146 – 参 – 本会議 – 9号 平成11年12月01日
平成十一年十二月一日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十号
平成十一年十二月一日
午前十時開議
第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
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○本日の会議に付した案件
一、北海道開発審議会委員の選挙
一、国家公務員等の任命に関する件
一、原子力災害対策特別措置法案及び核原料物
質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法
律の一部を改正する法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
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<消費拡大と雇用安定こそ景気回復の道>
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、さきの財政演説に対し、総理並びに大蔵大臣に質問いたします。
財政演説で大蔵大臣は、我が国経済の現状を、緩やかな改善が続いており、景気は最悪期を脱しているなどと述べましたが、我々がこの目で見、肌で感じる国民生活の実態は到底そんなものではありません。だからこそ、あなた方も、それに続けて、しかしながら消費は低迷し、殊にリストラが雇用に与える影響を考えると、消費が持続的に回復する状況には至っておらず、経済の自律的回復のかぎを握る民需の動向は依然として弱いと認めざるを得ないのではありませんか。
自律的回復の展望が見えないと言いながら、何をもって景気が最悪期を脱し緩やかな改善を続けていると言うのか、総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。
経済の自律的回復と言うなら、個人消費と民間設備投資、とりわけ中小企業の設備投資こそ、そのかぎを握るものであります。ここにこそ対策のかなめがあります。
ところが、今回の補正予算は、この景気回復の二大主役への対策はなく、またもや公共事業の追加であります。しかも、その公共事業の内容は、船が入港せず釣り堀となっているような港湾の整備や、無責任きわまる採算予測に基づく中部国際空港など、大型プロジェクトが並んでいるのであります。また、長銀や日債銀などの破綻処理の穴埋めのために、一般会計から九千億円余りをつぎ込み、NTT株の売却益九千億円余りと合わせ、実に一兆九千億円近くも投入するというものであります。
総理、これでは従来型、銀行・ゼネコン奉仕型の予算の上積みであり、あなた方の言うような公需から民需への円滑なバトンタッチの保証など、何もないではありませんか。総理の答弁を求めます。
国債大増発に頼った公共事業の上積みが景気回復に役立たないことは、一九九二年以来の八回にわたる経済対策で実証されています。もはやゼネコン奉仕型の景気対策はきっぱりとやめるべきではありませんか。答弁を求めます。
民需中心の本格的な景気回復を目指すと言うなら、まず第一に、国民のリストラへの不安、雇用不安を解消し、個人消費の拡大を確かなものにする対策こそ先決であります。
現在の雇用情勢は、政府の経済失政による不況の深刻化に加えて、労働省の調査でも四十一社で十四万人、その後の日産やNTT、三菱自動車など、ますます大規模化するリストラによって一層重大化しています。これらのリストラは、新たな失業者を生み出すばかりでなく、地域経済に深刻な打撃を与え、さらにこれから社会に巣立とうとする若者たちの就職機会をも奪っているのであります。
総理、あなた方の雇用対策の最大の問題は、このリストラに対して何の規制も行わないこと、法的規制になじまないなどと言って野放しにしていることであります。
今、財界の中からでさえ、首を切るなら経営者が腹を切れという厳しい批判の声や、ワークシェアリングによってでも断固雇用を守れとの厳しい声が上がっていますが、雇用問題をどうするかは、労働者の暮らし、雇用を守るだけにとどまらず、まさに日本経済の再生、発展にもかかわる大問題であります。むやみなリストラは、企業にとっても人的資源を失い、将来の発展の芽を摘むことにもなりかねません。
今回、政府は、リストラされた労働者を雇う企業への奨励金などの雇用対策を設けています。これ自体は必要なものですが、大もとにあるリストラ計画の撤回や縮小などの見直しを政府の責任でやらせないのでは、それは結局、リストラ推進のための受け皿づくり、環境整備になってしまうのではありませんか。
総理、今あなたがやるべきことは、リストラ計画に対して、企業任せではなく、日本経済の根幹にかかわる問題として政府の責任で規制を行うこと、そして分社化など企業組織の改編に当たって、雇用と労働条件を守るためのルールを確立すること、さらにはサービス残業の根絶で雇用を拡大することではありませんか。答弁を求めます。
<国民は消費税の減税を強く求めている>
宮本岳志君 そして、雇用対策と並んで国民が強く求めているのが消費税の減税です。先日発表された日銀のアンケート調査では、どのようなことが実現すれば支出をふやすと思うかとの問いに、消費税の引き下げが四九・五%とトップを占めています。
まさに消費税の減税は緊急の課題です。日本共産党は本国会に消費税減税法案を提案していますが、総理、今こそ速やかに、そして真剣に検討すべきではありませんか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
次に、国民の介護と老後の不安にどうこたえるかであります。
補正予算には介護保険の保険料の徴収猶予のための九千億円が含まれています。しかし、恒久的な措置なしにただ当面徴収を延期するだけでは、問題を先送りすることにしかなりません。総理も、保険料は問題なしとしないと述べられていますが、猶予期間が終わった後の低所得者の救済はどのようにするのか、総理の答弁を求めます。
次に重要な問題は、徴収を延期している間にやるべきことは何なのかということであります。保険あって介護なしという状態になることへの国民の不安と怒りは強いものがあります。政府がそのことに気づいたというなら、少なくとも徴収猶予期間の終わるまでには必要な介護サービスができるようにするのが当然の責任ではありませんか。
ところが、補正予算に盛り込まれている五百十三億円の介護基盤整備費は、特別養護老人ホーム五千人分と老人保健施設四千人分でしかありません。厚生省の調査でさえ在宅待機者が四万七千人とされているもとで、これでは焼け石に水と言わなければなりません。総理、これを一体どう解決するのか、明確な答弁を求めます。
今最も緊急を要することは、介護基盤の整備費を抜本的に増額することではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
最後に、財政危機への対応についてであります。
本補正予算によって今年度の国債発行額は三十八兆円を超えて過去最高となり、国債依存度は四三・四%と最悪の借金財政となります。そして、この額は地方交付税を除いた国の税収見込み額を戦後初めて上回ります。つまり、政府が事業をするための最大の財源が税収ではなく借金となることになり、国家財政はまさに危機的状態であります。それにもかかわらず総理は、財政構造改革は経済の回復が本格的な軌道に乗った段階でなどと、問題を先送りする答弁を繰り返し、余りにも無責任であります。
では総理、将来景気回復が軌道に乗った段階が来たとして、これほど危機的な事態に陥った財政をどうやって再建するというのですか。政府税調の加藤会長は、十一月十九日、消費税を一〇%にと発言しました。結局、財政破綻のツケ払いは消費税増税という形で最も弱い立場の国民にかぶせるなどということは、断じて容認できません。総理、はっきりとお答えいただきたいのであります。
さらに重大なのは、調整インフレ論がまたもや頭をもたげ、日銀に国債を引き受けさせようという声が高まっていることであります。国債の日銀引き受けの行き着く先は、歯どめのないインフレーションです。
総理、国債乱発によってかつての戦争が遂行され、戦後、貨幣価値の暴落によって国民が塗炭の苦しみをなめたという痛苦の教訓に基づいて、国債の日銀引き受けを禁じた財政法第五条がつくられたことは常識ではありませんか。返済の見通しもない国債の乱発、あげくの果てには日銀の国債引き受けをもたらすような補正予算は、政府みずからの責任で撤回すべきであります。総理の明確な答弁を求めます。
この危機的な状況を打開する道は、我が党が主張してきたように、社会保障に二十兆円、公共事業に五十兆円という財政構造の逆立ちを正して、国民本位の財政運営に抜本的に切りかえる以外にはありません。
消費税の増税も調整インフレ政策も、どちらもまさに亡国への道である、このことを厳しく指摘して、私の質問を終わります。(拍手)
<リストラへの法規制を否定する答弁>
国務大臣(小渕恵三君) 宮本岳志議員にお答え申し上げます。
まず、日本経済の現状についてのお尋ねがございました。
日本経済は、本年に入って二四半期プラス成長が続き、その後も鉱工業生産の増加などが見られ、景気は緩やかな改善が続いております。ただし、これは主として各種の政策効果の浸透と輸出の増加に下支えされたものであり、個人消費や設備投資など民間需要の回復力はまだ弱いと考えております。景気を本格的回復軌道に乗せていくため一層の努力を行う必要があると考えております。
経済新生対策及び補正予算における公共事業の効果についてのお尋ねがありました。
政府におきましては、九〇年代に入って以降、累次の経済対策を講じてきたところでありますが、これら対策による公共投資の増加につきましては、バブル崩壊後の民需の落ち込みを相殺する形で、景気がスパイラル的に悪化していくのを防止し、その下支えに貢献してきたものと考えております。
第二次補正予算におきましては、経済新生対策を実現するために必要な措置として、社会資本整備費について、情報通信・科学技術の振興、生活基盤の充実強化、少子高齢化・教育・環境特別対策といった分野を中心に、総額三兆五千億を計上しております。また、我が国経済のダイナミズムの源泉である中小・ベンチャー企業への資金供給を円滑化すること等を目的として中小企業等金融対策費七千億円余りを計上するなど、将来の新たな発展基盤の確立に不可欠な分野に重点的な配分を行うとともに、国民生活に直結した雇用対策や介護対策についても必要な措置を講じております。
政府は、経済新生対策を初め必要な諸施策を強力かつ機動的に推進することにより、公需から民需への円滑なバトンタッチを図り、我が国経済を民需主導の本格的回復軌道に乗せていくよう努めてまいります。
大企業のリストラに関するお尋ねがありました。
リストラは企業の経営にかかわる問題であり、御指摘のようにリストラに対する規制を設けることは適当ではないと考えます。
政府としては、企業や経営者団体に対して、従業員の雇用の安定に向けての最大限の努力を求めるとともに、雇用の安定等の面から必要な指導、援助を行うなど雇用対策に万全を期してまいります。分社化等の企業組織変更に伴う労働関係上の諸問題につきましては、労使間で十分話し合うことが基本であると考えております。いわゆるサービス残業については、的確な監督指導を実施し、その是正に努めてまいります。
次に、消費税減税についてお尋ねでありましたが、消費税率の引き上げを含む税制改革は、少子高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものであり、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えます。消費税に限らず税は低い方がいいという面はありますが、税財政のあり方を考えるとき、消費税率の引き下げは困難であり、この点、国民の皆さんに御理解をいただきたいと存じます。
低所得者に係る介護保険料の取り扱い及び介護サービスの基盤整備についてお尋ねでありますが、介護保険制度においては、低所得者の方にも配慮し、所得段階別に保険料を設定することとしております。また、特別養護老人ホームを初めとする介護基盤の整備を引き続き推進し、サービスの確保に努めてまいります。
次に、我が国の財政状況に対する認識及び財政再建の見通しについてのお尋ねがありました。
我が国財政は、公債依存度が第二次補正後四三・四%、十一年度末の国、地方の長期債務残高が六百八兆円にも達する見込みである等、極めて厳しい状況にあることは十分認識しております。その認識の上に立って将来世代のことを考えるとき、財政構造改革という大きな重い課題を背負っていると痛感しております。
ただ、せっかく上向きになった我が国経済をさらに大きく前進させることによって財政状況の改善が図られるような時点をしっかりと見きわめる必要があり、その見きわめを誤り景気後退といった流れになってしまってはいけません。したがって、我が国経済が回復軌道に乗り、足元がしっかりと固まった段階において、財政、税制上の諸課題につき中長期的な視点から幅広くしっかりとした検討を行い、国民の皆様にそのあるべき姿を示すというのが順序ではないかと考えております。
消費税率についてのお尋ねでありましたが、消費税率の問題を含む将来の税制のあり方につきましては、今後、少子高齢化の進展など社会経済構造の変化や財政状況等を踏まえ、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えております。
国債の日銀引き受けについてのお尋ねでありました。
戦前、戦中に軍事費等の調達のために多額の公債を日銀引き受けにより発行した結果急激なインフレが生じたことを契機として、現行財政法においては、健全財政主義の原則とあわせて、公債の日銀引き受けを原則として禁止し、公債は日銀以外の市中資金により消化するという市中消化の原則を定めているところであります。
政府といたしましては、こうした財政法の趣旨を遵守することが必要と考えており、国債の発行に当たっては、市場のニーズを踏まえつつ、市中資金によるその確実かつ円滑な消化に努めてまいりたいと考えております。
<蔵相は景気の「最悪は脱した」と強弁>
>国務大臣(小渕恵三君) 社会保障に二十兆円、公共事業に五十兆円という財政構造を是正すべきではないかとのお尋ねがありました。
御指摘の数字の根拠は定かではありませんが、まず社会保障の水準については、我が国の社会保障給付の財源の相当部分は保険料収入であり、保険料も国民負担の一部であることにかんがみれば、御指摘が仮に公費負担額だけを取り上げているとすれば、その水準を議論したり他の経費と比較することは適切でないと考えております。保険料負担相当分も含めた社会保障給付費全体と比較して試算すれば、国、地方を合わせた公共事業費の一・四倍程度となっております。
今後とも、社会保障に関しては、高齢化の進展に伴い社会保障給付費の増加が見込まれる中で、必要な給付を確保しつつ、社会保障構造改革を推進し、制度の効率化、合理化を進めてまいりたいと考えております。
また、公共投資に関しては、将来の発展基盤の構築に向けて、時代のニーズや要請を見通しつつ、必要な分野、事業への戦略的、重点的投資を行うとともに、その実施に当たりましては、効率性、透明性の確保に努めてまいりたいと考えております。
以上、御答弁申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
国務大臣(宮澤喜一君) 政府は、景気刺激の対策をやっているにもかかわらず、他方で景気は最悪のところを脱したと言っているのはおかしいじゃないかと、こういうお尋ねであったわけです。
私ども思いますのに、我が国経済は一年半、四半期ごとにずっと対前期マイナスを続けてきたわけですから、ずっと一年半滑り続けてきたわけでございますが、それがことしの一―三月になりまして初めてプラスになった。年率八%というのはちょっと高過ぎたかもしれませんが、とにかく八%。その次どうなるかと思いましたら、四―六がやっぱりプラスになったんですね。これはそう高くはありませんでした、年率〇・八ですけれども。
ですから、二四半期プラスが続いた、一年半の後にということは、普通に常識的に考えて、まあこれで一番悪いところは過ぎただろうと。来週になりますと今度はこの七―九が出るわけで、それは必ずプラスになるということを申し上げているのではありませんが、傾向としては明らかに滑り続けた事態はもう変わったと、こう判断をしているという意味でございます。ただ、それでも実はいろいろ不安要因がありますので、補正予算と本予算ではひとつもう一遍しっかりやらなきゃならぬと思うということを申し上げております。
それで、その不安要因あるいはいい要因は何かと。もう簡単に箇条書きで申しますと、個人消費は、収入が低迷しているなどから足踏み状態である。住宅建設はまあまあである。設備投資は、これはどうもぐあいが悪い。公共投資は、かなり事業は進みましたが、このところ着工は低調である。輸出は、まあまあアジアがよくなって少しよくなっておる。在庫は、調整が進んでおりますけれども生産を刺激するほど在庫が小さくなっているわけでもないようであります。それから、雇用情勢は、もう今リストラになり、これこれで、残業時間はふえていますけれども常用雇用は減っているということでございますから、決して楽観できる状態ではない。
そのように、多少のいい要因とよくない要因がございますので、ここで油断をするわけにはいかぬと、こう思っているわけであります。(拍手)