151 – 参 – 本会議 – 12号 平成13年03月26日
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、二〇〇一年度予算原案に反対、民主、社民、自由三党の修正案に賛成の討論を行います。(拍手)
今、未曾有の不況によって国民の暮らしも日本の経済も深刻な事態に陥っております。ところが、森・自公保政権は、その根本的解決のために何らの打開策も示せないばかりか、KSD汚職、機密費疑惑など、自民党政治のあり方が根本から問われている事件についても、真相の徹底解明という責務を放棄し、十分な審議も尽くさないまま予算の成立を強行しようとしていることは、まさに言語道断であります。
KSD汚職は、小山氏や村上氏個人の汚職というだけにとどまらず、その最大の核心は、KSDに五十四万人もの幽霊党員をつくらせ、二十一億円もの党費を肩がわりさせ、中小企業者の汗の結晶である共済掛金を自民党ぐるみで食い物にしてきたことにあります。
本院での証人喚問で、村上前自民党参議院議員会長ももみ殻党員と述べて、事実上その存在を認めました。自民党がこの驚くべき実態をまともな調査すらしないのは、調査すればこの汚れた実態が白日のもとにさらされるからにほかなりません。
さらには、医師会、土地改良区、特定郵便局長会など、この事件に示されたような構図は決してKSDだけではないことも審議を通じて明らかになりました。
金の力で政治をゆがめたことへの解明と反省もないまま、自公保の数の力で強引に予算を成立させることなど断じて許されないのであります。
機密費問題をめぐっては、野党工作や消費税法案を通すための国会対策に機密費が使われたことを示す内閣官房文書も明らかにされました。しかも、その文書が古川現内閣官房副長官の手によって作成されたものであることが、我が党による筆跡鑑定によって決定的となりました。それでも政府・与党は、何の反証も示せないまま、古川氏の国会出席を拒否するなど、真相隠しに躍起になってきたのであります。予算が違法に執行されていることを放置したままで来年度予算を成立させるならば、重大な瑕疵をつくることになります。
宮本岳志君 以下、予算案に反対する理由を申し上げます。
本予算案に反対する理由の第一は、深刻な不況にあえいでいる国民の景気回復への願いに全くこたえないばかりか、かえって逆行するものとなっているからであります。
予算委員会の質疑を通じても、家計所得の落ち込み、個人消費の低迷の最大の原因が、大企業のリストラと雇用不安、社会保障の将来不安の増大にあることが明らかになりました。だからこそ、消費税の減税など、個人消費を直接温める手だてをとることは当然ではありませんか。
ところが、本予算案には家計を直接温める施策は全くと言ってよいほど欠けています。そればかりか、昨年からの年金の賃金スライドの停止、一月からの老人医療費一割定率負担、十月以降の高齢者の介護保険料の全額徴収、雇用保険の改悪などにより、二〇〇一年度の負担増と給付カットは合わせて三兆円にも上ろうとしています。
さらに、本予算案には、雇用不安を解消するまともな対策は何一つありません。それどころか政府は、リストラを進める大企業に税金をまけてやり、リストラの応援までやっております。
森総理がアメリカに約束をした不良債権の早期処理は、銀行・ゼネコン救済にまたもや公的資金を注ぎ込むものであります。しかし、このやり方は、既にこの間、七十兆円の枠をつくり、二十六兆円もの公的資金を投じてきたにもかかわらず、依然として不良債権処理が進んでいないことを見ても破綻は明瞭であります。
不良債権があるから景気がよくならないというのは全く逆立ちした議論であり、景気がよくないからこそ、幾ら処理しても新たな不良債権がふえ続けているのです。
一番大事なことは、実体経済そのものの立て直しにほかなりません。ところが、政府・与党の緊急経済対策なるものは、株価の人為的な操作やバブルの再現を目指すような土地流動化など、どれをとっても国民がさらなる被害をこうむるものばかりではありませんか。
反対理由の第二は、公共事業などの浪費を継続拡大し、財政の破綻を一段と深刻にするものだからであります。
本予算の執行によって、国と地方の借金は実に六百六十六兆円に達します。まさに、宮澤財務大臣が言うように、破局的な財政破綻に直面しているのです。この危機を打開するために何より必要なのは、公共事業に五十兆円、社会保障に二十兆円という逆立ち財政を改めることを中心に、歳出のむだに思い切ったメスを入れることであります。
ところが、本予算案では、公共事業は前年度と同じ巨額であり、三年連続して過去最大規模を続けるものとなっております。採算の見込みのない関西国際空港の二期工事のほか、ITの看板だけをかぶせた従来型公共事業など、ゼネコン浪費型の公共事業が膨れ上がったままであります。
また、給付と負担の面において国民に厳しい選択を迫らざるを得なくなるとか、財政再建のためには消費税引き上げの公算が強いという宮澤財務大臣の答弁は、自公保政権の消費税増税のたくらみを自白したものだと言わざるを得ません。これは、放漫財政を続けていることへの反省を全く欠いたままで、そのツケを国民に回そうとする態度であり、全く許しがたいものであります。
反対理由の第三は、本予算案がアジアの流れに逆行して、昨年をも上回る軍事費を計上していることであります。
隣の韓国、朝鮮でも南北の対話が始まり、東アジアのすべての国が参加する安全保障対話の場としてASEAN地域フォーラムが発展しています。かつてのようなソ連の脅威を口実とした軍事同盟は、もはやだれの目から見ても不必要なものとなっています。ところが、予算案には、新中期防の初年度として五兆円近い巨額な軍事費が計上されています。しかも、自衛隊の海外出動を支えるための大型補給艦の新設など、専守防衛の建前を投げ捨てて、一層深くアメリカの軍事戦略に日本を縛りつけるものとなっています。さらには、森首相が有事立法の法制化を指示したことも重大です。
森総理は、さきのブッシュ大統領との会談で、米原潜によるえひめ丸衝突沈没事故について、事故が日米同盟に影響を与えるものではないと確信しているなどと述べました。このような態度は、日本国民の怒りを代弁して米側と交渉するという国の責任者ならば当然とるべき立場に背くものであります。
森・自公保政権の日米軍事同盟優先のこのような姿勢は、アジアにおける平和の流れに反するばかりでなく、アジア地域に緊張をつくり出すものであります。同時に、財政の浪費を拡大し、危機的な国の財政破綻を加速するものであり、絶対に認めるわけにはいかないのであります。
宮本岳志君 以上述べたように、二〇〇一年度予算案は、まさに失政の自覚を全く持たない森内閣の政治を象徴する予算であります。
なお、野党三党による修正案には賛成であります。
機密費については、実態の全容を徹底的に究明しなければなりません。その上に立って、あしき遺産をきっぱり清算する態度をとってこそ、密室政治を大もとから打破することができるし、国民の信頼を広げることができるのであります。その立場から、今後も野党党首会談で合意した機密費の徹底的解明を進めていくものです。
最後に、世論調査ではいずれも森内閣の支持率は一〇%を割っていることからも明らかなように、国民はこうした森内閣の一刻も早い退陣を求めているのであります。あらゆる問題で国政を担う資格を完全に失っている森・自公保政権の即時無条件の退陣を断固として要求して、討論を終わります。