147 – 参 – 財政・金融委員会 – 18号 平成12年05月18日
平成十二年五月十八日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
五月十七日
辞任 補欠選任
久保 亘君 内藤 正光君
五月十八日
辞任 補欠選任
笠井 亮君 宮本 岳志君
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出席者は左のとおり。
委員長 平田 健二君
理 事
岩井 國臣君
中島 眞人君
寺崎 昭久君
海野 義孝君
池田 幹幸君
委 員
河本 英典君
世耕 弘成君
中島 啓雄君
林 芳正君
日出 英輔君
星野 朋市君
伊藤 基隆君
櫻井 充君
内藤 正光君
浜田卓二郎君
笠井 亮君
宮本 岳志君
三重野栄子君
椎名 素夫君
国務大臣
大蔵大臣 宮澤 喜一君
郵政大臣 八代 英太君
政務次官
大蔵政務次官 林 芳正君
郵政政務次官 前田 正君
事務局側
常任委員会専門
員 吉田 成宣君
政府参考人
人事院事務総局
職員局長 中橋 芳弘君
総務庁長官官房
審議官 藤井 昭夫君
総務庁行政管理
局長 瀧上 信光君
総務庁行政監察
局長 塚本 壽雄君
大蔵省主計局次
長 寺澤 辰麿君
大蔵省理財局長 中川 雅治君
厚生省年金局長 矢野 朝水君
運輸大臣官房審
議官 鷲頭 誠君
郵政大臣官房長 松井 浩君
郵政省貯金局長 團 宏明君
郵政省簡易保険
局長 足立盛二郎君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○資金運用部資金法等の一部を改正する法律案(
内閣提出、衆議院送付)
○郵便貯金法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
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宮本岳志君 日本共産党の宮本です。
今回の改正案は、財政投融資の中の中枢を占める資金運用部資金について、その中心的な財源である郵貯資金、年金積立金を預託義務から外し、自主運用を認めることによってこれらの資金を切り離そうというものであります。したがって、郵貯、年金などの資金は全額自主運用となり、金融市場で運用されることになってまいります。
財政投融資の現状には確かに多くの問題がございます。そのあり方が問われていると思います。しかし、最大の問題は、その制度にあるのではなく、歴代自民党政府がこの制度を乱用して専らむだな大型公共事業や大企業のための産業基盤整備のために投融資してきたことであり、また一般会計の赤字を当面糊塗するために財投資金を流用したり、大企業本位の景気対策に乱用してきたことだと考えます。
我が党も財政投融資制度の改革は急務だと考えますけれども、それはこのようなまさに財投制度の解体によってではなく、ディスクロージャーを徹底し、財投を国民と国会の監視のもとに置くことによって、むだな公共事業や大企業本位の産業基盤整備から国民生活と福祉基盤の整備の方向に財政投融資対象を大きく切りかえることこそ必要だと思うんです。
そういう立場から、私は郵便貯金法等の改正案に絞って質問をいたします。
まず、総務庁の平成十二年度青少年対策関係予算各省庁重点事項別政府予算額調というのが手元にございます。その中にこども郵便局の育成等という項目があるんですけれども、予算額と施策の目的は何ですか。
政府参考人(團宏明君) お答え申し上げます。
平成十二年度青少年対策関係予算重点事項別政府予算額の中に、郵便貯金に係るものとしてこども郵便局の育成等の項目がございます。合計で三億五百万円でございますが、大別して三つございます。
一つはこども郵便局、これは小学校等で先生方の御支援も得て郵便貯金をやっていただいておりますが、この郵便局の表彰等に対する支出でございます。金額は二千八百万円程度でございます。二番目に貯金箱コンクールというのをやっておりまして、これが二億五千八百万円でございます。三番目が国際協力に関する作文コンクールの実施、これは一千九百万円でございますが、これは郵便貯金におきまして国際ボランティア貯金というのをやっておりまして、その施策の関連でこういう作文コンクールをやっているというものでございます。
宮本岳志君 今御紹介があったように、学校で貯金係の子が子供たちのお小遣いなどを集めてまとめて郵便貯金に入れる、こういうものですね。このこども郵便局は総務庁のまとめには毎年出てまいります。そもそもいつから始まったものか、そして現在何校でやられているか、お答えください。
政府参考人(團宏明君) お答えいたします。
こども郵便局は昭和二十三年五月から始まっているものでございますが、この趣旨は、児童生徒自身に金銭を合理的に使う態度を学ばせ、経済的関心を深めるともに、貯蓄心を養う、そういうふうなことを目的として行われているものでございます。
平成十一年三月末現在でございますが、こども郵便局を実施している学校数は二千二百八十九校、こども郵便局数は三千五百六十六局となっております。
宮本岳志君 郵便貯金は「国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする」と。これは郵便貯金法第一条に明確に定められております。高度の公共性を持っております。だからこそ、国の行う事業であって、郵政大臣がこれを管理しているわけであります。
したがって、この郵便貯金で集まってきた資金というのは、学校で子供たちから集めたお小遣いも、お年寄りの老後の支えとなる生活資金も全部この中には入っているわけであります。だからこそ、私はその資金の運用に当たってもその性格を踏まえたものでなければならないと思うんですね。つまり、確実、有利はもちろんですけれども、公共の利益に沿った配分、運用が極めて重要であります。
ところが、今回の改正案では、郵貯、簡保ともに自主運用の原則として確実で有利な方法により、かつ公共の利益の確保にも配意するとし、公共性の方は単に配意するだけでよいことになってしまっていると思うんですね。大臣、これは先ほど申し上げたような資金の性格から見た公共性の明白な後退ではないでしょうか。
国務大臣(八代英太君) 後退ととるか前進ととるかはそれぞれ人の分かれるところでございますが、宮本委員は後退という表現で今御質問でございます。
今後の郵貯・簡保資金の運用につきましては、地方公共団体に対する直接貸し付けを行うほか、財投改革の趣旨に沿って安全確実な債券への市場運用を基本とする仕組みに移行することとしているわけでございます。
公共の利益ということでございますが、公共の利益に係る簡保の運用原則の規定については、地方公共団体を除く財投機関への直接貸し付けの廃止等を踏まえて改めることにしたものでございます。
しかし、郵貯・簡保資金は、全国の郵便局を通じまして、今、子供さんも含めてお年寄りも含めて、そういうものが資金でございますから、国営事業の役割として、今後とも地方公共団体貸し付けを通じて住民の身近な社会資本の整備のために資金を還元するということによりまして、まさに子供さんたちの学校であれ、地域の安心、安全であれ、いろんな意味で使われるということでございますから、公共の利益のために貢献していく必要があると考えておりまして、それを配意という表現をするから後退だとかというのじゃなくて、かえって公共的な利益に還元するように有効にしていこうということですから、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
宮本岳志君 この運用に当たっての研究会の中間報告、そこでは、やはり配意という言葉に今回、私は後退だと思うんですけれども、それにふさわしく、公共の利益という口実で、つまり有利に運用ということができなくなることがあってはならないということも述べられているわけですから、私は大臣が今おっしゃったような決意を運用にも貫くべきだということを申し上げておきたいと思います。
<国民は安全な金融商品を求めている>
宮本岳志君 そこで、国民は今、郵便貯金に何を求めているかということを次に論じたいんです。
最近のいわゆる郵貯の集中満期の問題で、一部には、郵貯資金がこれで一気に流出して株式市場は大活況を呈するだろうと言われてまいりました。そこでお伺いしますが、満期を迎える定額貯金の再獲得の状況はどうですか、これは数値のみで結構ですから。
政府参考人(團宏明君) お答えいたします。
御指摘の集中的な満期の状況でございますが、これは平成十二年度から十三年度にかけまして元利合計約百六兆円の満期を迎えるというふうなことになるわけでございます。このうち、三十一兆円程度の再預入を目指しているというところでございます。
具体的に、四月分がまとまりましたので御報告申し上げますが、四月期におきましては満期を迎えた定額貯金の払い戻しが元利合計で六兆六千億ございました。このうち、三兆六千億円が定額貯金及び定期貯金へ再預入されております。それから、通常の時期よりも通常貯金に預けられた金額というものが約八千億程度ございまして、これを仮に入れますと四兆四千億程度が再預入されたというふうな計算でございます。率で申しますと、払い戻しされた金額に対しまして、定額、定期貯金合計で約六六%が再預入されたということになりますが、この払い戻しのうち利子課税金額が約五千億程度というふうに見ておりますし、また一千万円の限度を超えた金額もあろうと思いますので、そういうものを除きますと、可能な範囲での再預入率で考えますと約八七%というふうなことになろうかと見ております。
宮本岳志君 ぜひ端的にお願いしたいんですが。
予想を超えて郵貯にやはり頼っておられるということだと思うんですね。
それで、貯蓄広報中央委員会の行っている貯蓄と消費に関する世論調査をきょうは持ってまいりましたけれども、金融商品を選択する際に重視することという問いがこの調査の中にございます。これを見てみますと、元本が保証されている、これは九七年に他の理由を抜いて一位になりまして、昨年はさらに上昇して三三・八%と群を抜いております。これに対して、二位は取扱金融機関が信用できる、これが二二・一%ございます。これに対して、利回りがよいは一二・五%で四位ということになっております。
これは郵政大臣にぜひ基本的な問題としてお伺いしたいんですが、国民が郵貯に期待しているのは何よりも安全性、確実性と、こういうことはよろしいですね。
国務大臣(八代英太君) 今データをお示しいただきましたけれども、貯蓄広報中央委員会の貯蓄と消費に関する世論調査、ありがとうございます。元本が保証されているからという安心感、三三・八%、それから取扱金融機関が信用できて安心だから、二二・一%ということを考えてみますと、合計で五五・九%を占めておりまして、まさに安全性を重視する傾向をまた郵便局へ期待している、こういう結果だと思います。
また、ある新聞社が実施した金融機関のイメージに関するアンケート調査によりますと、郵便局は信頼できる、これが第一位なんですね。六八・一%ございました。健全な経営をしている、これが第二位で二五・四%で、これもまた高い評価をいただいておるわけでございます。
郵便貯金は、そういう意味では全国あまねく津々浦々、二万四千七百ございますし、そういう中において非常に確実な運用をしているものですから、しかしそういう中にも、確実性の中でさっき数字が低いというおしかりを受けたわけですが、例えば福祉定期預金のように他の一般金融機関ではなかなか四・一五%というような今の低金利時代ではとてもやっていけないというので撤退するようなケースもございますけれども、しかしまさに国民共有の財産としての郵便貯金はそういうものもしっかり押さえながら、国民の皆様に還元していくという施策もぜひ御評価をいただきたい、このように思います。
宮本岳志君 利用者にとって金融商品の利回りは高い方がよい、それは当たり前の話だと思うんですけれども、しかしこういう調査結果を見る限り、将来の安心のために安全確実な貯蓄を必要としている。日産生命の破綻で加入者が大変な目に遭ったというのも記憶に新しいところです。そして、それは、これまでの自民党政治が進めてきた医療費の国民負担増だとか年金制度の改悪など、病気などのいざというときの不安、国民の老後の不安をあおるような政策を進めてきたからこそ、またなおさらのことだと私どもは考えております。
<「自主運用」には大きなリスク>
宮本岳志君 それにもかかわらず今回のこの自主運用が本当に預金者の利益のためになるのか、このことを幾つかの角度から検証してみたいと思うんです。
まず、保険局長に聞きますけれども、九六年度末における簡易保険資金の指定単運用の累積損益は幾らだったか、お答えください。
政府参考人(足立盛二郎君) 九六年度末でございますが、指定単運用の累積損失につきましては三千六百七十九億円となっております。
宮本岳志君 その後、成績が若干改善したという資料もありますけれども、三千億程度は累積欠損だということですね。これは埋めが終わるまであと何年かかるかという状況だと思うんですけれども、こういう危険が既に生じているわけなんですね。
こういうリスク、つまりこういう欠損が生まれる可能性もあるというリスクを承知で自主運用するメリットは一体どこにあるのか、ぜひ端的にお答えいただけますか、保険局長。
政府参考人(足立盛二郎君) 御案内のように、指定単は郵貯、簡保の本体で運用ができない株式等に資金運用するためにつくられておるわけであります。
先生御指摘のように、株式というのはリスクがあることは事実でございます。また、同じように、例えば外貨債なども為替リスクといったものがあるわけでございます。
ただ、資金運用の考え方といたしまして、そういうリスクのあるものとないものとを組み合わせて運用する、いわゆる分散投資による効率的なポートフォリオと申しますか、例えば債券と株式を組み合わせる、あるいは国内債と外国債を組み合わせるといったようなことによりまして、リスクがお互いに相殺されまして効率的なポートフォリオを形成して資金運用を行うというのが現在のポートフォリオの考え方でございまして、株式にリスクがあるから直ちにこれを資金運用の対象としては除外すべきだということではないというふうに理解しておるところでございます。
宮本岳志君 ポートフォリオという言葉が出ましたが、実際にこの間、こういう運用の失敗で損失が出ているという議論はいろんな場面で繰り返されてきたわけですよ。例えば今国会でも、年金の運用をめぐって国民福祉委員会での議論もございました。しかし、ポートフォリオ、あなた方がおっしゃるような分散投資というものをやっていてこういう穴があいているわけですからね。それを知らずに穴があいた話ではないんですから。今までもやっていて、穴があくときにあいているわけですから。そこが今本当に問われているんじゃないかと思うんです。
では、郵政省に改めて聞きますけれども、年金資金の運用が大問題になりましたが、これとあなた方がこれから自主運用するこの資金の運用とは違うと、そういうふうにお考えですか。
政府参考人(團宏明君) お答えいたします。
郵便貯金につきましては、来年度以降全額自主運用というふうになるわけでございます。
この運用の安全性ということについての御質問かと思いますが、実はこの法案におきまして、郵貯の運用対象につきましては国債、地方債等の元本保証のある債券を中心というふうなことで、そもそも信用リスクは相対的にかなり小さいものを対象とするというようなことにしておりますし、また特定の銘柄に偏らない分散投資と適切なポートフォリオを組んでいくというようなことにしております。それから、運用の方法も、先ほど答弁もございましたように、短期間の値ざや稼ぎということをやらないでバイ・アンド・ホールドでやっていくというようなこと等をやっていきますので、こういうふうな運用の方法により確実な運用ができるのではないかというふうに考えております。
実績としましては、昭和六十二年以降、金融自由化対策資金の中でそれなりの実績を上げておりますし、それと余り対象も変わっておりませんので、そういう実績を生かして今後努力してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
宮本岳志君 今、私は年金と違うのかと聞いたらそういうふうにお答えなので、適切な運用、あるいはリスクも小さいと。そうしたら、年金の方はリスクの大きいことをやった、あるいは適切でないことをやったということなのかと思いますが、では厚生省の方はどう言っているかと。
これは、ことしの三月二十一日、国民福祉委員会で矢野年金局長は、「私どもの場合はこれは時価評価をいたしております。郵政省の場合は簿価評価です。」、ここが違うと。「それから、郵政省も指定単で一部外部運用しておりますけれども、これにつきましては詳細がディスクロージャーされていない、こういう状況でございます。」と答弁されました。
厚生省年金局長、事実ですね。そして、このディスクロージャーしていない詳細とは何ですか。
政府参考人(矢野朝水君) お答え申し上げます。
ことしの三月二十一日の参議院の国民福祉委員会におきまして、私どもが実施しています年金福祉事業団の運用と、それから郵政省で行っております郵貯の金融自由化対策資金、この違いをいろいろ聞かれたわけでございます。そのとき、私は、一つの問題といいますか、ポイントといたしまして運用のディスクロージャーということを申し上げたわけでございまして、郵政省で指定単運用をやっておられます部分につきましては時価による評価が行われていない、こういうことを念頭に置きまして、詳細についてディスクロージャーがなされていないという答弁をしたわけでございます。
宮本岳志君 では、少しディスクロージャーについて聞きたいんですけれども、簡易保険福祉事業団からここ五年間に指定単運用を委託した金融機関名、九九年度末における金融機関ごとの運用残高及び損益はどうなっているか。これは郵貯資金と簡保資金のそれぞれについてお答えください。
政府参考人(足立盛二郎君) 指定単の運用先であります信託銀行別にその名称あるいは委託残高といったものを公表することにつきましては、私ども国または事業団の当該信託銀行に対する評価、そういったものを明らかにすることになりますし、信託銀行の経営といったものにも影響を与えることにもなりますので、現在、公表をしておらないところでございます。
もう少し具体的に申し上げますと、そういう委託先の信託銀行に幾ら幾らその運用を預けておるといったようなことを公表いたしますと、その時々の市場の状況によりましては信託銀行の経営の悪化を招いたり、あるいは金融不安をあおることにもなりかねないと考えておりまして、社会的にも私たちは国営事業としてそれなりに大変大きな存在でもありますので、なるべく市場に対しては中立的な存在でありたい、またあるべきであろうというふうにも考えるわけであります。
また、信託銀行別に残高あるいはパフォーマンスといったことを発表いたしますと、どうしても信託銀行間で競争が起こりまして、短期的な運用姿勢を強くとるといったようなことになりますと、結果的にそれは資金運用として簡保といたしましてマイナスにもなりかねないといったようなことを考えて公表することを差し控えておるところでございます。
しかしながら、情報公開の重要性につきましては御指摘いただいておるところでありますので、今後、金融ビッグバンが進展するとともにそういった自己責任の原則の考え方等々が浸透していくものと考えますので、指定単のディスクロージャーのあり方につきましては、先ほど来から申し上げました信託銀行に対する影響や市場に対する影響等も考えまして、その充実へ向けて検討してまいりたいというふうに考えております。
宮本岳志君 事実だけちょっとお答えいただきたいんですね、年金局長がお見えですので。
金融機関ごとの運用残高を厚生省は公表しておられますね。事実だけ。
政府参考人(矢野朝水君) 運用機関別の資産残高、それから過去の運用成績、こういったものは公表いたしております。
宮本岳志君 そうしたら、郵政省の言い分によると、厚生省というのは金融不安をあおったり市場中立じゃなかったりということになりますね。
私は、厚生省でもそうしてやっていることを当然ディスクロージャーすべきだ、そういうこともやらないようでは到底国民は安心して資産を任せられないということを指摘したいと思います。
宮本岳志君 時間がありません。次は、PKOの問題をお伺いしたい。
大臣に改めて確認いたしますけれども、かつて一度たりともPKO、こういうことはやったことはないと断言できますか。
国務大臣(八代英太君) いずれにしましても、郵便貯金あるいは簡易保険資金の運用というのは、大事な小口の皆さん方のそういうものをお預かりしていることでございますから、事業の経営を健全ならしめて、そして預金者、加入者の利益の向上を図ることを目的として行われているわけでございます。指定単は金銭信託の一種でありまして、それはお任せはいたしておりますけれども、その割合の指定を行うのみでございまして、具体的運用は預けられた信託銀行の判断により行われるものであるという思いでございます。
そもそも簡保事業団が具体的な売買の指示はできる仕組みとはなっておりませんので、局長にどうだとかああだとか言われるのも、これもなかなか答弁しにくいだろうと、このように思います。先般のあの話から私が感じますと、こうしたことから、株価維持のために指定単を用いることはやっぱり考えてはならないという思いでございます。
ですから、その辺をぜひ御理解いただいて、矢島委員にも衆議院では私がしっかりとその旨はお伝えしておりましたので、もう一度聞き直していただければありがたいと、このように思います。
宮本岳志君 そういたしますと、少し理解に苦しむような答弁があなた方にございます。
と申しますのは、一昨年三月の衆議院逓信委員会で当時の金澤簡易保険局長が「平成四年、平成五年に総合経済対策、それから新総合経済対策の一環として簡保事業団を通じた指定単の増額を行ったことがございます。」と答弁されています。
株価の買い支えでないとしたら、なぜ指定単の増額が経済対策と言えるんですか、お答えください。
政府参考人(足立盛二郎君) 御指摘の九二年に行いました郵貯・簡保資金による指定単の運用の増額につきましては、当時の経済対策閣僚会議で決定されました総合経済対策に盛り込まれていたことは事実でございます。
ただ、これはいわゆる指定単というものがあくまで加入者及び預金者の利益を目的としたものでありまして、そういう当時の投資判断からいたしまして適切であるということで実施したものであります。このことが結果として金融・資本市場への資金の流入を通じて経済の活性化に資する面もあるという理解であったと認識しております。したがって、株価の維持とかあるいは企業の決算対策とか、そういったことを目的として実施したものではございませんので、御理解を賜りたいと思います。
宮本岳志君 結果としてそのような役割を果たしたと。私はどうも理解できないんですね。
では、なぜそれを経済対策と呼べるのか。つまり、政府の経済対策というのは、何か別の目的を持ってやったことがたまたまそういう結果になったものを寄せ集めて経済対策と呼ぶようなことがあるのか。もうそもそもつじつまが合わないと思うんですね。
それで、ここで言っているまさに九二年、九三年というのはどういう時期だったか。では、利用者のために指定単を積み増ししたとあなたがおっしゃるんだったら、どういう時期だったかということを議論しましょう。
九二年五月二十日、衆議院大蔵委員会で、簡保資金のディスクロージャーを拒む郵政省に対して、我が党の正森成二議員が、簡保の指定単運用の損失は五千億円を下らないだろうと、こう指摘をいたしました。それに対して、当時の簡易保険局は何と答弁したか。「ただいまのような株式の状況でございますので、指定単の中に組み込んでおります株式につきましてもある程度の、いわゆる損というものが出ているところでございます。」と。つまり、この当時、既にそれまで持っていた指定単に組み込んだ株についても損が出ている、そういう答弁が明確に出ている時期なんですよ。この答弁は間違いないですね。
政府参考人(足立盛二郎君) 平成四年五月二十日の衆議院大蔵委員会におきましての正森先生の御質問に対する答えは、ただいま先生がおっしゃいましたように、「ただいまのような株式の状況でございますので、指定単の中に組み込んでおります株式につきましてもある程度の、いわゆる損というものが出ている」という答弁を行っております。
宮本岳志君 株に資金をつぎ込んで損をしていた、まさにそのときに経済対策だといって株の運用、積み増しをする、これがPKOでなくて何をやったらPKOになるのかと言わざるを得ないと私は思いますよ。明確にそういうことをあなた方はやってきたんだと言わざるを得ません。
<ビルを建てるのが「資金運用」>
宮本岳志君 それで、簡保資金は同時に、株もそうですが、不動産にも投資をされてまいりました。しかも、そのテナントに郵政省関連の団体が入っていることが昨年九月六日の新聞報道でも明らかになっております。
同日、郵政事務次官が記者会見をしてその問題に答えております。その資料も郵政省からいただきましたが、ここでひとつ、保険局長の方で二つの問いへの答え、「テナントに郵政省関連の施設なり団体が入っているのは不明瞭ではないか。」、それから「ビルの管理会社に郵政省関連の公益法人が出資していたというのは事実か。」、この二つの問いにどう答えておりますか。読み上げてください。
政府参考人(足立盛二郎君) 平成十一年九月六日の会見におきまして、事務次官でありますが、「簡保資金で不動産を購入しているというのは事実か。」という御質問に対して……
宮本岳志君 いや、後の二問でいいですから。
政府参考人(足立盛二郎君) はい。
「テナントに郵政省関連の施設なり団体が入っているのは不明瞭ではないか。」という御質問に対しましては、「詳細は不明。しかし、どのような団体であっても、きちんと契約し、賃貸料も一般的な世間相場を考えた上でのものと思われることから、ただちに不明瞭ということにはならないと思う。」と。それから、「ビルの管理会社に郵政省関連の公益法人が出資していたというのは事実か。」という御質問に対しましては、「過去は出資をしていたが、公益法人の監督基準の変更により、非上場株式の保有が原則禁止となったため売却しており、現在は郵政省関連の財団法人等は株主になっていないと聞いている。」と回答されております。
宮本岳志君 まずは郵政省の運営している資金が不動産に投資をされていた、そして取得されたビルに郵政省の関連団体が入居をし、郵政省関係の財団の資金の入った会社が管理をしていたということ、これは事実としてお認めになったわけですね。
こういう実態を大臣は是認するんですか。
国務大臣(八代英太君) 今、局長の説明のとおりだと思っております。
宮本岳志君 では、もう少しお伺いしましょう。
先ほど読んでいただいたビルの管理会社というのは、この九月六日付の朝日で報道されているケイアイエステートのことですね。事実関係をイエスかノーで。
政府参考人(足立盛二郎君) ケイアイエステートだと思います。
宮本岳志君 このことが報道されたその日の事務次官の記者会見ですから、間違いないと思うんです。
我が党の矢島恒夫議員への郵政省からの回答がここにございます。これによると、財団法人簡保資金振興センターから五百五十万円、施設建設総合情報センターから二百万円がこの会社に出資をされておりました。間違いないですね。
政府参考人(足立盛二郎君) 過去におきまして郵政省の所管に係る公益法人が御指摘の会社に出資していたことは事実でありますが、これはあくまで信託銀行の要請を受けまして公益法人の判断に基づき財産運用の一環として行われたものと承知しております。
現在は、先ほども申し上げましたとおり、郵政省所管の公益法人が出資を行っている例はございません。
宮本岳志君 財産運用の一環としてやっておられたと、こういう答弁ですね。
出資が行われた期間はいずれも昭和六十三年度から平成十年度と。ですから、もう今はやっていないと言うけれども、十年度まで出資は続いていたわけであります、ごく最近まで。
ここにケイアイエステート社の閉鎖事項全部証明書、いわゆる閉鎖謄本を持ってまいりました。それによると、歴代の社長は朝熊勇氏、濱田望氏、鎌原徹氏となっており、いずれも郵政省のOBであります。朝熊勇氏、濱田望氏、鎌原徹氏の郵政省の最終の官職と退官後の経歴はどうなっておりますか、郵政省官房長。
政府参考人(松井浩君) お答え申し上げます。
御指摘のありました三名の最終官職、経歴でありますが、最初に朝熊勇さん、昭和六十一年七月に信越郵政研修所長を最終官職といたしまして郵政省を退職しておられます。同年九月、六十一年九月でありますが、財団法人簡保資金振興センター常務理事に就任しておられます。
それから、二番目に御指摘の濱田望氏でありますが、昭和五十七年七月に大臣官房資材部長を最終官職といたしまして郵政省を退職しておられます。それから、同じく同年十一月、五十七年十一月に簡易保険郵便年金福祉事業団理事に就任でありますが、その後、昭和五十九年二月にキャプテンサービス株式会社の専務取締役に就任でございます。
それから、御指摘の三番目の鎌原徹氏でございます。昭和六十年四月に逓信博物館長を最終官職として郵政省を退職されまして、昭和六十年五月、同年五月ですが、財団法人電気通信政策総合研究所常務理事に就任でございます。
また、社長の就任の時期でございますが、朝熊氏は平成元年の三月からの就任であります。それから、濱田氏は平成元年の六月から、それから鎌原氏は平成十年の六月から、それぞれ御指摘の株式会社ケイアイエステートの社長に就任されたと承知しております。
宮本岳志君 郵政省は不動産運用も具体的なことは全部信託銀行の裁量に任せていると、先ほどもそういう答弁でしたよ、信託銀行の要請だと。しかし、郵政省OBが歴代社長を務めているような会社にビルを管理させていて、そういう説明はやっぱり国民は納得しないと思うんです。しかも、濱田氏などは信託銀行に指定単を直接委託する立場の簡保事業団理事から同社の社長へと渡っているわけであります。
このケイアイエステートは二つのビルの建設に合わせて郵政省の認可法人等の出資でつくられたと報じられております。客観的に、この会社が設立されたことによってつまり郵政省OBの職場が生み出された、これはもう否定し得ない事実だと私は思うんですね。天下り先をつくったとしか考えられない。こんなことは本当に利用者の利益のためにやっていることなのか。
あなた方の天下り先の確保のためにやっているとしか考えられないと思うんですけれども、大臣、この話を聞いていて、こういう疑念を持たれるようなやり方はおかしいとお感じになりませんか。
国務大臣(八代英太君) 今いろいろと局長から宮本委員に対してお答えして、また官房長からもその動向が報告されました。
いずれにしましても、職員の再就職については、本人の知識とかあるいは経験とか技能等が再就職先に評価されて行われているというものであって、私はそういう意味では就職の件については全く問題はない、こう考えております。
宮本岳志君 いや、私が天下り先をつくるためとしか考えられないと、そう言うのは、あなた方が言うような利用者の利益のためになっていない、この仕事は。
新聞報道にはこうございます。例えばこの二件のビルの一つ、四谷ビルの場合、八八年当時の周辺地価は三・三平米当たり約七千万だった。その値段で買ったというんですよ。それが現在約七百万円。つまり、周辺地価は十分の一程度に下がっていると推定している。国民は大損じゃありませんか。こんな投資はとてもじゃないが利用者の利益のためにやったとは考えられない。私はそのことを厳しく指摘しておきたいと思います。
<指定単を委託の金融機関に天下り>
宮本岳志君 その上で、では就職の問題がどうかという議論もやりたいと思うんですね。
郵政省は、この指定単の運用の実態はおろか、どの金融機関に委託して運用しているのかさえ明らかにしてまいりませんでした。その背景に私は郵政省と信託銀行業界との癒着があるのではないかということも指摘をしたい。
まず、郵政省に在籍した元職員で、郵政省の資金を運用する信託銀行に現在在籍している職員または役員、顧問等も含む数ですけれども、数は何人で、それぞれの郵政省における最終の役職名はどうなっておりますか、官房長。
政府参考人(松井浩君) お答えを申し上げます。
委員の方から事前に御照会がございまして、これに対応して、過去五年間、つまり平成七年から平成十一年まででございますが、国家公務員法第百三条の就職承認を受けて信託銀行に再就職した者を調査いたしました。その結果、該当する職員はおりませんでした。また、就職承認を経ないで再就職した者の在籍状況については承知しておりませんので、御理解いただきたいと思います。
宮本岳志君 承知していないと、そういう回答、事前にもそうでしたよ。
ことし三月十五日の朝日には、「郵政省の金融界への天下りは数十人にのぼるが、信託銀行業界でその多くを引き受けている。仕事がほとんどない非常勤顧問などの形が多い。「多額の手数料をもらう見返りという面はある」と信託銀行幹部は認める。」と書かれております。
郵政省に聞きます。
九五年度から昨年度までの年度ごとに指定単運用の手数料として信託業務を行う金融機関に支払った額は幾らですか。
政府参考人(足立盛二郎君) 指定単運用に係りまして信託銀行に支払った信託報酬でございますが、各年度ごとにお尋ねでありますので、平成七年度、郵貯指定単の報酬として百八億円、簡保指定単としては百六十四億円。平成八年度でございますが、郵貯が百十八億円、簡保が百六十八億円でございます。平成九年度、郵貯百二十八億円、簡保は百七十三億円。平成十年度、郵貯百五十三億円、簡保二百十億円となっております。
なお、平成十一年度につきましては、現在、決算が終了しておりませんので、現時点での公表は差し控えさせていただきたいと思います。
宮本岳志君 どんどんふえてきているんですね。これは金融自由化特別勘定もふやしていっていますから、当然、指定単運用の額もふえているということだろうと思うんですが、二百億から三百億、平成十年度では合計すれば三百六十三億ということになろうかと思います。
既に今運用している分でこれだけなんですから、これから全額自主運用ということになれば、金融自由化特別勘定と全額自主運用との差は恐らく二百兆円弱ということになるんだろうと思うんですけれども、これがさらに上積みされて運用されると、指定単もその分、同じ比率かどうかはともかくとして、ふえていくということが予想される。今でも二百億、三百億、三百五十億と。これが本当に倍というような形で手数料が入ってくるわけですね。
天下りの受け入れは多額の手数料をもらう見返りだと、ここまで書かれている以上、この実態を明らかにせずに全額自主運用を認めるわけにいかないと私は思います。なぜ天下りの実態を明らかにしないんですか、そういった中身まで含めて。
政府参考人(松井浩君) お答え申し上げます。
先ほど御答弁申し上げましたように、離職後二年以内に再就職しようという者につきましては、御案内のように、国家公務員法第百三条で就職承認が必要になります。これに関しましては当局としてきちっとした把握ができる状況でございます。
ただし、先ほど私申しましたが、就職承認を経ないで再就職した者については承知する立場にないということを申し上げたんですが、それは基本的には国家公務員法の中で、もちろん公務の中立の問題はありますが、同時に企業経営のお立場もあるし、それから公務員の職業選択の自由の問題もあります。プライバシーの問題もあります。そういう中で現在の国家公務員法制度がそのようになっているということでございます。
宮本岳志君 そういうものはつかめている分しかわからないというお答えだと思うんですね。二年以内のものは報告はあるんだが、そうでないものはわからないと。
ところが、厚生省は国会の答弁で、厚生省から年金資金の受託金融機関への再就職の実態というものを明らかにされました。昨年十二月一日の衆議院厚生委員会、ここで、委員会会議録九号の八ページ上段十二行目から十五行目にかけて、年金局長、これを読んでいただけますか。
政府参考人(矢野朝水君) 昨年十二月一日の衆議院の厚生委員会におきまして、菅直人議員から、年金福祉事業団の受託機関に就職している厚生省OBの実態について質問があったわけでございます。その際、大野政務次官が次のように答弁いたしております。
「常勤で住友信託銀行の顧問にお一人、非常勤で日本生命保険顧問にお一人、それから安田生命顧問にお一人、住友生命顧問にもうお一人、以上四名でございます。 常勤の方、元児童家庭局長でございます。あと、非常勤の方が大臣官房付の方、九州地方医務局長の方、そして社会保険大学校長の方、以上四名でございます。」。
以上でございます。
宮本岳志君 厚生省はこうして国会の場で明らかにされました。
先ほど、退職後二年以上たてば報告義務はないんだという答弁です。それは聞いております。では、二年以内であればことごとく報告される形になっているか。
これはひとつ人事院の職員局に聞きたいんですが、郵貯や簡保の資金運用を担当している者が、仮に退職と同時にきのうまで運用を委託していた信託銀行に就職したいと、こういう話になった場合に、直後ですよ、そういうケースは絶対に認められないんですか。
政府参考人(中橋芳弘君) 資金運用を担当しております国の職員が当該資金を直接預け入れている金融機関に再就職することについては、離職後二年間は認められないものと考えております。
ただ、郵貯資金を簡保事業団に寄託して行いますいわゆる指定単につきましては、同事業団が信託銀行等に委託するものでございまして、郵政省と信託銀行との間には直接の関係はないと聞いておりますので、国公法百三条の密接な関係はないと、かように考えております。
宮本岳志君 これ、皆さん本当にお聞きになって驚くと思うんですね。つまり、簡保事業団と取引している信託銀行であればそれは別にできるというんですよね。今の御答弁はそうですよ。
この人事院の運用というのもいかがなものかと思いますけれども、実際、退職して二年間という冷却期間を置けば幾らでも行けると。今のように聞いて、ないと言っても、マスコミではいっぱいあると、指摘されるように、こういう脱法的な形になっている。ましてや、簡保事業団との取引だったらいいんだと言って、あしたからでも行けると、こういうことになっているんですよ。
私どもは郵貯・簡保資金を株に投入するとか指定単ということにそもそも反対です。しかし、百歩譲って、あなた方がどうしてもやるというなら、少なくともこういう癒着はきちんと清算することが最低限のルールではないですか。大臣、そう思いませんか。
国務大臣(八代英太君) その人の人生再出発に際して、その専門知識を請われて再就職するというのはいろんなケースであるだろうと思うんですね。そこに、今おっしゃるように癒着を前提に、それは天下りはけしからぬという前提で考えれば……
宮本岳志君 新聞が言っているんですよ。
国務大臣(八代英太君) 新聞は、そういう報道はいろいろな報道の仕方がありますから、それはそれとして、そうなってしまうとこれはなかなかかみ合わないところが出るだろうと、こう思います。
しかし、大事なお客様からお預かりしている資金であればこそ、もしでき得れば人事交流の中においてその技術が買われて指導的な立場に、そして再就職するところがそういうまた信託銀行であったということも、私はそう不自然に目くじらを立てるようなことではないような気がするんですが、間違いでしょうか、私の考えは。
宮本岳志君 一言だけ。
全く不自然だと、国民は不自然としか見ようがないということを申し上げて、私の質問を終わります。