153 – 参 – 総務委員会 – 8号 平成13年11月22日
平成十三年十一月二十二日(木曜日)
午前十時開会
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委員の異動
十一月二十日
辞任 補欠選任
大江 康弘君 渡辺 秀央君
十一月二十一日
辞任 補欠選任
渡辺 秀央君 大江 康弘君
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出席者は左のとおり。
委員長 田村 公平君
理 事
景山俊太郎君
世耕 弘成君
谷川 秀善君
浅尾慶一郎君
伊藤 基隆君
委 員
岩城 光英君
小野 清子君
狩野 安君
久世 公堯君
沓掛 哲男君
日出 英輔君
森元 恒雄君
山内 俊夫君
高嶋 良充君
高橋 千秋君
内藤 正光君
松井 孝治君
魚住裕一郎君
木庭健太郎君
八田ひろ子君
宮本 岳志君
又市 征治君
大江 康弘君
松岡滿壽男君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
副大臣
内閣府副大臣 村田 吉隆君
総務副大臣 遠藤 和良君
法務副大臣 横内 正明君
事務局側
常任委員会専門
員 入内島 修君
政府参考人
金融庁総務企画
局長 原口 恒和君
総務省自治行政
局長 芳山 達郎君
総務省自治財政
局長 香山 充弘君
総務省自治税務
局長 石井 隆一君
財務大臣官房審
議官 木村 幸俊君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出
、衆議院送付)
○独立行政法人等の保有する情報の公開に関する
法律案(第百五十一回国会内閣提出、第百五十
三回国会衆議院送付)
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<自治体には年間900億円の減収>
宮本岳志君 前提問題として、まず地方自治体の税収の増減について確認をしたいと思います。
先ほども申告分離課税の一本化で千三百億円の増収、税率引き下げで四百五十億円の減収、損失の繰越控除の特例で四百七十億円の減収と答弁がありました。
そこで、自治税務局長に聞くんですが、この法改正を行わなければこの三つの項目がどうなるか、二〇〇三年四月一日以降二〇〇五年までの状態について簡潔に御説明ください。
政府参考人(石井隆一君) 二〇〇三年四月、平成十五年四月に申告分離課税の一本化を仮にほかの措置なしに行ったといたしますと、初年度で九百八十億円、それから平年度で約千三百億円程度の増収になろうかと思っております。
ただ、ぜひ委員に御理解いただきたいと思いますのは、確かに平成十五年四月、ことしの十三年四月から申告分離一本化をするというのを二年間延長するという措置を先般の通常国会でしたわけですけれども、その際の議論としても、やはりもし将来申告分離課税に一本化するとしたならば、その申告分離課税のあり方、例えば損失が出た場合の繰り越しをどうするかとか、あるいは税率が今のままでいいのかとか、いろんな議論はかねてあったわけでございまして、その点については御理解をいただきたいと思っております。
宮本岳志君 総務省は、税収増と減の相殺で数百億円の純増という説明をしておりますけれども、私はこれはごまかしだというふうに思います。
手元に資料を配付いたしました。これは概念的に単純化したものですけれども、今回の法改正さえしなければ、つまり実線、二〇〇三年四月一日から大体地方自治体は年間千三百億の増収、時期の問題いろいろあっても、これはほぼ今既に決まっていることであります。
ところが、きょう新たに決めようとしていることは、これを二〇〇三年一月一日に三カ月前倒しするかわりに年間九百億円もの減収を押しつける、この破線にしてしまうということでありまして、地方自治体の悲願ともいうべきこの申告分離課税の一本化による当然の地方税の増収予定分を国の都合で大部分を削り取るということにほかならないと思うんです。
理由は、先ほども出されておりました、間接投資から直接投資へと金融の中心を移すとか、厚みのある証券市場をつくるためとかというものですけれども、まずそもそも論を大臣に聞きたいんです。
<経済対策としての効果も示せない>
宮本岳志君 今日、日本の金融が間接投資中心になっているとか証券市場に厚みがないということに地方自治体の責任があるのか、それを地方が負担しなければならないどのような責任を負っているのか御説明、大臣いただけますか。
国務大臣(片山虎之助君) 委員がいろいろ言われますけれども、この申告分離の一本化というのはどれほどのエネルギーと努力が要ったかということですよ。源泉分離を残せという大合唱の中で、これをとにかくまとめるためにはこういう必要があるんですよ。
それから、証券市場の云々に地方団体の直接の責任はありませんよ。しかし、大きな国の経済がどうなるか、証券市場が健全に育っていくかということは間接的に大変地方団体にも関係があるわけでありまして、そういうことで、地方団体が国と一緒にいろいろな努力をする、協力をするのは当たり前の話だと思っております。
宮本岳志君 そういうことをおっしゃるのでしたら、景気対策も国で専らやるのではなく、地方に思い切った税源移譲をやって地方も一緒にさせればいいけれども、第一、金融政策なんというのは国が専らやってきたことであります。
では、この政策によって、つまり地方のお金を九百億円削り取って確かな経済効果があるかどうかということをお伺いしたいと思うんです。
自治税務局長の答弁では、定量的に投資家がどのくらいふえるかということになりますと、これはなかなか難しいと。また、財務省の木村審議官も、今回の税制改正で個人投資家がどの程度ふえるかは、なかなか具体的な計数を申し上げることは難しいと答えておられます。どれだけ個人投資家がふえるかわからない、証券市場にどれだけ資金が集まるのか、取引がどれだけふえるのかも具体的に数で言えないと。
これで、確たる数字もなしに九百億円もの収入減、これを地方自治体に押しつけるというのは本当に筋が通らないと思うんですけれども、それともどういう効果があるか具体的に数字で言えますか、自治税務局長。
政府参考人(石井隆一君) お答え申し上げます。
景気浮揚ですとかあるいは株価の水準の引き上げというのは、やはり企業が活性化し、収益力を高めることによって実現されるというのが基本でございまして、税制がすごく大きな比重を占めるかどうかといいますと、私どもは、やっぱりまず企業の活性化、経済環境、あるいは証券市場のファンダメンタルな面、そういったところが大事だろうと思っております。
したがいまして、確たる数字とおっしゃいましてもなかなか難しゅうございます。例えば、過去にも有価証券取引税を例えば平成十年に引き下げたようなこともございますが、それじゃ株式相場が上がったかというと、短期的には一たん下がったりしておるわけでありまして、やはり経済のファンダメンタルなところが基本ですから、今回の税制改正でじゃ幾ら株が上がるかというのは、これはなかなかお答えしがたい御質問だと思います。御理解を賜りたいと思います。
宮本岳志君 地方が期待しているお金を削り取るわけですから、期待しているということでは話にならないと思うんですね。とにかく数字がなかなか出ないということはお認めになりました。
総務大臣は七日にこうおっしゃいました。今の株式市場の低迷というのはこのままにしておけない、株が上がって怒る人はそんなにいない、そして日本の経済の実力からいったらもう少しダウが高くてもいいと、こうおっしゃいました。構造改革とか厚みのある市場と言うけれども、結局株価を急いで引き上げたい、こういうことですか、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) 株価は結果ですから、株価は結果で、そういう今委員が言われましたような構造改革をやり、環境整備を行い、結果として株価が上がる、大変結構であります。もうみんながハッピーになる。
宮本岳志君 では、この税制で株価が本当に上がるのかと。確たる数字はないということですけれども、株価については、竹中経済財政担当大臣みずからが、「株価というのは、企業なり経済なりが将来に生み出す収益、付加価値を現在価値に置きかえたものでありますから、そのファンダメンタルなところを強くする」ことが必要だと、これは本会議で答弁されております。じゃ、この法律案が成立することによって、今の話からいきますと、企業や経済なりが将来生み出す付加価値がふえるとか、あるいはファンダメンタルが強くなると、そういう何か直接の関連性はありますか。
国務大臣(片山虎之助君) いや、これによって一般投資家がふえてくる、株式市場が活性化するんですね。そのことが我が国のファンダメンタルズを強くするわけであります。今はその成長部門にスムーズに資金供給が行われないようになっているんですよ、証券市場が力がありませんから。そういうことをちゃんとやっていくということが私は大きな経済の再生につながる構造改革だと、こういうふうに思っております。
宮本岳志君 株価というのは、大臣、実体経済を映す鏡なんですよ。だから、実体経済が悪いのをそのままにして鏡をいじくっても何の解決にもならないわけです。
<国民のふところをねらった株価対策>
宮本岳志君 それで、先ほどから直接金融の育成とか株式市場を厚くするという議論がやられております。しかし、大体なぜ間接金融ではだめなのかが私は一向にわからないのです。企業に銀行の資金でなく証券市場からの資金を供給する必要がなぜあるのか、これひとつ金融庁にお答えいただけますか。
政府参考人(原口恒和君) 現在、日本の金融市場の特徴として、千四百兆を上回る個人の金融資産に占める株式の割合が非常に低水準である。あるいは、個人金融資産の過半が預貯金に吸収されていて、産業全体で見ますと負債に比べて過少資本の状況にあるというふうに見ております。
また、こういうふうに直接金融のウエートが高いということになりますと、いろんな産業の構造のしわ寄せといいますか、そういう影響が金融機関にかなり直接的に集中して影響を受けるというような問題もございます。
こういう中でやはり、今、片山大臣も申されましたように、次代を担う産業等への資金の円滑な供給ルートを、多様な供給ルートを確保していくということ、あるいは家計の面から見ますとその保有する金融資産の多様化を図るという両面から見て、やはり間接金融と直接金融のバランスのとれた形にしていくことが重要な課題だというふうに認識をしております。
宮本岳志君 大体、間接金融が、つまり預貯金の比率が高いと、我が国において。これは、高いのには理由があるんですね、我が国において高いのには。
大多数の国民の預貯金は、投資してもうけるために貯金しているんじゃないんですよ、大部分は。老後などの不安に備えてのもしものときの蓄えと。大臣も、郵便貯金を所管する大臣であれば、庶民がまさに間接金融、預貯金に託している思いというのはおわかりだと思うんです。これを、いかぬ、直接金融に切りかえろと。これはつまり、預貯金はリスクをとらないから悪い、つまり郵便貯金も悪いと、こういう議論に行き着きかねないと思うんですが、総務大臣、どう思いますか。
国務大臣(片山虎之助君) いや、要はバランスなんですよ。今、日本は偏って、証券市場に行く金が、リスクマネーというのか、リスクをとるマネーの比率が極めて低いんですよ。だから、今言いましたように、多様な資金供給ルートを開くことが経済の再生、活性化につながるんですよ、多様な。
そういうことで、今余りアンバランスなので、もっとバランスのとれたこういうものにしようと、こういうことでございまして、郵便貯金をやめろ、老後の蓄えはもう捨ててしまえと、そんなことは言いませんよ。大いに郵便貯金は皆さんに愛していただかなきゃいかぬと思っております。
宮本岳志君 だから、そのアンバランスが日本がひどいのは、それは本当にこの日本の国民の生活が投資どころでない、将来に向けて本当に蓄えた上の、蓄えざるを得ない現状にあるというところに私は問題があると。
そもそも政策が間違っているんだと。国民が千四百兆もの個人資産を専ら預貯金に振り向けざるを得ないのは、あなた方の政治が、年金制度を悪くする、医療費のたび重なる負担増、あるいはいつ失業するかもしれぬリストラの野放し、こういう政治を続けているからこそ国民は蓄えざるを得ないわけですよ。国民が安心して投資にでも回そうかという気持ちになれるような政策は何もないままで、こうやって国民のとらの子を吐き出させて株価をいかに上げるかを考えるなどというのはまさに邪道だと私は言いたいと思うんです。
地方自治体の貴重な財源を九百億円も削り取り、それで投資家を優遇するというふれ込みで国民の資産をリスクにさらさせる。その一方で、銀行からは株式を買い取ってやり、買取機構に二兆円の債務保証までやってやる。このような政策は絶対に認められないということを指摘して、質問を終わります。