156 – 参 – 個人情報の保護に関する特別委員会 – 9号 平成15年05月21日
平成十五年五月二十一日(水曜日)
午前九時開会
─────────────
委員の異動
五月二十日
辞任 補欠選任
神本美恵子君 川橋 幸子君
鈴木 寛君 松井 孝治君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 尾辻 秀久君
理 事
常田 享詳君
林 芳正君
若林 正俊君
岡崎トミ子君
高橋 千秋君
荒木 清寛君
宮本 岳志君
委 員
有馬 朗人君
入澤 肇君
狩野 安君
柏村 武昭君
小林 温君
佐々木知子君
世耕 弘成君
田村 公平君
西銘順志郎君
野上浩太郎君
保坂 三蔵君
森元 恒雄君
山下 英利君
大塚 耕平君
川橋 幸子君
高嶋 良充君
辻 泰弘君
内藤 正光君
藤原 正司君
松井 孝治君
魚住裕一郎君
山本 保君
八田ひろ子君
吉川 春子君
岩本 荘太君
森 ゆうこ君
福島 瑞穂君
国務大臣
内閣総理大臣 小泉純一郎君
総務大臣 片山虎之助君
国務大臣
(国家公安委員
会委員長) 谷垣 禎一君
国務大臣 細田 博之君
内閣官房副長官
内閣官房副長官 上野 公成君
副大臣
内閣府副大臣 米田 建三君
総務副大臣 若松 謙維君
大臣政務官
内閣府大臣政務
官 大村 秀章君
事務局側
常任委員会専門
員 鴫谷 潤君
政府参考人
内閣官房内閣審
議官 藤井 昭夫君
警察庁長官官房
長 吉村 博人君
警察庁刑事局長 栗本 英雄君
金融庁総務企画
局長 藤原 隆君
金融庁総務企画
局参事官 西原 政雄君
総務省行政管理
局長 松田 隆利君
総務省自治行政
局長 畠中誠二郎君
総務省自治行政
局公務員部長 森 清君
総務省政策統括
官 大野 慎一君
─────────────
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○個人情報の保護に関する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
○行政機関の保有する個人情報の保護に関する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関
する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣
提出、衆議院送付)
○行政機関の保有する個人情報の保護に関する法
律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
─────────────
<問題の資料は武富士から持ち出された>
(国家公安委員長への質問)
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
今日は警察問題の集中的質疑ということで、国家公安委員長にお越しをいただいております。この間、私が取り上げ、一部マスコミにも報じられた警察と大手金融会社武富士との癒着問題についてお伺いをしたいと思うんです。
この問題は、まず第一に、個人の犯歴まで書かれた警察の内部資料と思われる文書が民間事業者にすぎない個人金融業者のところから外部に持ち出されたというところにあります。これについて、質疑で栗本局長は、現在、恐喝事件で捜査中の被害会社から持ち出したその資料であるということが報道されておりますが、その内容と非常に同様の内容だというように判断をいたしているところでございますと、こう答弁をされております。
まず、警察庁に確認したいんですが、つまり私が提出をし、また警察庁にもお渡しをしたある人物の右翼標ぼう暴力団個人カードなる文書は武富士から持ち出されたものと同一である、つまり私が示したものと同一のカードが少なくとも武富士にあったということはお認めになりますか。
政府参考人(栗本英雄君) 委員御指摘のとおり、恐喝事件の捜査の中で得られました資料の中にありますものと委員から示されました資料とは同様の内容が書かれているものと認識しております。
宮本岳志君 このカードが警察ではなく武富士にあったと、ここまではお認めになるわけです。それで、しかし警察にこれと同じカードがあるのかどうかと、これは答えられないということでありました。今回のカードは週刊誌の報道で氏名が出てしまっております。だから、それを答えると、警察がその人物のカードを作っていることが明らかになり、プライバシー上問題があると、こういう理屈だと思うんですね。
それならば、仮にでお伺いしたいんですが、私が何も記入されていない個人カードの用紙を提出をして、これは警察で使われているものかと質問したら、あなた方は事実に基づいて正確に答弁をされますか。
政府参考人(栗本英雄君) ただいまの御質問は、先生がどのような様式、内容の資料を私にお示しになるのかちょっと分かりませんけれども、私ども、前にも御答弁申し上げましたように、暴力団対策上、捜査活動あるいはあらゆる警察活動を通じて暴力団あるいは暴力団員等に関します情報を入手し、資料化し、それを対策に効果的に生かしておるところであります。
どのような形で管理しているか否か等につきましては、申し上げることは大変犯罪捜査等に支障を来しますので、答弁を差し控えさせていただきたいということになろうかと思います。
宮本岳志君 なかなかよく分からない話なんですが、ただ、だれのカードを作っているのか、あるいはだれそれのカードはあるのかどうかと、こう聞くと答えることはできないということはよく分かるんですね。しかし、どのようなカードを作っているか、どういうことを、どういう内容を情報として集めているのかと、そこまで公表できないというのが非常に私どもは引っ掛かるわけであります。
<どんな個人情報があるのかは答えない>
宮本岳志君 ならば、もう一つ聞きますけれども、警察が同趣旨の個人情報の収集を行っているのは右翼標ぼう暴力団あるいは暴力団だけに限られておりますか。
政府参考人(栗本英雄君) ただいまの御質問の趣旨がちょっとよく分かりにくかったんですが、暴力団対策上、いろいろな関係の情報を入手し、資料化している、その中に今のようなものがあるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、警察がどのような観点に立ってどのような情報を暴力団対策上収集しているかということは、取締り対象側に対抗措置を講じられる可能性があるという観点から、その内容について申し上げることはできないということを申し上げていることで御理解賜りたいと思います。
宮本岳志君 いやいや、それは先ほど聞かせていただいたんです。
暴力団に対する対応については内容も何も明かせないという御答弁なので、では聞くけれども、そういう内容も何も明かせないような情報収集をやっているのは右翼標ぼう暴力団や暴力団だけに限られるんですかと聞いたんです。いかがですか。
政府参考人(栗本英雄君) それは暴力団対策上必要な、先ほど申し上げましたように、暴力団あるいは暴力団構成員と、そういうものに関して情報収集は行っております。
宮本岳志君 暴力団対策以外のところでもやっているのかやっていないのかと聞いたんです。
政府参考人(栗本英雄君) それは現時点で私から答えるすべてのものではないかと思いますが、警察法上、警察活動を推進するために警察法二条に定める責務の範囲内において適法になされることはあり得るかと存じております。
宮本岳志君 捜査に一定の進展がこの問題であったようなんですね。これ以上押し問答していても仕方がないんですけれども。
今日の新聞によりますと、新たに逮捕というニュースが流れております。その中に、「資料の中には十年以上前の警察の内部資料とみられるものも含まれており、」となっていて、私がお示ししたものは決して十年以上──あ、そうか、警察のものは日付はそうなっておりますかね、ということになっておって、これが内部資料と思われるということが書かれてあるわけですけれども。
まず、これぐらいはお認めになると思うんですけれども、今回の事件は少なくとも何らかの警察からの重大な内部情報の流出があったという疑いが極めて強いと、これはお認めになりますか。
政府参考人(栗本英雄君) そのような観点も含めて今後捜査の中で明らかにしていく問題でありまして、現時点においては答弁を差し控えたいと存じます。
宮本岳志君 公安委員長、こうして国会でも問題になってきて、そして事実、その中身も私どもからもお示しをした。そして、いよいよ一般紙も今日、内部文書と思われるものもこの中に含まれていると。そして、それが武富士にあったということは今お認めにもなったわけですね。
これは、疑いとしては、警察の内部文書が流出したという疑い、これは非常に強いと、これは公安委員長もそういうふうにお考えになるでしょう。
国務大臣(谷垣禎一君) 今お尋ねの件は、捜査が今行われている過程で委員がおっしゃったような問題についても現在調査を進めているところであるというふうに報告を聞いております。現段階では、まだそれがきちっと御報告できるようなところまでは行っていないというふうに聞いております。
宮本岳志君 いや、捜査が続けられていることはもう前回から聞いているんですね。
それで、私どもは、この事件そのもの、恐喝云々ということについては何ら捜査に影響を及ぼすつもりはないし、それは避けなきゃならないと思うんですけれども、ただ、例えば今日の報道を見ましても、その警察資料と思われるものもあったということは出ているんですけれども、全体としては、武富士の内部文書が持ち出されて、恐喝容疑で、恐喝未遂容疑で逮捕されたという話なんですね。
今回、この国会でその中身が明らかになって、そこで持ち出された資料というものの中身が明らかになったから、この中に例えば右翼標ぼう暴力団員カードというようなものがあったり、あるいはその中にこの大手金融業者からそれこそ実名入りの、警察官にビール券などなどが配られたような資料もこの中に含まれているということが明らかになったりということが徐々に出てきたわけですけれども、国民から見れば、そんなことはもしこれがこういう議論がされていなければ分からないと。つまり、何か武富士の大事なものを持ち出して、そして脅そうとして捕まったんだなという話になるわけですよね。
<国家公安委員長も調査と報告を約束>
宮本岳志君 これは、その問題とは別に、現にそこにあったということなわけですから、そしてそこには数々の警察と武富士の正に癒着を示す中身があったわけですから、それとは区別して調査をして、そして国会の場で明らかにしてほしいということを前回、刑事局長にも申し上げましたし、この場でお約束もいただいたわけです。この点は国家公安委員長もよろしいですね。
国務大臣(谷垣禎一君) 今、区別して、捜査と調査を区別してと宮本委員はおっしゃったと思いますが、なかなか切り離すのはこれ難しゅうございまして、私どもとしても、もちろん捜査は厳正的確にやらなければならないわけですが、それと同時に、その今おっしゃった個人情報の流出事実があるのかないのか、その中身は何なのか、これはきちっと所要の調査を行って、厳正に対処していかなければ私もいけないと思っておりまして、今捜査に当たって、あるいは調査に当たっている警視庁も督励してまいりたいと思っておりますし、それからその形がきちっと明らかになりましたときには国会でも御報告を申し上げなければいけないと、このように思っております。
宮本岳志君 ちょっと前回の答弁からも後退するような答弁をされると困るんですけれども。まず、確認したい、調査と報告はおやりになるんですね、国会に対して。
国務大臣(谷垣禎一君) 調査もいたしますし、その調査の結果を国会に御報告すべきものと考えております。
宮本岳志君 それで、私ども前回の委員会でも申し上げたし、また国家公安委員長にも是非考えていただきたいんですけれども、今正に、個人情報保護法という法案、そして行政機関の個人情報保護法案が議論されている。そのさなかに、正に確かに恐喝容疑の事件にかかわるものであるとはいえ、現に大手金融会社に警察の内部資料と思われるものがあったと。そのことは事実としてお認めになったし、そのことを、正にお出しした資料とそれが一致するということまではお認めになっているわけですね。その私が示した資料と持ち出された資料とが一致すると。それがいかなるものであるかは、正にこの国会の場でも、委員会の場でも、不必要なところは消した上でのことでありますけれども、だれが見たって、なるほどこれは警察情報である疑いが強いというものですよ。
で、そういうものが出ているじゃないかと。この問題を明らかにせずして、個人情報保護法あるいは行政機関の保護法というようなものを、そうですかというわけにそれはいかないと。やっぱりこの問題の解明が何といってもこの議論の前提ではないかという問題提起もされて、その中で、それはあいまいにしません、調査して報告するということでありました。その点では、正にこの国会で、この国会の中でこの法案の採決がどのような後の流れをたどるか、我が党はまだまだ論点は残っていると思いますけれども、それはともかくとして、やはり今国会でこのことが明らかにされなければ、また明らかにされる道筋が付かなければやっぱり納得はいかないというふうに思うんですけれども、この国会中にその報告を行うということは、委員長、いかがですか。
国務大臣(谷垣禎一君) 国家公安委員会としてもずるずると調査ないし捜査を進めていればいいとは思っておりませんので、できる限りこれは速やかに調査、捜査を遂げるように督励してまいりたいと思っております。
ただ、かなり関係者も多数にわたりますし、それらを照合してきちっと結論を得るには時間が掛かるということは御理解をいただきたいと思っております。
宮本岳志君 全容解明にどれだけの時間が掛かるかというのは、それは捜査上の問題があるでしょう。だから、私はそのことは皆さん方を大いに督励してやっていただければいいと思うんです。
ただ、国会としては、この問題がこういう形で提起されて、そしてその恐喝事件ということではなくて、現にこういう資料が大手金融会社にあったということは問題ではないかということを、それ自身を問題にしているわけですね。だから、このことについては、やっぱり国会との関係で、少なくとも国会の開会中に報告できるように努力するということでなければ、とてもじゃないがこれ納得いかないんですけれども、是非そういう御答弁いただけますか。
国務大臣(谷垣禎一君) 先ほども御答弁させていただきましたけれども、我々もできるだけ早くやるように一生懸命努力はいたします。また、それはしなければいけないと思っておりますが、ただ、先ほど申し上げたように、捜査も生き物でありますから、時間を切っていつまでということを申し上げるのはなかなか難しゅうございます。一生懸命早くやるように督励をいたします。
宮本岳志君 私が示した資料ですね、委員長、ごらんになりましたか。あの中には、例えばもう警察官の実名が挙がって、ビール券がどういう枚数、何月、毎夏冬夏冬とこう配られたという資料もあります。で、それは毎夏冬、何年かにわたるものですから、枚数繰れば多いですけれども、顔を出す人はお決まりのメンバーですから、ダブっていますから、十数人の警察官が受け取り続けていたということを示す資料なわけですよ。それはそれで調査を進めるということは十分可能であると。
それで、必ずいついつまでにということは言いにくいと、それは分かりますよ。しかし同時に、国会の開会中にその報告ができるように頑張るとも言ってもらえないというのでは、これはまたこちらの側も話にならないと、いかがですか。
国務大臣(谷垣禎一君) 頑張るのは、頑張らせたいと思っております。
それで、ただ、今、委員からいただいた資料ですね、おっしゃったように実名も出ております。しかし、これがいかなる性質の資料であるか、私が余り、捜査や調査の手法まで国家公安委員長が余り細かに申し上げるのもいけないと思いますが、どういう性質のものであるかということは、言わば双方を十分、何といいますか、聴くといいますか、事情を聴いて、多分この全体を総合しなければならないんだろうと思います。先ほど申しましたように、それには若干時間が掛かるということは御理解いただきたいと思います。私も一生懸命頑張らせたいと思っております。
政府参考人(吉村博人君) 今、大臣から御答弁されたとおりでございますが、委員御承知のとおり、本件恐喝未遂事件は消費者金融会社を被害者といたしますもので、昨日三名、それから今日の未明に一名、都合六名の者を恐喝未遂として逮捕し、うち二名が既に公判請求をされている事案であります。
言わば単純に一人の人間がどこかから資料を盗み出してその資料を基に恐喝をしたというのであれば、その人間を調べれば、言わば送った方といいますか、一方当事者は一人で明確なわけでありまして、それとリスト等に出てくると思われる警察官とを照らし合わせて調査をすれば警察官の非違行為がそこにあったのかどうかということは比較的短期間に明確になると思います。
ただ、本件につきましては、今申しましたように、六人の、今現在で六人の被疑者がいると、当該金融の、消費者金融会社からだれがその資料を持ち出したのか、今議論になっております警視庁が保管する暴力団等に関する資料の写しではないかとされるその資料がその会社のどこにあって、どの時点でだれが入手をしたのか、あるいは、ビール券の問題についても、あのビール券を渡したとする書類はどうも見たところでは当該会社の中で言わばビール券を購入するのに要する金を支出するのに稟議をするための書類とも見えるわけでありますので、本当にあそこに書いてある名前の人間に渡っているのかどうかということについては、一方当事者、それから当該警察官を含めて警視庁で十分な調査をやらなければならないわけでありますし、現時点で既に相当の調査もやっております。
事は恐喝未遂事件の捜査をきちんと仕上げるということと、その過程で警察官の非違行為があったということであればこれは厳正にかつスピーディーに処理をするのが当然のことでありますので、極力調査を急いで全貌を明らかにしたいと考えております。
宮本岳志君 委員長、少なくとも国会でこういう形で議論になり、そして国会がこの法案とのかかわりでも明らかにする必要があるというふうに議論したということの重み、それは受け止めていただいていると思いますし、そういう当委員会のやっぱり意を体してこの国会中に、我々はこの国会中に出していただくということを強く望むわけですけれども、そういう方向での努力を尽くすということはおっしゃっていただけますか。
国務大臣(谷垣禎一君) 大事な国会、法案の審議でそういう御議論がなされたこと、これは重く受け止めなければならないと思っておりますし、私どもも、犯罪捜査は警察の職責でありますけれども、同時に、警察にあるいはその情報等の扱いで不適切な点があったのではないかと、こういう問題がありましたときに、きちっとそれを調査を遂げて信頼を取り戻すということは警察にとっても必要なことであるというふうに私は考えておりますので、先ほど申しましたような、かなり調査に時間を要する、捜査にも時間を要するということはございますけれども、できる限り速やかに調査を遂げられるように我々も努力をさせたいと、このように思っております。
宮本岳志君 今国会中の報告を強く求めて、私の質問を終わります。
(総理への質問)
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
まず冒頭に、審議を通じて数々の法案の問題点が明らかになる下で、しかも衆議院、参議院通じて公聴会も行わないまま本日採決というのは我が党は反対だということを申し上げておきたいと思います。
<これまで明らかにしてきた事実は3つ>
宮本岳志君 私は、この間、本委員会で警察幹部と大手サラ金業者の癒着という問題を取り上げてまいりました。一部報道もされておりますが、警察の少なくない幹部と大手サラ金業者との間で重大な不正、腐敗が過去十年近くにわたって行われていたという疑惑が浮上しております。時間が限られておりますので、今日はその問題の要点をパネルにして持ってまいりました。(図表掲示)
私がこの委員会に証拠を示して明らかにした事実は三つあります。
一つは、個人の犯歴まで書かれた警察の内部文書の写しがサラ金業者に渡されたということですね。それを示す資料です。私が委員会に提出した、警察からサラ金に渡ったとされる資料には、本人の生年月日、住所、本籍地や所属団体、家族関係、犯歴など、本人の出生から今日に至るまでの生々しい記述が掲載されております。
二つ目は、今度は大手サラ金業者から警察幹部へのビール券や時計などの付け届け。これは、ビール券を送った相手として、警察庁、警視庁の各課、暴対、新宿署、池袋署、渋谷署、上野署等々、さらには京都府警の警察官の名前まで記載されているというものなんです。もしこれが事実であれば極めて重大な腐敗であり、情報漏えいだということになります。
今朝も国家公安委員長は、調査し国会に報告する、重く受け止めるとこの場で約束をされました。
まず、総理もそれは、調査はよろしいですね。
国務大臣(谷垣禎一君) お尋ねの件につきましては、警察として、今、内部情報に基づく恐喝事件として捜査をいたしておりますが、それと併せまして、個人情報の漏えい等があったのかなかったのか、そういうことも含めまして調査をきちっとさせて、厳正な処分をいたすべく、私としても、国家公安委員長としても警察を督励いたしたいと思っております。そして、その上で、その調査の結果についてもこの国会に御報告をすべきものと考えております。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今の御指摘の点につきましては、調査をしているという段階だと私は聞いております。事実関係はまだはっきりしませんが、恐喝事件として捜査中だという話を聞いておりますので、この結果につきましては私はきちんと報告をすべきだと思っております。
宮本岳志君 三つ目の事実なんですけれども、このパネル、もう一度見ていただきたいんですが、実は、サラ金業者から警察に渡されていたのはビール券だけではなかったんですね。実は、信用業界からは決して出してはならない個人信用情報、これが提供されたと。警察の部下の借金情報が提供された、そのことを示す資料もお示しをいたしました。
私は、ある警察幹部が今度はこのサラ金のある人物を通じて部下の信用情報を信用データベースから引き出したということを示す資料も示したんですね。これも先ほど調査をお約束いただきました。
この信用データバンクというのはジャパン・データ・バンクというんですが、これは、警察といえども犯罪にかかわる場合でも令状なしには閲覧できないと。改めて言っておきますけれども、これは犯罪者の信用情報じゃないんですよ、警察官の部下の信用情報を調べさせた疑いがあると。これは、不正にデータを持ち出されたジャパン・データ・バンクもこれを重視して調査を開始したと聞いております。昨日、私が問い合わせたところによると、重大な問題であり今の時点で調査の状況を明らかにすることはできないが、問題の資料を見る限りその業者から出たものだろうと、こういうお答えもいただきました。
これは、事実関係は調査を待つほかないんですけれども、これが事実とすれば、民間信用調査機関の個人情報保護の信頼性を揺るがすこれまた重大な問題だと。それだけに私たちは、私たちが求めていた特に個別の法制、とりわけこの金融・信用情報の保護、これを始めとするやっぱり厳格な個別法制というものが必要だと、この一例からも私、感じるわけですが、これも総理にお答えをいただきたいと思います。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 金融分野に限らず、他の分野におきましても、個別の法制は必要だという議論なり御指摘なりを今までの審議で十分されております。その点も踏まえまして、今後検討していくべき課題だと考えております。
宮本岳志君 正に先ほど取り上げたこの問題、今、国民のプライバシーを本当に守るんだという政府の姿勢が問われていると思っています。同時に、公務員による個人情報の不正な収集や不正な使用を本当に根絶できなければ、個人情報保護法の名に値しないと言われると思うんですね。
<「そう思うのも無理ない」と小泉総理>
宮本岳志君 それで、例えばこの事件、私、一番最初に取り上げたときには警察は、調査し国会に報告すると言わなかったんですね。最初は、捜査に支障があるのでということでなかなかお答えになりませんでした。私はこの点が今本当に大きな問題だと思っています。本法案の主要な欠陥ということを一つ言わせていただくと、これは主務大臣制にあると思うんですね。警察に関することはすべて捜査に支障があると、こう言われれば、外部にいる者からはこれは知る由もないわけですよ。今回の行政機関法は、警察庁掛かります、掛かりますけれども、捜査にかかわるものということで、まあ除外規定があって除かれるということになっているわけですね。
それで、総理にひとつ、これは総理のお考えをお聞かせいただきたいんですが、自分で自分を律する、役所が自分で律するということが本当にできるとお考えかどうか、総理の御答弁をいただきたいと思います。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) 警察、特に捜査に関する情報については、これはどうしても調べなきゃならない調査と、この調査を決して漏らしてはいけない、両方あると思いますね。この点については、やはり警察、捜査にかかわる担当者というのはやっぱりよく認識して、捜査に必要な情報と決して個人のプライバシーを侵害しちゃいかぬという観念というものにつきましては、日ごろから、適切に捜査をしながらも、法律を厳正に運用するということにつきましては、幹部から担当者含めまして、よくわきまえるような対応を図れるように、今後も不断の注意なり対応をしていかなきゃならぬと私も思っております。
宮本岳志君 厳正にやる努力をするのは当然のことだと思うんですね。
ただ、私が総理にお伺いしたいのは、つまりその役所が主務大臣制で自分でやるんだというんだけれども、本当に自分で自分を律するということが総理はできるとお考えになるかということを聞いているんです。いかがですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) これはだれにも言えることだと思うんです。やっぱり自分で自分を律すると。公僕、公務員ですから、これは当然してもらわなきゃならない。そういうことができるようにそれぞれ努力していかなきゃならない。たまにはできていない人もいるでしょう。それはどの分野でも同じです。
しかし、一番大事なことはやっぱり自らを律するということ、これは特に公務員にとりまして、あるいは指導的立場にある者として、言論機関、報道機関、どの分野にも言えることだと私は思っております。
宮本岳志君 私は、それは甘いと言わざるを得ないですね。
一部にというふうにおっしゃいましたけれども、私は、総理が総理大臣になられてこの三年間、振り返ってもらっただけでも、そういうふうになっていない事実が一杯出てきた。
例えば、外務省の不祥事というのがありましたが、これは鈴木宗男氏の事件などから発覚したものなんですね。外務省自らが調査して最初から出してきたというものではなかった。これはもう総理も覚えておられると思います。法務省の名古屋刑務所問題、これは九月事件と言われる事件で、被害者がたまたま外部の病院に担ぎ込まれたことから隠しおおせなくなって発覚をしたと。あるいは防衛庁リスト問題もマスコミの報道から発覚したという、やっぱり端緒はそういうふうになっているわけなんですよ。はっきり言って、役所が自ら不正を明らかにしたというものはほとんどないんです。国民は役所の隠ぺい体質を嫌というほど見せ付けられてきました。
国民はだれも役所が自分で自分を規律できると、そういうふうには信じないですよ。総理、そう思われませんか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) いや、そう思うのも無理ない事件が最近よく出ておりますし、だからこそ国会というものも存在していると、不断の監視も必要だと。
しかし、基本的にはやっぱり法律ですべてが解決するものではございません。その以前に、法律以前に道徳観念とか倫理観とか使命感とか責任感、これはやっぱり国民全体の水準の問題でもありますから、その点については、特に公務員なり指導的立場にある人たちにとりましてはいかに自らを律することが必要かということについては、これは教育の問題にもかかわってくると思いますけれども、国全体の問題として大変大事なことだと思います。
宮本岳志君 私は、システムをきちっとする必要があるということを申し上げたいんです。
先ほど挙げた役所ですね、外務省は外交機密にかかわる、防衛庁は防衛秘密にかかわる、警察は捜査に支障がある、そう言えばだれも外から触れない、そういうところで不祥事が次々噴き出してきているわけですよ。それも全部、偶然だったり勇気ある内部告発だったりということから発覚している。このこと一つを見ても、野党が主張しているような独立性を持った第三者機関に判断をゆだねる必要がある、これが確かなシステムになる、こう思うんですが、総理のお考えいかがですか。
内閣総理大臣(小泉純一郎君) この点につきましては一番よく分かっているのが主管の官庁であります。しかも、報道機関、国会、いろいろな国民の監視もある、あるいは情報公開法も整備された、こういう点を活用してより良い行政運営がなされるように、今後も、国会も行政も報道機関も民間も適切に制度を運用して誤りない運用をしていくことが重要だと思っております。
宮本岳志君 警察のことはすべて警察が決める、役所のことはすべて役所が決めると、こういう仕組みでは駄目だと思います。野党四党が示した修正案を受け入れるということを強く求めて、私の質問を終わります。