146 – 参 – 交通・情報通信委員会 – 2号 平成11年11月16日
平成十一年十一月十六日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
十一月十日
辞任 補欠選任
内藤 正光君 佐藤 雄平君
十一月十一日
辞任 補欠選任
佐藤 雄平君 内藤 正光君
十一月十五日
辞任 補欠選任
筆坂 秀世君 大沢 辰美君
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出席者は左のとおり。
委員長 齋藤 勁君
理 事
景山俊太郎君
釜本 邦茂君
簗瀬 進君
弘友 和夫君
渕上 貞雄君
委 員
岩城 光英君
加藤 紀文君
鹿熊 安正君
田中 直紀君
野沢 太三君
山内 俊夫君
谷林 正昭君
寺崎 昭久君
内藤 正光君
日笠 勝之君
大沢 辰美君
宮本 岳志君
戸田 邦司君
岩本 荘太君
国務大臣
運輸大臣 二階 俊博君
郵政大臣 八代 英太君
政務次官
運輸政務次官 中馬 弘毅君
郵政政務次官 小坂 憲次君
郵政政務次官 前田 正君
事務局側
常任委員会専門
員 舘野 忠男君
政府参考人
運輸省運輸政策
局長 羽生 次郎君
運輸省鉄道局長 安富 正文君
運輸省自動車交
通局長 縄野 克彦君
運輸省海上技術
安全局長 谷野龍一郎君
運輸省航空局長 岩村 敬君
郵政大臣官房長 松井 浩君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○運輸事情、情報通信及び郵便等に関する調査
(郵便局施設のバリアフリー化推進に関する件
)
(接続料算定における長期増分費用方式の在り
方に関する件)
(高度情報通信社会構築への課題に関する件)
(郵政省の障害者雇用策に関する件)
(地域の情報化とテレビ電話網の整備に関する
件)
(運輸多目的衛星打ち上げ失敗と今後の対応に
関する件)
(乗合バス、タクシーの需給調整規制緩和の在
り方に関する件)
(自動車関係諸税のグリーン化促進に関する件
)
(交通権確立に向けた施策の推進に関する件)
(神戸空港建設の是非に関する件)
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<郵政事業は「民営化しない」と答弁>
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
まず、郵政三事業のあり方について大臣にお伺いをいたします。
大臣は、昨年出版いたしました「わが人生福祉論」の中で、情報化社会のもとでの町の情報基点としての全国二万四千に上る郵便局ネットワークの存在の大きさについて触れておられます。同時に、その事業のあり方については、「存在だけの議論であったが、建設的な将来ビジョンも含めた議論とすべきであろう。」と述べるだけで、民営化攻撃に対する態度を明らかにされていないというふうに思うんです。
我が党は、国民共有の財産としての郵便局ネットワークを初め、国民のユニバーサルサービスを守り抜く立場から、郵政三事業の民営化には断固反対でございます。前郵政大臣にも、この委員会の場で何度も、民営化については検討の対象にしない、こういう答弁をいただいてまいりました。中央省庁等改革基本法第三十三条六号では、「民営化等の見直しは行わない」と明記されております。
大臣、この立場を引き継ぐかどうか、この点についてまずお伺いをいたします。
国務大臣(八代英太君) 割合一致しない点が多いんですが、その分野は本当に一致をしているところだと思います。郵政事業につきましては、昨年六月に成立した中央省庁等改革基本法におきまして、企画立案部門と実施部門を分離して、実施部門は郵政事業庁とした上で、さらにこれを、三事業一体を維持しつつ国営の新たな公社に移行することとされております。
一方、先生御指摘のとおり、「民営化等の見直しは行わない」とこれは明記されているところでございますから、将来的な見直しはしないものと、このように私も考えておりました。
いずれにいたしましても、郵政事業は国民の支持、信頼の上に立って初めて成り立つ事業でございますし、全国二万四千七百はまさに私たちの暮らしにとっての大きな財産であり資本だ、こういう思いがいたしますので、良質なサービスの提供が何より重要であると思いますし、そういう意味でも、今後とも国営三事業一体の郵便局サービスの一層の改善、そしてまた向上等を通じて国民利用者の支持、理解を得るべく一生懸命努めてまいりたい、このように思っているところでございます。
宮本岳志君 ところが、八代大臣みずからこの郵政三事業、郵便局のあり方が問われるような発言をされている。きょうはこのことを一つお伺いしたいと思うんです。
あなたは十一月十日の夜、東京都内で開かれた自民党衆議院議員の資金集めパーティーで来賓としてあいさつをされました。その中で、私は郵政大臣でございますから、などと切り出した上で、何たって二万四千七百の郵便局というものが自由民主党にとってかけがえのない後援団体でもございますので、これから選挙に向かっては郵政行政と相まって、ここでその議員名を挙げて、○○さんのために頑張らなければならない、こんな思いでございますと、こう述べられました。
全国の郵便局を自民党のかけがえのない後援団体と言い切り、自民党議員のために郵政行政と相まって頑張らなければならないなどというのは、行政の私物化であり、郵政大臣としての地位利用そのものではないですか。
国務大臣(八代英太君) 原稿がなくていろんなところでいろんな発言をいたしますけれども、いずれにいたしましても郵政三事業というものをしっかり守っていく、これは当然のことでございますし、また、そこの全体の流れが、今御指摘をいただいたことに別に反論するわけじゃありませんけれども、一方その○○さんの今後のことを思えば、全面的に私自身も含めて御協力をするというのは、言ってみればそういう政治家の集まりのリップサービスの中では当然出てくる発言だろうと思いますし、脈絡がどういうふうになって、前後のところがよくわかりませんけれども、そういう思いでおるところでございます。決して私物化というような思いで発言したのではございません。
宮本岳志君 リップサービスということではやっぱり困ると思うんですね。
郵政三事業というのは、民営化攻撃から本当にこれは守ると、それはやっぱり国民の支持があればこその話だと思います。郵便局を自民党の後援団体などといささかでも考えるならばこれは国民は支持しないということですから、どうかこの点を厳しく受けとめてぜひ職務に当たっていただきたい。
<NTTのサービス低下は容認できない>
宮本岳志君 次に、NTT問題についてお伺いをいたします。
本年七月一日からNTTが持ち株会社と三社に分割をされました。私はこの問題を本年三月九日当委員会で取り上げて、前郵政大臣は、一つ、東西料金格差はつけない、二つ、現行のサービス水準は維持する、三つ、現行の職員の雇用は継承する、この三つのことを守る旨を答弁されました。これはNTTの社長も約束をしてきたことであります。
まず、基本的な立場をお伺いいたしますが、八代大臣も、堀之内元大臣、野田前大臣の立場を引き継ぐということでよろしいですね。
国務大臣(八代英太君) 私は、NTTの再編成を契機としまして、一方の地域会社において料金の値上げが行われるなど、料金水準が現在よりも悪化する形で東西格差が生じることや、サービス水準が全体として低下することがあってはならないと考えており、これは歴代の郵政大臣も同様のお考えだったと理解いたしております。
また、NTT社員の雇用及び労働条件につきましては、基本的にはNTTにおいて検討されるべき問題でございますけれども、今回の再編成に当たって、社員が持ち株会社または事業会社に所属して、事業会社への移行の際には営業譲渡という形で現行の労働条件が受け継がれたものと理解をいたしております。そんなふうな状況だと思います。
宮本岳志君 ところが、この約束に反する重大な事態が報道されてまいりました。
一つは、基本料金の値上げという問題であります。
九月二十日に電気通信審議会への郵政省長期増分費用モデル研究会報告、これが出されております。このNTT接続料の新しい算定方式によりますと、東西地域会社の市内回線接続料金を現行水準から最大四一・一%引き下げた場合、これはケースBの場合ですね、この場合に、接続費用の一部を加入者が支払っている基本料金に転嫁するために基本料金が月額約三百円引き上げになると。
これは、現行サービス水準は維持するとしたNTTや郵政省の約束をほごにするということではないですか。
国務大臣(八代英太君) まず、NTTのいわゆる再編成実施計画との関係についてなんですが、NTTは、再編成実施計画におきまして、料金を含むサービス水準を全体として低下させないこととしているんですが、これは再編成時において現行のサービス水準を維持するとしたものだと私は思っております。
ところで、委員御指摘の長期増分費用モデルケース、これは巷間言われるBについてでありますが、このケースBによりますと、大幅な接続料金の引き下げが可能となる一方で、国民利用者の基本料金が、今三百円という数字が出ましたが、引き上げられるおそれも指摘されているところでございます。
このようなことから、郵政省としては、電気通信審議会に十分な検討をお願いして、国民利用者の立場に立って適切な判断をしていかなければならないということでございますので、そういう方向の審議がなされるだろう、このように期待しているところでございます。
宮本岳志君 先ほども議論があったわけですが、この背景にアメリカの圧力があるということは明瞭だと思います。
一九九九年十月六日付で出された「規制改革要望書 日本における規制撤廃、競争政策、透明性及びその他の政府慣行に関する日本政府への米国政府要望書」というのがここにございます。私は、こういうものが全国会議員に配られるということ自身に驚いたわけですけれども、この中身を見て一層驚きました。
この中には、十に分類した三十九分野、総数三百項目に及ぶ内政にかかわる具体的な要望が書き込まれております。そして、そのトップに来ているのが電気通信分野の規制緩和ということであります。
内容は、「電気通信問題に対する日本の規制上の取り組みに抜本的な変化が近々起こらない限りは、こうした外資系企業は、日本に投資したり、革新的な技術を導入したりする自らの力量に制限を受け続けることになるだろう。」、こういうことを言って、外資系企業、つまりアメリカ企業の日本進出のために日本が通信ビッグバンに着手することを強く求めております。
そして、相互接続については、「二〇〇〇年四月一日をもって、郵政省は、すべての関係する経済原則を反映した長期増分費用モデルをもとにした料金設定を使って、NTTの相互接続料金を完全に競争的な市場での相互接続料金と同等レベルまでできるだけ下げるという第二回共同現状報告での約束を実行すべきである。」と。まことに高圧的なものであります。
九月二十日の新算定方式に対しても、さらにアメリカ政府は意見書を提出しております。NTTの会計費用をもっと削減せよ、ユニバーサルサービスの費用は計算に入れるなと、本当にもう言いたい放題です。そして、これらの文書で繰り返し出てくるのが、九八年五月、規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアチブ、共同現状報告での誓約を守る気があるのかと、こういう殺し文句であります。
大臣、このような圧力、外圧に屈してユニバーサルサービスを切り捨てたり基本料金を値上げするなどということは、NTT等に関する法律第三条に定めたユニバーサルサービスの確保、あるいは電気通信事業法第一条の「目的」、利用者利益の擁護、国民の利便の確保、公共の福祉の増進、こういう精神に真っ向から反するのではないですか。
国務大臣(八代英太君) 私が小渕内閣郵政大臣を拝命しましたのが十月五日、十月六日に、就任早々でございましたが、アメリカ政府から日本政府に対して新たな規制改革要望書が提示されたんですね。
規制改革要望書というのはそのほかいろいろ羅列的にあるんですが、今おっしゃるように電気通信分野では、一つは支配的事業者に対する規制の強化、支配的事業者とは随分高圧的な言葉だなと思ったら、これがNTTを指しているということなんですね、これに対する規制の強化。二つ目が接続料の引き下げ。三つ目が線路敷設権の改善などが含まれているわけです。
これまでの継続案件が中心のようだということで、このことはキャッチボールで、こちらからもアメリカに言うべきことは言いながら、またアメリカからもそれに対する反論、またこちらからも反論という形で今事務レベルでは折衝をしているんですが、そうして米国の具体的要望を伺った上で今後は対応していくということが基本的になっているんです。
そこで、郵政省としては、こういう声も踏まえて、電気通信分野における規制改革ということでございますから、今もおっしゃったようなユニバーサル、また消費者への料金の転嫁とかいろいろなことを、また東西のNTTの経営の問題とかという基本的なキーポイントを押さえながら、今後審議会での御審議も踏まえて私たちはこれから、閣議決定されたという経過もございますので最終的にはそれを集約していかなければならないんですが、決してそういうものに屈したとかそれに言いなりになっているとかということではないことだけはぜひ御理解をいただきたいと思っております。
宮本岳志君 現行のサービス水準は守るという約束があるわけですから、ほごにすることは絶対許されないということを指摘しておきたいと思います。
<政府はNTTリストラを放置している>
宮本岳志君 二つ目は、NTT職員の二万人削減という問題であります。
さきの政府保有NTT株の第五次放出に伴ってNTTが作成した株式売出目論見書の訂正書類、これを見ますと、東西の地域通信、長距離、国際、携帯電話などグループ全体で現在約二十二万四千人に達する従業員を二〇〇三年三月には二十万人強まで削減する、実に二万人以上の人員削減計画を明らかにしています。
昨年十月一日の衆議院逓信委員会で、我が党の矢島委員が、分割再編によって社員の雇用というのは確保されると理解していいか、在籍出向の社員も含めて答えよとただしたのに対して、NTTは、「労働契約も承継しますし、労働条件も現行のものを引き継いでいきたい」とはっきり答えております。
今回の二万人の人員削減計画はこの約束をほごにするということではないのか。ましてや現在、雇用情勢は極めて厳しい深刻さを増しております。政府自身、雇用の確保に全力を挙げるということではなかったのか。
郵政省はこのような計画に対して変更を指導いたしましたか。
国務大臣(八代英太君) NTTにおいて経営効率化のための計画を策定中であると聞いておりますけれども、今おっしゃったような二万人削減というような数字が報道ではなされているということでございますが、その具体的な内容については私のところはまだ承知いたしておりません。
なお、再編成後の社員の雇用につきましては、基本的には労使間において検討されるべき問題でございますし、労使間での話し合いの中でそういう問題は適切に対応されていくということを私は期待しているところでございます。
宮本岳志君 全く放置しているということではないかと思うんです。それならば私、言わせていただきたい。
政府は、今回の二万人削減計画をゆゆしき事態と受けとめているのではなく、むしろ歓迎しているのではないか。今、企業が人減らし計画を発表いたしますとその企業の株が上がるという経済の異常な退廃現象が生まれております。
トヨタ会長の奥田日経連会長も、現在の我が国では従業員の首を切ることがもてはやされるおかしな風潮がある、リストラ、経営のダウンサイジングと称して従業員の首を切れば株価が上がる、しかもやめさせる社員の人数が多ければ多いほど株価も高くなるといった経済学の教科書にもないような奇妙な法則も唱えられると指摘をしております。
私が指摘したいのは、今回の発表が株式売出目論見書の訂正書類であったこと、そしてその売り出しというのは政府保有NTT株の第五次売却であったことです。この売却益の全額は、金融機関の破綻処理向けとして預金保険機構に交付した七兆円の交付国債の償還財源に充てられることになります。政府は一円でも高く売りたかったはずです。そして事実、売却価格は百六十六万円、前回の二倍という高値で売り出されている。銀行の不始末の穴埋めに注ぎ込む借金の返済をふやすためにNTT労働者二万人の首切りを容認しようというんですか。余りにもひどいじゃありませんか、いかがですか。
国務大臣(八代英太君) 奥深く想像を張りめぐらされての御意見だというふうにも思いますけれども、いずれにいたしましても、これはいろいろな意味におきまして労使間の話し合いを待つというのが基本的な考え方でございます。
NTTが経営改善のための計画を検討しておるということは承知しておりますし、それからまた、第五次NTT株の売却にかかわる株式売出の目論見書なんかに盛り込んだことも私もかいつまんで承知しているんですが、その詳細については私がどうこう、それが背景でどうあるとかいうことは全く承知はいたしておりません。また、NTTはこの計画につきまして労働組合と今後さらに議論をしていくといたしておりますし、具体的内容について私がコメントすべきではないというような思いがいたします。
一般論で言いますと、郵政省としては、インターネットや携帯電話の普及など、電気通信分野の大きな変化に伴ってNTTを取り巻く環境が厳しくなっている中で、NTTが適正かつ効率的な経営に計画的に取り組むということであるとするならば、それはまた時代の流れでもありましょうし、大変重要な課題であると私は考えております。
宮本岳志君 幾ら否定をして、また私の方が深読みだとおっしゃっても、それは株式の売出目論見書でこういう形になってくれば、国民は、またNTTで働く者はそういうふうに感じますよ。これはやっぱり労働者の雇用というものを第一に守るという立場をしっかりと掲げていただきたいと思うんです。
同時に、先ほど指摘したアメリカ政府の意見書、この中で実はこのことにも触れられているんです。
「NTTの会計費用には、高騰した人件費、設備費用、減価償却費が含まれています。(人件費のような)経常費用は市場に基づく費用を反映していませんが、これを競争事業者に押しつけるのではなく、削減するのがNTTの責任です。」と、つまりアメリカ筋からも、先ほども外圧ということを言いましたけれども、削減せよ削減せよという声が上がっている、このことも指摘をしておきたい。
こういう外圧に決して屈することのないように、しっかりと雇用労働条件を守っていただきたいというふうに、これはもう時間がありませんので、私の方から指摘をしておきます。
<人間らしく働ける職場にする努力を>
宮本岳志君 次に、あなた方の足元、郵政職員の問題についてお伺いをいたします。
郵政大臣は、ノーマライゼーションということを強調されてまいりました。そのことには適切な雇用の機会を保障するということも当然含まれているというふうに思います。公務である郵政三事業においてはその点でも民間経営以上に努力が求められるのは当然だし、法律上も民間以上の比率で障害者を雇用する義務を負っております。
そこで、政府参考人の郵政省官房長に二つ確かめておきたいんですが、一つは、郵政省における障害者の法定雇用率と達成状況、二つは、あわせて実際に障害者を雇用するために現場でどのような努力をしているのか、また募集はどのような方法で行っているのか、お答えいただきたいと思います。
政府参考人(松井浩君) 政府参考人に御指名いただきました郵政省官房長の松井でございます。よろしくお願いします。
早速先生の御質問にお答えしたいと思います。
郵政省の障害者の雇用率は、平成十一年六月一日現在で二・一一%でございます。障害者の雇用の促進等に関する法律で定められております雇用率が二・一%でございますので、これを上回っております。
それから、郵政省の職員は国家公務員でございます。そのためにどのような努力かということでございますが、国家公務員でございますので、原則として国家公務員採用試験に合格していただく必要がございます。
そうは申しましても、障害者の雇用促進の観点からいろんな工夫をさせていただいております。
具体的に申し上げます。一つは、試験時の配慮でございます。それは、視覚障害者のために文字を大きくする工夫をしております。例えば、B5判の試験用紙をB4判にします。そうしますと二倍になります。そういう形で字が大きくなります。それから、試験の解答時間を二五%延ばすとか、そういう配慮もさせていただいております。
それから、採用時の身体検査時での配慮でございますが、試験合格者につきまして採用時の身体検査等で障害があることが判明した場合につきましても、勤務に支障のない職務への採用を配慮させていただいております。
それから、施設の整備の関係でございます。例えば車いすを御使用の障害者が採用された場合には、車いす対応のトイレを設置するとか、それからスロープのバリアフリー化だとか、そういった必要に応じた施設整備をするように配意してございます。
それからもう一点が、採用担当者への指導、啓発でございます。私どものこの問題、人事関係に関します責任部局長は人事部長でございますが、全国に障害者の積極的採用についての通達も流しておりますが、あわせて関係法令集の配付だとか、いろんな会議での指導、啓発もさせていただいております。
宮本岳志君 大変結構だというふうに思います。
大臣も常々おっしゃられていることですけれども、障害者もいる社会が温かい社会ということであり、ハンディを負っている方でもその条件に合わせて働くことができる職場であるべきだというふうに私も思います。そのことが健常者も含めて人間らしく働ける職場を公務から民間にも広げていくことにつながると思います。そういう努力を大臣を先頭にぜひさらに強めていただきたいというふうに思います。
そこで、大臣にお伺いするんですが、現に郵政の職場で働く職員の方が何らかの理由で障害者となった場合、健常者並みに働けないからということで職場を失うというようなことは本来あってはならないことだと私は思うんですけれども、これは大臣もそうお考えになられると思うんです。政策ということではなくて、ひとつその理念として御答弁いただきたいと思います。
国務大臣(八代英太君) 委員御指摘のとおり、職員が在職中に障害者となった場合につきましては、従来から、本人の障害の程度等を考慮しながら引き続き就労可能となる適切な職務についていただけるよう当然配慮しなければなりませんし、このことは別に郵政省に限らずすべての公共機関でも同じように、またすべての事業者も同じ感覚を持ってもらうというのが障害者に関する雇用促進法の一つの精神だろうと、このように思っております。
そしてまた、たとえ途中で障害を持っても、障害を克服して、そしてまたタックスペイヤーになるという自覚を持って自立を目指していただく、頑張ってほしいという思いは全く同じでございます。
ちなみに、平成十年六月から平成十一年六月の一年間で新たに郵政省関係で途中で障害者になった、こういう人は三百六十八名いるということでございます。これは、雇用促進法に照らして新規採用の人は十九名でございますので、今までの職員がその中でも三百四十九名となっておりまして、その人が再び障害を克服して現場に復帰されているということと、今官房長が法定雇用率は二・一%だけれどもそれをはるかでもないが超えていると言うので、若干安堵したというところでございます。
引き続き雇用促進には力を入れていきたいと思っております。
宮本岳志君 大変心強い御答弁をいただいたというふうに思います。
<復帰へ「道をつけるのも上司の役目」>
宮本岳志君 しかし、現実にはなかなか、私が今危惧したようなことが起こっているという事実をきょうはひとつ大臣に聞いていただきたい。
それは、外勤の職員が例えばけがをしたとか、そういう理由で集配の仕事をできなくなった場合、座って事務をとることはできても、内勤の職員とは任用の形態が違うということから休職をせざるを得ない、そして休職期間が経過すれば退職に追い込まれる、そういう事態が起きております。
そこで、再度官房長にお伺いするんですけれども、二つお伺いいたします。一つは、外勤職員が傷病等で外回りができない場合、内勤にかわるためにはどのような方法があるか。二つは、また現実にそういう希望がある場合にどう対応しているか。この二つについてお願いいたします。
政府参考人(松井浩君) お答え申し上げます。
外勤職員の方は大体外務職として採用された方でありますが、郵政省の職員の場合に外務職と内務職で採用試験が異なっております。その問題は先ほど申しました試験の問題としてあるわけでございまして、ですから、部内でのいろんな各種の選抜試験だとか、あるいは平成十年度から全国的に実施しております職種変更試験、内務から外務へは試験が要らないんですが、外務から内務にということになりますと職種変更試験に合格する必要がございます。そういう方がその試験に合格されれば外務職から内務職への職種変更を行っております。
それから、先生御指摘の傷病等で外務作業が困難になった場合につきまして、御本人の障害の程度、それから内務職への適性等を勘案してやっているというわけでございまして、平成十年六月二日から十一年六月一日まで、一年間でございますが、傷病等により外務職から内務職に職種変更した人員は三十七名ございます。
宮本岳志君 その変更試験というのはどれぐらいの頻度で行っていますか。
政府参考人(松井浩君) 年間に一回程度というふうに聞いております。
宮本岳志君 ここに、ある郵便局の職員から労働組合の幹部のところへ届いた手紙をきょうは持ってまいりました。
新しい総務課長、局長は、先生の言うことを聞いて早く治して出てこいと言います。ただし内務にかわるには試験を受けるしかないと言い、今では試験があるかどうかも言ってくれません。
この職員は公務中の事故で歩けなくなった方です。郵便配達の途中、バイクをとめようとしたとき補助スタンドが突然もとに戻って、バイクの重量がオーバーしていたため足で支え切れずそのまま左足がバイクの下敷きになり、足置きが左太ももに刺さって全く身動きがとれなくなった。五分ぐらいしてようやく起きたが、局に帰ったときにはふくらはぎが二倍にも膨れていたそうです。
治療し、リハビリをしてもいつまでも痛みが続いて、医者にも内勤にかわった方がいいと言われた。しかし、郵便配達が無理なら保険か貯金に行くしかない、もし嫌ならやめるしかないなどと言われて、やむを得ずリハビリと並行しながら保険の外務員の仕事をすることになった。ところが、病院に行くのでさえノルマをこなしてからでないと休みを出してもらえないという中で、無理に無理を重ねながら勤務して、最初の事故から四年目の昨年に再度バイクが転倒し、現在休職中になっております。足のけがが治っていない者を無理にバイクに乗せるようなことをしなければ二度目の事故も起こらなかったのではないかというふうに思うんです。
それから、青森の例というのも私、持ってまいりました。
青森西局のSさん。昨年十二月、配達途中に乗用車と正面衝突。現場検証の結果は相手側が一〇〇%悪かったとのことです。九十五日の入院生活のうち五十日間は寝たきり。本人の努力とリハビリの結果、ことしの十月二十八日には、医師から、病状軽快し就労可能なことを認める、就労に際してはしばらく乗用車の使用が適するとの診断書が出されました。局に行き就労を求めたところ、集配営業課長は、Sさんだけを特定の勤務につけるわけにはいかない、一〇〇%仕事ができるようにならなければ働かせるわけにはいかない、年末でみんなが超勤しているのに自分だけ帰るわけにはいかないだろうなどと言って就労を拒否された、こういう話であります。
八代大臣、こういう職員の実態、どう思われますか。
国務大臣(八代英太君) 今先生から幾つかの例を御指摘いただいたわけですが、職員が在職中に障害者となった場合につきましては、先ほど申し上げましたように、本人の障害の程度等を考慮しながら必要に応じて、外務職でそのまま外務職としてやれるならそれにこしたことはありませんけれども、あるいは内務職へという希望があるとしたらば、今職種変更試験というお話がありましたけれども、そういうことも一方では勘案はするんだけれども、また別の意味での配慮もつけ加えながらやっぱり今後とも努力をしなきゃならぬというふうに思っております。
それと同時に、何ができないかではなくて、何ができるかという思いに立っていきますと、いろんな職種がまた郵政省の中にもあるわけですから、そういう意味では、別に障害があるとかないとかにかかわらず、その人が障害を持ちつつも、私はこういうことをやりたいということを積極的に申し入れていただいて、それにまた道をつけてあげるのも上司の役目だというふうに思っております。
公務中二度にわたるバイクの事故というのはまことにお気の毒だと思いますし、その方が一日も早くリハビリテーションを積み重ねてもらって職場復帰していただくことを私も祈っておりますし、また何かありましたら調査でも何でもいたしまして努力をしたいと思っております。
いずれにしましても、やはり郵便事業に対する愛情の発露からそういうまた事故を迎えたという思いを持ちますと、そういう方々の心を大切にすることが私のまた立場でもあるというふうに認識しております。
宮本岳志君 大変心強い御答弁だったというふうに思います。
大臣は、一九八〇年一月三十日、参議院本会議での初の代表質問で次のように述べられました。
障害を受けることは、それ自体は必ずしも不幸ではありません。それよりも、障害を受けることによって、ともに学び、ともに働き、そしてともに地域社会に平等に参加することが妨げられている現状こそが不幸なのであります。それは、障害を受けた当の本人の不幸ばかりではありません。そうした社会全体の不幸であります。なぜなら、弱い人々を切り捨てる社会は、弱くもろい社会だからであります。
こうおっしゃられましたが、私もまさにそのとおりだと思います。
郵政省を弱くてもろい職場にしないためにも、ぜひ大臣の指導力を発揮していただいて、こういう職員に柔軟な対応をしていただきたいというふうに思います。ぜひ、そういう方向での御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
国務大臣(八代英太君) まさに私は、これからの二十一世紀は郵政省、特に三事業が私たちの身近な福祉の拠点にならなければならないという思いになっておりますので、その拠点たるべく、郵便局を含めたネットワーク化の中で、そうした障害を持った人々も働きやすい職場環境をつくることは当然ですけれども、何よりも郵政省の職員がやはり心を心としてこれから取り組むことが最も大切だというふうに思います。一生懸命頑張りたいと思います。
宮本岳志君 ありがとうございました。