155 – 参 – 総務委員会 – 11号 平成14年12月10日
平成十四年十二月十日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
十二月三日
辞任 補欠選任
辻 泰弘君 大塚 耕平君
田村 秀昭君 渡辺 秀央君
十二月四日
辞任 補欠選任
大塚 耕平君 辻 泰弘君
木庭健太郎君 浜四津敏子君
十二月五日
辞任 補欠選任
泉 信也君 扇 千景君
浜四津敏子君 木庭健太郎君
山下 栄一君 荒木 清寛君
八田ひろ子君 筆坂 秀世君
宮本 岳志君 市田 忠義君
十二月六日
辞任 補欠選任
扇 千景君 泉 信也君
荒木 清寛君 山下 栄一君
市田 忠義君 宮本 岳志君
筆坂 秀世君 八田ひろ子君
十二月九日
辞任 補欠選任
内藤 正光君 岩本 司君
十二月十日
辞任 補欠選任
岸 宏一君 山下 英利君
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出席者は左のとおり。
委員長 山崎 力君
理 事
景山俊太郎君
世耕 弘成君
山内 俊夫君
伊藤 基隆君
高橋 千秋君
委 員
泉 信也君
小野 清子君
加藤 紀文君
久世 公堯君
椎名 一保君
谷川 秀善君
森元 恒雄君
山下 英利君
岩本 司君
輿石 東君
高嶋 良充君
辻 泰弘君
木庭健太郎君
山下 栄一君
八田ひろ子君
宮本 岳志君
松岡滿壽男君
渡辺 秀央君
又市 征治君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
副大臣
総務副大臣 加藤 紀文君
事務局側
常任委員会専門
員 藤澤 進君
政府参考人
総務省自治行政
局選挙部長 高部 正男君
総務省情報通信
政策局長 高原 耕三君
総務省総合通信
基盤局長 鍋倉 真一君
説明員
会計検査院事務
総局第五局長 円谷 智彦君
参考人
日本放送協会会
長 海老沢勝二君
日本放送協会専
務理事・技師長 吉野 武彦君
日本放送協会専
務理事 板谷 駿一君
日本放送協会理
事 山村 裕義君
日本放送協会理
事 笠井 鉄夫君
日本放送協会理
事 山田 勝美君
日本放送協会理
事 安岡 裕幸君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○日本放送協会平成十一年度財産目録、貸借対照
表及び損益計算書並びにこれに関する説明書(
第百五十一回国会提出)
○日本放送協会平成十二年度財産目録、貸借対照
表及び損益計算書並びにこれに関する説明書(
第百五十四回国会提出)
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<目標と実績の公表で字幕付与が進展>
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
まず、字幕放送について質問いたします。
私は、字幕放送の拡充のためには一つ一つの放送事業者に対して計画も持ってもらい、到達点も事業者ごとに出してもらう必要があると、こういう提案をしてまいりました。今年の七月に発表された実績調査の公表の中に、このようにNHK総合と民放キー局の年々どこまでの到達率にしていくかと、こういう計画が示されております。(資料を示す)
この青丸がNHK総合の実績、赤丸はこれ民放キー五局の実績ということになります。民放は一九九九年までは各局別の実績も公表されてこなかったし、だからなかなか進まなかったんですけれども、この間でいうと各局別の実績が示されてぐんと伸びているというのがよく分かりますし、NHKが毎年の目標を持ちながら着実に前進させてきたというのもよく分かると思います。
そこで、私、九九年の三月にNHKの当時の専務理事から教育テレビについては次の計画は平成十三年度中に立てますと、こういう答弁をいただいております。今日がその答弁の約束の期日である今年三月末以降で最初のNHKへの質問となりますので、教育テレビと衛星放送の二〇〇三年度から二〇〇七年度までの年々の達成計画、字幕の達成計画を、字幕付与可能番組に対する比率で答えていただけるでしょうか。
参考人(板谷駿一君) お問い合わせの件ですが、総合テレビに関しては先生もう既に御存じかもしれませんが、行政の指針を一年前倒しで十八年にやるということですね、それから教育テレビと衛星第二テレビ、デジタルハイビジョンでは字幕付与可能時間ということじゃなくて総放送時間の中で字幕付与がどの程度できるかという計画を立ててまいりました。先生のお話、お約束したとおりに、そういうふうにやってきました。そして計画的に拡充をやっております。
十六年度には教育テレビでは二十四時間三十分、総放送時間比が一四・八%、衛生第二では二十時間、同一一・九%、デジタルハイビジョンでは三十時間四十分、同一八・三%という目標を立てております。十三年度の総放送時間における実績ではそれぞれの当初計画値を上回る字幕付与率を達成しております。
また、字幕付与可能時間における字幕付与率については、総合、教育、衛星第二、デジタルハイビジョンで、これについては総務省の要請によって年二回一週間ずつの期間でサンプル調査を行って実績値を把握しているんですが、平成十三年度の字幕付与可能時間に対する実績値は、総合テレビは七三・四%、教育テレビは一七・四%、衛星第二が三〇%、デジタルハイビジョンが一四・五%となっております。ただ、今後は、総放送時間だけではなくて、先生御指摘のように字幕付加可能時間における字幕付与率というのも今後の計画の中では作っていきたいというふうに思っております。
宮本岳志君 総務省もこの春以来、進行管理をするとおっしゃっているわけですし、四月二十四日に発表された次世代字幕研究会の報告書でも、「毎年字幕拡充計画の進捗状況を把握し公表するとともに、進捗状況が悪く合理的な理由がない場合には、拡充のための要請を行うことが求められる。」と、こう述べておりますので、是非そういう方向で進めていただきたいと思います。
<「聞こえない」政見放送の放置は違憲>
宮本岳志君 同時に、今日は参政権の保障にかかわる問題についてもお伺いしたいと思うんです。
昨年六月に聴覚障害者の参政権保障の問題で質問して、政見放送に字幕を付けるべきだと提案をしましたが、総務省は短い時間で字幕を作るのは難しいと、こういう答弁でありました。政見の収録は供託金を払った後ならばいつでも収録できるということになっておりますので、候補者と放送局側とで収録の日取りを決めるときに字幕を付けられる収録日程にすればよいというふうに思うんですね。総務省は字幕を作っていない放送局もあるというふうにおっしゃっていますけれども、何も字幕放送の手法で入れなくてもテロップという形で入れるならば、これはどの放送局もやっていると思います。
放送局で政見の内容を要約することに問題があるのならば、候補者が字幕用の原稿を持ち込んでテロップで流すという方法は極めて現実的だと思うんですが、これは総務省いかがでしょうか。
政府参考人(高部正男君) お答えを申し上げます。
字幕を流すにつきまして、先生今お話しでございましたように、候補者等の方々が話されている内容をそのまま流すというやり方、これについてはなかなか全部追っ掛けてやっていけるのかどうかという問題があってなかなか難しいということがございます。
それから、今おっしゃられた、じゃ、要約したものを事前に届ければいいじゃないかということになりますと、選管が要約するとかということはなくなりますし、一定のハードルは越えられるとは思いますが、技術的に申し上げますと、一つは、何といいますか、画面で現実に政見を述べられておられている内容と、それから流す字幕との対応関係についてどう考えるのかどうかといったたぐいの問題もあろうかと思います。
例えば、発言されていることと字幕の内容が違うようなことであっていいのかどうか、あるいは正確に流れているかどうか、あるいは政見放送が始まってからずっと流す形を取れば問題はないのかもしれませんが、現在、衆議院の小選挙区選挙につきましては持込みビデオという方式が認められておりまして字幕を付することも可能という仕組みになっておりますが、この辺の状況を見てみましても、ずっと流れているのではなくて部分部分で要約的に流されるというのが一般的な形態になってきています。
今、先生御指摘になられました事前に、何といいますか、要約されたものを出すという御提案につきましても、じゃ、どのタイミングでどういう形で流すのかといったようなたぐいの問題もあろうかと思っております。
そういう意味でまだ検討課題いろいろあろうかと思っておりますが、先ほど御指摘ございましたように、字幕放送等々の進展もございますし、いろんな技術の進展もございますので、そういう状況を見ながら私どもとしては幅広く検討していかなければならないのではないかというふうに思っております。
宮本岳志君 同一画面上で一致させるというのはそれほど難しいことでないと思います。実際、我が党の持込みビデオ、政見放送の持込み分のビデオはそういう手法で行っているわけですね。
それで今回改めて、それで改めて確認をしたいんですが、一九八七年二月二十八日に当時自治大臣が告示した政見放送及び経歴放送実施規程の第七条の二、これはどのような趣旨になっておりますか。
政府参考人(高部正男君) 若干経緯を含めてお話をさせていただきたいと思いますが、かつて政見放送の在り方につきましては、候補者以外の政見の録画、録音は認められていないという状況でございました。
六十一年の参議院の通常選挙におきまして、東京選挙区に立候補された方が言語機能に障害がございまして手話通訳でテレビの政見放送をすると、その際に手話の通訳、他の人がしゃべるというような形式は取れないかとか、あるいはラジオについて違う人が発言することができないかというような要望もございましたけれども、当時そういう規定はございませんでしたので、認められなかったという状況でございます。
そういうことを踏まえまして私どもの方でいろいろ検討させていただきまして、いろんな手法があろうかと考えられた中で、当時の結論といたしまして、あらかじめ候補者から提出された原稿について放送事業者が録音したものを候補者が使用するといった方法を取ることが適当だということで、こういう結論を得ましたので、現在は九条になっておりますが、そういうものに対応するような規定を入れさせていただいたということでございます。
宮本岳志君 候補者自身の責任で用意した要約原稿で字幕を流すことを私、提案したわけですけれども、これが公選法の趣旨に反するというんでしたら、今のやつも候補者自身のものにこれはそれを付けるということですから、同じことになると思うんですね。
それで、この問題は大変その当時大きく取り上げられたようで、一九八六年六月二十四日付け産経などは、聾唖者候補の政見放送、聞けないまま流すと。つまり、テレビでは手話だけが流れた、ラジオでは意味が判別できない声だけが流れたと、こういう政見放送でありました。これはあんまりだというんで、これはすぐにこの規定が作られたわけですよね。
それで、聴覚に障害のある候補者の政見の代読は認めると。それはなぜかといえば、見ている健聴者に分からないから、これはすぐに手を打ったと。しかし、逆に、聴覚に障害のある有権者の知る権利の方は、いつまでも保障されないまま放置されているというのでは、法の下の平等からも許されないと私は思います。
先日、ALS患者が投票できないという状況を放置していたことに対して違憲判決が出されました。その判決の精神からいえば、投票所に行くことはできても、候補者の政見を知る機会を奪われたままだというのは、これは憲法の理念と相入れないと言わざるを得ません。
聴覚障害者の方々の参政権を保障するために、政見放送に、テロップ形式も含めて、聴覚障害者の方にも分かる字幕の付与の方法というのをそろそろ真剣に検討すべきではないかと。これは、総務大臣、そういうことを検討すべきでないかと、ひとつ御答弁いただきたいんです。
国務大臣(片山虎之助君) 障害者の方々に選挙にできるだけ参画していただくというのはこれは必要なことですね。
ただ、やり方が、今言いましたように、なかなか難しい、選挙は厳重ですからね。そこのところの接点をどう求めるかということですが、引き続いて幅広く検討してまいります。
<わずか1年半でスケジュールが破たん>
宮本岳志君 残された時間で、テレビ放送のデジタル化問題について質問をいたします。
まず、BS放送ですけれども、NHKが、デジタル移行が進んでも七年時点ではなお五百万のアナログ受信世帯が残ると、こう主張して、従来からのBSアナログ放送も二〇一一年までは続けるというふうにされました。これは、あまねく日本全国で受信できる放送番組の提供という、放送法にも規定されているNHKの使命に立脚したものだと私は思っております。
そこで、会長にお伺いするんですが、NHKは地上波でもアナログに頼っている受信者がいる間は一方的に打ち切らないと、そういうお考えなのか、ひとつ御答弁願います。
参考人(海老沢勝二君) 私どもは視聴者保護というのを最優先に掲げております。したがって、視聴者をどう保護するかが最大重点でありますけれども、この衛星の場合は、二〇〇七年時点でかなりの、五百万を超える視聴者が残ってしまう。そのために、更に延ばしていきたいと思っているわけであります。
それと同時に、地上デジタルの放送の方は、先ほども答弁しましたように、電波法の改正によって二〇一一年の七月二十四日までで今のアナログ放送を終了する、いわゆる停波するということに法律で決まりましたので、私どもはそういう法律を守る立場から、二〇一一年の七月二十四日までにすべて普及するように努力するということを申し上げているわけであります。
宮本岳志君 二〇〇七年以降もBSアナログ放送が続けられるということになりました。なぜ一一年なのかというと、これは地上波のデジタルがこの打切り期日を迎えるからであります。
それで、しかし、今この地上波のデジタル化完了期日自体が本当にできるのかと、これが大問題になっております。現実に、与党である自民党の衆議院議員が、地上波デジタル計画は凍結せよ、あるいは地上波デジタル計画は破綻すると、こういう文章を雑誌に書くような状況が広がっております。
昨年の法改正以降、いわゆるアナ・アナ変換経費の問題で、総務省の見通し違いが明らかになりました。来期の通常国会では、そのための電波利用料値上げの法案も提出されると聞いております。
そこで、局長に聞きますが、現在の見積りで、アナ・アナ変換への予算措置は累計幾らになる見通しで、アナ・アナ変換は何年までに完了するのか、お答えいただけますか。
政府参考人(高原耕三君) アナ・アナ変換の予算規模でございますが、地上デジタル推進協議会がまとめた検討結果に基づきますと、千八百億円程度というふうになっております。
それから、アナ・アナ変換の終了時期でございますが、大体二〇〇九年までには終了できるものだというふうに見通しを付けております。
宮本岳志君 法改正のときに、総務大臣は二〇〇一年度を初年度として五年計画、二〇〇五年度には終わると答弁されておりました。ところが、アナ・アナ変換の工事は、先ほどの答弁でも、早いところで来年二月と。そして、来年からの三大都市圏のデジタル放送開始には間に合わないということで、最初は混信のおそれがないよう弱い電波から始めて、アナ・アナ変換の進行に合わせて順次出力を上げていくという計画になっております。東京、名古屋、大阪のキー局で二〇〇三年に開始される当初のデジタル放送の出力はそれぞれ何キロワットでやるのか、何世帯をカバーするのか、お答えください。
政府参考人(高原耕三君) 放送用周波数使用計画におきましては、関東広域局の親局の送信出力は十キロワット、中京広域局及び近畿広域局は三キロワットと規定をいたしております。これは、現在のアナログ放送と同等のエリアをカバーするというものでございます。
しかしながら、今、先生おっしゃいました二〇〇三年の放送開始当初の段階では、アナログ周波数変更対策事業との関係で最大の今申し上げた出力は出せませんので、段階的にこの出力を拡大していこうということでございます。
当初の出力はどうなるかということでございますが、来年四月に予備免許ということになっておりますが、そのときに確定すべく今検討を進めておる最中でございます。
宮本岳志君 昨年の電波法のときには三大都市圏のアナ・アナ変換は当然二〇〇三年の放送開始までに終わっているということを前提とした議論でした。
先日も総務省に聞いたんですが、最低二十三区内はカバーできますかと、あるいは山手線の内側はどうかと聞いても、なかなか明瞭なお答えをいただけないということでございました。昨日お会いしたある関係者の方は、最初は半径一キロだという話すらされておりました。
次に、三大都市圏以外のローカル地区について聞きますけれども、九月二十七日に発表した新免許方針では、総務省は、ローカル地区についてはチャンネルプランを削除し最大三年延長した、間違いないですね。
政府参考人(高原耕三君) 今年の九月の放送用周波数使用計画の変更におきましては、三大広域圏以外の地域に置局する地上デジタルテレビジョン放送局及びこれらに係るアナログ周波数変更対策局の周波数等を三年以内に定めることといたしておりまして、昨年七月にこの周波数使用計画に定めた三大広域圏以外の親局の周波数等は今回入れていないところでございます。
宮本岳志君 このパネルを見ていただきたい。(図表掲示)皆さんのお手元にも資料にほぼ同じものを付けてありますけれども、二〇〇〇年のデジタル試験放送はやられておりません。それから、二〇〇三年から始める予定の本放送は、本来の出力による送信は一体いつになるか分からないという状況であります。一キロという話もされているぐらいと。三大都市圏以外のアナ・アナ変換も三年以内というチャンネルプラン待ちになっていると。あるいは、アナ・アナ変換の終了も、二〇〇五年と言ったのが今二〇〇九年、これが事実上の目標になっております。大臣が昨年述べたような二〇一一年のアナログ停波は無理なくできるという見通しは完全に破綻している、これはもう明瞭だと思うんですね。自民党内からも異論が出るのも当然だと。
大臣、計画がここまで破綻している以上、御党の平井議員も言うように、ここはいったん立ち止まって計画をしっかり見直すと、これはどうしても必要だと思うんですが、いかがですか。
国務大臣(片山虎之助君) 悪い資料だけ出してこういう表を作ればこういうことになるんですよ。だから、これが一番最も状況が悪くなった場合で、いろんな工夫をして次第に上げていくんですよ、計画のスピードは。
そういう意味で、我々は、二〇一一年にやるということを国会の承認を得て電波法の中に書いたわけですから、その実現のためには全力を挙げてまいります。
宮本岳志君 自分たちの計画に固執して全く現実を見ようとしない、そういう態度は本当にひどいと思いますよ。私は、こんなむちゃな計画は必ず見直さざるを得なくなるということをはっきり指摘して、私の質問を終わります。