような面もございますが、それを考えても大変慎重な検討が運輸技術審議会で行われた結果だと考えております。また、点検期間の間隔の延長に際しましても、環境あるいは安全に影響のない範囲での見直しというふうに答申されておるように考えております。
安全確保と環境保全上の問題、そういう面で最小化されているというふうに思っておりますが、安全と環境の問題に対応する別途の措置もなおあわせて考えていくべきというふうに思っております。
宮本岳志君 この運輸技術審議会の答申を読ませていただきましても、私は納得のいかない点があるわけです。
例えば、走行距離が平均一・五万キロだからいいかのようなことを書いておるわけですけれども、八トン未満のトラックは九百十三万台あるわけであります。ですから、平均が一・五万キロだといっても、それは幾らでも長距離を走っている車ももちろんあるでしょう。特に事業用のトラックは何万キロも走ると思うんです。画一的にはいかない。
それから、先ほども少し議論になっておりましたが、「不具合率が四七%と比較的小さい。」と。この認識は極めて問題だというふうに思います。ふぐあいというのは、先ほどもあったように、保安基準に適合していない、つまり車検に合格できない車ということですから、本来走ってはならない車という理解だというふうに思います。これが四七%もある。
しかも、その四七%ではなく、二年目のこの調査結果では六四%、これが六%引き上がるわけですから七〇%なわけですね。二年目の車検直前には十台のうち七台まで基本的には走ってはならないとされるような車になっているということを意味しているわけですから、極めて重大だと思うんですが、いかがでしょうか。
政府委員(荒井正吾君) 先ほどからの議論で、ふぐあい率の意味あるいは事故に直結する要件、あるいは許容の範囲というのがあるのかどうかというような議論がなされております。
今、宮本委員が申されました中で、一つ目の論点の走行距離が一万五千キロ、平均でございますのでたくさん走るものとそうでないものがあるじゃないかということが例えば車検期間に反映されないかどうかという議論は、この審議会でもあったわけでございます。
例えば、走行距離に応じて車検の義務をつけたらどうかというような、ある面合理的な面があろうかと思いますが、一方、その走行距離に応じて車検をするということに技術上の難点もある。あるいは外国ではわかりやすさという観点を重視して期間でやるということがございますが、少々はしょって制度ができているという面は否めないものと思っております。
走行距離とか使用状況に応じて安全確保をするという点は、むしろ点検整備の弾力的な実行ということで今後図っていくべきというふうに考えております。走行距離が増したり、あるいは悪路を走行した場合には整備を加重にやるとかあるいはそういうことを推奨するとか、あるいは逆に走行距離が少ないときは整備を省いていいというふうに義務を減らすとかというふうにしたいと思っております。
なお、結論的なところで、ふぐあい率の説明の仕方はいろいろ改善をしなきゃいけないかというふうに思いますが、全体として、運輸技術審議会の委員の方たち、我が国における最高の技術的な専門家をそろえて多角的な御議論をしていただいた結果だと私どもは認識しております。安全上の支障は非常に少ない、最小なものであるというふうに認識しているところでございます。
宮本岳志君 定期点検整備を進めていくということは、これは大いに結構なことでございます。ただ、この推進をどう図るかというところが問題だというふうに思うんです。
<車検時に整備しない車が増えている>
宮本岳志君 それで、時間がございませんので少しはしょりますけれども、いただいた資料によりますと、八トン未満の自家用トラックの定期点検整備の実施率は三〇・九%とお伺いしております。それから、これは八トン未満でとっておらないということですけれども、事業用貨物車は三カ月点検で見ますと五六・六%というふうにお伺いをしているわけであります。
そういたしますと、逆に言いますと、自家用トラックで定期点検がされていないものが六九・一%、事業用では四三・四%が定期点検されていないということになります。八トン未満の自家用トラックは八百四十七万台、事業用は六十六万台あるというふうにお伺いしておりますが、合わせて九百十三万台のうち、点検整備をしていないのを計算してみますと、ざっと六百十三万八千六百台、六百十四万台ぐらいになると思います。
こうした状況を放置したまま、つまりふぐあい車両がふえるのが当然の状況を放置したまま、このままでの車検の延長というのは問題があると私どもは考えるものです。
こうした問題の背景として、九五年の法改正で前検査後整備でも可能というふうにしたわけです。つまり、整備してから検査を受けなければならなかったものを、先に検査を受けてそれから整備すると。そのときの審議で、我が党の高崎議員が、整備をしないでいきなり検査に持ってくるケースがふえる、そのことにより定期点検整備が形骸化されるおそれがあると指摘をしておりますけれども、事態はそのとおりになっているんじゃありませんか。いかがですか。
政府委員(荒井正吾君) いろんな多角的な論点を申されたと思いますが、最後の前検査後整備の導入は前回の改正の大変大きな改正点でございました。いろいろ意味があろうかと思いますが、整備前置主義ということは当時大変問題視されておりました。特に、過剰整備につながるのではないかということでございました。最小限の整備をして検査を通って自分なりの整備をしたいということでございましたので、ユーザー車検の導入ということにつながったわけでございます。
そういういい面があったかと思っておりますが、一方、定期点検の整備実施率が一部の事業用自動車について低いという実態が別途あるわけでございます。前検査後整備は特にユーザー車検を望まれます自家用乗用車を中心にして行われたと思いますが、逆に事業用自動車の定期点検の実施率が低い。これはプロの、職業として車を使っておられる、さらに道路で商売をされている、言ってみれば道路が職場であるという方たちの定期点検の実施率が低いということはむしろ大変大きな問題であろうかと思っております。
車を走らせるのをなりわいとされている方の安全性の確保が低いということは労働災害にもつながりますし、公共の場での事故の発生、社会的な問題になると思います。定期点検の実施率の向上ということについて格段の努力をしていくべきだと思っております。特に、貨物自動車は日ごろ、整備事業者に預けなくても自家用の整備ということも可能でございますので、そのようなことをどのように図るかということについて格段の努力をしていきたいと思います。
<定期点検整備の義務の周知徹底を図れ>
宮本岳志君 この質問をするに当たって、私は、大阪の自動車整備振興会の役員の方々、整備業者の皆さんにもいろいろお話をお伺いして、勉強させていただきました。
そこで、具体的にお伺いしたいと思うんです。
一つは、定期点検整備は車両法四十七条で定められた法的な義務だということであります。そのことをユーザーにどう徹底し御理解いただくか、これがやはり大きなかぎとなっていると思うんです。
そこで、ぜひ検討していただきたいんですけれども、一つは、自動車検査証の留意事項にその旨を書き込む、法的義務ですよということを書き込む、あるいははがきの送付をするなど、幅広く活用して徹底を図るべきではないかということ。
もう一つは、点検整備をしない場合に勧告をするという、これも車両法第五十四条四項に基づく制度がありますけれども、これはお伺いしますと二年間で勧告というのはわずか七件だと聞いております。これでは効果が上がらないというふうに思うんですが、こういう点、いかがでしょうか。
政府委員(荒井正吾君) 点検整備を実施していただくための方策として、今三つ御指摘になりました。いずれも有効な方法かと思います。
一つ目の自動車車検証の書き方でございますが、現在もその点は書いてあるわけでございますが、義務づけとかというふうには書いていないという面がございます。この点検整備というのは、ある面役所が自主的にされるべきところを押しつけるという面が、七千万台の車のそれぞれのユーザーの点検整備でございますので、役所としてもある面表現に気を使う面がございます。検査証を使うという面もありますし、ほかの方法での自主点検の意識を定着させるという課題が我が国に残されているというふうに思います。
二つ目のはがきによってお伝えする。特に、前検査の後の後整備をされない、検査のときには検査は通るけれどもある程度時間を経るとこういうところが劣化するので整備されたらいいですよというようなアドバイスもできるわけでございます。今後ますますそういう検査時のサービスも重要であろうかと思いますが、それをはがきによってさらに徹底するということも、委員会で指摘されたこともございますので、予算をつけて充実しているところでございますが、今後さらにその成果を見つつ励行したいと思っております。
三つ目の勧告を利用する、確かに勧告制度、検査の勧告というのは役所もちょっと大変な武器を使うというようなイメージがございまして、使いにくい点があったわけでございますが、検査時の点検不履行の発見の際の点検整備の励行ということも一つの強力な手段であろうかと思いますので、そのことも含めて今後整備励行の努力を図っていきたいと思います。
宮本岳志君 時間が押してまいりましたので、ぜひ検討していただくとして、運輸大臣にまとめてひとつお伺いをしたいというふうに思うんです。
一つは、ことしの点検整備の自動車検査円滑化のための対策費ですけれども、四千九百万というふうにお伺いをしております。それで、大阪のこれも整備振興会でお伺いしたんですが、この振興会では年間四千万円を使って二カ月間テレビ放映をしてさまざまなキャンペーンを行ってくださっている。ラジオでも土日に毎回四十五分間、計二百五十八本も流しているという話でございました。このように大阪の整備振興会だけで国の予算と変わらないぐらいの予算をつけて頑張ってくださっているわけであります。ぜひ、こうした点に照らしても国の予算を大幅にアップをするために頑張っていただきたい。
同時に、整備をしないで前検査するユーザーに対して運輸省は点検整備をするようはがきを送付しておりますけれども、昨年度は六万八千人に送っているとお伺いしております。ところが、前検査を受けているのは二十万人いらっしゃるわけです。だから、十三万人ほどの人には送られていないということになると思います。すべての人に送付できるように予算対策を検討していただきたい。これも予算のことですので、大臣にお伺いしたい。
最後に、車検の有効期間が延びることによって、先ほど来お話がありましたように、整備業者の皆さんの営業に深刻な影響が出てくることが予想されます。大阪の整備業界に聞きますと、一〇%売り上げが減少するのではないかというお話もございました。特に、トラックが主体の業者は約三〇%も減るだろうという声もございました。全体に影響する額は大阪でおよそ八十六億九千万円と試算されるというような話もございます。そのための対策を真剣にやっていただきたい。
我が党がこれまでも指摘してきたように、近代化資金の抜本的な充実、設備資金の返済期間の延長であるとか、自動車重量税の立てかえの対策であるとか、あるいは新たな構造改革事業の策定など、整備業者の御意見を十分聞いていただいて対策を立てて御努力いただきますようにお願いして、御答弁いただいて、質問を終わります。
国務大臣(川崎二郎君) 具体的な御質問と全体的な立場からの御質問があったと思います。
まず第一に、前検査受検者のはがきの問題ですけれども、二十万人全員に出すようにいたします。
それから、十一年度予算において国の検査場での点検整備励行指導に関して予算措置をいたしておるわけでありますけれども、来年以降もう少し頑張れという御指摘をいただきました。私どもも予算の確保に努め、点検整備実施率向上施策の充実に努め、自動車の安全の確保及び環境の保全に努めてまいりたいと思っております。
それから、先ほどから多くの方々から御指摘いただいております整備業界、特に整備事業者は七万二千企業のうち従業員規模十人以下が七五%、こういう状況にあります。したがって、中小企業近代化促進法に基づく低利融資、課税の特例措置の活用に係る構造改善事業の推進、中小企業信用保険法の保証限度額を倍増する特定業種の指定、信用保証制度のさらなる活用、こうした措置を中小企業全体としてとらせていただいておりますけれども、同時に、先ほどから御答弁させていただいておりますとおり、来年度予算、より充実ができるように近代化資金等を準備してまいりたい、このように考えております。
宮本岳志君 終わります。
<交通事故の増加を招く車検期間の延長>
(討論)
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、道路運送車両法の一部改正案に反対の討論を行います。
今度の法改正により車検期間が延長されることにより、対象となる八トン未満のトラックの整備不良車が六%に増加する上、それに伴う交通事故で死傷者が増加することが運輸省の調査でも示されており、こうしたことが明らかな以上、反対をせざるを得ません。
運輸省の調査によれば、保安基準に適合しない、つまり車検に通らないふぐあい車両が六%ふえることにより、二年目のふぐあい車両は七〇%にもなることが明らかであります。また、整備不良による原因の交通事故死傷者が五十人から六十人もふえることが予想されております。このように、大幅とは言えないものの、安全や公害対策が後退することになっているからであります。
車検制度にとって今最も大きな課題は、定期点検整備を確実に実効あらしめることであります。ところが、その実施状況は事業用トラックで五六・七%、自家用トラックは三〇・九%にとどまっております。このような点検整備実施状況のもとでの車検期間延長には問題があると言わざるを得ません。
こうした問題の背景に、九五年車両法改正により、前検査後整備を可能としたことがあります。我が党は、整備をせず、いきなり検査に持ってくることは定期点検整備が形骸化されるおそれがあると指摘しましたが、事態はそのとおりになっており、改めて対策を求めるものです。
第一に、定期点検整備の実施には法的な義務があることをユーザーに徹底させるため、自動車検査証の留意事項にそのことを明記することや、はがきを送付するなど、幅広く活用して徹底すべきであります。また、二年間で七件にとどまっている点検整備勧告制度を活用することです。
第二に、点検整備推進の啓発活動についての対策予算を大幅に増額することです。質疑でも明らかにしましたが、大阪整備振興会では、年間四千万円を使ってラジオ、テレビで啓発を行っています。ところが、国の予算はわずか四千九百万円であり、国の姿勢が問われています。
第三に、定期点検整備の実施状況を把握することは適切な対応策をとる上で極めて重要であります。そのためにも、九七年度に一度しか実施されていない調査を継続的に行うべきであります。
最後に、法改正に伴う整備業者、特に中小の整備工場への影響対策です。
今度の改正で、車検の期間の延長や点検整備項目の減少、それに今指摘した定期点検整備の実施の低下、加えて不況、こうしたことで、整備業者の営業に深刻な影響が出てくることになり、大阪では整備業界全体で売り上げの一〇%、九十億円近い影響が出ると試算されております。
そこで、近代化資金の抜本的見直し、自動車重量税の立てかえ対策、そして、新たな構造改善事業の策定などが必要であります。
政府は、整備業者の意見を十分聞き、必要な対策を早急に行うことを強く求めて、討論を終わるものであります。