156 – 参 – 本会議 – 2号 平成15年01月22日
平成十五年一月二十二日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第二号
平成十五年一月二十二日
午前十時開議
第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
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○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
以下 議事日程のとおり
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<4兆円の国民負担増は紛れもない事実>
議長(倉田寛之君) 宮本岳志君。
〔宮本岳志君登壇、拍手〕。
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、財政演説について小泉総理大臣に質問いたします。
小泉総理、あなたが構造改革なくして景気回復なしと言い続けて二十か月が過ぎました。本補正予算案は小泉改革なるものの破綻を証明するものにほかなりません。あなたは本予算で公共事業を一〇%減らしたなどと言ってきましたが、補正予算案では何と一・五兆円も追加し、結局五%増やしてしまいました。財政危機だからとの理由で国民に押し付けた医療費など社会保障の負担増は一層個人消費を冷え込ませ、不況を深刻にして税収不足を招くばかりであります。結果として、今年度国債発行三十兆円枠などという看板はもろくも崩れ去ったではありませんか。あなたが改革の中心に据えた金融機関の不良債権処理に至っては、処理しても処理しても逆に増え続けています。すべてが今や支離滅裂であり、小泉改革の破綻はもはや明瞭ではありませんか。総理の答弁を求めます。
ところが、あなたは全く無反省に破綻済みの路線を暴走しようとしています。
その最たるものが四兆円の国民負担増であります。総理は、昨日の衆議院本会議で、あたかも我が党が負担増を過大に見ているかのような不当な答弁を行いました。しかし、政府がやろうとしていることが庶民にとって平年度ベースで四兆円の負担増となることは紛れもない事実であります。
医療保険制度の改悪で全体として一・五兆円、介護保険料の引上げで〇・一兆円、年金給付額の引下げが一%として約〇・四兆円、これは決して物価スライドの完全実施を前提にしたものではありません。さらには、雇用保険料の引上げと失業給付の削減で合わせて約〇・六兆円。これを合計すれば、社会保障の改悪だけで二・六兆円となることは子供にでも計算できることです。そして、酒税とたばこ税の増税、配偶者特別控除の廃止と消費税の特例縮小で合計一・七兆円の庶民増税になることについては、財務省自身が詳細な数字を示しているところであります。合計すれば四・三兆円。たとえ児童手当の拡大による〇・二兆円を差し引いたとしても、庶民負担増は四兆円を超えるではありませんか。先行減税というのも、内容は法人税減税や相続税の最高税率の引下げなど、大企業、大金持ち中心の減税であります。庶民にとって減税となるようなものはほとんど見当たりません。
総理、デフレ不況の最大の要因は個人消費の落ち込みによる需要不足にあり、国民所得はこの四年間で実に十兆円以上も下がっています。正にそのときに国民から更に四兆円も奪うならば、これが国民の暮らしと日本の経済に破壊的な打撃を与えることは明確ではありませんか。答弁を求めます。
とりわけ、社会保障の負担増は三重の意味で愚策と言うべきであります。一つは、需要をますます低迷させ、景気に悪影響を及ぼすこと、二つは、負担増が受診抑制を招き、国民の健康悪化がかえって医療保険財政を破綻に導くこと、三つは、負担増と財政の悪化の悪循環が保険料収入の低下をもたらし、社会保障制度への信頼性と基盤そのものを崩すこと。
総理は、口を開けば持続可能な社会保障制度のための負担増だと繰り返してきましたが、事態は全く逆に、負担増こそ社会保障制度の基盤を崩すものではありませんか。経済再生を言うのであれば、この事実を真摯に受け止め、社会保障の負担増を直ちに中止すべきではありませんか。総理の答弁を求めます。
経済のかじ取りで行き詰まった与党三党からは、打つ手なしを証明するかのようなインフレターゲット論まで持ち出されています。しかし、これはデフレをつくった政府・与党の責任を棚上げし、日本銀行に後始末をさせようというもので、無責任の極みと言わなければなりません。
大体、あなた方は、今、史上空前の超低金利、超金融緩和政策を取り、国民が受け取るべき預金利子を奪い続けてきました。しかし、金融の現場で起こっていることをごらんなさい。超金融緩和の下で貸し渋り、貸しはがしが横行し、超低金利の下で貸付金利の引上げが横行しているではありませんか。つまり、政府の超金融緩和政策の下で、銀行の窓口では過酷な金融の引締めが行われているのです。不良債権処理の名によって企業つぶしを進めれば、銀行の自己資本不足が発生するため、こういう事態が起こることは明らかなことではありませんか。答弁を求めます。
総理、あなたは不良債権処理の加速策への我々の批判に、では不良債権処理はしなくていいのかなどと繰り返し、反論したつもりになっています。しかし、あなたは不良債権をいささかも減らせず、逆に増やし続けてきたではありませんか。
あなたの何が間違っているか。それは、あなたが企業をつぶせば不良債権が減るという間違った考え方に固執しているところにあります。不良債権を本当に減らしたければ、深刻な不況下でも歯を食いしばって頑張っている中小企業を支援し、成長させることであり、ここにこそ金融機関の本来の役割もあるのです。不況の下で不良債権に区分されている企業を正常債権に変えること、これこそ不良債権を解決していく本道ではありませんか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
<消費税増税への地ならしは中止せよ>
宮本岳志君 本補正予算案では、セーフネットの構築などともうたわれています。しかし、政府の雇用失業対策はセーフティーネットの名に値しないものです。そもそも、政府が昨年末閣議決定した平成十五年度の経済見通しでは、完全失業率は前年度に比べて若干上昇するなどと述べ、今でも深刻な失業率がこの先まだ上がるという想定で経済運営をしようというのです。国民が史上空前の高失業率にあえいでいるとき、失業を減らすのではなく増やそうというような政府が一体どこにありますか。小泉内閣はもはや統治能力すら失ったと言わざるを得ないと考えますが、総理の答弁を求めます。
更に重大なことは、消費税の増税への動きが強まっていることです。日本経団連は、一月一日、消費税を毎年一%ずつ、一六%まで引き上げるなどという恐るべき提言を発表しました。しかも、同時に、法人税の大幅引下げや、これらの政策に賛同する政治家に企業献金を行うことまで公言しています。
総理は、小泉内閣は消費税を引き上げないと言いますが、来年度予算には免税点の引下げや簡易課税適用上限の引下げが盛り込まれようとしています。これは、政府税調が将来の消費税税率引上げのための前提条件として実施せよと言っているものではありませんか。消費税増税をしないと言いながら、その地ならしを進めるなどというのは国民を愚弄するものではありませんか。そうでないというなら、免税点の引下げなど撤回すべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。
国民に耐え難い痛みを押し付ける一方で、無駄な公共事業には一向にメスは入っておりません。構造改革推進型などというのも看板だけで、中身は相も変わらぬ高速道路や中部国際空港などが並んでいます。関西空港二期事業は、国土交通省自身の需要予測の下方修正によって、二〇〇七年に空港がパンクするなどという口実は完全に破綻しました。関空会社の有利子負債は既に一兆二千億円を超え、自民党の幹部さえ三大ばか事業の一つと指摘し、朝日新聞の世論調査では住民の七割が中止を求めています。すべての口実が破綻したにもかかわらず、一兆四千二百億円もの膨大な資金を投入する関西空港二期事業は直ちに中止すべきではありませんか。総理の答弁を求めます。
あなた方がここまで破綻が明瞭な事業をなぜやめることができないか、その理由を白日の下にさらしたのが自民党による公共事業を食い物にする政治です。関西空港二期事業でも、自民党の久間政調会長代理の政策秘書がペーパー会社を通じて二期工事請負業者から五千万円のコンサルタント料を得ていたことが明らかになりました。
総理、ここに何らメスを入れられないばかりか、関空二期事業を続けるというなら、日本政治の真の改革にとってあなたこそ最大の抵抗勢力ではありませんか。総理の明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
<「過大にみている」とは繰り返せず>
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 宮本議員にお答えいたします。
小泉改革が破綻しているではないかという御指摘でございますが、日本経済再生のためには、デフレを抑制しながら構造改革を推進して、経済情勢に応じては大胆かつ柔軟に対応する方針は一貫して変わりありません。
平成十四年度補正予算につきましては、雇用、中小企業のセーフティーネット対策や構造改革推進型の公共投資に予算措置を講じることとしたところですが、その際、財政規律を維持する観点から、国債追加発行はできる限り抑制することとしたところであります。
なお、不良債権処理については、平成十四年九月期においては、主要行の不良債権残高は前期に比べ一〇・六%の減少となるなど、不良債権処理は確実に進んでいるところであります。したがって、小泉改革が破綻したとの御指摘は全く当たらないものと考えております。
社会保障や増税による負担増は経済に打撃を与えるものであり、再考すべきではないかとのお尋ねであります。
急速な少子高齢化が進展する中で、今後、社会保障給付費は増大していく見込みであり、国民の安心を支える社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、医療保険などの制度改革は不可欠なものと考えます。
また、今般の税制改革については、現下の経済情勢を踏まえ、国、地方合わせて一兆八千億円程度の先行減税を実施するとともに、あるべき税制の構築に向けて、税制上のゆがみを是正するなどの観点から増収措置を講じるものであり、全体として経済活性化に資する改革であると考えております。
共産党の主張される四兆円の負担増については、どのような試算によるものにせよ、十五年度における先行減税の実施や社会保障給付全体の拡大が今後とも見込まれるなどの事情を考慮せず、いたずらに負担増のみに着目しているなどの問題があり、これを基に経済に与える影響を議論すること自体、適切ではないと考えております。
不良債権処理と中小企業金融の問題についてでございますが、不良債権処理の加速は、金融機関の収益力の改善や貸出し先企業の経営資源の有効活用などを通じて新たな成長分野への資金や資源の移動を促すことにつながるものであり、他の分野における構造改革と併せ実施することにより、日本経済の再生に不可欠なものと認識しております。
政府としては、こうした認識に立って、先般、不良債権処理をこれまで以上に加速し、政策を強化することとしたところでありますが、併せて不良債権処理の加速に伴う影響にも細心の注意を払い、やる気と能力のある中小企業への円滑な資金供給を確保するためのセーフティーネット対策を取りまとめ、着実に実施に移しているところであります。
平成十五年度の経済見通しにおける雇用の見通しと経済運営についてのお尋ねですが、平成十五年度の雇用の見通しについては、景気の緩やかな回復や政府の雇用対策の効果の発現が見込まれるものの、日本経済は構造改革の途上にあり、雇用情勢は引き続き厳しい情勢が続くのは避けられないと見込んでおりまして、完全失業率は十四年度実質見込みの五・四%から更に若干上昇し、五・六%程度となると見込んでおります。
政府としては、平成十四年度補正予算におきましても、雇用等への影響に十分配慮し、セーフティーネットの拡充策を講じるなど、万全を期したところであります。
いずれにせよ、政府としては、デフレを克服しながら、経済活性化に向け、構造改革の取組を更に加速し、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を目指していく考えであります。
消費税の免税点などの制度の見直しを撤回すべきとの御指摘であります。
消費税は、世代間の公平確保、安定的な歳入構造の確保などの観点から、中長期的にはその役割は重要となっていくものと考えております。したがって、消費税をより一層国民から信頼される税制にしておくことが大切であると考えております。
御指摘の免税点制度や簡易課税制度については、このような観点から、あるべき税制の構築に向けた平成十五年度改正において見直すこととしたものであり、消費税に対する国民の信頼性や制度の透明性の向上に資するものと考えております。
いずれにせよ、消費税率について在任中は私は引き上げることは考えておりません。歳出の見直しを含めた徹底した行財政改革を行うことに専念したいと思います。
公共事業についてのお尋ねですが、小泉内閣としては、公共事業について、都市の再生や環境問題への対応を始め、構造改革に資する分野への重点化を推進するなどの見直しを進めてきており、公共事業の中身が変わらないとの御指摘は当たらないものと考えております。
御指摘の高速道路等の高規格幹線道路は個性と工夫に満ちた魅力ある都市、地方の形成につながるものであり、中部国際空港の整備も国際競争力の向上に必要なものであると考えております。また、関西空港第二期事業は今後の我が国の国際航空需要に適切に対応するため必要となる事業であり、その整備は着実に推進する必要があるものと考えております。
具体的には、予定どおり用地造成事業を進めることとし、供用開始に必要な施設の整備については、今後の需要動向や関西国際空港株式会社の経営状況等を見つつ行うこととしているところであります。(拍手)