154 – 参 – 本会議 – 38号 平成14年07月10日
平成十四年七月十日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第三十九号
平成十四年七月十日
午前十時開議
第一 道路運送車両法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、石油公団法及び金属鉱業事業団法の廃止等
に関する法律案及び独立行政法人石油天然ガ
ス・金属鉱物資源機構法案(趣旨説明)
一、日本郵政公社法案、日本郵政公社法施行法
案、民間事業者による信書の送達に関する法
律案及び民間事業者による信書の送達に関す
る法律の施行に伴う関係法律の整備等に関す
る法律案(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
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<国民のためのサービスは切り捨てに>
副議長(本岡昭次君) 宮本岳志君。
〔宮本岳志君登壇、拍手〕
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました郵政関連四法案に関し、総理並びに総務大臣に質問いたします。
総理は、衆議院本会議の答弁で、提出されている四法案は民営化への一里塚であると発言されました。全国銀行協会は、昨年来、小泉総理と方向を一にする、公社化は民営化の一里塚だと大歓迎し、後押しをしてきました。この銀行協会は、四月二十六日、郵政公社法案閣議決定に当たっての声明で、民間にできるものはできるだけ民間にゆだねるとの立場から、郵便貯金の廃止や民営化を改めて主張しております。
総理、あなたの言う一里塚の先にあるものは、銀行協会が言うように郵便貯金の廃止や民営化ではないのですか。だからこそ銀行協会は、総理、あなたを大歓迎してきたのではありませんか。あなたの言う一里塚の先にある目標には、本丸である郵便貯金や簡易保険を含むのか含まないのか、総理の明確な答弁を求めるものであります。
郵便は、安価で簡便な国民の基礎的な通信手段であり、これをあまねく国民に保障すること、ユニバーサルサービスを保障することは近代国家の基本的使命です。だからこそ郵便法第一条は、「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供すること」を国の責務としているのです。ところが、小泉内閣は、この郵便事業の本来の使命に反し、郵政民営化の突破口として郵便事業への民間参入を強行しようとしているのであります。
総理、あなたは銀行協会と同じく、民間にできるものは民間にと繰り返し民間参入を叫びますが、民間にできるものというのは、つまりもうかるものということではないのですか。わざわざ赤字の事業に参入する民間企業などあり得ないではありませんか。
政府は、クリームスキミング、いいとこ取りを許さないなどと言いますが、この法案のどこにその保障があるのですか。民間企業は営利を目的にしている以上、いいとこを取らない民間企業はあり得ないのではありませんか。
郵便事業が一種、二種の収入で三種、四種の政策減免を支え、大都市の収入で過疎地、地方の赤字を相殺することによって全国一律のユニバーサルサービスを保障する事業である以上、この事業への民間参入は、どんな条件を付けようが、程度の差こそあれ、結局はいいとこ取り以外の何物をももたらさないのではありませんか。総理の答弁を求めるものであります。
信書便法案をめぐる衆議院での修正議論の焦点は、ダイレクトメールが信書に含まれるかどうかということでした。これは、今後も信書便法などとは何の関係もなく営業を続けるメール便事業者の営業範囲をめぐる議論にほかなりません。
しかも、政府が示した「信書の定義に関する政府の考え方」では、内容が公然あるいは公開たり得る事実のみであり、専ら街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシのような場合は信書に該当しないなどとしています。これではダイレクトメールの大半が信書から外れるのではありませんか。印刷されたダイレクトメールであって、それを送ろうとする当事者がこれは公然の場でも配布しているものだと言いさえすれば、それを否定することはだれにもできないではありませんか。もし、そうではないと言うのならば、その理由を御説明いただきたいのであります。
部数ベースで一種・二種郵便の二割を占めるダイレクトメールの大半が信書から除かれ、いいとこ取りの民間参入を許すならば、国民のためのユニバーサルサービスが切り捨てられていくことにならざるを得ません。
第三種・第四種郵便の政策減免の制度は、国民文化の普及、向上や学術の振興、障害者の方々への権利保障のために不可欠の制度です。そして、これらの制度が大幅な割引や無料である以上、赤字であることは当然であり、そもそも営利を目的としたものではないのであります。法案では、三種郵便、四種郵便という枠組みそのものは法律に残しましたが、現在法律に明定されている盲人用無料郵便物は法文から削除されています。総務大臣が繰り返し答弁してきたように、ユニバーサルサービスは守ると言うのなら、なぜこの条文を削除するのですか。公社は国とは別法人だと言うが、だからこそ法律で縛る必要があるのではありませんか。総務大臣の答弁を求めます。
<「改革」というなら不正選挙をやめよ>
宮本岳志君 郵政事業全体が官僚の天下りと結び付いた利権によって大きくゆがめられていることを我が党は繰り返し指摘をしてまいりました。ところが、郵政公社法案は、これらに何らメスを入れないばかりか、衆議院での修正で出資に関する規定の追加まで行われたのであります。
これまで郵政事業が直接子会社に出資することは認められていませんでした。それを郵政弘済会や郵政互助会などの公益法人を通じて子会社、孫会社に出資するという脱法的なやり方で、郵政ファミリーと言われる企業を育成し、そこに天下りを送り込んできたのであります。そして、そのやり方も平成八年九月の閣議決定で、公益法人はもうけを目指す組織ではないからとの理由で原則として禁止されたのではありませんか。公益法人に許されないことがなぜ公社に許されるのですか。郵政公社は、従来の公益法人以上にもうけを目指すものになるということなのですか。総理並びに総務大臣の答弁を求めます。
総理、あなたは三年前に出版された「郵政民営化論」の中で、自民党に対しては、特定郵便局長会というのが約二万くらいあって、これが票を集めるとはっきり述べています。そのあなたが総裁として戦った昨年の参議院選挙で、正に特定郵便局長会ぐるみの選挙が行われていたのであります。昨年明らかになった自民党高祖前参議院議員にかかわる選挙違反事件は、郵政事業が政権と癒着し、自民党の集票マシンとなってきた事実を示すものではありませんか。
総理、改革と言うなら、あなたが以前から十分知っていたこのぐるみ選挙をなぜやめさせなかったのか。これについてあなたは、総理就任後、事前に何か一つでもやめさせる措置を取ったのか、あるいはその意思すらなかったのか、はっきりお答えいただきたい。
特定郵便局長は、今後も国家公務員です。特定郵便局長会が組織ぐるみで自民党の選挙をやるなどということは断じて許されません。自民党総裁であると同時に政府の最高責任者として、今後、特定郵便局長会に自民党の選挙活動は一切求めないとはっきり言い切ることができるか、総理の答弁を求めます。
今、郵政事業の現状に国民が疑念と不満を持っているのは、郵政三事業の内実が国民の目から見えにくくされていることです。ところが、本法案では、この問題点を解決するどころか、今行われている予算、決算の議決や役員の任免などへの国会の関与さえ一切排除し、郵政公社の経営にかかわる重要な事項をすべて総務大臣の権限としています。
このように、国会を通した国民の監視がなくなれば、むしろ自民党族議員なるものの影響力を強めるのではありませんか。政治家主導などと称して、自民党の総務部会長を総務副大臣とするなどということまで伝えられているではありませんか。自由民主党の総裁でもある総理の責任ある答弁を求めるものであります。
世界に目を移すと、例えば、郵便事業を国有の株式会社に改組したイギリスでは、諮問機関であった郵便サービス委員会を監督機関に改めて、利用者保護とユニバーサルサービスの確保のための権限を付与しています。また、これとは別に、情報開示の請求権を持った郵便サービス消費者評議会も組織されているのです。新型公社というのなら、せめてこのような国民参加の制度が必要ではありませんか。総務大臣の答弁を求めます。
本法案は、全体として、小泉総理の年来の主張である郵政民営化、すなわち大銀行が郵政事業を食い物にする新しい利権に道を開くとともに、いわゆる族議員にとっては古い利権をも温存、拡大する、正に国民にとっては百害あって一利もない法案となっています。
我が党は、断固、本法案の廃案を求めるとともに、国民の立場に立った郵政三事業改革に全力を尽くす決意を申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
<「法案成立後」の民営化推進を公言>
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 宮本議員にお答えいたします。
郵貯、簡保の民営化等についてお尋ねでございますが、今回の法案は公社化のための法案で、郵便事業に民間企業を参入するための法案であります。この法案の成立後、自由な議論を私は妨げるものではないし、むしろ歓迎いたします。今後、郵貯、簡保はどうあるべきかということは、郵政三事業の在り方について考える懇談会においてもその議論を進めておりますし、いずれ近いうちに、国民に、具体案を取りまとめまして国民的な議論を展開していきたいと思っております。今回の法案とは別物でございます。
民間企業の行動原理についてお尋ねでございますが、自由民主党と共産党は全くそういう点について考えが違います。民間企業はもうかるものしかやらない、そんな時代じゃないと思います。民間企業は、利益を上げながら公共的な分野にも進出して、多くの国民にいろいろなサービス、商品、提供しています。そういう民間企業の活力があるからこそ経済成長が促されるんであって、私は、民間企業はもうかるものしかできない、わざわざ赤字の事業に参入する企業があるのかというお言葉でありますが、今までもうからなかったところにも入ってきたからこそ、今、小包、宅配なんかは大いに民間企業が国民にサービスと商品を提供しているではありませんか。私は、こういうことにつきまして、民間企業の創意工夫を発揮できるような環境を整えるのが政治として大事でありますし、今回の法案もその一環であります。
クリームスキミングについてのお尋ねでございますが、信書送達の事業は、採算性の良い部分だけへのクリームスキミング的参入が容易との特性を有することから、ユニバーサルサービスの維持と民間参入による競争の成果との調和が大切だと思っております。そこで、この法案では、すべての信書の取扱いが可能となる一般信書便事業者に対しては、全国における引受け・配達など、クリームスキミングを防止するための措置も講じております。したがって、このような競争条件の下で、郵政公社は経営努力によりユニバーサルサービスや第三種・第四種郵便物の政策減免を維持していくことができると考えております。
ダイレクトメールの信書性とユニバーサルサービスについてのお尋ねでございますが、ダイレクトメールについては多様な形態が想定されますが、信書の定義である特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知するという実態を伴うかどうかは個々のケースによって判断することが適当だと考えております。今回、チラシのようなものは信書に該当しない旨明らかにしたところであります。いずれにせよ、ダイレクトメールの取扱いについては、ガイドラインの中で明確化が図られるものと考えております。
なお、今回の法案による民間参入と信書の定義に関する整理によって公社の郵便事業にとっては競争領域が拡大することとなりますが、公社においても、サービスの改善や効率化などを推進することによって競争に適切に対応し、ユニバーサルサービスを維持していくことを期待しております。
郵政公社の出資及び天下りについてでございますが、公益法人は積極的に不特定多数の者の利益の実現を目的とする非営利の法人であることから、営利企業の株式保有を行ってはならないとされているところであります。
日本郵政公社は、独立採算制の下、自律的かつ弾力的な経営を行うことから、競争原理を導入する郵便事業の関連分野に限定して個別に総務大臣の認可を受けて出資できることとされているものであり、問題はないと考えております。また、公社の職員は国家公務員であり、営利事業に就職する場合には国家公務員法に基づき適切に措置されるものであり、国民の信頼の確保に支障が生ずるようなことはないと考えております。
高祖前参議院議員に係る選挙違反事件についてでございますが、国家公務員の服務規律の確保については法令に違反して責任を問われることのないように指導してきたところであります。しかしながら、こうした措置にもかかわらず、昨年の参議院選挙において、現職の国家公務員が公職選挙法違反を犯したことは誠に遺憾でありまして、こうした事件の再発防止にも徹底を図るようにしていきたいと思っております。
国家公務員というのは、本来、選挙運動、政治から中立だと厳しく選挙運動を制限されています。これは特定局長だけに限らないんですよ。これは与野党よく考えてもらいたい。公務員が労働組合を作って選挙運動をする、当たり前のように考えているけれども、これは法律で禁止されているんです。今後、政官癒着を言うならば、特定局長にかかわらず、国家公務員、地方公務員が選挙運動、特定の政治家を応援しないようなことも私は考えるべきじゃないか。役人から政治的中立ということを取ると、私は余計な好ましからぬ問題も政治面には出てくると思います。
ですから、今後とも、国家公務員、地方公務員の政治的中立とはどうあるべきか、選挙運動というのはどうあるべきかというのは与野党を通じて議論して、政官癒着と言われないように、政党が役人の票を期待するようなことがないようによく検討していただきたい。
国会を通した国民の監視についてお尋ねがありました。
郵政事業の公社化は、予算の国会議決等の事前管理から中期的目標管理による事後評価に移行するなど、郵政事業の自律的かつ弾力的な経営を可能とするものであります。国会に対しましては、公社の中期経営目標及び中期経営計画、毎年度の財務諸表や事業報告書などについて国会に報告することとされており、国会を通じた国民の監視がなくなるなど、御懸念のことはないものと考えております。
本法案は、大銀行のための新しい利権に道を開くものではないかとのお尋ねでありますが、本法案は、公社化により郵政事業の自律的かつ弾力的な経営を可能とするとともに、郵便事業への民間参入によりあまねく公平なサービスの提供を確保しつつ、競争原理を導入することにより、より一層質の高いサービスを国民が享受できるようにするものであります。そのような御指摘は当たらないと考えます。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
<総務大臣は政策料金制度の維持を約束>
〔国務大臣片山虎之助君登壇、拍手〕
国務大臣(片山虎之助君) 宮本議員に何点かお答え申し上げます。
ダイレクトメールにつきましては、総理から詳細な答弁がありましたが、基本的な考え方を変えるつもりはないんです。しかし、ダイレクトメールはいろんなものがございますし、新しい形態が出てくることもありますので、そういうものについてはガイドラインでしっかりと整理をしてお示ししようと、こういうわけでございまして、特にチラシのような、御指摘ありました公然公知のものまで信書性があるというのはなかなか言いにくい、だからこういうものは外す方がベターではないかと、こう思っておりますし、クレジットカードや地域振興券につきましても先ほど申し上げたところでございます。
いずれにせよ、幅広い御意見を聴き、パブリックコメントにも掛けまして、しっかりとした範囲を確定いたしたいと、こういうふうに思っております。
それから、三種、四種につきまして、魚住議員にお答えしたとおりでございますが、公社は国とは違う別法人でございますし、基本的な考え方は、基本法によりまして、中央省庁改革基本法によりまして、自律的、弾力的な経営をやらせると、こういうことでございまして、すべてについて法律で規制するというのはいかがかなと、こういうことでございますが、これも何度も申し上げておりますように、現在の政策料金は維持してもらうと、こういうことが基本的な考えでございまして、それについては経営努力でのみ込んでもらう、こういうことでございます。
公的な助成云々の御議論もありますが、この公社は独立採算制でございますから、当面はそういうことを考えずにやっていくと、こういうことでございます。
それから、公益法人については出資ができないのに公社は何でできるんだと。公益法人は非営利性の法人ですよ。この公社は民間と堂々と争う公社なんです。だから、経営の効率化なんということを念頭に置かなければなりませんので、そういう意味で必要最小限度の出資はあるなと、経営効率化のために、こういうことでございますので、そういうことによって国民にいいサービスを提供する、これが公社の目的でございますから、出資についてもそういうふうに運用してまいりたいと考えております。
それから、公社化について国会の関与が少ないではないか。元々、少なくしようということで制度を作ったんです。できるだけ公社に自由度を与えて、自律的、弾力的な経営をやるというわけでありますが、公社の中期経営目標や中期経営計画や毎年度の財務諸表については国会に報告をさせていただくことになっておりますし、このほかに会計監査人の監査による外部監査の導入、あるいは情報の公開をやると。それから、総務大臣が業績評価をやる、その場合に審議会の意見も聴くと、こういうことでございまして、これをすべて公開してまいりますので、国民の目から見てしっかりと監視できるんではなかろうかと思っております。
以上であります。(拍手)