156 – 参 – 本会議 – 45号 平成15年07月26日
平成十五年七月二十六日(土曜日)
午前零時十一分開議
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○議事日程 第四十五号
平成十五年七月二十六日
午前零時十分開議
第一 外交防衛委員長松村龍二君解任決議案(
輿石東君外九名発議)(前会の続)
第二 イラクにおける人道復興支援活動及び安
全確保支援活動の実施に関する特別措置法案
(内閣提出、衆議院送付)(前会の続)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
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議長(倉田寛之君) 宮本岳志君。
〔宮本岳志君登壇、拍手〕
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、ただいま提案のあった外交防衛委員長松村龍二君の解任決議案に対する賛成の討論を行います。
<派兵反対の世論を無視して採決を強行>
宮本岳志君 解任決議案に賛成する最大の理由は、イラク特措法の重大な問題が一層明らかになり、国民の反対の声が日増しに高まる中、野党各党が徹底審議を要求してきたにもかかわらず、松村君が与党の言うままに質疑を終局させ、混乱の中、採決なるものを強行した上、何と手続に瑕疵はないなどと開き直りの態度に終始していることであります。
このような松村君の態度は、公正中立の立場で委員会運営を行うべき委員長の職責に著しく反し、松村君が委員長の適格性を著しく欠いていることは明白であり、委員長の解任は当然だと言わなければなりません。
イラク特措法が極めて重大な法案であることは与野党共通の認識でした。だからこそ、松村委員長自身、運営協議の場で、しっかりした論議をしたい、十分に審議を尽くすと、何回も約束したのではありませんか。
我が党は、法案の重大性にかんがみ、冒頭から徹底審議を求めてまいりました。衆議院での質疑はわずか四十三時間。次々明らかとなる法案の問題点の解明にはほど遠いという状況の下で、徹底審議を行い問題を解明することこそ、参議院外交防衛委員会の責務であることは全く明白ではありませんか。
ところが、本日の締めくくり質疑を含んだとしても、本院における委員会の質疑時間はわずか三十一時間にしかなりません。しかも、その内容たるや、戦闘が多発しているイラクの一体どこが政府の言う非戦闘地域に当たるのかというごく基本的な問題でさえ、政府は法案成立後に調査を行い決めるのだなどと言うばかりで、いまだにまともな説明すらできないのであります。
これ以外にも、いかなる安保理決議でも米英軍には正当性が与えられていないという問題、自衛隊がイラク国民に銃口を向けることになるという問題、米英両政府による情報操作の疑惑とイラク戦争の大義が揺らいでいる問題、小泉首相がイラクは大量破壊兵器を保有していると断定した根拠をめぐる問題等々、全くまともな答弁すらできないことばかりだったではありませんか。我々野党が徹底審議を求めたのは当然のことだったのであります。
ところが、外交防衛委員長松村龍二君は、野党の徹底審議の要求や日増しに高まる国民のイラク派兵反対の声を無視して、衆議院の七割、三十時間を超す審議を行った、公聴会も行ったなどと開き直り、採決なるものを当然とする態度を取ったのであります。公正で民主的な運営を旨とし、慎重な審議に責任を負うべき委員長の職務に照らして、松村君の委員長解任は余りにも当然だと言わなければなりません。
特に許すことができないのは、与野党の意見の対立を誠実、真摯な協議で解決するというのではなく、一方的に委員長職権で処理するという非民主的なその手法であります。また、総括質疑が終わったばかりだというのに早くも公聴会を提起し、会期も迫っているので協力してほしいなどと述べ、十八日の委員会では採決によって強引に公聴会の開催を決定するということまで行いました。
しかも、我が党理事が、与党が提案した二十二日の締めくくり質疑、討論、採決に反対し、野党一致の要求である徹底審議を要求するや、突如大きな声を発して我が党理事の発言を封じる態度にさえ出たのであります。委員長の役割は、与野党の主張を調整することにあるのであって、与党の立場で野党を批判するなどというのは全く委員長としての資質にさえ欠けるのではありませんか。このような品性を欠いた松村龍二君は解任されて当然であると言わざるを得ないのであります。
<憲法違反のイラク派兵を許さない決意>
宮本岳志君 そもそも、この法案は、戦後初めて、いまだに戦闘が行われているイラクに自衛隊の地上部隊を派兵し、米英占領軍の支援を行うという希代の違憲立法であります。
イラクでは、その全土で戦闘が頻発し、毎日米兵が襲撃され、死亡しています。そのイラクに自衛隊を派兵すれば、自衛隊員の生命が危険にさらされることは明らかであります。防衛庁長官が、イラクの現状について、法的には戦争状態の継続と答弁しましたが、実態もまた戦争の継続状況にあります。
アビザイド・アメリカ中央軍司令官は、米軍はイラク全土で典型的なゲリラ戦闘を実施している、それは戦争だと述べました。そんな戦争状態のイラクのどこに非戦闘地域などがあるというのでしょうか。昨日まで安全であった地域が今度は戦闘地域に変わるのが今のイラクの現状です。それを、小泉総理は、何と、私に分かるはずがないではないかとまで言い放ちました。こんな政府のいい加減な説明で自衛隊を派兵するなどというのは、全く言語道断だと言わなければなりません。
さらに、米英の戦争も、それに続く米英の軍事占領も、国連安保理が何ら正当性を与えない国連憲章違反の行為であることもまた明白であります。だからこそ、米英、特に米軍に対して、フセイン政権やバース党の残党だけではなく、一般の国民からも反感や憎悪が強まり、抵抗運動も広がっているのであります。
質疑を通じて、自衛隊が米軍が行っている砂漠のサソリ作戦やガラガラヘビ作戦などとおどろおどろしい名前を付けた掃討作戦に支援することがあり得ることも明らかになりました。これでは、自衛隊に対してもイラク国民の抵抗運動の矛先が向けられることとなるのは必至と言わなければなりません。こうした問題の解明も全くなされないまま、質疑を打ち切り、採決を行うなどというのは全く言語道断であります。
米英の軍事占領に対する自衛隊の支援問題もこれから究明しなければならない重大問題でありました。政府は、日本がイラクと交戦したわけではないから支援は問題ないなどと説明してきました。しかし、これはごまかしであり、強弁にすぎません。
衆議院の参考人として公述した国際法専攻の松田大阪市立大学教授は、交戦国かどうかはイラク攻撃に参加したかどうかという過去の実績だけで決まるわけではない、他国が軍事占領を行っている場所へ行って、その占領の継続に役立つ行動を行えばその国も交戦国になる、安全確保活動はもちろん、給水や食料の輸送であっても、占領の実効性、継続を支援する行動はすべて交戦権の行使に該当すると述べています。
日本国憲法が交戦権を放棄していることは今更言うまでもありません。同時に、他国の軍事占領に対して自衛隊が支援するなどということを憲法は想定すらしていません。したがって、この問題も憲法上の問題として十分な審議が必要でありました。しかるに、松村君は法案の審議を打ち切り、採決を強行したのであります。松村龍二委員長の責任は誠に重大だと言わなければなりません。
以上が松村君の外交防衛委員長解任決議案に対して賛成する理由であります。
イラク戦争は、戦争の口実とされた大量破壊兵器が発見されるどころか、うその情報で戦争に誘導したという情報操作疑惑が当の米英で大問題となっています。それにもかかわらず、小泉内閣は、ブッシュ大統領とアメリカ政府の言いなりに、自らの説明すら矛盾や破綻が明らかになる中で、国民の声に一切耳をかさず、あくまで自衛隊のイラク派兵に固執し、イラク国民に銃口を向けさせようとしているのであります。
我が日本共産党は、たとえ無法なやり方でこの法案が強行成立させられたとしても、自衛隊のイラク派兵を断固阻止する決意を表明して、松村龍二君の外交防衛委員長解任決議案に対する賛成討論といたします。(拍手)