156 – 参 – 総務委員会 – 11号 平成15年04月17日
平成十五年四月十七日(木曜日)
午後三時三十分開会
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委員の異動
四月十七日
辞任 補欠選任
輿石 東君 松井 孝治君
高橋 千秋君 神本美恵子君
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出席者は左のとおり。
委員長 山崎 力君
理 事
景山俊太郎君
世耕 弘成君
山内 俊夫君
伊藤 基隆君
高橋 千秋君
委 員
泉 信也君
小野 清子君
加藤 紀文君
岸 宏一君
久世 公堯君
椎名 一保君
谷川 秀善君
森元 恒雄君
神本美恵子君
輿石 東君
高嶋 良充君
辻 泰弘君
内藤 正光君
松井 孝治君
木庭健太郎君
山下 栄一君
八田ひろ子君
宮本 岳志君
松岡滿壽男君
渡辺 秀央君
又市 征治君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
副大臣
総務副大臣 加藤 紀文君
事務局側
常任委員会専門
員 藤澤 進君
政府参考人
総務省郵政行政
局長 野村 卓君
参考人
日本郵政公社総
裁 生田 正治君
日本郵政公社副
総裁 團 宏明君
日本郵政公社常
務理事 稲村 公望君
日本郵政公社理
事 伊藤 高夫君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○参考人の出席要求に関する件
○日本郵政公社法の一部を改正する法律案(内閣
提出)
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宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。答弁は、時間がありませんので短く端的にお願いしたいと思います。
まず、総裁においでいただいておりますので総裁にお伺いしたい。
日本郵政公社の資本金ですけれども、これは幾らになっておりますか。
参考人(生田正治君) これはまだ、はっきりした額では申し上げられないわけですが、本年七月下旬に郵政事業特別会計などの平成十四年度決算というのが取りまとまると理解しておりますので、そこで、評価委員が継承時点における時価を基準として評価するというふうに認識しております。
したがって、現時点では確定的なことは申し上げられないんですが、私の感じとしては、与件から見まして、三月末の、そこを中経で考えている一兆円の前後になるんだろうと考えております。
<株式運用で損失が発生しても無反省>
宮本岳志君 今日はそれを少し議論してみたいと思うんですね。
配付資料の1―1は、昨年の十一月の十一日に行われた第二回日本郵政公社設立会議にドイツ証券の水野温氏氏が提出した試算です。この試算によると、昨年の三月三十一日時点で簡保の資本金額はマイナス一・六兆となっており、公社全体でも一・二兆の債務超過となっております。この債務超過の最大の原因は何か。
もう一枚めくって、資料1―2を見てください。保険資本合計の欄、下から二段目、有価証券の評価損四・一兆、郵貯でも同じく有価証券の評価損約一・五兆、合計五・六兆を超える評価損が指定単、つまり単独運用指定金銭信託と、こういうリスク運用の結果生じたということになっているわけです。
そこで、郵政行政局長に聞きたいんですが、これはこの試算に間違いないか、そしてこの損失について反省はあるのか、一体だれが責任を取ったのか、お聞かせ願えますか。
政府参考人(野村卓君) この試算の数字につきましては、先ほど先生お話しのように水野委員が出されたものということでございます。これ十三年度決算を基にして出されたものだと思いますけれども、資料のとおりだと考えております。
それで、こういったものについての責任の関係でございますけれども、資金運用につきましては従来から、分散投資の観点から中長期ポートフォリオに基づいて運用を行ってきているところでございまして、運用環境の変化に伴いまして資産別に見て評価益が出たり評価損が生じる可能性はあるものでございまして、株式市場が低迷していることもありまして、指定単に評価損が発生していることもある意味ではやむを得ないというふうに考えているところでございます。
また、郵貯、簡保本体の債券運用におきまして評価益を有しているほか、積立金や内部留保を確保しておりまして、加入者とか預金者の支払に支障が生じているわけではなくて、事業経営上問題はないというふうに考えているところでございます。
ただ、現時点からいわゆるバブル期を振り返ってみますと、株式運用に対する下振れリスクを甘く見ていたという日本全体の風潮に私どもも影響を受けていたという面があることは否定できないと考えておりまして、リスク管理体質の強化に努める必要があるというふうに考えているところでございます。
宮本岳志君 国民から預かった郵貯、簡保の資金をリスクある指定単で運用して五・六兆の穴を空けて、だれも責任を取らないどころか反省の弁すら口にしないと。
そこで、あなた方は、この指定単運用の損失を何とか帳簿上解消して、債務超過ではないという状況を作る必要があったわけです。まずは五・六兆の損失をどうやって埋めたかを見てみたい。
分かりやすいのは簡保なんです。資料2に「簡易保険二〇〇二」、このディスクロージャー誌の有価証券の時価情報を付けておきました。上の表、「償還期限まで保有する目的で取得した債券」、これは企業会計原則でも簿価評価で、これは益出しはできないんです。下の「その他の有価証券」、こちらは企業会計原則では時価評価、つまり益出しができるんですね。で、見てほしいんですが、驚いたことに、簡保が持っている国債は満期保有のものはゼロで、場合によっては売買するという、その他に全額これ入れているんですね、区分を。
これは行政局長に聞きたいんですが、簡保が保有する国債はすべて売り払うんだと、先ほど総裁からはバイ・アンド・ホールドの原則という言葉も出ましたが、簡保の保有する国債はバイ・アンド・ホールドではないと、こういうことを意味しているんですか。
政府参考人(野村卓君) 簡保の運用は原則、先生、バイ・アンド・ホールド、安定的保有でございますけれども、この満期保有以外に、その他有価証券といいますのは、何もこれは売ったり買ったりする債券という意味じゃなくて、債務であるそういう生命保険との期間のマッチング、リレーションを取るために一部入替え売買をするものがあると、そういう意味での位置付けの債券ということでございますので、基本は長期安定保有という点は変わらないというふうに考えておるところでございます。
宮本岳志君 しかし、満期保有がゼロというのはおかしいんですね。その証拠に、ちゃんと郵貯の方は三十一兆、国債、これを満期保有に仕分けておりますし、平成十四年度簡保の資金運用の購入実績というのをいただきましたが、三・五兆満期保有に入れているわけです。
なぜ平成十三年度末で国債全額がその他に入れられなければならなかったかと。理由は明瞭です。それは時価評価して益出しをするためです。つまり、簡保の指定単運用の損失四・一兆を圧縮するために、平成十三年度末に保有していた国債などをすべて益出しする。評価益二・五兆を全部益出しして四・一兆円の指定単の損失を圧縮したと、それでも一・六兆残ったというのが、水野氏の先ほどの資料1の一・六兆なんですよ。
<この1年でさらに2兆円の評価損が>
宮本岳志君 さてそこで、次に資料3を見てください。同じく水野氏が提出した昨年四月一日時点の貸借対照表試算なんですね。何と前日には一・二兆の債務超過だったものが、四月一日、一夜にしてプラス三千八百億円に転じていると。このからくりは下の注釈に書いてあります。つまり、簡保の有価証券の評価損約一・六兆円の処理のために、簡保の価格変動準備金約一兆円と危険準備金六千億を取り崩したというものです。もちろん、取り崩すといっても、別に一夜にして実際に一・六兆の金が動いたわけではない、あくまでも帳簿上で数字を動かしただけの話です。
ということは、つまり、危険準備金一兆七千三百億円のうち六千億円取り崩したから資本合計がこの試算では三千八百億となっているだけであって、仮に三千億しか取り崩さなければ八百億円、逆に全額取り崩せば資本金は一兆五千億と。つまり、これはどうにでもなるということですか、局長。
政府参考人(野村卓君) その前に資料2についてちょっと御説明させていただきますけれども、資料2で、確かに先生おっしゃるように、国債については満期保有のものはございません。ただ、その下の欄に公庫公団債等十八兆というのがございまして、私ども持っている債券の中には国債以外にこういった公庫公団債がございます。こういったものについて、公庫公団債について満期まで保有するということにいたしまして、その他について国債を含めてその他有価証券という形にしているところでございまして、意図的に国債を満期保有にしていないというわけじゃなくて、満期保有についてはそれを公庫公団債で対応しているということでございます。
それから二点目の、六千五十六億円を取り崩すという形で処理しているのは不明朗じゃないかというようなお話だと思いますけれども、水野さんの試算した資料によりますと、承継時における有価証券の評価損がこの一番下の、資料2の注のところでございますけれども、一兆六千六百十三億円ございます。それに対応するために、価格変動準備金一兆五百五十七億円でまず処理いたします。そうしますと、まだ処理し切れません残りが六百五十六億円ございます。それについて危険準備金の中で処理したと。
宮本岳志君 六千でしょう。
政府参考人(野村卓君) 済みません。六千五十六億円、これを危険準備金で取り崩したということでございます。
宮本岳志君 それがいい加減だと言っているんですよ。
一・六兆の帳じりを合わすために価格変動準備金の全額一兆をつぎ込んでもまだ足りないと、だから危険準備金を六千億取り崩したと。大体、危険準備金というのは価格変動準備金とは別の目的があるから別の準備金になっているんでしょう、そんなのだったら一つの準備金にすりゃいいじゃないですか。
それで、少なくともはっきりしているのは、一兆円取り崩せば価格変動準備金はゼロとなります。そして、一・七兆あった危険準備金の方は、六千億取り崩せば残り一・一兆ということになりますね。間違いないですね。
政府参考人(野村卓君) 数字的にはお話しのとおりでございますけれども、価格変動準備金というのは、御案内のように、保有する資産のうちで、有価証券等の価格変動で発生し得る資産について、その価格が下落したときに生じる損失の備えのために積み立てる準備金ということでございます。ですから、それをまず取り崩しまして、一方、危険準備金につきましては、将来の債務を確実に履行するために、一つは死亡時等の保険事故の発生が通常のそこを超えて発生し得る危険に備えるとか、予定利率……
宮本岳志君 一・一兆かと聞いているんですから。一・一兆が残りですねと。
政府参考人(野村卓君) はい。それはおっしゃるとおりというのは、先に、先に言わせていただきました。
宮本岳志君 資料の4に、昨年の年度末の取引となった三月二十九日と今年三月三十一日の日経平均株価、あとTOPIXを付けておきました。日経平均一万一千円だったものが、今年八千円です。TOPIXの方は一〇〇〇を超えていたものが八〇〇を切っているんです。つまり、更に昨年三月末から二割から三割下がっていることは明瞭です。
それで、一月十四日付け日経金融新聞ではこう言っています。九月末時点の株式運用の含み損は半年前に比べ三四%増え、郵貯、簡保合わせて七兆五千七百一億円と。つまり、先ほど指摘した五・六兆からまた二兆円この一年間で増えていると。これ間違いないですね。
政府参考人(野村卓君) その数字については詳細承知してございませんけれども、私ども、水野さんの試算のとき以降、設立会議で十三年度決算プラス十四年度予算を基にした詳細な検討がなされた資料が中期経営計画として出されております。中期経営計画としてこちらの方に出されているわけでございますけれども、その資料によりますと、先ほど御説明いたしましたけれども、資本として一兆円ぐらいあるだろうという形になってございます。その前提となる数字というのは昨年九月の株価とか金利とか為替を基にした数字でございますけれども、今年の三月末の数字、確かに株の方は九月が九千円台だったのが七千八百円とかになっております。ただ片っ方で、債券の方は一・数%だったものが〇・七%という形で評価益も出ております。
そういったことを大ざっぱに考えますと、ほぼ一兆円ぐらいの資本は確保できているんじゃないかなと考えているところでございます。
宮本岳志君 新たに二兆円の含み損が出ていると。先ほど危険準備金の残りは一・一兆だと。これ一兆円足りなくなるんですが、この分は一体どうやって埋めるつもりですか。
政府参考人(野村卓君) 水野さんの試算の時点というのは十三年度決算を基にしております。十四年度の損益が入ってございません。十四年度の損益で貯金だけで一兆二千億ぐらいの利益が出る予定になってございますので、そういうものを入れますと資本は足りるということでございます。
宮本岳志君 そういうことなんですよ。貯金で一兆円の収益があるから一兆円の資本金になると。つまり、貯金以外は全部この含み損でパアになると、そういうことでしょうが。
私は、本来国民に還元されるべきものが事業の収益として吸い上げられて、それがあなた方の無責任な資産運用のしりぬぐいにつぎ込まれると、こんなばかな話はないということを指摘したかったんです。指定単運用で五・六兆もの損を出して責任も取らずに反省すらしない、帳簿の操作で何とかごまかそうとする、そんなあなた方が委託運用などといって株式へ資金を振り向けること自体が問題です。ましてや運用方法の拡大など論外だということを指摘して、私の質問を終わります。