147 – 参 – 財政・金融委員会 – 15号 平成12年05月09日
平成十二年五月九日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月一日
辞任 補欠選任
加納 時男君 片山虎之助君
五月八日
辞任 補欠選任
櫻井 充君 羽田雄一郎君
笠井 亮君 宮本 岳志君
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出席者は左のとおり。
委員長 平田 健二君
理 事
岩井 國臣君
中島 眞人君
寺崎 昭久君
海野 義孝君
池田 幹幸君
委 員
片山虎之助君
河本 英典君
世耕 弘成君
中島 啓雄君
林 芳正君
日出 英輔君
平田 耕一君
星野 朋市君
伊藤 基隆君
久保 亘君
羽田雄一郎君
浜田卓二郎君
宮本 岳志君
三重野栄子君
国務大臣
郵政大臣 八代 英太君
政務次官
大蔵政務次官 林 芳正君
郵政政務次官 前田 正君
事務局側
常任委員会専門
員 吉田 成宣君
政府参考人
警察庁長官官房
審議官 佐々木俊雄君
金融監督庁監督
部長 乾 文男君
運輸大臣官房審
議官 金子賢太郎君
郵政省簡易保険
局長 足立盛二郎君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○郵政官署における原動機付自転車等責任保険募
集の取扱いに関する法律案(内閣提出、衆議院
送付)
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<無保険車両をなくすための対策を>
今回の法案が無保険車両の根絶に役立つということであれば大変よいことだと考えております。
まず、運輸省にお伺いいたしますけれども、そもそも郵便局の窓口で自賠責保険を取り扱うということについては、運輸省から郵政省へ働きかけがあってのことなんでしょうか。
そうなりますと、本当の目的はどうなんだろうか、ほかにあるのではないかという議論が出てまいります。実際、新聞では、これは損保に郵政が参入する突破口ではないか、こういう報道もされているわけであります。
そこで、郵政省にお伺いするんですけれども、郵便局でバイク、原動機付自転車の自賠責保険を扱えば無保険車両というのは確実に減るわけですか。
それで、まずこの問題のリアルな実態を知る必要があると思います。先ほども議論がございました。無保険車の取り締まり件数、これは先ほど答弁がございましたが、昨年で千二百九件、一昨年で一千二百五十四件、これは交通違反総数の〇・〇一%と微々たる数ではあるんですけれども、無保険の車両が実際に道路を走っているというのは重大な問題だと思います。
そこで、これは運輸省自動車交通局にお伺いいたします。
自賠責保険及び保障事業の受け付けのうち、二百五十cc以下のバイク、原付に係るものは何件で、そのうち当該の車両が無保険だったケースは何%だったか、直近の統計で御答弁ください。
無保険車が事故を起こしまして加害者になった場合に、政府保障事業というジャンルを立てておりまして、そこから一定の保障金が被害者に支払われるわけでございますけれども、この政府保障事業における無保険車事故に係る支払い件数、これは単年度で若干のぶれがございますので、最近三カ年間、すなわち平成八年度から十年度までの三カ年間の平均で見てみますと、一年当たり三百八十二件でございまして、先ほど来御議論になっております車検の対象でない二百五十cc以下の原付バイクなどに係るものが三百八十二件中八十四件でございまして、比率としては二二%となってございます。
運輸省はこういう実態を踏まえて対策をとっておりますか。
まず、自賠法という法律上、検査対象車両につきまして、無保険車両を発生させないために、自動車の新規登録や継続車検等を含めまして車検時に車検の有効期間の全部をカバーする自賠責保険契約が付保されていなければ、仮に車として構造上百点満点をとった問題のない車でありましても車検証を交付しないということで、無保険車両の出現を防止しようとしておるわけでございます。
ですから、車検対象車につきましては無車検車両対策に尽きるかと思うのでありますけれども、この具体的な対策の内容といたしましては、自動車検査証に車検の有効期間を明記することはもちろんでございますが、フロントガラス、前面ガラスに、自動車検査標章と申しておりますが、これを貼付しておりまして、これに自動車検査証に記載されているのと同じ有効期間を記載して、常に運転者の目に触れるように措置をする、こういったことで検査対象車両の無車検車の割合を極めて低く抑えようとしておりまして、原付等、本委員会で問題になってございます無保険車両の割合が数%程度であるのに対しまして、検査対象車両の無車検車率、無保険車率というものはおよそその百分の一以下ではないかと推定をしております。
また、年間約八万台実施しております街頭検査におきましても自動車検査証の有効期間切れにつきましては必ずチェックをしておりまして、厳正に対処しているところでありまして、無車検車両、無保険車両の取り締まりは今後とも厳しく実施をしていくつもりでございます。
ここで私は一つ提案をしたいと思うんです。
今回、郵便局で扱うことになる原付などの無保険車を本当に減らそうと思えば、ただ郵便局など取扱窓口をふやすだけでは不十分だと私は思います。そもそも自賠責保険は任意保険とは違いまして、保険の期限を知らせる通知が送られる仕組みになっておりません。ぜひこの機会に自賠責保険も期限切れが近づいたらはがきなどで知らせるようにすべきだと思うんです。そうしてこそ、皆さんの身近な郵便局でも取り扱っておりますよ、ぜひ郵便局でお手続くださいと、こういうことが生きてくるといいますか、効果を発揮するのではないか。
この点はぜひ検討する必要があると思うんですが、これは運輸省になるんでしょうか、そういうふうに御検討いただけませんでしょうか。
宮本岳志君 ぜひそういう仕組みも活用していただいて、その中でも一層注意を喚起していただきたいというふうに思っております。
<泣き寝入りをうまないことが大前提>
宮本岳志君 郵便局の窓口で扱う問題については後でもう一度触れたいと思うんですけれども、この際ですから自動車損害賠償責任保険という制度について幾つかお伺いをいたします。
財界や損保業界の強い要望を受けて自民党が政府再保険廃止の方向を固めたと報道されております。しかし、そもそも一方の当事者である損保業界が本当に再保険廃止を望んでいるのかどうかという問題なんです。
運輸省が行った損保協会加盟三十一社に対するアンケートの結果が自賠責懇談会に示されていると思うんですが、その結果、再保険廃止に賛成は何社でございましたか。
しかし、その後、業界全体としての議論も進んだようでございまして、現在では、損害保険協会の見解として、政府再保険廃止については業界一致で賛成しているというふうに見解が表明されております。
そこで、私が改めて指摘をしたいのは、最近の再保険制度をめぐる議論は自賠責という制度の原点を忘れたものではないかということであります。
一般に任意保険と呼ばれている自動車保険には、結果として被害者への補償が確保されるという効果はあるんですけれども、直接的にはこの目的は被保険者の損失の補てんということになっております。だから加入も任意ということだと思うんですね。
しかし、自賠責はそうではございません。自賠責制度の根拠となっている自動車損害賠償保障法の第一条には目的がどのように定められているか、お答えをいただけますか。
自動車というのは社会の利益になる、これはもちろんですけれども、同時に事故によって被害を及ぼす可能性を常に背負っております。だからこそ自動車の運行によって利益を得ている者には他者に与える害に対して連帯して負うべき責任がある、自賠責保険はそうした考え方を踏まえて社会保障的な制度として確立をされていると、これは調査室の資料でもそのように説明されております。だからこそ加入が強制されているし、ひき逃げなどに対する政府の保障事業とリンクをしておりますし、保険金も加害者の責任との単純な比例ではなく、被害者に厚い保険金がおりるように設計をされております。
自賠責の自動復元性ということがございますけれども、これによって個々の被害者に対する補償額には上限があっても加入契約一件当たりの補償額には限度がないということになっておりますが、これはどのような理由によってこういう制度になっておりますか。
ところが、衆議院の運輸委員会で我が党の同僚議員が指摘したように、死亡事故であるにもかかわらず全く保険金がおりないというケースが少なからずございます。負傷事故と比べても、死亡事故の場合には責任が一〇〇%被害者の側にあるとされてしまう率、つまり加害者無責という率が極端に多いということで、マスコミなどでは死人に口なしになってしまっているのではないかと指摘をされております。
そうした被害者保護対策の改善をこそ具体化して法案提出をすべきではないのかと私は思いますけれども、この点の皆さん方の取り組みを御答弁いただきたいと思います。
現在、政府再保険の廃止問題につきまして部内的にも議論を進めておるところでありますけれども、被害者保護の充実を図るという観点から、今後いろいろな制度についての取り組み、検討を進めてまいりたいと思っております。
宮本岳志君 我が党は、今回提出されている法案をめぐって寄せられている交通事故被害者の方々からの声を真摯に受けとめてその対策が一歩でも前進することを願う立場から、衆議院でも本法案に賛成の態度をとってまいりました。しかし、これのみで無保険車両が解消できるわけではなく、今後も自賠責保険のあり方については委員会審議を通じてチェックしていくつもりでございます。特に、政府再保険制度の廃止などということは絶対に許されないということをこの機会に厳しく指摘しておきたいと思います。
<度を超えた営業目標への駆り立て>
宮本岳志君 さて、新たにこの保険の窓口となる郵政官署については、度を超えた営業活動の職務の押しつけがあることを私は再三取り上げてまいりました。しかし、郵政省はなかなか謙虚に事実をお認めにならなかったわけであります。
そこでお伺いいたします。四月十七日、大阪版の各紙で、兵庫の集配特定郵便局長による簡易保険契約書の偽造事件が報道されております。そのような事件があったのかどうか、事実の有無だけお答えいただきたいと思います。
現在、詳細な事実関係は調査中でございますが、いわゆる病院の職員の福利厚生を目的とした簡易保険の利用を提案しておったのでありますけれども、個々の被保険者、契約者の同意を確認しないままに手続を進めておったというものでございます。
ノルマといいますか、営業目標の押しつけが不祥事を招いたともとれるわけですけれども、毎日では近畿郵政局の話として、営業目標の達成は人事考課の対象にしているがノルマではない、指導が厳し過ぎるとは思わないと書いております。郵政省の見解も同様でございますか。
ただ、いわゆる経営でございますので、事業を推進する場合にはやはり一定の目標を掲げそれをみんなで取り組んでいくということは、企業経営上、当然必要なものでございます。そういう過程におきまして、目標が達成できなかったようなときに職員が心理的な負担を感じるということはあり得ることだと思いますが、私はある程度のことはやむを得ないことではないかというふうに考えているところでございます。
ここに東京都内の郵便局に関東郵政局から出された保険部長名の通達文書がございます。表題は「販売実績の集計等に係る申込撤回等の処理について」となっております。内容は、二月末までに発生した申し込み撤回等の処理は二月二十九日付ですべて処理することと、こう書いてあるわけですね。つまり、一たん申し込んだがすぐ取り消したという契約が非常に多いために職員が正味でノルマを達成したかどうかわからない、だから取り消された契約の清算はすぐにやれという意味だと思うんです。
こういう実態は、最初の月の分の保険料だけ自腹で払って、あとは解約するつもりだったと、先ほどの兵庫の事件のようなことが広範に行われているということを示唆するものですが、いかがですか。
また、そういう第一回目の保険料を払ってすぐに解約するというようなことを仮にやったといたしましても、それは当該局の実績として何ら評価されるものではございません。また、仮にそういうようなことが行われたといたしましても、必ず保険証書が当該本人のもとに送られてまいりますし、正規の同意を得てきちんと契約を結んだものかどうかということは判明するわけでありますので、そういうような取り扱いが広く行われているというふうには私は考えておりません。
それで、ペナルティーはないという御答弁が先ほどございました。
私はきょうもう一つ都内の郵便局でつくられた販売促進のための文書を持ってまいりました。これは「一~三月までの営業活動」という表題になっておりますけれども、ここには六番という項目がありまして「ペナルティー」と書いてあります。このペナルティーの中身は「推進計画に対し未達の人」、「月間目標未達の人」と書いてあって、中身は口頭で伝えるということになっております。
この中身はどういうものであるのかと実は現場の方にお会いをして具体的に聞いてまいりました。この方が体験された例でいいますと、研修というものを受けさせられたと。研修というものでいいますと、例えば一月の十一日から十三日、小会議室に閉じ込められて、入れかわり立ちかわり保険課長、総務課長、上席代理などがやってきてたった一人で話を聞かされたと。こういうのは一般世間では研修とは余り言わないわけであります。
それで、こうした営業目標の強制に今回の自賠責というようなものが含まれるということになりますと私は到底賛成しかねるわけですが、こういった点についてはどうお取り扱いになるおつもりですか。
それから、今いろいろ御指摘がありましたが、しかしこういう厳しい世の中でありますから、郵政省とてもしっかりと国営としてやっていくには、皆さんに頑張ってもらえ、月月火水木金金、こういう思いでやれと、そして目標に向かってはみんな奮励努力しろと、これはあると思うんです。だから、それをペナルティーとかなんとか、余りルーズでもいけないし、だからといって過激にペナルティーを科すような、そういうことはやらずに、国民に信頼される、いろんな意味で硬軟使い分けながら皆さんに頑張ってもらわなきゃならぬ、こう思っております。
今度の自賠責はともかく、そういう状況のもとで、例えば先ほど来議論があるように、無原則に郵便局での取扱商品をふやしていくということになれば、国民から、民営化への準備ではないか、そういうふうに見られても仕方がないと指摘をせざるを得ません。ぜひそういう点をしっかり踏まえて、国民本位の郵政事業を守る立場で頑張っていただくことをお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。