154 – 参 – 総務委員会 – 4号 平成14年03月19日
平成十四年三月十九日(火曜日)
午前十時開会
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出席者は左のとおり。
委員長 田村 公平君
理 事
景山俊太郎君
世耕 弘成君
谷川 秀善君
浅尾慶一郎君
伊藤 基隆君
委 員
岩城 光英君
小野 清子君
久世 公堯君
沓掛 哲男君
南野知惠子君
日出 英輔君
森元 恒雄君
山内 俊夫君
高嶋 良充君
高橋 千秋君
内藤 正光君
松井 孝治君
魚住裕一郎君
木庭健太郎君
八田ひろ子君
宮本 岳志君
松岡滿壽男君
渡辺 秀央君
又市 征治君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
副大臣
総務副大臣 若松 謙維君
大臣政務官
総務大臣政務官 滝 実君
事務局側
常任委員会専門
員 入内島 修君
政府参考人
総務省自治行政
局長 芳山 達郎君
公正取引委員会
事務総局官房審
議官 伊東 章二君
法務大臣官房審
議官 小池 信行君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○地方自治法等の一部を改正する法律案(第百五
十一回国会内閣提出、第百五十三回国会衆議院
送付)(継続案件)
○行政制度、公務員制度、地方行財政、選挙、消
防、情報通信及び郵政事業等に関する調査
(平成十四年度の地方財政計画に関する件)
○地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣
提出、衆議院送付)
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<第3種・第4種郵便の制度は存続を>
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
本題に入る前に一問だけ、今国会に提出される予定の郵政公社法に関してお伺いしたいと思うんです。
というのは、先週末にこれに関係する四法案の提出の遅延理由なるものが配付されました。これには、内容について精緻かつ幅広い検討とか、多数省庁との調整ということが書かれておりました。もちろん検討の不十分な法案を国会に出してもらっては困るんですけれども、かといって法案はいつまでたっても出てこないで、出たと思ったらもう時間がないので急いで審議してくれと、これは国民が法案の内容を知る間もなく採決されるということにもなり、これは重大な問題だと思うんです。そういう意味できちんとした取扱いが必要だということをまず指摘を申し上げたいと思います。
それで、法案の内容について、一部では第三種、第四種郵便が廃止されるという報道もありまして、関係団体の間に疑問と不安が広がっております。
去る三月の七日に日本機関誌協会の主催で開催された懇談会では、この問題への強い危機感が口々に表明されました。例えば、日本消費者連盟は、機関誌を月に三回発送しており、三種郵便がなくなれば運動そのものも危機になると。心臓病の子供を守る会は、障害者団体の運動も機関誌が命だと。埼玉土建組合は、機関誌の発行を続けられるのか組合員に心配の声が広がっている、こういう声でした。
明日の午前中に我が党も準備させていただいているんですが、その懇談会にも既に様々な分野の二十数団体から参加の回答が来ておりまして、改めて関心の強さに驚いております。
片山総務大臣はこの問題について、衆議院で我が党の矢島議員に、公社が料金をまけるのがいいのか、別の公的支援があるのか等を含めて検討していると答弁されておりますけれども、この答弁は、現行の第三種、第四種のサービスが今後どのようになるのかをしっかり示した上で公社関係の四法案が提出されるんだという意味に受け取ってよろしいですか。
国務大臣(片山虎之助君) まず、郵政公社関係法案の御心配をいただきましてありがとうございます。
四法案を考えておりますが、大変なボリュームがあるんですよね。二百何十の法案を全部直すと。そこで、今週ぐらいからほかの省庁との調整、法制局審査並びに与党との意見のすり合わせを始めておりまして、できるだけ今月中を目指して法案の取りまとめを行いたいと。しかし、大変なボリュームで、本当に毎晩、関係の職員、頑張っておりますが、できるだけ早く法案をまとめたい、御審議を仰ぎたいと、こういうふうに思っております。
そこで、三種、四種の料金の話でございますけれども、現在では国そのものがやっておりますからそういう政策料金を導入いたしております。公社になったときにどう考えるか。
それぞれ意味があって今の三種、四種というのは作っているわけでありますから、この意味については十分重く受け止めなければならないと思いますけれども、一方、公社の経営のこともありますし、それから、ちょっと今、宮本委員引用されましたけれども、政策的な優遇をするにして、料金で優遇するのか助成で優遇するのか、いろんなやり方がございます。その辺を含めて、法律にどこまで書き、政令にどこまで譲るか、これを含めて現在検討中でございますけれども、関係の団体の御心配は私も十分承知いたしておりますので、そういうことを踏まえた上での検討をさせていただきたいと思っております。
宮本岳志君 私は、公社自身が三種、四種のサービス水準を維持できるように制度設計するのが筋だと考えておりますけれども、少なくとも全体として国民のサービス水準の切下げにならないように、この点、切れ目がないように是非きちっと進めていただきたいというふうに思っております。
<「重要な問題」なら住民の意思を問え>
宮本岳志君 さて、本題の地方自治法の改正案に入ります。
合併協議会の設置手続の中に新たに住民投票の制度を設けるということが提出された法案の中に盛り込まれております。昨年秋の衆議院での議論でも、住民投票の対象をこのような場合に限定する理由として、合併については地方団体の存立そのものにかかわる問題ということで、住民投票になじむという答申がなされたと、こういう答弁がございました。
これは、昨年十月二十五日の地方制度調査会答申の第一の一の括弧一というところに、ただ市町村合併については云々とある、この部分以下の記述を踏まえた答弁だと思うんですが、局長、それでよろしいですか。
政府参考人(芳山達郎君) 御指摘のとおりでございまして、昨年の二十六次地方制度調査会の答申の中で、一般制度の下に市町村合併について、特に、正に地方団体の存立そのものにかかわる重要な問題であること、地域に限定された課題であることから、その地域に住む住民自身の意思を問う住民投票制度の導入を図ることが適当であるとされておるというところを引用したところでございます。
宮本岳志君 その地方制度調査会の答申を見ますと、ただ市町村合併については、一、正に地方公共団体の存立そのものにかかわる重要な問題であること、二、地域に限定された課題であることから、その地域に住む住民の意思を問う住民投票制度の導入を図ることが適当であると書かれてあります。この一と二と番号が振られている二点の指摘はだれも否定しないだろうというふうに思います。
政府も、市町村合併は地方公共団体の存立そのものにかかわる重要な課題だと、そして地域に限定された課題であるという認識を持っておられると。これは、総務大臣、この認識は大丈夫ですね。
国務大臣(片山虎之助君) そのとおりでございます。
宮本岳志君 それなら、なぜ答申どおりに合併の是非についての住民の意思を問う制度を導入しないんですか、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) それは、何度もまた御答弁申し上げましたように、関係の団体の意向を十分聞いた上でと、こういうことでございまして、関係団体の意向を十分聞きましたら、合併そのものの是非を住民投票にかけるのはいささか問題があると、こういう強い御意見がございまして、地方分権推進委員会も合併協議会の設置だけなら住民発議の一環としていいのではないかと、こういう御意見をいただきましたので、それに従ったところでございます。
宮本岳志君 確かにこの答申の中に、制度化に当たっては関係団体の意見を十分聴取の上とありますよ。しかし、その関係団体の意見を聞くというのは、この合併の可否についての住民の意思を問う制度を仕組む上で意見を聞けと、そういうことだと思うんですね、この趣旨は、この趣旨は。そんな協議会の設置についての住民投票の意見を聞けとはここに書いていないわけですよ。そういう意味では、この調査会の答申とも私は趣旨が違うと。
そこで、今回のような制度化がいかにこの趣旨からずれるかということを私はお伺いしたいんですけれども、この法案に基づいて、今回の皆さん方の提案している法案に基づいて合併協議会の設置をめぐる住民投票が実施された場合、合併賛成だという、そういう意思を示したい住民はどのような投票行動をすればいいのか。また、合併反対だという住民はどういう投票行動をすればよいのか。これは自治行政局長、お答えいただけますか。
政府参考人(芳山達郎君) 正しく合併協議会の設置の意義だろうと思います。
合併協議会の設置については、合併が前提となるものではありませんで、合併の是非を含めて、合併に関するあらゆる事項を検討する場だという具合に位置付けております。
したがいまして、今回の住民投票制度は、このような合併協議会の設置に関して議会と住民の意思とが著しく乖離をすると、例えば、これまで平成七年に住民発議制度が発足して以来、五十一地域百件の発議がなされましたけれども、そのうち十五地域二十七件しか合併協議会ができていないというような状況をかんがみて、議会と住民の意思で著しく乖離がある場合に、住民の意思を尊重する観点から、改めて署名を集めて、署名要件をきつくして、そして住民の意思をもう一回取って、過半数の賛成があれば合併協議会の設置を認めるという住民発議の手続の一環として導入をするという具合に位置付けておるわけでございます。したがいまして、合併そのものの是非ではなくて、あくまで合併協議会の是非について住民投票をするという具合に我々は理解しています。
したがいまして、今後、合併協議会設置後に、先生、今御指摘がありました住民代表の参加を得るとか、ないしは協議内容についての情報公開の、情報の開示でありますとか、また原則公開でありますとか、住民説明会を開くということで様々な住民の皆様の御意見を聞くということがあり得ると、またそうしているという具合に理解しております。
宮本岳志君 この答申には、住民が投票によりその意思を直接表明するという住民投票の制度化は、地方自治の充実を図るという観点からは重要な課題であると書かれてあるんです。
つまり、住民投票を制度化する意義は、それによって直接に住民の意思が地方行政に反映されて生きることにあるとはっきり認めているんですよ。それにもかかわらず、この答申に基づくと称してあなた方が出してきている住民投票は、自治体住民が合併に賛成の意思表示もするわけでもない、反対の意思表示をするわけでもないという、そういうただ単に賛成か反対かを議論する場を置くだけであって、そういう意思表示ではないんだというような制度になっているんですよ。
これは私、住民投票で最も問わねばならないことを問わないでおいて、そして最終的に合併するかどうかという最も住民の意思を問うべき、直接聞くべきことは聞かないと、全くおかしな制度設計になっていると思います。
合併協議会の設置は、設置については、地方公共団体の存立そのものにかかわる重要な課題だが、合併するかどうかは余り重要な課題でないと、総務大臣、そんなふうに総務省はお考えなんですか。
政府参考人(芳山達郎君) 先生、二十六次地方制度調査会の答申で、先ほど先生が引用された、市町村合併について住民投票を導入することが適当である、その場合、自主的合併の推進という観点から市町村合併特例法に位置付ける、特例法に位置付けるという形で位置付けて、その制度化をどういう形でするかは関係団体とよく協議をしなさいと。あくまで市町村合併についての手続は、地方自治法上、議会と首長さんの判断に今回任されております。
ただ、合併特例法上の住民、合併協議会の中でどう位置付けるかと。これいろいろ地方分権推進委員会の御答申もあって、法案の制度化に当たってどういう形で入れようかという御論議を関係団体としました。その中で、住民投票制度はまだ一般化についてはちょっと早いんじゃないかという御意見でございました。ただ、合併協議会については、要件について当初の五十分の一よりも重くした形で、改めて住民の御意見を聞いて制度化することについては御賛成されたということで今回の法案ができたという具合に理解しております。
宮本岳志君 先週の我が党の八田議員の質問でも、また翌日行った参考人の陳述の中でも、合併の可否の検討は協議会でやるんだと、そういう宣伝を信じて賛成の投票をしたら、さっきキャンペーンという言葉も政務官から出ましたけれども、賛成の投票をしたら、設置の賛成の投票をしたら、その結果で住民は合併に賛成しているかのように扱われ、協議会が設置されてもその検討内容はなかなか住民に知らされないという問題点がいろいろ指摘をされました。結局のところ、合併推進のネックになっている部分を解決して、自治体への押し付けを強めるねらいで考えられた法改正としか私どもはもう到底思えません。
<合併の推進だけの特例法は片手落ち>
宮本岳志君 去る二月二十日の憲法調査会の公聴会がございました。池上公述人が、地方自治法第七条にある市町村の廃置分合という規定を指摘をしておりました。ここにいる委員の皆さんもこのときの公聴会に出席しておられた方がたくさんいらっしゃいます。池上公述人が指摘した廃置分合という考え方を踏まえるならば、市町村の合併手続にだけ住民投票の制度を作るのではなく、分割とか分立にも同様に適用できる制度にしなければ筋が通らないのではないかと私は思いますが、総務大臣、そう思いませんか。
副大臣(若松謙維君) 現在のいわゆる地方自治の在り方という議論の流れからすると、この二十六次の地方制度調査会答申、又は地方分権推進委員会の意見、こういったものを踏まえると、やはり市町村合併は自主的にしっかりやっていこうと、こういった議論が大勢でありまして、その中で住民発議の手続の一環としてこの住民投票制度が導入されたわけであります。
ですから、分割とか分立ということは特にちょっと、今の時代の流れからはちょっと違うのではないかなという、そういう認識をしておりまして、是非御理解を賜りたいと思います。
宮本岳志君 地方自治というのは、憲法にわざわざ第八章と章を上げて、そして地方自治の本旨に基づいて進めると書いてあるんですよ。地方自治法の中に明瞭に第七条として廃置分合という規定があって、市町村の規模をどうするかは地方自治体の固有の正に自治の内容なんですよ。それを、国の勝手な目標を立てて、そして国の価値判断によって制度を作り、一つの方向に誘導するんだと、そんな答弁は重大だと。
それならば、何を住民投票で決めなければならないことで、何は議会の権限に属するべきことか、そんなことはその時々の政府の都合で好き勝手に決めていいんだと、それが総務大臣、総務省の考え方なんですか。大臣、いかがですか。
国務大臣(片山虎之助君) それは正に国会が決めるんですよ。本来の廃置分合の手続は議会でいいんですよ、議会が決めれば。ただ、合併は大きな政策目標だから、合併協議会の発議をした場合に、うまくいかないときは、議会が否決したり長が付議しないときは合併協議会の設置を住民投票にかけると、それは国会が国民の意思として決めるんですよ。それは正に立法政策の問題でございまして、国会で大いに議論していただければ十分だと、こういうふうに思います。
宮本岳志君 法として、私は正に憲法が示している地方自治の本旨に反するようなことは国会といえども決めるべきでないと、これは明瞭に指摘しておきたいと思うんです。
それで、調査会の答申に私は明瞭に反しているということも指摘をいたしました。また、参考人質疑の中でも、自治体の境界は住民自身の意思で決められるべきだと、地方自治の本来の在り方もそういうものだということも示されました。住民投票制度の本来の理念も今回の住民投票はやはりゆがめるものになっているということを指摘をしておきたいというふうに思います。
時間が限られておりますので、住民訴訟制度に次に移っていきたいというふうに思います。
<住民との争訟の矢面に自治体の機関が>
宮本岳志君 この分野についても、これまでの衆参での質疑及び参考人の陳述によって政府案の問題点が非常にはっきりしてきたと思います。
十五日の与党推薦の参考人である石津弁護士はこう言いました。従前の裁判例を見てみますと、個人を被告とする四号訴訟を提起すると同時に、機関を被告として三号訴訟、つまり個人に対して損害賠償請求をしないことが違法であることの確認を求める訴訟でございますが、この訴訟を併合提起する例も出てきております。中には、四号訴訟を提起できるにもかかわらず、あえて三号訴訟を選んだという例もありますと陳述いたしました。
このような事例を総務省は承知しておりますか。それはどのような事例ですか。
政府参考人(芳山達郎君) ただいまの四号訴訟と三号訴訟との関係でございますけれども、個人を直接に被告とする四号訴訟を提起できる場合に、執行機関を被告として怠る事実の違法確認を求める三号訴訟のみが提起される例はあります。
具体的には、神奈川県のある市町村における住民訴訟におきまして、納税貯蓄組合への補助金支出が違法であるということで、補助金交付決定を行った予算執行職員であります収納課長に対して損害賠償を求める四号訴訟の提起が可能でありますけれども、それではなくて、執行機関としての市長を被告に、当該職員への損害賠償を怠る事実が違法であるという請求がなされた事例があることを承知しております。
宮本岳志君 三号訴訟というものがなぜそのように活用できるのか、今の事例に即して簡単に説明していただけますか。
政府参考人(芳山達郎君) 四号訴訟で追及、請求されます損害賠償請求権でございますけれども、地方自治法上の財産に該当するという具合に解されております。
そのため、四号訴訟で住民が追及しようとする損害賠償請求権について地方公共団体の執行機関が請求していない場合に、当該請求権の不行使、行使していないということで財産の管理を怠る事実と構成することによって可能であるという具合に解されておるところでございます。
したがいまして、四号訴訟の対象となる行為についても、三号訴訟により執行機関を被告として怠る事実の違法確認をすることができるという具合に思います。
宮本岳志君 大臣、聞いていただけましたか。この石津参考人の指摘というのは実に重要なものだったと私は思います。住民訴訟制度というのは非常に柔軟な枠組みを住民の総意でうまく使いながら発展してきたものであります。それがこういう形で使われるというばかりでなく、実際にも行われていることが明らかになりました。
総務大臣は、四号訴訟では機関の責任が追及できないと繰り返し答弁されますけれども、少なくとも機関の責任についてはこのように三号訴訟で追及できるし、それを今までの四号訴訟と併用して提起することもできるということなんです。そうじゃないですか、大臣。
政府参考人(芳山達郎君) ただいま申し上げましたように、三号訴訟における被告は当該怠る事実に係る執行機関でありますから、個人ではなくて地方公共団体の執行機関として責任を追及できるということでありまして、三号訴訟と四号訴訟の併合提起、先ほど御質問がこれございましたけれども、最近の事例で最高裁で認められたという具合なのは承知をしております。
宮本岳志君 大臣、よろしいですね、事実の確認。
政府参考人(芳山達郎君) ただいま申したとおりでございます。
宮本岳志君 大臣が、今度の法改正はやらないと機関の責任問えないんですよと、もう何度も何度も言ったじゃないですか。そうじゃないと。既に三号訴訟でやる、あるいは三号訴訟と四号訴訟を併用してやるということができると、これは与党がお招きした石津参考人が述べたことと今お認めになったわけですから。何かあるんですか。
政府参考人(芳山達郎君) それで、ちょっと舌足らずでございまして、三号、四号訴訟を併用するというのと今度の四号訴訟の意味合いでございます。意味合いでございます。
意味合いは、三号訴訟は被告を相手とするということで、違法であることが確認されるだけでございます。違法であることが確認されるだけでございまして、今回の四号訴訟においては、執行機関を被告としますが、義務付けがなされると。今回の場合は執行機関を相手にして義務付けがなされるということでございますし、義務付けの効果が、訴訟告知をしておりますので、三号はしておりませんけれども四号はしておりますので、一回ですべて執行機関と個人が、一回で解決をされるということが一点でございます。
もう一点は、あくまで四号訴訟がありますから、三号と四号の場合には、四号がありますから、個人の萎縮効果、今回の訴訟の一番のポイントであります萎縮効果、それの効果であります一つ、それも併せての効果、その効果は今回の三号、四号と今回の四号訴訟とは全然違うという具合に理解をしております。
宮本岳志君 違法が確認されたら、あなた方は性善説に立っているわけでしょう。情報公開でも、いやいやそんなの出しますよと言っているじゃないですか。違法が確認されたら、当然そんなもの、その損害を求めるに決まっているじゃないですか。出しているところが違うなんて言ったって、説明になっていないですよ。
それで、私はこの四号訴訟の、あなたがつまり今回新四号訴訟なるものを作って訴訟類型の再構成などと言っているのは、実はこれまでの三号訴訟の一部を補強したようなものを新四号訴訟と称することによって、結局は現行の四号訴訟を廃止するということにほかならないと。私はこれが今回の改正案の本質だと思いますよ。
<首長・職員に有利な証拠だけ出やすく>
宮本岳志君 ここで、若干そのことをはっきりさせるために質問の角度を変えたいと思います。
大臣も局長もこれまで審議の中で行政の説明責任ということを今回の法案のメリットとして強調されてまいりました。自治体業務の適正さの確保という、訴訟を提起する側の目的の達成がより確実になるというのが本法案提案の立場だと思います。同時に、十五日の参考人の陳述の中では、先ほど局長もお話になった訴えられる側の苦労を改善するということも言われました。
そこで、もう一遍確認しておきますが、今回の四号訴訟の再構成を行う主要な目的はこの二つのどちらにあるのか、訴訟目的の達成なのか、被告側の負担軽減なのか、どちらですか。
政府参考人(芳山達郎君) 今回の住民訴訟の改正でございますけれども、都度都度申し上げておりますが、二十六次の地方制度調査会の答申を踏まえて行うものでございます。この答申では、いわゆる地方分権一括法の施行によりまして、地方公共団体が自主的、主体的な施策の展開が求められる、またその責任を自覚した上で自らを律するという認識の下で、住民自治の一環であります住民による監視機能の強化が必要であるということを理解しております。
それで、今回、そういう観点から、答申の趣旨を踏まえて、差し止めを求める一号訴訟の対象範囲の拡大、原告勝訴の場合の弁護士費用の拡充、四号訴訟における地方団体の機関を被告として真正面に据えて説明責任を果たさせる、損害の補てんを図るというものであります。
今お尋ねありました四号訴訟の再構成は、被告側の負担軽減を主要な目的とするものでありませんが、地方公共団体の説明責任を強化するなど、地方分権の時代にふさわしい制度として再構築をする、併せて萎縮効果等の弊害を除去しつつその機能の強化を図ろうというものであります。
宮本岳志君 余りよくすっきりとは分かりませんが、説明責任が果たされるということも皆さん方から繰り返し言われていますから、では、この法改正で本当に行政の説明責任が果たされるかどうかを議論したいと思うんです。
衆議院の審議では、昨年の十一月の二十九日、芳山自治行政局長はこう答弁しております。今度の新しい四号訴訟でございますが、地方団体を当事者とすることになりますと、不利益文書が存在しながら文書命令に従わない、文書を提出しないという場合には、被告であります執行機関等に訴訟上の不利益が生じます。法律上生じます。そういうことから、第三者としての参加に比べまして、地方団体に対する文書提出の効果が促されると答弁されております。
自治体が、機関自身が被告になれば、裁判で負けないようにするから文書の提出命令にも従うだろうと、こういう御答弁だと思うんですが、つまり、これからは自治体の機関自身が四号訴訟の当事者になれば、機関には裁判で負けないようにするインセンティブが働くと、このことは議論の前提としてお認めになるわけですね。
政府参考人(芳山達郎君) 今の点は都度都度申し上げておりますけれども、今回、地方等を被告とするということで正面に据えるということでございます。
これは、これまで個人であります職員であるとか長が被告になっておるわけですから、その面では文書も出ないと、出にくいと、ないしは訴訟の類型が個人と住民でございますので、地方団体全体に是正の効果が及ばないというようないろいろの面での不都合がございます。そういう面で、今回、地方公共団体の執行機関そのものを据えることによって説明責任を果たさせると、また是正の効果が地方団体全体に及ぶと。
我々、再三再四言っていますけれども、裁判所において文書の提出を地方団体が果たさない場合には不利益の裁判になるというようなもろもろ考えて、今回の訴訟類型の再構成になったという具合に理解をしております。
宮本岳志君 それは、原告の主張を、もちろんその裁判に負けまいとする自治体は、自分たちに誤りがなかったという証拠は、資料はなるほど従来よりも積極的に出すでしょうよ。しかし、その裁判で被告になることによって、原告の主張を裏付ける内容の資料が果たしておっしゃるように出るかと。それは、隠せば不利になるから出るはずだというのが唯一の答弁なんですよ。
ところが、そのような文書が存在すると裁判官にも分かっていて、おおよそ内容も知れているという場合は、それはそれを隠せば心証が不利になるでしょう。しかし、問題は、どのような問題が存在しているのかという情報自体が行政機関の外からは得られないということにあるんです。先ほど民主党の議員の方からの話もありました。
最近の外務省問題の経過を見ても、そのことはよく分かります。三月十四日の日経にこう書いてあります。鈴木宗男衆議院議員と外務省の関係をめぐる外務省の内部文書が次々と表面化している。十三日には鈴木氏が六年前、外務省職員に暴行を加えたとする文書も明るみに出た。鈴木氏との関係を清算したい外務省と、これを後押しする官邸の思惑も浮き彫りになってきたと。つまり、今まで隠されていた文書が表に出るようになったのは、外務省が宗男氏との関係を清算しようとする立場に転じたからだと。それまでは、ここで言われている暴行事件の存在自体が知られていなかったんですから、それを出すということも、だれももちろんこれ要求するはずもないんですよ。
<総務省も都合の悪いことは隠してきた>
宮本岳志君 私が国会に来てからのあなた方総務省、そして旧郵政省、対応もそうだと思います。役所が自分に不利な資料をいつでも誠実に出すというんだったら、我々は質問をするのに苦労しないんです。
昨年は、いわゆる高祖憲治参議院議員派の公職選挙法違反で職員が逮捕されるという事件がありました。その後で大臣は、各郵政局長や郵政監察局長に状況を聞いたと。そして、浅尾慶一郎議員の質問にこう答弁しました。極めて顕著な服務規律の違反や公私混同はなかったというふうな報告を受けていると。そう答えたのを大臣、覚えておられますか、覚えておられますね。
国務大臣(片山虎之助君) いや、話がいろいろ広がってきまして、結構なんですが。今までは個人が訴訟の相手、被告ですからね、地方団体の仕事としてやった、大多数は。にもかかわらず、個人が訴訟の当事者になる。個人の説明責任ですよ。今度は地方団体の機関そのものを相手にするんだから、地方団体の機関としての説明責任を果たすと。それが本来の在り方じゃないかというのが我々の考え方で、今までは地方団体は後ろに引いてますから、資料を出せといったら裁判所が一定の手続をやって、手間も暇も掛かるんですよ。今度は当事者ですから、もっと出やすくなる。それは全部出るか出ないか、それは訴訟のいろんなあれがありますからね。しかし、ずっと出やすい環境になって、ずっと出るというのが、我々が見ておりまして、その方が本来の在り方ではないかと。個人が個人の行為をやったんじゃないんですよ。地方団体の意思として、政策として、判断としてやったこと、これが争われるんですから、その機関なり団体としてのいろいろなやったことの説明は明らかにすべきだろうと、こう言っているわけであります。
それから、三号は怠る事実の違法確認なんですよ。四号とは全く違うんですよ。これはやらないことを違法だから解消しろという訴訟ですよ。四号とは全く違うんで、我々は四号も執行機関の責任にしているわけであります。
宮本岳志君 それは三号は四号と違いますよ。しかし、三号は機関相手にやる裁判でしょうということを言っているんですよ。それはそうでしょうと、機関相手に訴えられないとあなたがおっしゃるから、三号で訴えることができるんじゃないですかということを私は言っているんであって、それは違うから三号と四号と番号が違うんでしょうよ。
それで、私の聞いたことに答えていただいていないです。そういう答弁をしたことを覚えておられますかと聞いたんです。
国務大臣(片山虎之助君) 私は資料がありませんが、あなたが資料を持って言われているんなら、そうでしょう、議事録にあるんなら。
宮本岳志君 つまり、あのときもそういう指摘をされても、結局その後、そういうふうにあなたは公私混同はなかったという報告を受けていると言ったけれども、その直後にこの東北郵政局で渡し切り費から裏金作っていたことも明らかになったわけですよ。
そういう一つ一つのことが決して自主的にあなた方から出てきているわけじゃないじゃないですか、大体ここの国会の場だって。それが、地方自治体がこういう事態になったら自分に不利な資料もどんどん出すようになるんですと。そんな説明は私はだれも納得しないと。現場でこの四号訴訟でやっておられる市民団体等々、到底そんなの信用できないというのは、私は明らかだというふうに思っております。
ちょっと事実の問題がいろいろここで問題になったときに、結局明らかにあなた方もしてこなかったということにかかわって聞くんですけれども、ついこの前の木曜日の私の質問についてもそうですよ。私は資料を配付して、NTT東西の説明と、そして総務省が出してきた資料とNTTの内部文書が明確に食い違っているということを指摘をいたしました。
あのとき問題になったことはこういうことなんですよ。あなた方が説明したように、依然として集計中だとNTTが答えたとすれば、二月の二十二日時点で集計中だとNTTが答えたとすれば、NTTは総務省にうその報告をしたと。既に一月の三十日には集計を終わっているのに集計中だとうその報告をしたということになります。そして、もしそうじゃないとすれば、総務省が決してNTTが集計中だと言ってもいないのに、私に集計中だと聞いているとうその資料を出したということになります。
これ、大臣、どちらがうそをついたことになるんですか、はっきり答えていただけますか。
国務大臣(片山虎之助君) これは私が答弁したんじゃございませんが、委員御質問の件につきましては、二月十八日の委員からの照会に基づきNTTに確認を担当の部局が行いまして、NTTから集計中であると回答が来ましたので、それをお答えしたものであります。
なお、三月十四日の総務委員会で委員から御提示のあった対処方針の文書については、当方はその文書は承知しておりませんというふうに局長が答弁したのであります。
宮本岳志君 郵政のときもそういう内部文書の事実かどうかを確認していないというふうに言い続けたわけですよ。これもいずれ私は明らかになるときが来るだろうということを申し上げておきたいと思います。
<「身に覚えのある首長」にだけ利益>
宮本岳志君 大臣、行政訴訟制度というのは住民が自治体の機関の行動を直接監視すると、そのことで住民が納めた税金が正しく使われるような規律が働くようになることに意味があるんです。それを自治体が裁判の当事者になったときに、自分が負けるような資料を一生懸命出すだろうと。そんな想定が成り立つならば、最初からこんな制度はなくても大丈夫ということになるんですよ。そんなものを全部性善でやっているというんだったら。
十五日の参考人質疑で、私は、司法改革フォーラムという団体から「住民訴訟の見直し案は廃案に」と題する提言が昨年九月に発表されているということを指摘いたしました。このフォーラムのメンバーにはオリックスの宮内会長も名前を連ねておられます。宮内氏は旧総務庁の規制改革委員会の委員長であり、あなた方もよく知っている方だと思います。この提言では、冒頭に本法案の内容が住民による地方自治の直接監視機能を空洞化させると指摘した上で、我が国でようやく根付き始めた草の根民主主義を一挙に後退させるものであると、こう指摘をしております。
片山大臣は、衆議院で、改正前の制度だと個人しか責任を問えないから機関の責任が問えないじゃないかと、それをまずはっきり問うて、その上で個人にも責任がある場合には賠償させると答弁しました。つまり、新しい制度では、今度の制度では、矢面に立つのは不正を行った個人ではなく自治体の機関そのものだということでいいですね。大臣、そういうことですね。
国務大臣(片山虎之助君) そうなんですよ。地方団体の機関が被告になるというのか当事者になるんですよ。今までは個人が当事者だったんですよ。個人が当事者になるのと機関が当事者になるのでは資料の出方が違いますよ、それは。今までは局外者なんだから、訴訟参加しているかどうかは別にして。だから、大変な手間があって出にくい。今度は当事者ですから、そういう意味では大変出やすい環境になったということを我々は言っておるわけでございましてね。
しかも、その機関が仮に負ける、敗訴すると機関が個人に損害賠償するわけでございまして、それはもう委員よく御承知のとおりでございますので、今度は機関と個人を両方つかまえているんですよ。前は個人だけなんですよ。そこに我々は問題があって、地方自治行政の萎縮その他の弊害もあったと、こういう認識から、地方制度調査会の答申を得て、こういう制度を今回お願いしておるわけであります。
宮本岳志君 資料が出るかどうかというのは先ほどずっと議論をしましたけれども、自治体にとって不利な資料が出やすくなるというのは到底理解できない話なんですよ、それは。しかも、存在するかどうかはあらかじめみんなに分かっているわけじゃないんですから、それは。そのことは一向に説得力を私は持たないと思うんですけれども、確かに訴えられる側にとっての負担の軽減であることだけは一目瞭然だというふうに思います。
このフォーラムの提言の「自治体が組織をあげて弁護」という言い方の中に訴訟費用の問題も指摘をされております。
新四号訴訟では、被告の自治体が敗訴して個人への損害賠償を義務付けられた場合でも、自治体がその訴訟費用を個人に請求することはしないと。なぜ不正な財務会計行為を行って自治体を裁判に巻き込んだ者に訴訟費用を請求しないんですか。これはどういう理由ですか。
政府参考人(芳山達郎君) 住民訴訟が今度再構成されますけれども、住民訴訟になる前に住民監査請求が前置でなされております。住民監査請求がなされておりまして、住民の方は執行機関の方が違法、不正な財務会計行為をやっているという具合に主張をすると、地方団体の方は住民監査請求の段階では正しいということをしている、住民監査請求の段階では意見が合致していないということでございます。それが住民訴訟、監査委員の結果が出て、それに不服である住民が訴訟に持ち込むというわけでありまして、当然、執行機関である被告の方は、なぜ当該者に対して損害賠償を請求しないかと、しないのが正当かというのを主張するというのは住民訴訟の今度の類型でございます。
そういう意味で、自分の立場を、自分がそうしないという立場を主張する、自分の立場を主張する、正当性を主張するということでございますから、当然その判断、地方公共団体の判断、正当性を主張する判断については地方団体が負担するという具合に考えております。
宮本岳志君 だから、自分の立場を主張するというのは、その長なり個人に責任はないんですよという主張をするから自治体が負担するということになるんですよね。つまり、それが敗訴した場合でも、結局その裁判、それは事実、結局は判決が出た場合は、敗訴した場合は、そうじゃなかったと、その個人が悪いと、つまり自治体も被害者なんだということになっても、結局はその裁判費用を自治体が持つというところに、つまり、その個人の責任は明瞭に軽減してやるとか、外してやると、この今回の改悪だと思いますけれども、改悪の性質が如実に示されているというふうに私は思います。
それで、もう一つ提言の中で触れられていることがあるんです。
地方自治体が敗訴して、財務会計職員への賠償命令が出されても、責任を問われた会計職員が取消し訴訟を提起した場合には訴訟が二段階ではなく三段階になってしまうということが指摘されております。このような取消し訴訟を提起することは法的に可能ですか。
政府参考人(芳山達郎君) はい、可能であります。
今回の改正案で訴訟告知を義務付けておりますことから、第一回目の訴訟の効力は原則として長個人に及ぶということでありますが、賠償命令というのは財務会計職員でございまして、財務会計職員に対して第一回目の訴訟で賠償命令を出した、それに対しては職員の方は取消し訴訟をすることは可能であります。可能でありますが、第一回目の訴訟が訴訟告知をしております関係上、争う意味はない、争う実益はないということでございます。
宮本岳志君 その可能性はあるということですよね。だから、三段階の訴訟になって引き延ばされる可能性もこの中にはやっぱり法的には残されていると。
さらに、この提言はこういうことを言っております。訴訟の当事者となっている首長が裁判の途中で落選する場合もある。そうなると、一気に天国から地獄へと、これまで組織を挙げて自分を守ってくれていた役所が、今の鈴木宗男氏のように、逆に不利な材料をどんどん出されると。
自治体の首長が敵対的な立場の人物へと交代した場合、賠償請求の義務付けが争われている当事者はどのようにして自分の権利を守ることができるか、これをお答えいただけますか。
政府参考人(芳山達郎君) したがいまして、今回の訴訟においては被告であります地方公共団体の執行機関から個人であります首長さん、職員、その他に対して訴訟告知を義務付けておるわけでございます。訴訟告知を受けた当人については、四号訴訟で自らの法的利益を主張するために訴訟参加をすることができます。
御指摘のように、長が交代した場合にも当然訴訟に参加することができるということでございますので、個人の権利保護の面においても言われるような問題はないという具合に我々は認識をしております。
宮本岳志君 絶対政権交代はあり得ないと確信できる首長以外は、これは訴訟告知があった場合には訴訟参加せざるを得ないと。そういうときのためにということになってきて、実はこの提言は、個人が被告とされることの苦痛の軽減という問題についても結局根本的な解決になっていないと、こういう指摘もされています。
そして、提言はそのことを指摘した上で、「以上の分析を前提とすると、違法行為について身に覚えのある首長等以外にこの改正で利益を受ける主体は想定できない。」、これがこの宮内さんも加わったフォーラムの結論なんですよ。私は、こういう法案は、このフォーラムも提言しているように、国会の責任で廃案にすべきだということを強く主張したいと思います。
<公費を使っての物見遊山は許されない>
宮本岳志君 最後に、議員の派遣に関する規定、法の第百条の十二として整備することについて質問したい。
このような法整備をしなければ国内や海外の調査のための派遣はできないんですか、行政局長。
政府参考人(芳山達郎君) 議員の派遣の制度でございますけれども、今回位置付けましたのは、二十六次地方制度調査会の答申の中で、地方議会の活性化を図るために、これまで明文の規定がありませんでした議員の派遣制度、これにつきまして今回法律で、議案の審査、当該団体の事務に関する調査、議会が必要と認める場合には、会議規則の定めるところにより、議員を派遣することができるという根拠規定を設けました。それをすることによりまして、議会の審査、調査機能及び議員研修の一層の充実が図られるという具合に理解しております。
宮本岳志君 この法案が成立すれば、県議や市議の公費での海外旅行も大いに結構というようなことになるんですか。
政府参考人(芳山達郎君) この法規定は、今まで法規定の明確な根拠ないし規定がなかったわけですが、昭和六十三年の最高裁判決で、地方公共団体の議会の権能、議会の機能を適切に果たすために、その裁量で議員を本会議として派遣することができるということは既に認められております。
ただ、これまで全国三団体、全国都道府県議長会等から、この最高裁の趣旨に沿った法整備を図ってもらうようかねてから要請がございまして、一方、先ほど、地方制度調査会の御答申もありまして、今回法制度化をしました。これは国会法における議員派遣と同じ仕組みでございまして、地方団体の地方自治法にはなかったわけですけれども、今回そういう形で入れさせていただきました。
ただ、今御指摘ありました点は、当然、今回、議員の派遣は、先ほど、法の規定の趣旨にのっとって、議案の審査、事務に関する調査、これに資するような研修ということで、その限りにおいて行われるというわけでございますので、議会、議員派遣の目的が議会において必要と認められる場合に派遣されるということでございます。
今後、各地方団体においても今回の改正の趣旨を踏まえて適切に対応するように、我々としても努力をしてまいりたいと思っています。
宮本岳志君 我が党は、海外視察の名目で実際に物見遊山に近いことに公費が使われているということを厳しく批判をしてまいりました。私の地元、大阪の河内長野で八八年から昨年まで毎年、百数十万円の費用を使って議員の海外視察を実施しております。十四年間で二千万円です。もちろん、我が党の市会議員団はこのようなものには参加をしておりません。地方自治体が財政危機に苦しんでいる今、こういう経費こそ削減するべきだということを主張しております。
とにかくそういった批判が全国で巻き起こっているときですから、当然、こういう法改正をやったからといって、適正に調査目的を限定して行われるべきであるということを指摘して、私の質問を終わりたいと思います。
<合併の是非を住民に問う修正案を提出>
(修正案の提案理由説明)
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の地方自治法等の一部を改正する法律案に対する修正の動議を提出し、その提案理由及び概要を御説明いたします。
修正案の内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。
本修正案を提出する理由は、去る十五日の本委員会での参考人質疑でも明らかになったように、政府案には重大な問題があり、このまま本会議に上程されて成立することを看過するわけにはいかないからであります。
その第一は、議会が合併協議会の設置を否決した場合にだけ適用される住民投票制度を作ることが地方自治の本旨に背くものだからであります。これは、住民意思のつまみ食いであり、住民投票制度の拡充を求める声を逆手に取って、国が進める市町村合併押し付けの新たな手段を作るものと言わなければなりません。
その第二は、いわゆる四号訴訟の再構成を行うことが住民の手で個人の責任を明らかにする制度の形骸化をもたらすおそれが大きいからです。それは、訴訟を不必要に複雑化し手続の遅延をもたらすことによって、不正な支出行為を行った自治体首長等の粘り勝ちを許すことにつながるものであります。
以下、本修正案の内容の概要を申し上げます。
第一に、本修正案は、代位訴訟制度の改正部分を削除し、それに代わるものとして必要な最小限の手当てをすることとしております。
具体的には、自治体による訴訟経費の負担の在り方を合理的なものに改めること、訴訟に当たっての自治体による情報提供について努力義務規定を設けること、上司の命令で自らの意に反して行った行為の賠償責任の転嫁を行うことであります。
第二に、合併協議会の設置に関する住民投票制度の創設を削除し、代わって市町村合併の可否そのものについて住民の意見を反映できる制度を設けております。
具体的には、合併の議決に先立つ住民への周知、一定数の有権者による請求があった場合の住民投票の実施の義務付け、投票結果についての首長と議会の尊重義務などを規定するものです。これにより、住民が自らの居住する地方自治体の在り方について投票によって意見表明する権利が保障され、住民自治への拡充へ寄与するものとなります。
以上、修正案の提案理由と内容の概要を申し上げました。何とぞ、委員各位の御賛同をお願いして、提案に当たっての説明といたします。