151 – 参 – 総務委員会 – 5号 平成13年03月29日
平成十三年三月二十九日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
三月二十八日
辞任 補欠選任
脇 雅史君 北岡 秀二君
木俣 佳丈君 高橋 千秋君
三月二十九日
辞任 補欠選任
関谷 勝嗣君 海老原義彦君
高橋 千秋君 本田 良一君
山本 正和君 大渕 絹子君
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出席者は左のとおり。
委員長 溝手 顕正君
理 事
入澤 肇君
北岡 秀二君
常田 享詳君
浅尾慶一郎君
宮本 岳志君
委 員
岩城 光英君
海老原義彦君
景山俊太郎君
鎌田 要人君
木村 仁君
久世 公堯君
世耕 弘成君
輿石 東君
菅川 健二君
高嶋 良充君
高橋 千秋君
本田 良一君
鶴岡 洋君
弘友 和夫君
富樫 練三君
八田ひろ子君
大渕 絹子君
山本 正和君
松岡滿壽男君
高橋 令則君
石井 一二君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
内閣官房副長官
内閣官房副長官 上野 公成君
副大臣
総務副大臣 遠藤 和良君
総務副大臣 小坂 憲次君
大臣政務官
総務大臣政務官 滝 実君
総務大臣政務官 景山俊太郎君
事務局側
常任委員会専門
員 入内島 修君
政府参考人
内閣官房内閣参
事官 高田 稔久君
総務省人事・恩
給局長 大坪 正彦君
総務省情報通信
政策局長 鍋倉 真一君
総務省政策統括
官 高原 耕三君
外務省アジア大
洋州局長 槙田 邦彦君
厚生労働省社会
・援護局長 真野 章君
参考人
日本放送協会会
長 海老沢勝二君
日本放送協会専
務理事・技師長 中村 宏君
日本放送協会専
務理事 松尾 武君
日本放送協会理
事 芳賀 譲君
日本放送協会理
事 山村 裕義君
日本放送協会理
事 笠井 鉄夫君
日本放送協会理
事 山田 勝美君
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○恩給法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
○放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認
を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
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宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
まず私は、去る一月十四日、モンゴルにおきまして、雪害被害の調査中にヘリコプター事故によってとうとい命を落とされた故正木実カメラマン、加藤高広記者に謹んで哀悼の意を表します。また、御遺族の皆様にも心からお悔やみを申し上げます。
二月二十六日にNHKホールでとり行われた合同追悼式に私も参加をさせていただきました。そこでも紹介されておりましたお二人の正義感とジャーナリスト精神、情熱にあふれる取材、報道姿勢に大変心を動かされました。また、御遺族には小さなお子さんがいらっしゃって、参列させていただいた者はみんな痛惜の念ひとしおであったと思います。
海老沢会長は追悼の言葉で、公共放送NHKの責務を全うすることが二人の遺志を受け継ぐ道と述べられましたけれども、ここで述べられた公共放送NHKの責務ということについて、改めて海老沢会長にお話しいただきたいと思います。
参考人(海老沢勝二君) 私ども公共放送というのは、やはり視聴者国民の生活に役立ち、また心を豊かにするような質の高いよい番組を提供することだろうと。
その中身については、一つはやはり国際的な役割、国際的な貢献というのも一つの我々の使命だろうと思っております。そういう面で、今、地球はだんだん狭くなってきておりますし、二十世紀は戦争と対決の世紀と言われた中で、この二十一世紀は真の平和と対話の世紀にしようというようなことが国連の精神に言われております。そういう面で、先ほど出ました人口の問題、食糧の問題、エネルギー問題、すべてはやはり世界共通の課題で、日本だけでは解決できない問題が多々あります。そういう面で私どもは、単に日本だけではなくて世界的視点、地球的な視点で物を見、判断しなければならない時代だろうと。
そういう認識に立ちますと、私どもも今、世界各国主なところに支局特派員を派遣し、また、記者、カメラマン、プロデューサーを派遣していろいろな番組をつくっております。そういう面で、今度のモンゴルの雪害事故につきましても、国連の要請あるいはモンゴル政府の要請によって、モンゴルの雪害の状況を日本国民または世界の多くの人たちにこの実情を知らせようと、そういう崇高な理想に燃えて活動した中での不慮の事故であります。
そういう面で、私どもいろいろな面で国連への協力、あるいは世界平和のためのいろいろな取材活動を通じて、公共放送はそういう役割、使命も持っているだろう、そういう意味合いを述べたわけであります。
宮本岳志君 ところで、合同追悼式に総務大臣のお姿を見かけなかったんです。公務だったと私は思うんですけれども、なぜ代理であっても御参列いただけなかったのかと。少しちょっと御説明いただけますか。
国務大臣(片山虎之助君) 今、宮本委員からお話がありましたが、今回のNHKの正木カメラマン、加藤記者の取材中とうとい命を落とされましたことについては、私からも本当に心から哀悼の意を表したいと思いますし、御遺族の方にもお悔やみを申し上げたいと、こういうように思います。
二十六日、私も出席する予定でございましたが、衆議院の委員会が開かれるとかいう話もあり、その他の公務もありまして出席できませんでしたが、あらかじめ海老沢会長の方には行けないことの御連絡を申し上げてお悔やみのレタックスを送りまして、小坂副大臣が総務省を代表して出ていただきましたので、その点は御了解を賜りたいと思います。
宮本岳志君 この間、テレビ放送のデジタル化ということがずっと議論されてまいりました。きょうもそういう議論がございました。
私は、テレビ放送のデジタル化というのは科学技術の進歩でございまして、それを生かしてテレビ放送に新たな可能性を開くことは国民にとっても大いに意義あることだと申し上げてまいりました。
先日、放送記念日にNHKは、「NHKスペシャル デジタルは放送をどう変えるのか」、そして「デジタル時代の放送の公共性」、これを放映されました。私も興味深くあの「NHKスペシャル」を見せていただきました。二〇一一年には今のアナログテレビが見られなくなる。今国会に提出中の電波法改正案が通ればという条件つきでしたけれども、一一年には今のテレビは見られなくなりますという説明もされておりました。これまで地上波放送のデジタル化について、先ほどもお話しありましたように、国民への説明は決して十分とは言えなかった中で、この番組はゴールデンタイムに取り上げられたということで随分国民の間に波紋を広げて、私は非常に意義ある番組だったというふうに思っております。
きょうは、この審議自身もテレビを通じて国民の皆さんに紹介されるということですので、まず事実関係ですけれども、総務大臣、電波法改正が通ればという前提つきですけれども、今国会で、二〇一一年までで今皆さんがごらんになっているテレビはこのままでは映らなくなると、これは事実ですね、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) これは何度もお答え申し上げておりますように、我々としてはこれから十年計画でデジタル化に移行したいと。その間いろんな手当て等はもう何度もここでもお話し申し上げておりますが、そういう覚悟で電波法の改正をこの国会に提案させていただいたわけでございますので、十分の御審議を賜りたいと思います。
宮本岳志君 この期限によりますと、二〇一一年には、要するに、今、国民が見ておられるテレビのままだと映らなくなるということは事実ですね。
副大臣(小坂憲次君) 宮本委員には衆議院の委員会の方でもお答え申し上げましたが、事実でございまして、そのままということでは周波数とまた方式が違いますので映らないことになります。
宮本岳志君 先ほども申し上げましたように、私どもも放送のデジタル化に異論はないのです。そして、テレビのデジタル化が今のアナログ放送からデジタル放送という新しい放送への切りかえである以上、アナログ放送がいつの日か打ち切られる、つまりアナログテレビが映らない日がやってくることもまたこれは当然の話であります。決してこれに反対するものではありません。ただ、これをどう進めるかということがやっぱり大事なポイントだと思うんですね。
宮本岳志君 それで、この「IT時代のNHKビジョン」、これはNHKがお出しになったものです。この七ページによりますと、「地上デジタル放送へ向けて」と書いておられまして、「NHKの地上放送は、国民生活に直結する最も身近なメディアです。それだけに、地上テレビ放送のデジタル化にあたっては慎重に対応していきます。」と、こうNHKの文書には書かれております。
私は、公共放送であるNHKとして、BSとかそういうもののデジタル化はともかくとして、地上波という、もう本当にほぼ全国民が生活に密着して見ておられる基幹的な地上波放送をデジタル化するというのは、おっしゃるとおり慎重な対応が必要だと思っておるんです。
それで、海老沢会長は、衆議院の答弁で、アナログ放送打ち切りの時期についてのやりとりで、地上波というのは本当に国民の生活にとって不可欠なメディアでありますから、一〇〇%まで持っていかなければ意味がない、そういう決意で取り組みたいと、こうおっしゃいました。
ここで会長にお尋ねするんですけれども、ここで慎重に対応したいということの中には、そういった国民の中で切り捨てられるということがやっぱりないように努力する、あまねく日本全国ということを含んでいると思うんですが、いかがでしょうか。
参考人(海老沢勝二君) 私ども日本放送協会、今度七十六年になりますけれども、七十六年の歴史を持っております。ラジオもテレビも全世帯といいますか、全国に普及するためにはやはりそれぞれ三十年以上の歳月を要しております。これは、いわゆる市場原理といいますか、我々の財政の中で普及させてきたわけであります。そういう面で、それだけの難事業だということだと思います。そういう面で、私はこの地上デジタル放送を十年間で普及させていくことは大変な事業だろうと。そういう面で、我々はあくまでも全国あまねくというのがNHKの存立の役割でありますから、そういう面で、一〇〇%普及のために努力するのは当然のことだと思います。そういう面で、身近な地上波をデジタル化することは、我々としてもこれから総務省、民間放送ともいろいろな面で協力しながらやっていかなきゃならない課題であるわけであります。
ここの中で慎重という言葉を使ったわけでありますけれども、私ども、慎重は着実にという意味合いにとってもらった方がいいんじゃなかろうかと思っております。それは、これまでも地上波をデジタル化することについては、私はやはり国民の理解、合意がなければなし遂げられない事業でありますから、そういう面でこれは国家的な、国民的な大事業だと、そういう位置づけでありますので、我々が必ずやるんだということにはならないわけでありますので、そういう努力目標、そういう中で私は、着実に、円滑にやっていきたいと、そういう決意を述べたものであります。
慎重という言葉がちょっと誤解を与えたかもわかりませんが、役所の慎重と違って、我々の慎重は着実に、円滑にという意味で御理解願いたいと思います。
宮本岳志君 着実にということの中には、会長が冒頭おっしゃられたように、やっぱり公共放送としての役割をしっかり守りながらという意味を当然含んだものだと思っております。
そこで、また総務大臣にお伺いするんですけれども、総務大臣は今度の予算につけられた総務大臣意見の第四項目めに、「地上放送のデジタル化の速やかな実施に向け、」ということで、アナ・アナ変換、「アナログ周波数変更対策を着実に進める」と、「着実」という言葉も入っておるんですけれども、NHKにデジタル放送の普及発達に先導的な役割を果たせと、こう書いておられるわけですね。そういう期待をお持ちになっているということはわかるんですけれども、先ほど会長が述べられたNHKの公共放送としての役割、またその慎重にというのは着実にという意味ですが、公共性をしっかり守る、あまねく全国にを守るという点を尊重すると、尊重した上での話だということはよろしいですか、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) 今、海老沢会長言われましたように、この慎重にというのは着実にという意味で、考えてみますと、チャンネル変更したりアンテナ交換したり、やっぱり視聴者の方にも混乱をともかく与えないように、私は段階的、計画的に、着実に進めなければいけないと、そういうことを会長は言われたんだと思いまして、大変そこは理解をいたします。
しかし、いずれにせよ、全体の地上放送のデジタル化におきましては、いろんな意味で実力があって技術水準も高いNHKに私は先導役を果たしてもらいたい、こう思いますけれども、ユニバーサルサービスというか、ユニバーサル放送でございますし公共放送ですから、そこは着実にやっていただいて構わないと、こういうふうに思っております。
宮本岳志君 郵政省はこれまで一貫してそういう立場、とりわけデジタルテレビの普及が本当に進んだ段階で、着実にデジタル化に移っていくということで、普及率ということを一つ基準にして打ち切りの時期というのを論じてきたわけです。その普及率の条件になってきたのが、つまり電波のカバー率が全国一〇〇%になる、それからデジタルテレビが八五%普及する、それぐらいになったらアナログの打ち切りということが日程に上ってくる、まだそれでも、その段階でいつ打ち切るかを改めて決めるというような段取りだったと思います。
宮本岳志君 ところが、今回の電波法改正案というのは、御承知のように、二〇一一年までにということで、期日で切るということになったわけですね。それについて、実は衆議院の議論で小坂副大臣は、いやそれはもう基準が変わったんだと、普及率という一つのその状況を待たないと把握できないような不確定の基準よりも、より明確に政策的にその終了時期を決めて、そこへ向けて政策誘導していく方がよろしいという考え方に変わったんだと、こう答弁されておりますね。これは考え方を変えるということですか、副大臣。
副大臣(小坂憲次君) 衆議院の委員会でお話を申し上げましたように、仮にこの電波法の改正案等で期日を明確にしない場合、逆にその普及率というものを指標としてアナログ電波の停波というものを打ち出した場合、どういうことになるかといいますと、じゃいつごろになったらその時期が訪れるんだろうと、それは国民の皆さんに見えないわけです。電波のカバー率が一〇〇%はわかると思うんです。これは政策的に、そこの放送事業者等の計画を見ればある程度わかると思うんです。しかし、国民の皆さんが買って八五%に達するというのはいつかということになりますと、これは早いのか遅くなるのか、いろいろとずれてくるわけですね。そうすると皆さんが、あと五年かな、あと十年かな、いやもっとすると二十年もかかるのかな、その間、いつ買いかえようか、いつ買いかえようかということになってしまうわけですね。これではやはり国民の生活が安定しないだろう。そういうこともあります。
じゃ、その期間はせっかくの貴重な有限の電波を私どもは有効に使えないのかということになってしまいます。ですから、そういう意味で政策的に誘導をして一定の目標を定めて、そしてその目標は国民の皆さんにとっても無理のないものであるということをやはり見つけ出さなきゃいけません。それで、放送事業者とそれから有識者の皆さんと消費者の団体の皆さんとそして私ども役所、それらが全部集まって協議をした結果、一つの目標として十年というところが、今のテレビの買いかえサイクル八年から十年というものを勘案すると無理なくお願いをできるところではないだろうか。
そして、一方ではこのデジタル放送のメリットというものをNHKが先導役になって、また民放の皆さんと一緒になって、そしてまたコンテンツの事業者の皆さんがいろいろなすばらしいコンテンツを出して、また同時に、デジタル化というメリットは、いろいろなメディアが融合して、放送と通信の融合と言われるような大変に魅力のあるデジタル世界というものをつくって、そして初めて御理解を得られるものだ、こう思っておりますので、そういう意味で政策的に誘導が必要だと、こう申し上げたわけでございます。
宮本岳志君 ちょっと私、小坂副大臣のおっしゃることで理解できないことがあるんですよ。
デジタル放送というものの魅力というものが本当に国民に伝わっていくからこそデジタルテレビが普及されていくんじゃないんですか。いつ打ち切られるかということがはっきりしないとユーザーはいつ買うか、いつ買いかえればいいかがわからないとおっしゃったけれども、つまり、打ち切られるということを言うことによって買いかえ時期を決めさせるということを小坂副大臣はおっしゃったように思うんですね。私は、そうじゃないと。やっぱりいいものができて、いいからということで買っていただくというのが、これが筋じゃないんですか。いかがですか、大臣。
副大臣(小坂憲次君) 一つの目標は目標として定めましたけれども、その中での努力ということで今申し上げたのは、やはり内容がすばらしい、そしてデジタルというものになるとこういうふうにいろいろな融合が起こってくるのかと。新しい機器もその十年間の間に発売されてまいります。
そういうもので、あ、いいなと思って買う方がふえることは当然でございますし、また同時に、機器の方もたくさん買っていただければどんどん安くなりますし、部品の共通化ということで、テレビの部品とあるいはもしかすると携帯電話の部品の中にも共通のものが出てくると思いますが、そういった部品の共通化によって非常にコストが下がって、現在の使っているアナログテレビのセットトップボックスの値段も下がってくる。そういうものの相乗効果の中で、十年たったときにアナログの電波をとめてもいい状況になるだろう、こういうふうに判断をいたしているところでございます。
宮本岳志君 時間がなくなりましたので、これはまた電波法の改正案でやりたいと思いますけれども、少なくともその魅力が広がって、そして本当にいいものだということでユーザーの方々がお買いいただけるものならば、何もそんな期日を決めてインセンティブを与えなくても、そのものの値打ちのインセンティブで広がるものであると私たちは思っております。
ぜひ国民にしっかり理解していただく方向でデジタル化を進めていただくようにNHKにもお願いを申し上げて、私の質問を終わります。