156 – 参 – 総務委員会 – 19号 平成15年07月01日
平成十五年七月一日(火曜日)
午前十時開会
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委員の異動
六月十日
辞任 補欠選任
森元 恒雄君 片山虎之助君
山根 隆治君 内藤 正光君
六月十一日
辞任 補欠選任
片山虎之助君 森元 恒雄君
六月十二日
辞任 補欠選任
宮本 岳志君 市田 忠義君
六月十三日
辞任 補欠選任
市田 忠義君 宮本 岳志君
六月二十五日
辞任 補欠選任
八田ひろ子君 市田 忠義君
六月二十六日
辞任 補欠選任
市田 忠義君 八田ひろ子君
七月一日
辞任 補欠選任
泉 信也君 山下 英利君
小野 清子君 愛知 治郎君
輿石 東君 小林 元君
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出席者は左のとおり。
委員長 山崎 力君
理 事
景山俊太郎君
世耕 弘成君
山内 俊夫君
伊藤 基隆君
高橋 千秋君
委 員
愛知 治郎君
泉 信也君
小野 清子君
加藤 紀文君
岸 宏一君
久世 公堯君
椎名 一保君
谷川 秀善君
森元 恒雄君
山下 英利君
小林 元君
輿石 東君
高嶋 良充君
辻 泰弘君
内藤 正光君
木庭健太郎君
山下 栄一君
八田ひろ子君
宮本 岳志君
松岡滿壽男君
渡辺 秀央君
又市 征治君
衆議院議員
総務委員長 遠藤 武彦君
総務委員長代理 林 幹雄君
国務大臣
総務大臣 片山虎之助君
副大臣
総務副大臣 若松 謙維君
政府特別補佐人
人事院総裁 中島 忠能君
事務局側
常任委員会専門
員 藤澤 進君
政府参考人
総務大臣官房長 瀧野 欣彌君
総務省行政管理
局長 松田 隆利君
総務省自治行政
局長 畠中誠二郎君
総務省自治行政
局公務員部長 森 清君
総務省自治財政
局長 林 省吾君
総務省政策統括
官 大野 慎一君
消防庁長官 石井 隆一君
文部科学大臣官
房審議官 木谷 雅人君
文部科学省初等
中等教育局長 矢野 重典君
厚生労働省社会
・援護局障害保
健福祉部長 上田 茂君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○地方独立行政法人法案(内閣提出、衆議院送付
)
○地方独立行政法人法の施行に伴う関係法律の整
備等に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正
する法律案(衆議院提出)
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<目的から「民主的に」が抜け落ちる>
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
まず、第二条、法案の「定義」についてお伺いいたします。
私は、そもそもこの定義からして訳が分からないと言わざるを得ない。地方自治体が行う事業のうち、公共上の見地からその地域において確実に実施されることが必要だと言いながら、自治体が自ら主体となって直接実施する必要がない、それでいて民間ではできないものだと、こう言っております。
公共上の見地からその地域において確実に実施されることが必要な事業は自治体が責任を持ってやるべきではないのか、なぜわざわざこんな制度を作るのか、まずこの点をお答えいただきたいと思います。大臣。
国務大臣(片山虎之助君) いや、仕事はいろいろあるんですよ。そう簡単にいきませんよ。
それは大変公共性が高くてあるけれども、地方団体が直接やらなくてもいい仕事というのはあるんで。例えば、そうでしょう、大学だって試験研究機関だってどうですか、国際会議場だって公共性ありますよ、公共性ある。それじゃ、ほっておいて、民間がはいはい分かりましたといってやるかというと、これはなかなかそうじゃない。必要があるけれども民間はなかなかやらないと。
しかし、それじゃ地方団体が責任を持たなきゃいけないけれども、そのやり方はぎしぎしの官庁会計で、単年度で、極めて硬直的にやるよりも、もっと自由にやらせる方が本来の目的に沿うようなものもあるわけですよ。それがイギリスのエージェンシーであり、国の独立行政法人はそういう発想から出ているんですよね。それは特殊法人と同じじゃないかというと、同じなんですよ。同じなんだけれども、特殊法人よりは進歩しているんですよね。例えば評価委員会を作って、三年から五年で見直すとか、場合によってはつぶすとか、役員についても信賞必罰でやるとか、そういうことを持ち込んでいるんですよ。公共性がある仕事に民間的な経営効率の仕事も持ち込んでいるので、それが結果としては国民や住民の利益へつながるんで、だからいろんな考え方があっていいんですよ、宮本委員。
そこで、そういう意味での地方に選択肢を、国もやっているんだし、地方でも要望があるんで、それじゃ仕組みは作りましょう、それはどうぞ自分で、自分の責任で選択してくださいと、こういうふうに考えているわけであります。
宮本岳志君 つまり、自治体が直接実施すれば一番すっきりしているような仕事をわざわざ地方独立行政法人というものを作るというのは、正におっしゃったように、効率的かつ効果的に行わせると、これが目的だと、法案にもそう書いてありますよ、目的ね。
私は、そこで、大臣、認識聞きたいんですけれども、つまり今の地方自治体でやっている仕事は効率的でないと、こう大臣はお考えになっていますか。
国務大臣(片山虎之助君) いやいや、いろいろあるんですよ。一生懸命やっていますよ。
しかし、今の仕組みが、今言いましたように、がんじがらめにして、例えば二、三年での期間で物を考えた方がいいのに、全部単年度の予算、決算でしょう。あるいは組織についても条例やいろんなことで規則できちっと決まっているんですよ。人の配置なんか自由にわあわあとできないんですよ。だから、そういうことはそういうふうに厳重にやると。そうでなくて、効率的に自律的、弾力的にやる方がプラスになるようなものはそういう仕組みを作って、責任はもちろん持つんですけれども、そうやってもらうというのが正しいんではないかと、こういうことであります。
宮本岳志君 正に大臣は、私、この地方独立行政法人というものの本質を今お話しになったと思うんですね。
大臣ね、地方自治法の第一条には、地方自治体の目的というのが書いてあるんです、大臣に別に言うのも釈迦に説法ですけれども。そこには、「地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、」云々と、つまり地方自治法によると、地方公共団体は民主的にして能率的に行政を進めなければならないとなっているんです。それを、自治体が直接やれば一番すっきり分かりやすいものをわざわざ別の法人を作らなければ効率化あるいは効率的運用ができないと、こうお考えになるとすると、正に地方自治法第一条というものは、現状では地方自治体には守らせられないのだと総務大臣がお答えになっているに等しいわけですよ。私は、こういうわざわざ枠組みを作って効率的、効率的ということをやるというのは、はっきり申し上げて、先ほど申し上げた地方自治法あるいは地方公務員法にも民主的にして効率的という言葉が、能率的という言葉が出てまいります。つまり、民主的にして能率的というスキームでできないものを効率的、効果的に行わせるために別の枠を作るということは、はっきり言って民主的という言葉が抜け落ちるわけなんですよ。つまり、地方自治法や地方公務員法の枠組みではできないような効率化をあなた方はやろうとしている。これ以外にこの法律の目的はないと考えますが、いかがですか。
国務大臣(片山虎之助君) 地方公共団体がやっている事務事業というのは一杯あるわけですよ。それはもう民主的にがちがちでやらなければならないものも、民主的は、一定の限度でぴしっと民主的な責任は持つけれども、あとは能率的にやったものもいいものがあるんですよ。同じやり方で全部やれという方が無理なんですよ、こういう時代に。いろんなやり方があっていいんで、その選択肢を増やしてそれを判断して選択するのは地方団体にやってもらうんですよ。我々はこうやれ、あれやれと言うんじゃないんですよ。地方が要望しているんですよ。要望しているから選択肢を広げただけで、その選択を主体的にやって責任を取るのは地方団体ですから、それが地方自治なんですよ。これしかやるな、このやり方しか駄目だと、そういう方がずっと私は合理的でないと思いますよ。
宮本岳志君 いや、地方自治法には民主的は一定の限度でいいとは書いていないんですよ。地方自治法は明瞭に民主的にして能率的に行わなければならないと、こう書いているわけですから。そして、その民主的ということを一定の限度にして効率適用を図るんだというところに今度の法案のこの目的があるんだという私の指摘は正に大臣の答弁でも裏付けられたと言わざるを得ないです。
<「選択肢を与える」と言って追い込む>
宮本岳志君 私は、そういう効率化というのはどういう実態を生んでいるかということを大臣に考えていただきたい。東京三鷹市の市立保育園の東台保育園の例をこの前も八田委員が御紹介申し上げました。市立の保育園ですが、運営委託でこれはベネッセコーポレーションというところが運営をしております。ベネッセというのは皆さんにとっては進研ゼミで有名なあの会社ですね。大臣の地元岡山に本社がございます。私は決して民間何でも悪いと言うつもりはないんです。問題はこういう効率化が何によって行われているか。保育所の経費というのは八割までが人件費なんですね。それでベネッセでは、園長や主任などは一年更新の契約社員として雇い、こういう方々の月給も一年目では十五万から二十万程度、それ以外の職員の方々はアルバイト、パートで社会保険もないという状況なんですね。保育士のこういう労働条件の上に成り立っている効率化なんですよ。
先週、参議院本会議で、塩川大臣は、公立は民間より人件費比率が高過ぎると保育園の例を出して答弁されましたよ。しかし、これはつまり保育士は全員不安定雇用でも結構だ、十分だと言っているに等しくって、私はやっぱりこういったことが現場でどういう状況を生んでいるかということも考えなきゃならないと思います。
もう一つ、私の地元大阪ではもっとストレートで、保育所の民営化というのがやられております。守口市では昨年四月から三つの保育所が民営化されました。民営化事業者の募集条件は、園長は保育士の資格のある人、こうなっていたにもかかわらず、ある園では資格のない理事長が園長を兼務している、消防法上必要な防火管理者を置いていなかったり、別の園では、常勤していない園長を常勤と申請して補助金を受け取って、市が改めて請求し直して補助金の返還まで行われているという事例があるんですね。
つまり、あなた方の言うこの効率化というのはこういうことだと言わざるを得ないんです。正に地域において確実に実施されることが必要なものを効率化する、それも地方自治法に基づいたのではなかなかできないような効率化をやろうと。結局は安易に投げ出すということではないのですか。
国務大臣(片山虎之助君) 宮本委員の話を聞いていると、それじゃ保育所は全部公立にして、たくさん人件費は掛けて、しかし、そのお金は全部税金なんですよ。税金を最もすべての国民に効率的に使うというような必要があるんですよ。何でも給料は高くすりゃいい、効率化は全部反対だと、しかし、そのお金はだれがどうやって調達するんですか。全部国民の負担じゃないですか。そこのところを考えて今いろんな改革の議論が進んでいるんですよ。改革をやるなという議論ですよ。
宮本岳志君 国民は福祉や医療や保育や市民のサービスのために税金を払っているんですよ。国民は別に保育をあんまりやってくれるなとか、あるいはそういうことに税金使ってくれるななんて言っていないわけですよ。無駄な公共事業をやめてくれと言っているんですから。私は、保育や福祉や医療にしっかりとお金を使って、そして本当に無駄なところを削るということを申し上げているわけなんですね。大臣は二言目には選択肢というふうにおっしゃいます。先ほども選択肢だとおっしゃっておりました。私は、この法案を提案して最後は自治体が選ぶんですよとおっしゃるけれども、それは私全体を見ない議論だと思います。
大体、六月二十七日、政府はこの第三次骨太方針というのを出しましたよね。先ほども議論になっておりました。ここでは、三位一体の改革だとこう言って、今後三年間で国庫補助負担金を四兆円削ると、その削減分の八割程度しか税源移譲しない、こういうふうになっております。地方交付税の税源保障機能についても全般を見直し縮小すると。地方分権推進会議じゃないですよ。これ正に第三次骨太方針、あなたも加わって閣議決定したものの中でもそういうことを明記していますよ。私、実物をここに持ってきて、この中を紹介しているわけですからね。
つまり、これから地方への財政保障を一層削り込むと。一方ではそういうことを決めておいて、そして、こういう選択肢を置いて、いやいや選択肢を一つ増やしただけですよと、こう言ったって、これからそこへ追い込んでいくということは明瞭じゃありませんか。違いますか。
国務大臣(片山虎之助君) 三位一体の改革の中身ももう少し勉強してくださいよ。自分流のあれだけ言っては駄目ですよ。それから、あなたが言うことが正しければ、是非国民の選択であなた方の考えの人を増やしてくださいよ。国民の選択ですよ、選挙というのは。是非それはよく分かってください。自分の言うことだけが正しい、人の言うことは全然間違いだと、それは全然違いますよ。
宮本岳志君 いやいや、答弁になっていないじゃないですか。じゃ、この骨太方針でそういうことを決めていないとおっしゃるんですか。
国務大臣(片山虎之助君) あなた、骨太方針がよく分かっていないんじゃないですか、何のためにやるかということが。国から地方への、地方の自主性や自律性を強化するためにそういうことをいろんな段階を経てやっていくんですよ。一遍にひっくり返るようなことができるわけがない。どうやってやるんですか、それじゃ。共産党の考えを聞かしてもらいたい。
宮本岳志君 でたらめな答弁をするんじゃないですよ。二十ページに書いてあるじゃないですか。二十ページにちゃんと私が今言ったとおりのこと、書いてあるから言っているんですよ。
国務大臣(片山虎之助君) 事が分かっていないじゃない、本質が。
宮本岳志君 事が分かっていないって、そう書いてあるじゃないですか。いいですよ、そんな、窮地に陥ったらそういうことを言ってごまかす。
国務大臣(片山虎之助君) 全然窮地に陥っていないじゃない、ばかばかしいから。
宮本岳志君 そうじゃないですか。ここにそう書いてあるでしょう、じゃ書いていないですか。事務方でもいい。
国務大臣(片山虎之助君) よく知っているよ、そんなことは。
宮本岳志君 書いていないんですか。否定できるんですか。
委員長(山崎力君) どなたが答弁。
政府参考人(林省吾君) 御指摘いただきました六月二十七日の閣議決定におきましては、国と地方との改革につきまして、全般的に改革の考え方、また三位一体改革につきましては、国庫補助負担金の廃止、縮減の考え方、税源移譲の考え方と併せて、地方交付税につきましても今後の対処方針を記述いたしているところでございます。
宮本岳志君 そのとおり言っているじゃないですか。書いていることを指摘して、そんなばかな話はないんですよ。もう時間ないですから、時間ないですからいいです。こんなことをやっていたらこれで終わりますからね。
それで、私は、改めてこの地方独立行政法人というものは、正に塩川大臣が言うような地方財政の見直し、スリム化の具体化にほかならないと。結局、この住民犠牲の効率化を進めて、住民サービスは切り下げられる、あわよくば廃止しようという、そういうツールを与えるものにほかならないと。それで被害を受けるのは正に保育所の子供たちや公立病院の患者さんや、つまり住民にほかならないということを指摘をしておきたいと思います。
<国立大学法人は「独法とは違うもの」>
宮本岳志君 同時に、この地方独立行政法人法というスキーム自身が今見たように大変ひどいものですけれども、更にもっと重大なのは、あなた方がスキームに公立大学を入れているという問題です。いいですか。公立大学について聞きますよ、次は。
そもそも、大学というものは学術の中心であって、広く知識を授け、深く専門の学芸を教授、研究する我が国の最高学府であると。
文部科学省と、そして総務大臣にも、これまず前提として確認しますが、大学における教育研究の特性は国公私立を問わず大学に共通する、これはよろしいですね、文部科学省。
政府参考人(木谷雅人君) 教育研究の特性とは、大学における教育研究の自主性、自律性を十分尊重するとともに、長期的な展望に立った教育研究の推進という観点や専門的見地を踏まえることと理解しておりまして、教育研究の特性に配慮すべきことは、国公私立大学を問わず大学に共通するものと認識いたしております。
宮本岳志君 ちゃんと答えてくださいよ。
国務大臣(片山虎之助君) 文部省と同じ意見であります。
宮本岳志君 国の大半の独立行政法人は、既に施行されております独立行政法人通則法に基づいて独立行政法人化が進められております。総務省の所管でいえば、TAO、通総研がそうですね。
しかし、今、文教科学委員会に提出されている国立大学法人化法案、これらは効率化のための独立行政法人化ではないと文部科学省は繰り返し説明をされております。これは正に教育研究の特性を尊重するためでよろしいですね、文部科学省。
政府参考人(木谷雅人君) 現在、国会で御審議いただいております国立大学法人法案は、単なる効率化を目的としたものではなく、国による財政措置を前提とした独立行政法人制度の発足を機に、大学改革の一環として検討してきたものでございます。すなわち、独立行政法人制度の基本的な枠組みを活用しつつ、大学の教育研究の特性に十分配慮し、さらに、従来、国の行政組織の一部に位置付けられてきたことに由来する予算、組織、人事等に係る様々な規制から外れて、その運営の自律性を高め、教育研究を活性化し、より個性豊かな魅力ある国立大学の実現を図ろうとするものでございます。
宮本岳志君 四月の十六日、衆議院文部科学委員会で遠山文部科学大臣は次のように答弁をしております。今回は独立行政法人とは思っておりません、大きな傘からいえば独立行政法人の枠の中であるかもしれませんが、独立行政法人の先行するような組織とは違うという角度から、国立大学法人という新たなコンセプトでお願いをしている。大学という、教育なり研究なり人間の知にかかわる、あるいは人格の形成にかかわる、そのような大切な機能を持つ組織である、そのようなことから、独立行政法人という国の業務をやる組織ではあっても、やはりそれはより効率的な運営が強いられるような法人とはまた違うということから、国立大学法人ということで今回構想したと。これはもう間違いないですね、答弁もその委員会では反対の立場で野党の皆さんと御一緒に頑張っております。
ともかく、文部科学省は、行革ではなく大学改革なのだということで、通則法ではなくて、国立大学法人法案という別法案として国会に提出をいたしました。だから、衆議院で文部科学大臣は、この改革によって、国は、とにかくお金を削減しようとか減らしていこうなどという意思は毛頭ないはずで、増やしていく決意を述べよと、こう問われて、日本の今後の発展にとって、大学にかかわる経費というものは、未来への先行投資だと考えている、その意味では、大学、特に国立大学、今回の設置形態の変更を契機に削減するようなことには絶対ならないように、私どもとしては頑張りたいと文部科学大臣は答弁しましたが、間違いないですね。
政府参考人(木谷雅人君) 御指摘のとおりでございます。
宮本岳志君 総務大臣、ところが総務省は、公立大学を国の独立行政法人通則法と同じ、いわゆる行革の枠組みに入れてしまっているんですよ。先ほどあなたも、国公私立問わずひとしく教育研究の特性を尊重しなければならないと答弁しましたけれども、これでは教育研究の特性を守れないのではありませんか。大臣、そう思われませんか。
政府参考人(畠中誠二郎君) 私どもの地方独立行政法人法案の中に公立大学が入っていることは事実でございますが、これは、国立大学の言葉は別として独法化に準じた措置をこの法案の中で講じようということで、公立大学の特性に応じた例外措置につきましてもこの法案の中できちっと書いておりますし、考え方としましては、国立大学の独法化の措置と、公立大学については基本的には変わるところはございません。
宮本岳志君 その程度では駄目だから国立大学は別法案としているんですよ。
<「効率的な運営」が法人設立の目的>
宮本岳志君 それなら聞きますが、先ほど私は、遠山大臣の答弁も紹介して、国立大学法人はより効率的な運営が強いられるような法人とはまた違うということも確認をいたしました。この地方独立行政法人法案第二条は、効率的かつ効果的に行わせることを目的として法人を設立するとなっておりますけれども、公立大学にはこの第二条は適用されないんですか。
政府参考人(畠中誠二郎君) いや、適用されます。
宮本岳志君 全く矛盾しているんじゃないですか。
政府参考人(林省吾君) 公立大学につきましての御議論でございますが、先ほど御指摘のような地方独立行政法人制度自身は、業務の効率化を意図したものでありますと同時に、サービスの質の向上を図ることもねらいといたしているわけであります。特に中期目標等の中におきましては、サービスその他の業務の質の向上に関する事項等を盛り込み、業務運営につきましては改善、効率化に関する事項と併せて重要な項目といたしているわけであります。
そういう意味で、地方独立行政法人制度は単なる業務の効率化だけではなく、サービスの質の向上を目指すという広い意味の行財政改革の観点も含んでいるものでありまして、特に公立大学法人につきましては、こうした基本的な独立行政法人制度のねらいを踏まえたものでありますとともに、大学の設置を目的とするものでございますので、御心配の、大学における教育研究の特性や大学の自治に配慮することが必要であると、こういう観点から、種々の特例規定を置くことといたしているところでございます。
宮本岳志君 第二条には「効率的かつ効果的に行わせることを目的として、」とあるだけで、サービス云々という言葉はないですが、それならば公立大学に関しては効率的かつ効果的に行わせることを目的として行わないと言明できますか。
政府参考人(林省吾君) そういうことではございませんで、もちろん法律の基本的な考え方は今御指摘のような規定を踏まえて制度ができ上がっているわけでありますけれども、公立大学につきましては、地方独立行政法人法を適用していきます場合は、単なるその基本的ないわゆる地方独立行政法人全体に通ずるものだけではなくて、公立大学に特例として設けるべき規定あるいは要素、そういうものも踏まえて、教育の質の向上あるいは地域社会における公立大学としての役割の充実を求めていくような配慮がなされているものと考えております。
宮本岳志君 訳の分からぬ答弁ですね。
大体、こういう枠の中にそもそも押し込んだというところに最大の問題があるんですよ。先ほど来、他党の議員も同じ指摘をやっております。私は、教育研究の特性を守ると幾らあなた方が繰り返したって、効率的かつ効果的に行わせることを目的として公立大学法人を作れば、結局その特性が脅かされることは明瞭だと。大体、文部省が、こういうこの法案について、文部省の側も教育の特性を重視すると言わざるを得ないのは、正にそこに理由があるわけですよ。
それで、ノーベル物理学賞を受賞した小柴東大名誉教授は東京新聞で、学問研究に効率化を持ち込むと採算に結び付かない基礎科学は冷や飯を食うと、これは東京新聞で語られています。大学の教育研究の目標や計画などは学内で決めると、これが大学運営上の鉄則なんです。自らの判断で研究テーマを決めて、小柴教授のように何十年も掛かってようやく認められるようになるというものもあるんですね。学内の関係者でしか判断できない目標設定や評価は、大学できちっとやるというのが当然の原則なんです。
そこで聞きますけれども、国立大学法人では文科大臣が中期目標を定めます。それに基づいて大学法人は中期計画を作成し、文科大臣の認可を受けるわけですね。それぞれの場合に、あらかじめ評価委員会の意見を聞くとなっておりますけれども、この評価委員会はどこに置くことになっておりますか。
政府参考人(木谷雅人君) 国立大学法人、国立大学法人評価委員会は、国家行政組織法上のいわゆる八条機関、審議会等に該当するものでございまして、文部科学省に置くこととしております。
宮本岳志君 文部科学省に置くんですね。
では、総務省に聞きますけれども、この地方独立行政法人法案でも評価委員会を置くことになっておりますけれども、この評価委員会はどこに置くのか。そして、公立大学の評価委員会は必ず公立大学のみの評価委員会を別に作るということになっているか。いかがですか。
政府参考人(林省吾君) 公立大学法人に係る評価委員会は、条例に定めるところによりまして、設立団体の長の附属機関として当該団体に置かれることになるものであります。
その評価委員会は、御提案いたしております法律第十一条に記してございますように、設立団体に地方独立行政法人評価委員会を置くという規定になっておりまして、複数設置すること自体は否定をいたしておりません。しかしながら、地方公共団体におきましては、特に地方団体における公立大学の実態を踏まえますと、国立大学のような複数ではございませんので、例えば評価委員会の中に分科会を設けると、こういうような方式で対処することを検討されているところもあるようでございますが、いずれにいたしましても、評価委員会を設置しながら、地方公共団体の行政組織の簡素化という観点も踏まえて、当該地方団体において判断されるものと考えております。
宮本岳志君 国立大学の場合は、一応、政府の中では教育研究を担当する文部科学大臣が行うと、評価委員会、文部科学省に置くということになっているわけですね。それでさえ、外部からの介入だという大議論が今正にこの瞬間も文教科学委員会では続けられているわけですよ。
ところが、この地方独立行政法人法に基づく公立大学の場合は、これを自治体に置くと。あるいは、他の独立行政法人と一緒にして評価を行うということも可能となると。これでは全く教育研究への配慮が足りないということになりませんか。
政府参考人(林省吾君) 地方団体がどういう判断をされるか、最終的にはその判断に懸かっているわけでありますが、その際、公立大学としての学問を行う組織の特性を踏まえた、また大学関係者からの意見を十分聞いて制度を条例に基づいて作るように枠組みされているわけであります。
なお、この評価委員会をどういう形で置くかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、条例の、法律上の根拠に基づきまして、複数あるいは一つの中で分科会のような形でやるかどうか、その点は地域の実態を踏まえて地方団体において判断できるようにしておいてほしいと、こういう大学関係者からの御意見も踏まえてこのような制度を取っているわけであります。
<中期目標も定款の認可も都道府県知事>
宮本岳志君 続いて総務省に聞きますけれども、本法案では公立大学法人も中期目標を定めるということになっております。これはだれが定めることになっておりますか。
政府参考人(林省吾君) 本法案におきます公立大学法人を設立する場合の中期目標は、設立団体の長が作成し、あらかじめ住民の代表である議会の議決を経て法人に指示することといたしているところでございます。
ただ、公立大学法人につきましては、大学における教育研究の特性に配慮し、大学の自治を尊重する必要がありますので、他の地方独立行政法人には見られないこの特殊性にかんがみまして、地方独立行政法人制度の基本的な枠組みは維持しつつも、中期目標を定めるに際しましては、あらかじめ当該公立大学法人の意見を聞き、当該意見に配慮することを特に規定をし、法人の意向が中期目標に反映される仕組みといたしているところでございます。
宮本岳志君 配慮するといっても、中期目標を知事が議会の議決を経て決めるというスキーム自身が私は問題だと思うんですね。あなた方は、衆議院で我が党の春名議員が指摘した、正に地方自治の原則に立って、本来議会がチェックすべき事業については今回の法案でチェック機能を大幅に緩めようとしているんです。これが衆議院で大議論になりました。
逆に、大学の自治という観点から、本来議会といえども口出しすべきでないものには、定款にしろ中期目標にしろ、議会の介入、首長の指示を認めてしまっている。だから、私はこの法案は欠陥法案だと繰り返し申し上げているんですよ。
もう一問、じゃ総務省に聞きます。
定款の認可を公立大学法人については総務大臣だけでなく文部科学大臣としたのは、これは教育研究の特性に配慮したということですか。
政府参考人(林省吾君) 法案におきましては、総務大臣に加えて文部科学大臣の認可を必要といたしているわけでありますが、公立大学法人の場合は、地方独立行政法人が備えるべき要件が確保されているかどうかと、こういう観点からの認可に併せまして、憲法二十三条が保障する学問の自由の精神に由来する大学の自治を尊重する仕組みが備わっているかどうかと、こういう観点から大学の設置について認可をする必要があるわけでございます。そういう観点から、両大臣の認可を法制上構築しているわけでございます。
宮本岳志君 研究教育の、教育研究の特性に配慮してそういうことにしていると。
では、聞きますけれども、都留市立の都留文科大学、下関市立大学、これらの大学を公立大学法人にする場合、その定款は文部科学大臣が認可することになりますか。
政府参考人(林省吾君) お尋ねのは市立大学でございますか。
宮本岳志君 下関市立大学。
政府参考人(林省吾君) 市立大学ですね。市立大学の場合は都道府県知事の認可となります。
宮本岳志君 じゃ、都留文だとか下関市立大学など一般市の公立大学については文部科学大臣はかかわらない。これは、これらの大学は大学における教育研究の特性に配慮する仕組みが備わっているか確認する必要がないと、こう答弁されるんですね。
答弁になっていないじゃないか。答弁できないじゃないか。欠陥法案だよ、こんなものは。
政府参考人(林省吾君) 県、都道府県及び政令市が設置されます場合は、先ほど御指摘がございましたように、総務大臣及び文部科学大臣の認可が必要と考えておりますが、市が設置いたします場合は、それらの権限が都道府県知事に委任されておりますので、知事の権限で足りるというふうに理解いたしております。
宮本岳志君 答弁になっていないですよ。
私は文書でもいただいているんです。なぜ文部科学大臣の認可を加えたかといえば、大学における教育研究の特性に配慮する仕組みが備わっているか確認する必要があるとあなた方ははっきり答えているじゃないですか。にもかかわらず、下関市立大学、都留文科大学、高崎経済大学、一般市の市立大学ならば全く文部科学大臣はかかわらないと。おかしいじゃないですか。どうやって教育研究の特性を確保するんですか。
政府参考人(林省吾君) 私が申し上げましたのは、本法案、地方独立行政法人法案に基づく認可はそういうことでございますけれども、別途、教育機関としての大学の設置認可という観点から、文部科学大臣が学校教育法に基づき認可をすることとなっております。
宮本岳志君 もうまともに答弁できないという状況じゃないですか。
私は、この法案、欠陥だと言うのはそこにあるんですよ。いいですか。これは、つまり教育研究の特性に配慮するためだといって、公立大学の定款は総務大臣とともに文部科学大臣も認可するという仕組みを作ったんです、あなた方は。しかし、本法案八十条は、総務大臣を総務大臣及び文部科学大臣と読み替えると、こういう書きぶりにしたんです。ところが、公立大学を他の地方独立行政法人と同じ第七条の一般規定で作るということにしたために、一般市の市立大学の定款は知事認可となってしまうんです。つまり、ここにもう、公立大学というようなものを国の独立行政法人通則法と同じような地方独立行政法人法案という枠に入れてしまうことの矛盾が現れているとはっきり指摘をせざるを得ません。
そこで大臣、先ほど大臣も、五年後には、五年を目途として見直すということもおっしゃいましたよ。私は、本法案は欠陥ですので、見直すのならば、見直すよりも本法案はやめるべきだとはっきり申し上げたいですけれども、五年後を目途にやっぱりこういった問題、きちっと見直すという気がおありであるのならば、せめて本法案を修正すべきだと私、思いますけれども、いかがですか、大臣。
国務大臣(片山虎之助君) これは、地方独立行政法人という法人格を持つ公法人を作るんですよ。だから、その認可を、都道府県や政令市レベルでは総務大臣と文部科学大臣ですか、教育については、やるんですよ。教育の中身はまた別途、今まである教育関係の法令でチェックするんですよ。
これは法人格を与える仕組みを作るための法律ですから、だから、それは政令市以下の普通の市町村レベルについては、都道府県知事が法令に基づいて、あるいは認可の基準に基づいて法人格を与えるかどうかを判断するんですよ。
それから、先ほども山下委員に言いましたように、法律が動き出して、運用上を見て、五年後には見直すということをちゃんと申し上げたわけでありますから、見直しの結果によって必要なことがあれば、当然、我々としても、国会にお諮りして中を変えていくということは十分あり得るわけであります。
宮本岳志君 確認しておきますけれども、文部科学省、文部科学省は、この下関市立大学等々、一般市の公立大学について教育研究の特性を図る上で定款に文部科学省がかかわるということが必要だと考えませんか、定款の認可に。
政府参考人(木谷雅人君) 先ほど総務省の方からお答えがありましたように、まず、教育機関としての大学の設置認可につきましては、学校教育法に基づきまして従来から文部科学大臣が行っておると、このことは変わらないわけでございます。
また、この法人の定款の認可ということにつきましては、文部科学省といたしましては、必要に応じ都道府県知事に助言を行うことにより、特例規定の適切な運用が担保されるように努めたいというふうに考えております。
宮本岳志君 大学についてはこういった重大なやっぱり問題が横たわっておりますので、現に文教科学委員会でも国立大学法人は二十一時間四十分に及ぶ質疑を尽くしているわけであります。お聞きしますと、なお本日、議了ということにはなっていないとお伺いをいたしました。
私は、この問題を本当に徹底審議を尽くして、現場の先生方の御意見もお伺いをして、今申し上げたような様々な問題をもっともっと議論を深めなきゃならない、そういう思いで今質問に立たせていただいております。
<法人化の如何に関わらず労安法は適用>
宮本岳志君 最後に、労働安全衛生法についてもお伺いしておきたいので、お伺いをしておきます。
まず確認ですけれども、公立大学が独法化されれば労安法の適用になるということは間違いないですね。
政府参考人(森清君) 労働安全衛生法の適用でございますけれども、これまでにも、現在も、公立大学にも労働安全衛生法は適用されているわけでございますが、地方独立行政法人化された場合も同様に適用されるということでございます。
宮本岳志君 この労安法の適用問題が国立大学法案でも大問題になっております。
国立では、来年四月一日をもって国立大学法人に移行ということで、この時点で労安法に基づく施設整備における教職員の健康、風紀、生命の安全保持などの改善措置ができるのかと、こういうことが議論されて、できなければ違法状態になるという指摘もされているわけです。文科大臣は、そういうことのないように努力して期日までに解決し終わっておくと答弁をされました。
これは、公立大学の場合は、公立の場合は一層深刻な問題だと思います。労安法ではどういう人が置かれなければならないか挙げてありますけれども、安全管理者、衛生管理者、産業医などの配置、そして労働者、労働組合の推薦されたメンバーを含む安全委員会の設置等々、相当な予算が必要となります。
そこで、総務大臣、仮に公立大学を法人化するという場合には、それまでにこの労働安全衛生法に基づく施設整備や改善措置が行われなければならないと私、思いますけれども、これは、大臣、よろしいですね。
国務大臣(片山虎之助君) 今、適用になっているんですよ。法人化するから適用になるんじゃないんですよ。今、公立大学は労働安全衛生法の適用があるんですよ。だから、その法律に基づいて違法状況にならないように一生懸命努力するのは当然であります。
それから、国立は、国立大学は全部、国立大学法人になるんですよ。これは義務的にやるんですよ。公立大学は選択してもらうんですよ。今の公立大学のままでよければそうやってもらうし、この法人になる方がいいと言えばそれを選択してもらうんですよ。国立大学だと、基本的にそこが違いますよ。
是非、御理解賜りますように。
宮本岳志君 選択であるということはだれも争いはないんですよ。しかし、そういう選択肢を作ることの是非をめぐって議論をしているんじゃないですか。しかも、地方財政をこれから絞り込んでいくという骨太方針が出ているじゃないですかと私は繰り返し指摘をさせていただいているわけであります。
先ほど、認可は覊束認可だと大臣はおっしゃいましたけれども、当然この認可に当たっては、労働安全衛生法のこういった基準についてもきちっと定めるということになるかと思いますけれども、こういう労安法の基準を満たすことがこの認可に当たって必要だということについてはよろしいですね。
国務大臣(片山虎之助君) 何度も言いますけれども、現在適用になっているんですよ、公立大学は。国立大学とそこが違うんですよ。国立大学は今度適用を受けるんですよ。公立大学はずっと受けているんですよ。法人になったから変わる必要はない。きっちりやるということですよ、法律に基づいて。
委員長(山崎力君) 時間ですので、手短に願います。
宮本岳志君 もう終わりますが、本法案は、効率化だけを目的に、本来自治体自身がやるべき仕事を自治体から切り出そうというものにほかならないと思います。選択肢の一つなどというのも、三位一体といって、結局地方財政を削り込もうという意図が既に明瞭になっている現在、全くのまやかしだと言わざるを得ません。さらには、国でさえ問題があるとしてきた、大学をその他行政機関の効率化と同列に並べて論じるという欠陥法案であります。このような法案は廃案以外にないということを申し上げて、私の質問を終わります。