151 – 参 – 総務委員会 – 15号 平成13年06月14日
平成十三年六月十四日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
六月十二日
辞任 補欠選任
岡崎トミ子君 菅川 健二君
八田ひろ子君 山下 芳生君
六月十三日
辞任 補欠選任
菅川 健二君 櫻井 充君
山下 芳生君 八田ひろ子君
六月十四日
辞任 補欠選任
岩井 國臣君 加納 時男君
常田 享詳君 山内 俊夫君
鶴岡 洋君 森本 晃司君
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出席者は左のとおり。
委員長 溝手 顕正君
理 事
入澤 肇君
岩城 光英君
海老原義彦君
浅尾慶一郎君
宮本 岳志君
委 員
加納 時男君
景山俊太郎君
鎌田 要人君
久世 公堯君
世耕 弘成君
関谷 勝嗣君
山内 俊夫君
輿石 東君
櫻井 充君
高嶋 良充君
内藤 正光君
弘友 和夫君
森本 晃司君
富樫 練三君
八田ひろ子君
山本 正和君
松岡滿壽男君
高橋 令則君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
内閣官房副長官
内閣官房副長官 安倍 晋三君
副大臣
総務副大臣 小坂 憲次君
事務局側
常任委員会専門
員 入内島 修君
政府参考人
総務省総合通信
基盤局長 金澤 薫君
総務省郵政企画
管理局長 松井 浩君
公正取引委員会
事務総局経済取
引局長 鈴木 孝之君
財務省理財局次
長 白須 光美君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○電気通信事業法等の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
○地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
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宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
先ほど、午前中の八田議員の質問でも、本法案の趣旨が競争政策の導入であるということが議論されました。かつての国鉄、電電の民営化のときは、国営のものがとにかく民営化になればすべてよくなるかのような議論が随分されたものです。その結果は、午前中指摘もあったように、JRで言えばローカル線の廃止で国民の足が奪われようとしている。NTTでは、五月の二十九日に衆議院で我が党の春名議員が、サービス拠点、営業拠点の根こそぎの統廃合という問題を取り上げました。小坂副大臣はこのとき春名議員への答弁の中で、「国営の事業として推進しているときには国民の皆さんの要望にできる限りこたえる体制でどんどん拡充できたわけでございますが、今の時代なかなかそういうわけにはまいりません。」と答弁をしております。
そこで、小坂副大臣にお伺いするんですが、これは、民営化された場合にはサービスが低下してもやむを得ない、つまり民営化、今の時代は「そういうわけにはまいりません。」という「そういう」というのは、国民の要望にこたえるわけにいかない、こういうふうにおっしゃったとしか読めないのですが、そういうことですか、小坂副大臣。
副大臣(小坂憲次君) 民営化された場合には、やはり経営者の判断というものがそこに働いてまいりますが、経営者は国民の利便というものを中心に考えていかなければ事業として繁栄してまいりませんので、そういった意味でサービスの低下が起こるということは基本的にはないわけでありますが、そういった意味では、国営と民営という部分にはそういった考え方の違いがあるだろうということを申し上げたつもりであります。
宮本岳志君 そうしたら、この営業拠点の統廃合や窓口の減少というものはサービスの低下であるということはお認めになりますか、副大臣。
副大臣(小坂憲次君) それは、技術の進歩とかネットワークの構造とか、そういうものも影響してまいります。
例えば、一〇四のサービスが、これは電話を通してでございますので、どこでこの回答がされようともちゃんとした回答が出ればいいわけですから、そういう意味で一〇四の事務所がその地域その地域になければいけないということでもございませんし、これも営業の部門の一つでございますのでそういった意味ではお答えしますが、あと窓口につきましても、インターネット等の進展、あるいは電話だけで、対面でなくてもできるような手続上の改正がなされていればそういうこともできるわけでございますので、一概にそういった形で判断をすることはできないかと思っております。
宮本岳志君 では、少し議論いたしましょう。
平成九年六月に郵政審議会が出した郵便局ビジョン二〇一〇という最終答申がございます。これは、当時、郵政民営化が活発に議論されていたさなかにまとめられたものであります。この郵便局ビジョン二〇一〇の九十四ページ五というところには何と書いてあるか、本文だけ読んでいただけますか。
政府参考人(松井浩君) 御指摘に基づきまして読ませていただきますが、九十四ページの五でありますが、
また、郵便局サービスが民間に委ねられた場合、経営目的の重点が「公共性」から「営利性・収益性」にシフトする結果、ユニバーサルサービスや社会的政策を実現するためのサービス、さらには郵便局ネットワーク等の開放を実現するインセンティブがなくなるものと思われる。
このことは、市場原理の徹底に伴い生じるサービスの地域間・個人間格差の拡大をユニバーサルサービス等により緩和したり、社会において郵便局ネットワーク等の資源を活用することが困難となり、国民の利益や社会全体の効率性の観点から問題であると考える。
特に、過疎化とともに高齢化が進展している地域社会では、情報・安心・交流の拠点となる郵便局が縮小・廃止されることは、重大な問題である、と言わざるを得ない。
以上が本文でございます。
宮本岳志君 全く正しい指摘だと私は思います。
そして、それに続けて、その例証としてドイツやニュージーランドで郵便局事業の民営化によって郵便局が減少した例を紹介している。さらには、「NTTの支店(旧電報電話局)も、特殊会社化時の昭和六十年四月に千七百店あったが、平成八年四月では百十店まで整理されている。」と述べて、資料七十九にはそのNTT支店数の推移のグラフまでつけております。
これは、NTT支店数の減少、拠点の統合などが民営化によって引き起こされたものであり、それがつまりサービスの後退であるということを明白に旧郵政省自身が認めていたことを示すものだと思いますが、そうじゃないんですか、どうですか。
政府参考人(金澤薫君) その時点からNTTは経営の効率化の観点から支店数の減少とか拠点の統廃合等を行ってきておりますが、コンビニエンスストア等多様な機関による料金収納の実施、それから一一六番による電話注文受付の促進、インターネットによる各商品の受付を図るなどの措置を講じ、サービスの後退につながらないよう努めているというふうに私ども承知しております。
なお、郵政事業と電気通信事業とはそのサービスの内容が異なりますし、事業形態も異なります。同列には論じられないものというふうに思料いたしております。
宮本岳志君 つまり、郵政民営化に反対する議論をするときにはNTTの支店の減少はサービスの後退になる、しかしNTTのことについて論じるときには支店は幾ら減ってもサービスの後退にはならない、私はそういう論であるように思えて仕方がないんですけれども、そうじゃないんですか、いかがですか。
副大臣(小坂憲次君) あくまでも、今、金澤局長が答弁申し上げたように、電気通信事業と郵政事業の業務形態が違います。その最たるものは、電気通信事業におきましては電話というものを通じて、どのような距離的な違いがあっても営業担当者との通話ができるということでございます。意思疎通ができるということでございまして、それがまた営業の上では非常に大きなウエートを占めておりますので、その他の部分であります料金の収納等につきましては、今申し上げたようなコンビニ等を使った代替方法が講じられている、そういうことで今の答弁に結びついているというふうに考えております。
宮本岳志君 一一六がつながりにくくなった、そういう現実も八田議員の方から御指摘がありました。私は、小坂副大臣が言うような、必ずしもサービスの低下が避けがたいという認識ではないというような議論自身が、やっぱり低下があってもやむを得ないということを言外に認め始めていると言わざるを得ないんです。
政府は、電気通信の分野で競争が始まることが国民の利益になるんだ、こう言って電電を民営化いたしました。NTTが独占だから競争が不十分だと言って持ち株会社方式に再編をいたしました。さらに、昨年の通常国会では、接続料の算定に長期増分費用方式を導入いたしました。
私どもは、それらが結局国民にとってのユニバーサルサービスの切り捨てにつながるのだと反対をしてまいりました。その都度あなた方の答弁は、いえいえ民営にしても守ります、いえいえ分割しても守ります、いえいえ長期増分費用方式を入れても守ります、決して低下はさせないと、そういうふうに繰り返してきたわけですよ。しかし、とうとう今の時代なかなかそうはいきませんと副大臣が答弁するようになってきたわけです。
宮本岳志君 私は、副大臣、あなたは最新の知識には極めて博学でいらっしゃる。それは認めますよ。しかし、少し歴史を軽んじておられるんではないかと。きょうはひとつその歴史に立った議論をしたいと思います。
本改正案では、第七十三条の第四項と旧第五項の間に新たな第四項を設けることにしております。それはどのような条文ですか。
政府参考人(金澤薫君) 四項を読ませていただきますが、「総務大臣は、第一項の認可の申請があつた場合において、必要があると認めるときは、その土地等の所有者(その土地等が行政財産等に定着する建物その他の工作物であるときは、当該行政財産等を管理する者その他の政令で定める者を含む。次項並びに第七十五条第一項及び第七十六条において同じ。)の意見を聴くものとする。」というふうになっております。
この趣旨でございますけれども、第一種電気通信事業者が電線等の線路設備を敷設する際に、土地等の所有者と協議を行う必要があるわけですが、当事者間の協議が円滑に進まない場合、この場合には第七十三条第一項の規定に基づきまして、総務大臣の認可を得て事業者は土地等の所有者に対して協議を求めることができるというふうになっております。
この場合、土地等の所有者は協議に応じることが法的に義務づけられることとなるわけですが、その結果土地等の使用についてその所有者は私権の制約を受けることとなります。このため、協議認可の適切性を一層確保する観点から今回新たに第七十三条第四項の規定を設けまして、協議認可の可否を判断する際でございますけれども、必要に応じて土地等の所有者の意見聴取を行う旨の規定を設けることとしたものでございます。
あわせて、公有地上の工作物の上の線路等につきましてもこの法律の適用があることを括弧書きにより明確化したということでございます。
宮本岳志君 つまり、この第七十三条、そして七十七条までの規定ですけれども、今議論になっている土地収用法と類似の手続をこの電気通信事業法は盛っているんですよ。もちろん、あなた方が挿入しようという土地所有者の意見を聞くと、当然のことです。しかし、事業法の中にこのような土地収用法に準じた手続を定めた法律は、この電気通信事業法以外には余り見当たらないんです。
例えば、水道管を引く法的根拠となる水道法、電力線を引く根拠となる電気事業法、ガス管を引くときのガス事業法等にこれと同じ規定はございますか。
政府参考人(金澤薫君) お尋ねの水道、電気、ガス等のいわゆる公益事業に関する法律でございますけれども、電気通信事業法第七十三条と同様の規定を持つものはございません。
ただし、電気通信事業法第七十三条の線路敷設に関しましては土地収用法の対象とならないのに対しまして、これらの公益事業はいずれも土地収用法の対象となる事業でございまして、同法に基づきまして他人の土地等を強制的に使用することができることとなっております。また、基準に適合すれば道路管理者は道路占用許可を必ず付与しなければならない、いわゆる義務許可と言われております公益事業特権を付与されております。
他の公益事業では認められていないにもかかわらず、電気通信事業については第七十三条の規定に基づく協議認可という規定が設けられておりますのは、電柱を立てるという場合を想定していただけるとよくわかると思うんですが、他人の土地等の使用について私権の制約が相対的に小さいということがございます。そのために、土地収用法で定める厳密な手続を経ないでも簡易な手続で他人の土地等の使用を認めまして、迅速な線路敷設を実現することが公益性にかなうという判断によるものでございます。
宮本岳志君 ぜひ端的に答えてくださいね。
それで、なるほど土地収用法でその他はやるんですよ。一般法たる土地収用法でやる。しかし、この法律には特別に土地収用法類似の手続を定めてあるんです。
それで、この手続は結論としてどういうことになるかというと、電気通信事業者はその土地の使用について都道府県知事の裁定を申請することができると、その後、公告縦覧、意見書提出などの手続があって、結論は第七十七条に定められております。この手続の結論七十七条第一項、そして使用許可というかその使用が認可された場合の六項ですね、これひとつ読んでいただけますか。
政府参考人(金澤薫君) 第七十七条第一項でございますが、「総務大臣は、前条の期間が経過した後、速やかに、裁定をしなければならない。」、六項でございますが、「第一項の規定による一時使用のため他人の土地等に立ち入る者は、第二項の許可を受けたことを証する書面を携帯し、関係人に提示しなければならない。」。
宮本岳志君 今の六項ですか。
政府参考人(金澤薫君) 失礼しました。
六項でございますが、「使用権を設定すべき旨を定める裁定があつたときは、その裁定において定められた使用開始の時期に、第一種電気通信事業者は、その土地等の使用権を取得するものとする。」ということでございます。
失礼しました。
宮本岳志君 要するに、これは電気通信事業者がそこを使う客観的な妥当性があって一定の手続を踏めば、その土地の所有者の意思に反しても電柱を立てたり電線を張ったりすることが許されるということですね。そういう趣旨でいいですね。
政府参考人(金澤薫君) 裁定を受けますと使用権を取得するということでございまして、お尋ねのとおりです。
宮本岳志君 この規定がいつから始まったものかということを調べてみました。
民営化以前、電電公社時代の公衆電気通信法にも第六章、土地の使用として、第八十一条以下に同様の規定がございます。さらにさかのぼれば、明治二十三年制定電信線電話線建設条例というものに行き着きます。これはもちろん逓信省時代です。電信線電話線建設条例の第一条を読んでいただけますか。
政府参考人(金澤薫君) 「逓信省ニ於テ公衆通信ノ用ニ供スル電信線電話線ヲ建設スル為民有ノ土地又ハ営造物ノ使用ヲ要スルトキハ所有者及其他ノ権利者之ヲ拒ムコトヲ得ス 官有ノ土地又ハ営造物ハ其所管庁ニ通知シテ之ヲ使用スルコトヲ得」ということでございます。
また、同条例第三条でございますが、条例といいましてもこれは法律でございますが、「逓信省ハ公衆通信ノ用ニ供スル電信線電話線ノ建設又ハ通信ニ障害アル瓦斯支管水道支管下水支管電灯線電力線及私設電信線電話線ヲ所有者又ハ其他ノ権利者ニ命シテ移転セシムルコトヲ得」と規定しております。
宮本岳志君 一条だけ聞いたんですけれども、一条、三条にそういう定めがあると。一条、つまり逓信省が電話線を引くときは土地の所有者や権利者はこれを拒めないと明記されております。第三条は、電信電話線はガス管も電線も水道管でさえ押しのけて引いてよろしい、その後には植物などもやむを得なければ伐採してよろしい、こういう規定がございます。こうして引いてきた電話線であり、こうしてつくられたネットワークがまさに今日のNTTが持つ地域網の源流なんです。
実は、今の電気通信事業法七十七条の規定は一度も使われていないという説明でありました。少し不思議な気がしたんですけれども、なるほどこういう歴史を学べば納得できます。NTT東西の地域網というものはこういう強力な権限でこの逓信省時代からつくられてきた。民営化で本事業法ができる前にはほぼ完成されていたというふうに考えられると思うんです。これからボトルネックへの新規事業者の参入ということを促進するという議論もありますから、これからまた役に立つことがあるのかもわかりません。
そこで、原理原則問題を聞きたいんです。憲法には財産権の不可侵ということが書かれてあります。電気通信事業者にこのような他人の財産権に優越するような権利が認められている根拠はどのようなものですか。
政府参考人(金澤薫君) 電気通信事業法第七十三条の規定による使用権の設定は、電気通信事業が公益性の高い事業であるということ、また線路敷設に必要とされる土地等が相対的に小規模であること、さらには土地等の所有者の財産権との調和を図る観点から、総務大臣が認可を行う際の要件、二つ定めております。一つは、第一種電気通信事業者が土地等を利用することが必要かつ適切である場合、二つ目でございますが、第一種電気通信事業者が土地等の利用を著しく妨げない限度で使用する場合という限定を設けておりますので、社会的に合理的な受忍限度の範囲内というふうに考えている次第でございます。
また、総務大臣が行います協議認可、協議をすることを総務大臣が認可するわけでございますが、これは一種の行政処分でございます。土地等の所有者が不服がある場合、行政不服審査法に基づきまして、総務大臣に対しまして当該行政処分の取り消しを求める申し立て、それから行政事件訴訟法に基づきまして裁判所に取り消し訴訟を提起するというふうな手段を講じることができます。
宮本岳志君 まさに公益性、公共性と冒頭におっしゃったことがその根拠だと思うんですね。つまり、電話線をここに通したいというのは事業者のもうけだけのことではないんですよ、公共性を持つ事業をしているんだから、その妨げになるようなところに土地を持っている人は少し我慢してくださいよと。それはNTTやKDDIのための我慢ではなく国民みんなのための我慢なのだから、それは当然憲法には触れないという、こういうことだろうと思うんですね。つまり、電気通信事業者の公益性そしてその社会的責務は、単なる民間事業者の責務とはわけが違うということがこの歴史的経緯を見てもはっきりすると思います。
宮本岳志君 次に、電気通信事業法に新たに追加される条文として、三十九条の五、卸電気通信役務についての規定がございます。これについて、衆議院での議論の中で、地方自治体の保有する光ファイバーのいわゆるIRUという形態での心線貸しは含まれないということが明らかにされました。自治体が第一種電気通信事業者になるという比較的例外的なケースを除けば、追加される条文は主にNTTの保有する光ファイバーに対して適用されることになると考えますが、それでよろしいですか。
政府参考人(金澤薫君) 卸電気通信役務制度を今回の法律改正によって導入いたしました。これは事業者が届け出という簡易な方法で他の事業者に対して役務提供が可能となるものでございます。従来は約款外役務という形で認可の対象になっておりました。それを今回は届け出で行えるようにするという趣旨でございます。
これはそういう制度でございまして、特に東西NTTに限ったわけではございませんし、電力系NCC等に限ったわけでもございません。既存の事業者のみならず、自治体や公益事業者等が従来からの長期の心線貸し、いわゆる先生御指摘ございましたIRUベースの提供に加えまして、みずから第一種電気通信事業者となりまして、この制度を活用いたしまして単なる心線貸しではなくて帯域貸しもできますし、短期の心線貸しもできるということとなります。
宮本岳志君 NTTの保有する光ファイバーにも適用されることはもちろんですね。
政府参考人(金澤薫君) おっしゃるとおりでございます。
宮本岳志君 NTTは昨年十二月から自社の光ファイバー網の開放に踏み切りました。これはNTTに対する産業界の強い批判を受けてのことだと報道されております。そして、この法律でもそれを促進する内容が盛り込まれたということになります。
これについて、宮津社長は、メタルケーブルの加入者回線は公社から引き継いだものだが、光ファイバー網はNTTになってからの努力で敷設したものだ、だから光ファイバーについては別の競争ルールがあるべきだということを理由にして、自社の光ファイバーの開放に抵抗したと伝えられております。
我が党は、今の長期増分費用方式の接続ルールに反対です。また、光ファイバーを加入者回線と同じように開放しろということをここで言うつもりは単純にはありません。しかし同時に、光ファイバーは民営化後に敷いたから国民の財産ではなく自分たちのものだなどという議論は到底納得できるものではありません。
そこで、総合通信基盤局長に聞きたい。
NTTの保有資産で、ここまでは公社から引き継いだもの、ここからはNTTの企業努力がつくったものという客観的な境界が引けるんですか。
政府参考人(金澤薫君) この点についてNTTにも確認してみたんですが、保有資産の取得年度についてNTTグループ各社の資産簿を調査するためには相当の時間を要するということでございまして、現時点におきましてここまでが公社から引き継いだ資産、あるいはここからがNTTの企業努力としてつくったものというグループ全体のデータはないというふうに聞いております。
ただ観念的に、それでは分けられないのかということでございますが、それは保有資産を年度によって分けていけばいいわけでございまして、観念的には分けることも可能ではないかというふうに思っております。
宮本岳志君 そんなのは時間かけても引けるわけないんですよ。だって、民営化した後、もちろんNTTがインフラ整備の努力をしていることはわかっております。民営化後にやったインフラ整備もあるでしょう。しかし、それも宮津社長がどこからか自分が集めてきた人たちがやっているという話じゃないんですよ。公社時代から培われた技術力とスタッフによって、公社時代から築いてきた既存のインフラを使って、その上に立って整備をしているんですよ。
今日、競争政策が必要だというあなた方の見解はともかくとして、かつての積滞解消への努力に見られるように、国有事業だったからこそ全国津々浦々を網羅する電気通信ネットワークの構築がここまで進んできた、このことについてはお認めになりますか。
政府参考人(金澤薫君) 御承知のように、我が国の電気通信ネットワークというのは第二次世界大戦で非常な荒廃状況に陥りました。その早期復旧を図るため、電電公社、電気通信省から電電公社というふうに変わっていったわけですが、この公的な機関によりまして諸外国にも例を見ない債券引き受け制度、利用者の方々に債券を引き受けていただくというふうな制度でございますが、などによりまして資金を確保することなど、さまざまな施策をもって取り組んだことによりまして、全国電話ネットワークが早期に整備されたことがございます。これは事実でございます。
しかしながら、アメリカのように最初から民営化のもとで整備された例もあるわけでございます。必ずしも全国ネットワーク整備のために国有事業が必須であるということではないというふうに考えております。
宮本岳志君 アメリカの議論をしているんじゃないですよ。
日本のネットワークがそういうもとでつくられてきたということはお認めになりました。
NTTはそういう国民共有の財産を引き継いでいる企業としての特別の責任を負っております。もちろん、NTTのユニバーサルサービス義務もその一環ですけれども、これはあなた方が矮小化して言うように、電話の加入電話、公衆電話、緊急通報のみをやっていればそれでいいというようなことをNTT法の三条は言っているわけではないと思うんです。このことについては後でもう一度議論をしたい。
とにかく、やり方の是非はともかくとして、NTTという企業への行政のかかわり方は、国民の共有財産としてつくられてきたこの通信回線ネットワークをどう国民全体に役立てるのかという観点に基づくべきだと私は思いますが、これはあなた方お認めになりますか。
政府参考人(金澤薫君) NTTは日本電信電話株式会社等に関する法律第三条におきまして、あまねく電話、研究開発などの責務を維持することが求められております。そういう意味で、公共的性格を有する存在であるというふうに考えております。この責務を達成するために今、努力していくということは当然のことというふうに認識いたしております。
宮本岳志君 ぜひその一言は忘れないでいただきたいと思うんですね。
私は、冒頭、NTTの守るべきサービスについて小坂副大臣と議論をいたしました。こういう歴史に照らせば、電気通信事業者の社会的責務は単なる民間事業者の責務とはわけが違うんです。その公共性に対する責任をわきに置いて、民間なのだから国営のときのようにはできなくても仕方がないなどと軽々しく口にしてもらっては困る、それはこのNTTという企業の歴史も経緯も全く見ないものだということを指摘したいと思います。
宮本岳志君 そこで、外資規制の撤廃について幾つかお伺いしたい。NTT法第六条及び同第二項、第三項には外資規制の規定がございます。この条文の中の五分の一という外資の議決権割合の上限が三分の一に緩和されると。そこで聞きますけれども、この五分の一という割合はどのような根拠で決まったのか、それを今回三分の一とする根拠は何か、お答えいただけますか。
政府参考人(金澤薫君) 現行制度におきましてNTTの外資比率を五分の一未満としているわけでございますけれども、平成四年度の外資規制緩和時におきまして、他の第一種電気通信事業者の外資比率を三分の一未満としていたことから、NTTの基幹的事業者としての役割の重要性にかんがみまして三分の一を下回る水準が望ましいということ、それから我が国の放送事業者や米国の無線局免許等の外資比率が五分の一未満であったことなどを総合的に判断した結果でございます。
宮本岳志君 三分の一の根拠は何ですか。
政府参考人(金澤薫君) 今回、三分の一未満まで外資規制の緩和を行うことといたしましたのは、商法におきまして三分の一以上の株式を保有すれば定款の変更、役員の解任等の特別決議を否決できることとされていること等を考慮いたしまして、国の安全の確保に支障のない範囲として三分の一未満としたものでございます。
宮本岳志君 三分の一というのは、外資に定款の改定などが可能な特別決議の成立要件を満たさせない水準という説明であります。逆に言うと、特別決議以外の普通決議は阻止できなくなるということであります。普通決議の成立要件は過半数の過半数ですから二五%、現状の五分の一規制であれば阻止できるんですけれども、三分の一に緩和されればこれは阻止できなくなります。商法では普通決議事項として、取締役の選任、報酬の決定、計算書類の承認等々が挙げられております。これは極めて重要な事項です。
NTTコム、NTTドコモの対外戦略との関係で、持ち株会社の外国市場での資金調達もふえております。最近では、議決権割合はこの五分の一に近づいていて、新たな資金調達に不便なのでこれを緩和してくれとのNTTからの要望も出ていると聞いております。実情が五分の一に近づいたからという当事者からの要望で緩和に踏み切るなら、遠からず、さらにこの三分の一も超えそうだということで二分の一なりにすることになるのではないかと思うんですが、いかがですか。
政府参考人(金澤薫君) NTTの外資規制のあり方でございますけれども、外資比率の推移、それからNTTの海外事業戦略の動向等に加えまして、電気通信分野における国の安全の確保の観点から、外資規制にかわる有効な代替措置のあり方も含めまして慎重に検討する必要があるというふうに認識いたしております。したがいまして、現時点でこれ以上NTTに係る外資規制を緩和するという考えはございません。
宮本岳志君 あなた方は、電気通信事業者の外資規制は撤廃するのが国際的な趨勢になっているようなことをおっしゃいます。欧米の趨勢を言うならば、議決権割合の規制はなくすかわりに、国内の事業者への外資の参入に当たって個別に是非を審査する制度を設けております。これはWTOの基本電気通信合意でも認められた規制手法なんです。
そこで、聞きますが、今回の法改正に外資の参入時の審査制度の創設が盛り込まれておりますか。
政府参考人(金澤薫君) 御指摘のような外国人等がNTT株式を取得するに当たり総務大臣の審査を要するといったような制度は従来からNTT法には設けられておらず、今回の外資規制の緩和においても特段措置をいたしておりません。
NTT法における外資規制でございますけれども、外国人等の議決権割合がNTT法に定める上限を超えることとなる場合には、NTTは当該外国人等を株主名簿に記載してはならないというふうに規定しております。外国人等が法の上限以上にNTT株を取得した場合であっても、NTTが当該義務を履行することにより外資規制は担保し得るということでございます。
なお、NTTが条規の義務に違反した場合には五十万円以下の罰金に処することとされております。
宮本岳志君 外国が個々の外資について審査制度を持っていることは、NTTコムがアメリカのベリオの買収を行ったときに、アメリカの政府がこれを認可したというのが議論になった、報道されたことからも皆さんよく御存じのことだと思います。
あなた方は、都合のいいときだけ欧米の趨勢を持ち出すけれども、やっていることはこのとおりで、まさにNTTの言いなりに外資への規制をどこまでも緩めていけば、通信主権の土台であるネットワークを丸ごと外資に売り渡すことになりかねない、このことを厳しく指摘しておきたいと思います。
そこで、十二月の電通審答申にあるように、我が国通信事業者が海外の有力事業者に伍して海外市場への展開や国際的提携等を円滑に行えるようにするために外資規制を緩和する、これはこういうことで緩和するということでよろしいですか。
政府参考人(金澤薫君) 先ほどのアメリカのことについてちょっと補足させていただきたいと思いますが、パブリックコンビニエンス・アンド・ネセシティーといいますか、公共の便益と必要性があれば、連邦通信法二一四条によってアメリカは外資の参入をチェックできる仕組みになっておりますけれども、私どもとしてはこの制度はおかしいということでアメリカに対して強く申し入れております。
それから、なぜ外資規制を緩和したのかということでございますが、NTTの要請がございましたのは、エクイティーファイナンスをやる上において、現在の五分の一に外資保有比率が迫っておりますので緩和を希望するという要請があったものでございます。
宮本岳志君 ドコモやコムが海外で外国の企業との競争に乗り出すために外資規制を外して資金調達を可能にすると。NTTの再編以降、グループ企業であるドコモやコムは巨額の投資を行ってまいりました。海外企業の買収、そして資本提携を展開してきました。それは単に事業の展開、つまりiモードをヨーロッパでやるとかいうそんな問題ではなくて、極めてリスキーな面を持つものもございます。つまり、もくろみどおり事業がうまくいけば大きな収益を得ることができるけれども、逆に失敗すれば大きな損失をこうむることになるということです。
宮本岳志君 最近、NTTコムが資本参加している外国企業が破産法適用を申請したということが報じられました。その概略とNTTグループの損失額はどうなっておりますか。
政府参考人(金澤薫君) テリジェント社という会社でございます。NTTコミュニケーションズの一〇〇%出資子会社でございますNTTアメリカという会社がございますが、これが出資している企業でございます。全米で無線を利用したローカルアクセス通信サービスを提供している事業者でございます。
NTTから聴取いたしましたところ、今回の経営破綻の経緯について、設備投資等による負債、それから米国経済の低迷、これらによりまして急速に資金繰りが厳しくなりまして、五月二十一日の日に連邦破産裁判所に破産法第一一条の適用を申請したというふうに聞いております。NTTアメリカは、テリジェント社に出資していることから、同社二〇〇〇年決算におきまして、有価証券評価損として約八千八百万ドル、約百億円でございますが、これを営業外費用として計上したというふうに聞いております。
なお、NTT持ち株の連結決算への影響につきましては、NTTアメリカが連結対象子会社でございますので、平成十二年度決算におきまして約百億円という影響が出ている、そういうことでございます。
宮本岳志君 百億円の影響が出ているんですね。
私は、この事業法の昨年の改正のときに、NTTが地域会社の赤字を口実に労働者の賃金を抑制する、労働者に人権侵害ともいうべきリストラを迫る一方で、このような海外への投資に乗り出すのはモラルハザードではないかと、こう指摘をいたしました。
そこで、ちょっと大臣に聞きたいんですけれども、この話を聞いていただいて、つまりNTTグループは自分で自分をクリームスキミングしたのではないかと私はいつも言うんです。もともと国民から受け継いだネットワークとそこから生み出された莫大な資本を、食われる側の東西地域会社と食う側のコムや持ち株会社に分割をして、またドコモも傘下に入れて、食う側のコムやドコモは結局、国民の財産の上に築き上げた資本を我が物として国際的な大ばくちに乗り出す、これがNTTグループのやっていることではないか。そして、そのしわ寄せは全部NTTに働く者とユニバーサルサービス、つまり国民に押しつけているのではないか。これではユニバーサルサービスも守れなくなるのではないかと思いますが、大臣、そういうふうになっていると思いませんか。
国務大臣(片山虎之助君) このアメリカの通信企業絡みの話なんですが、こういうことになると思って投資したわけではないんですね。それは、経営基盤を強化して、海外に進出して、グループとして全部よくなろうと思ってやったことが、結果としては、アメリカの経済の低迷だとか、アメリカの会社自身のいろんなぐあいが悪くなったということなんで、それはなかなか、経営というのはそういうことがあるんですね。
だから、これを他山の石とせずに、ひとつこの教訓を今後の海外投資その他に生かしてもらいたい、こういうふうに思っておりますので、宮本委員が言われたことは、私は、直接のその関係はないので、国民の今までのある意味では資産をNTTが引き継いだという面は確かにあると思いますけれども、それが同時にユニバーサルサービスを維持する根拠にもなっておりますので、そのところは総合的にひとつ御考案賜りますようにお願いいたします。
宮本岳志君 では、そのユニバーサルサービスが本当に守れるかを見てみたいと思います。
我々は、国民に対して保障されるべきユニバーサルサービスはきちんと堅持されるべきであり、今日の現状を踏まえるならばファンドを設けることも含めた対応を頭から否定はいたしません。しかし問題は、あなた方が本来のその担い手であるNTTの公共的側面の解体を進めることによって、こういうファンドを考えなければ成り立たないようにしてきたというところに問題があると思うんです。
ユニバーサルサービスの範囲は、加入電話、公衆電話と緊急通報、この三つを予定し、総務省令をつくるという政府の答弁がございました。あなた方が言っているユニバーサルサービスの範囲というのは、国民にナショナルミニマムとして最低限何が保障されなければならないかから考えたものではなくて、コスト負担者の都合で決まったものだと言わざるを得ない。金澤局長は衆議院での答弁で、ユニバーサルサービスに必要なコストはだれが負担するのかと、負担者である電気通信事業者の考え方も当然念頭に置きつつ判断する必要があると答弁をされましたね。
ちょっと待ってほしい。ユニバーサルサービスというものはそういうものなのかと。このサービスは、今新たに始まるサービスじゃないんですよ。つまり、国民共有の財産を受け継ぐ者の当然の責務であったはずです。そうではないですか。コスト負担者の考え方も聞かねばならぬと言うけれども、国民はどうしてくれるんですか。国民の声は聞いたんですか。
政府参考人(金澤薫君) ユニバーサルサービスについてのお尋ねでございますけれども、日本電信電話株式会社等に関する法律第三条に基づきまして、「電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保」というものがNTT東西に義務づけられております。私どもとしては、今現在NTT東西の責務となっているそういう役務、具体的には加入電話、公衆電話及び緊急通報というものをユニバーサルサービスとして今回取り扱おうというふうに考えているわけでございます。
ユニバーサルサービスのあり方につきましては、昨年、電通審にIT競争政策特別部会というものを置いておりますけれども、ここがパブリックコメントを求めました。これは、広く国民の皆様方の意見を聞いたということでございます。現在と同様、加入電話、公衆電話及び緊急通報の三つのサービスを対象とするのが適当であるという意見が大宗を占めました。こういうふうな国民の声も踏まえまして、今回、これらのサービスを引き続きユニバーサルサービスとして定めることとしたものでございます。
私が発言いたしましたのは、ユニバーサルサービスとして何をとらえるのか、どういう役務をとらえるのかという場合に、例えばインターネットはどうか、携帯電話はどうかというふうなさまざまな御意見がございました。それに対しまして、そのようなものをユニバーサルサービスとした場合には、当然、電気通信事業者に義務づけるということも入ってまいりますし、それを負担する人々の考え方もある、それがどういう普及状況になっているのかということも想定しなければいけないわけでございまして、そういうものを総体として考えながらユニバーサルサービスの今後のあり方を考えなければいけないということを申し上げたわけでございます。
宮本岳志君 パブリックコメントではだめだと思うんですよ。電気通信事業者の数と国民の数というのはもう全然違うんですから。それは電気通信審議会にも事業者の代表は入っておられるでしょう。パブリックコメントでも電気通信事業者の意見はたくさん寄せられると思います。しかし、国民は、やはりアンケート等も含めて調査しなきゃどういうサービスを最低限やってもらいたいかというのはわからないわけですから、もちろんそれをどういうふうに設計するかという問題はあるでしょう、おっしゃるとおりあるでしょう、その制度設定は。しかし、ユニバーサルサービスの範囲を決めるのにやはり国民の声というものをきちっと聞かなきゃならないということを私は指摘したいわけです。
それで、そういうユニバーサルサービスがじゃ果たしてこのファンドで守られていくのかと。七十二条の九として、いわゆるユニバーサルサービス基金によって交付される金額の算定に関する規定が設けられる。この第三項に言う「総務省令で定める方法」とは、長期増分費用方式のことですね。
政府参考人(金澤薫君) 御指摘のとおり、ユニバーサルサービスの提供に係る原価の算定でございますけれども、ユニバーサルサービスを提供する事業者の非効率性というものを排除しやすい長期増分費用方式というものを用いることを予定いたしております。
宮本岳志君 衆議院の審議の中で金澤局長は、この長期増分費用方式は正確性を期する意味でむしろ望ましい判断だと、こう答弁されております。それならば、移動体通信事業者の接続料にこれを用いるべきだと思いますが、なぜ使わないんですか。
政府参考人(金澤薫君) 移動体通信事業者各社の接続料につきましては、現在、実際にかかった費用に基づいて算定いたしますいわゆるヒストリカルコスト、実際費用方式というものによりまして算定する考え方がとられております。
長期増分費用方式の導入に関しましては、昨年十二月の電気通信審議会の中でも議論がございまして、答申が出たわけでございますが、現在、移動体通信事業者が設定している接続料でございますけれども、これは国際的に見ても他の欧米諸国に比し安いということ等から、現行の方式を改め長期増分費用方式を採用する必要性は必ずしも認められないというふうな答申が出されたところでございます。また、諸外国でも、移動体通信事業者に長期増分費用方式の適用を求めている例はございません。したがって、このような考え方に基づきまして、現時点では長期増分費用方式を採用していないということでございます。
宮本岳志君 ヒストリカルでない、実際かかった費用でない計算式なんですから、実際かかった費用は取り戻せないということになるわけです。法律に「当該上回ると見込まれる額の費用の一部に充てるための交付金」と書かれている以上、赤字分の全部を補てんする趣旨でないことは明らかです。
そこで聞きたいんですが、このファンドが実際立ち上がった場合、交付金を受け取るのは主としてNTT東西会社が想定されます。しかし同時に、このファンドには東西NTT地域会社も負担金を納付するんじゃないですか。
政府参考人(金澤薫君) 今回のユニバーサルサービス基金制度でございますけれども、NTT東西の通信設備に接続することによりまして受益する事業者、これに対して応分の費用負担を求めることといたしております。
この点、NTT東西は、ユニバーサルサービスを提供するための設備を設置、運営しているだけでなく、みずからの通信設備を用いて電気通信サービスを提供することにより収益を上げているという実態にございます。したがいまして、他の事業者と同様に受益者でもあるため、委員御指摘のとおりNTT東西も応分の費用負担を行うというふうに考えております。
ただ、交付金でもらう額と負担金で支払う額というものを一々やりとりするということは非常に非効率でございますので、実際は両者を相殺するといった手続がとられるものと考えております。
宮本岳志君 小坂副大臣は、この負担金の額について、二十九日の衆議院総務委員会で、それぞれの会社の売上高等に比例して算出するという考え方を示しました。その売上高の中には、交付金の対象となるような高コスト地域での、先ほどお話にあった東西地域会社のサービスでの売り上げも含まれるということになりますね。
政府参考人(金澤薫君) 各負担事業者の負担金の額でございますが、これは全体として必要なコストを各事業者の売上高等により案分するということを予定しているところでございます。特定の地域の売上高というものを負担比率の算定から除くということは予定していないということでございます。
宮本岳志君 結局、ユニバーサルサービスファンドというのは、NTT自身の力では全国一律のサービスを担えなくなることを前提に導入しようというものです。
ところが、適格電気通信事業者だと認定されて当該地域で適切、公平かつ安定的なサービスの提供に幾ら努めても、それでは黒字にならない、補助金が出るのはサービスが赤字になっている場合だけ、しかも赤字額の一部しかもらえない。その上、このサービスの売り上げが総売り上げの一部になって負担金の増額になるとすれば、一応適格電気通信事業者として認定されたとしても、その地域でのサービスは不適切だとか不公平と断定されない範囲でなるべく低い水準に抑えたいというインセンティブになるではありませんか。これでは、ユニバーサルサービスファンドではなくて、ユニバーサルサービス抑制ファンドになってしまうのではないかと言わざるを得ません。こういう点をしっかりと私どもは指摘したいと思います。
宮本岳志君 時間がありませんので、紛争処理機関についても聞いておきたい。
この競争政策に伴って必然的に増加するトラブル、これを解決し、競争のルールをつくるために新たな機関の設置が盛り込まれております。この電気通信事業紛争処理委員会の事務局長及び事務局員の任命権はだれにあるんですか。
政府参考人(金澤薫君) 国家公務員法の定めによりまして、電気通信事業紛争処理委員会の事務局長及び事務局員の任命権でございますけれども、総務大臣が任命するということになります。
宮本岳志君 これについて、独立性に対する議論に対して、片山大臣は独立した事務局をつくるというんだけれども、実際この任命権は総務大臣が持っておられる。また、この法律で、第八十八条の十第三項として、「事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。」となっております。
この紛争処理委員会が立ち上がる際に事務局員で旧郵政省の出身者はどれぐらいを占めるのか、設置後は事務局員の総務省の他の部局との人事交流は禁止されるのか、またこの法案が通ったら、この処理委員会の経費として今年度幾らの予算を予定しているか、まとめて簡潔にお願いします。
政府参考人(金澤薫君) 電気通信事業紛争処理委員会の事務局員の任命でございますが、これは、本法律の成立後に人事を定めるということとしておりまして、総務大臣の考え方によることとなります。したがいまして、現時点で具体的なことが申し上げられる状況にはございません。
なお、委員会の事務局員は、電気通信事業者間の接続等をめぐる紛争に関しまして専門的知識や経験を有することが必要であるというふうに考えております。
それから、委員会設置後において、同様の理由により、委員会の事務局と総務省の他の部局との人事交流ということでございますが、これはルール整備、紛争処理等を一体としてやっていくと、電気通信の知識のある方も必要ということでございまして、一律に禁止さるべきものではないというふうに考えております。
宮本岳志君 先日の電気通信役務利用放送法の審議のときに片山大臣は、私が周波数免許と放送の規律を同じ一人の大臣がやっているところがあるかと聞いたのに対して、ドイツもそうだ、EUを調べてほしい、一つの省でやっている例はEUにはいっぱいあると答弁をされました。後で、これは大臣の勘違いで、放送のことではなく本法案の電気通信事業紛争処理委員会のことだというふうに説明をされました。
では、本当に電気通信はそうなっているのかと役所に聞いたら、諸外国における電気通信分野の紛争処理機関という、こういう表を持ってまいりました。なるほど、規制機関が紛争処理を一体的に行うかという欄があって、EU十五カ国全部に丸がついております。しかし、これには実はごまかしがあるんです。今、問題になっているのは総務省という政策立案機関が規制監督機関と一体になっているということであって、これを分離せよという議論なんです。
総務省に聞きますけれども、政策立案と規制監督を一つの機関が担っている国はEUに一つでもあるか、またOECD二十九カ国中では何カ国か、お答えください。
政府参考人(金澤薫君) 情報通信行政における組織のあり方でございますが、これは諸外国においても一様ではございません。
例えば米国FCC、これは連邦通信委員会でございますけれども、これは、大統領制のもと多数行政委員会というものが設置されております。そういうアメリカにおける行政組織のあり方から見て、適切な組織の一つとして、政策立案、規制実施、紛争処理に至る情報通信行政をFCCは一体的に推進しております。
また、EUにおきましては、域内の統合化を促進するという観点から基本的な政策立案は欧州委員会が行いまして、域内各国はその下でおおむね政策立案と規制監督を一体的に遂行し得るような仕組みとなっております。
なお、独立規制機関という言葉がよく使われますが、この独立というのは、レギュレーターがオペレーターから独立している、またオペレーターがレギュレーターから独立しているということを意味するものでございまして、欧州における独立規制機関というのは行政機関の政策立案機能と規制監督機能の分離を意味するというものではございません。
さらに、韓国や中国などでも独任制機関が情報通信行政を一体的に遂行しております。
EUにおいて委員会方式の規制機関を設置している国は、EU加盟国というのは十五カ国ございますけれども、その四カ国のみというふうに考えております。
宮本岳志君 問いに答えてくださいよ。
規制監督機関と政策立案機関を同じものが兼ねている国はEUに一つでもあるか、OECD二十九カ国中何カ国になっているか、はっきり答えなさいよ。資料あるでしょう。
政府参考人(金澤薫君) 御指摘の点でございますが、昨年五月にOECDのTISP、電気通信情報サービス政策グループというものが発表した報告書に言及がございます。
本報告書においては、ミニストリー、いわゆる省以外の組織を独立規制機関というふうに位置づけておりまして、先ほど申しました独立の意味合いというのはそういうオペレーターとレギュレーターの関係を指すものでございますが、独立規制機関を持つ国は二十九カ国中二十二カ国でございます。残り七カ国のうち二カ国、メキシコとチェコでございますが、これは政策立案機能の内部に規制機関が存在しております。それから、四カ国では一つの機関が、いわゆる日本、韓国、ポーランド、トルコでございますが、政策規制を担当しております。ニュージーランドでは独立規制機関が存在しないということでございます。
宮本岳志君 何を言っているんですか。それについての資料があるじゃないですか、各国の規制監督機関と政策立案機関という。一目瞭然ですよ。日本、韓国、ポーランド、トルコ、この四カ国以外に右と左が一致しているところなんかないじゃないですか。独立規制機関になっているかどうかを聞いているんじゃないんですよ。政策立案と規制監督を同じ機関がやっているところはあるかと聞いているんですから、はっきり答えていただきたいと思うんですね。もう時間がないですからいいですよ、そんな答弁しか出ないんだったら。
時間が参りましたが、あなた方の言う公正な競争の促進なるものが何をもたらすか。それは結局、国民の共有財産としてつくられてきた電気通信ネットワークがいよいよその痕跡までも失われかけていると。歴史的経緯からの当然の要請である公共性や公益性、ユニバーサルサービスはとことんまで削り取られていく。 そして、もう一つのしわ寄せは、NTT地域会社六万人、MEやファシリティーズも含めれば十万人という労働者の人減らしと賃金切り下げということになるわけですよ。昨年のIT基本法の議論以来、あなた方はIT革命という言葉を連発し、経済波及効果何兆円、雇用創出効果何百万人と言ってきましたよ。しかし、実際にITの現場でやられようとしていることは全く逆さまの人減らしじゃないですか。しかも、総務省は、それをたしなめるどころか、もっとやれ、人減らしが足りなければ経営形態を見直すぞと、一層それに拍車をかける役割を果たしている。
このような法改正を我が党は絶対に認められないということを指摘して、私の質問を終わります。