159 – 参 – 本会議 – 8号 平成16年03月12日
平成十六年三月十二日(金曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第八号
平成十六年三月十二日
午前十時開議
第一 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指
名
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一
一、平成十六年度における財政運営のための公
債の発行の特例等に関する法律案及び所得税
法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
一、国務大臣の報告に関する件(平成十六年度
地方財政計画について)
一、地方税法及び国有資産等所在市町村交付金
及び納付金に関する法律の一部を改正する法
律案、所得譲与税法案及び地方交付税法等の
一部を改正する法律案(趣旨説明)
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<補助金・交付税削減で自治体に悲鳴>
宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました地方財政計画外三法案について、総務大臣並びに関係大臣に質問いたします。
今、各地の地方自治体の現場で、これでは予算の編成ができないという悲鳴に近い声が上がっています。それは、政府が三位一体改革の名の下に、補助金一兆円の削減とともに、地方交付税を一・二兆円、臨時財政対策債を一・七兆円削減するなど、国から地方への財政支出を総計で四兆円近くも減らしたからであります。一方で、地方に移譲される財源はたったの四千五百億円、削減額のわずか一二%にしかなりません。
麻生総務大臣は、三位一体改革の基本方向として、第一に地方に信頼され、地方が元気になる改革、第二に自主財源を拡充する改革、第三に地方の自由度を拡大する改革でなければならないとしましたが、自治体の財源を三兆五千億円も減らしておいて、どうして地方が元気になるとか、地方の自由度を拡大する改革などと言えるのですか。総務大臣の明確な答弁を求めます。
政府は、交付税の財源保障機能が自治体のモラルハザードを招いたなどとまで言って、地方交付税の削減を進めています。しかし、無駄な公共事業の裏負担と単独事業の押し付けで自治体財政を破綻へと導いたのは、ほかならぬ政府自身ではありませんか。国の責任である財源保障に背を向けることこそ、モラルハザードそのものではありませんか。答弁を求めます。
そもそも小泉内閣の三位一体改革は、地方への補助金削減ができるならばその中身は何でもいいという、極めて無責任なものであります。例えば、一兆円の補助金削減の方法も、各省庁別の枠を決めて割り当てるというやり方です。その結果、厚生労働省は削減のノルマ消化のために、当初、生活保護費の国庫負担率の引下げを行おうとし、これには地方団体から、憲法二十五条の生存権保障を切り捨て、国の責任を放棄するものだとのごうごうたる批判が寄せられました。この批判の下で、今度はそのしわ寄せ先を保育分野に押し付けたのであります。この一つを見ただけでも、小泉内閣の三位一体論には何の理念もなく、補助金が削減できるならば中身は何でもいいということを示しているではありませんか。
政府は、このような三位一体改革で地方の権限と責任が拡大すると言いますが、これでどうして地方の権限と責任が拡大するのか、国民が納得できる明確な答弁を求めます。
また、公立保育所運営費負担金の一般財源化も、極めて問題が大きいものです。
政府・与党協議会の了解事項では、民間保育所に関する国の負担については今後とも引き続き国が責任を持って行うものとするとされています。民間保育にかかわる国庫負担を今後も国が責任を持って行うのは当然です。ところが、政府は、公立保育所の運営費負担金を一般財源化し、これを人口によって配分する所得譲与税に置き換えようとしています。結果として、多くの減額される市町村が生まれます。これでは国の責任を果たすことにはなりません。
公立の保育所については国が責任を持たなくてよいのですか。厚生労働大臣の明確な答弁を求めます。
私は、先日、地元大阪の公立保育所関係者からも意見を伺ってまいりました。今、保育の現場では、公立保育所運営費負担金の一般財源化が公立保育所の民営化や民間委託化に一層拍車を掛けるのではないかという不安の声が広がっています。また、民間保育所の経営者らで作る社団法人全国私立保育園連盟も、民間保育園にも大きな影響を及ぼすとの立場から、反対を明らかにしています。
公私の区別なく現場に広がるこうした反対の声に、厚生労働大臣はどう答えるのですか。答弁を求めます。
義務教育にかかわる補助金の削減も重大です。今年度の二千三百億円の一般財源化に続いて、来年度は退職手当と児童手当分の二千三百億円が交付金に切り替えられます。その結果、人口に応じた配分となり、過疎地を抱える地方では財源不足になることが指摘されています。都市と農村の格差が一層拡大するのです。このようななし崩しのやり方で義務教育にかかわる制度を掘り崩していくことは、断じて許されません。
義務教育を受ける権利をあまねくすべての児童に保障することへの国の責任を、文部科学省はどのように考えているのですか。このような義務教育費国庫負担金の部分的な一般財源化が続けば、やがては義務教育費に対する国の責任の放棄につながるのではありませんか。文部科学大臣の答弁を求めます。
<弱者をねらい打ちする地方税の増税>
宮本岳志君 次に、公共事業関係費の補助金削減についてです。
無駄な大規模プロジェクトなどに思い切ったメスを入れるのは当然ですが、地方自治体が行う公共事業は、身近な生活道路や学校、病院、老人ホームなどの建設も含まれています。生活関連の公共事業は地域経済や雇用にとっても重要な役割を果たしており、むしろ増やすべきものが多くあります。ところが、これらの公共事業関係の補助金は三千億円削減され、地方交付税の投資的経費も一兆四千億円減らされました。私が訪ねた大阪のある自治体では、学校の大規模改修の見送りや、人口増によって必要な小学校の建設計画まで見直さざるを得ない事態になりつつあります。
その一方で、関西空港二期事業を続けるばかりか、明らかに無駄が指摘されている四本目の本四架橋、紀淡海峡道路などは計画さえ見直そうとしないではありませんか。
正に増やすべきものは削り、逆に削るべきものには一切手を付けない、これでは明らかに本末転倒ではないのですか。財務大臣の答弁を求めます。
政府は、三位一体改革なるものを、地方自治体からの税源移譲の要求を逆手に取って進めようとしています。しかし、来年度の予算案と地方財政三法案を見る限り、税源移譲は全く絵にかいたもちになっていると言わざるを得ません。所得譲与税や税源移譲予定特例交付金は臨時的な措置だとされていますが、一体、国庫補助負担金、交付税の削減に見合う税源移譲が期待できるのですか。平成十八年度までに国庫補助負担金と交付税の削減に見合う税源移譲ができるのかどうか、財務大臣の責任ある答弁を求めます。
最後に、地方税の改正について質問します。
地方税の改正項目は今年も多岐にわたっていますが、老年者控除の廃止による平年度の国民負担増一千億円、国税の公的年金等控除縮小の影響額は四百億円余りなど、その中心は個人住民税の増税にあります。これは、特に高齢者に大きな負担増をもたらす許し難いものです。さらに、個人住民税の均等割の引上げも、低所得者への配慮を欠いたものであり、弱い者いじめそのものだと言わなければなりません。
橋本内閣の経済失政以来、個人の懐を痛め付け、消費の低迷を招いてきた自民党政府の経済失政がこの深刻な不況を出口のないものにしてきました。今回の弱者ねらい撃ちともいうべき地方税の増税が国民の消費を更に冷え込ませ、日本の経済に一層の打撃を与えるという認識が総務大臣にあるのかどうか、答弁を求めるものであります。
私は、自治体がその本来の責務を担うために必要な税財源の移譲を国の責任で行うこと、同時に、自治体の財政再建により自治体としての自主性を文字どおり確立し、住民が主人公と言える地方政治をしっかり作ることこそ真の改革だということを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
<自治体の財源保障は国の責務と答弁>
国務大臣(麻生太郎君) 宮本議員から四問ちょうだいをいたしました。
まず、三位一体の改革の基本方針についてのお尋ねがあっております。
平成十六年度は、国庫補助負担金につきましては一兆円の廃止、削減を行い、そのうち、引き続き実行する、実施する必要にあるものにつきましては所得譲与税等により財源措置をいたしております。これにより、地方の自由度が拡大する改革になったと考えております。
また、地方交付税等が減少したのは、非常事態ともいえる地方財政の状況を考え、経済財政健全化を進めるためには歳出を厳しく見直したためであります。ただし、行政サービスに必要な財源は確保いたしております。
今後とも、地方の自由度を拡大し、地方が元気となるよう、三位一体改革は進めてまいりたいと思います。
次に、地方の財源保障に関する国の責任についてのお尋ねがあっておりました。
国が地方団体に多くの事務を義務付けている我が国におきましては、地方が必要とする財源を保障するのは国の責務であります。今後とも、この基本方針は堅持いたします。
三番目に、公立保育所国庫負担金の一般財源化と地方の権限拡大についてのお尋ねがあっております。
今回、公立保育所運営費負担金を一般財源化をいたしております。このことによって、例えば地方団体は、これまで国庫負担の対象とならなかった駅前保育所等々施設も設置しやすくなっております。これにより、住民ニーズに応じた多様な保育行政が展開できるようになっております。
最後に、地方税制改正についてのお話がありました。
今回行います年金課税の見直しは、世代間及び高齢者間の税負担の公平を確保するために行おうとするものであります。その際、標準的な年金以下で暮らしておられる高齢者世帯に新たな負担を求めることはありません。また、個人住民税の均等割につきましても、所得金額が一定金額以下の方々からは引き続き税負担を求めません。このように、高齢者、低所得者に対しては十分配慮いたしておると考えております。(拍手)
〔国務大臣坂口力君登壇、拍手〕
国務大臣(坂口力君) 宮本議員にお答えを申し上げたいと思います。
保育所についてのお尋ねでございますが、先ほど広中議員にもお答えをしたとおりでございまして、公立保育所につきましては、自治体の条例によりまして設置をされた施設であり、その管理運営責任は地方自治体にあること、その職員は基本的に地方自治体の職員であること、これらのことから、運営費の一般財源化を行っても必要な財源が自治体において確保されるものと考えております。
∴齦禔A民間保育所につきましては、施設の管理運営責任やその職員に対しまして、公立の施設とは異なっておりますことから、政府・与党合意にも基づきまして、民間保育所に関します国の負担につきましては、今後とも引き続き国が責任を持って行うものとしているところでございます。(拍手)
〔国務大臣河村建夫君登壇、拍手〕
<関空2期にも紀淡海峡道路にも無反省>
国務大臣(河村建夫君) 宮本岳志議員から二件質問をいただきました。
第一点は、義務教育を受ける権利をすべての児童生徒に保障する責任についてお尋ねでございました。
義務教育費国庫負担制度は、国の責任によって一定の教育条件を保障する制度であり、これによって地方公共団体の財政力の格差にかかわらず全国すべての地域において優秀な教職員を必要以上確保して、教育の機会均等と教育水準の維持向上が図られておるところであります。
今回の改正は、昨年六月の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」等を踏まえて、義務教育費国庫負担金について、義務教育に関する国の責任を適切に果たしつつ、義務教育に関する国と地方の役割分担及び費用分担の在り方の見直しを図る観点から、国庫負担の対象経費を国が真に負担すべきものに限定するために、退職手当及び児童手当に要する経費を国庫負担の対象外とするものであります。
もう一点は、一般財源化が続けば義務教育に対する国の責任の放棄につながるのではないか、こういうお尋ねでありますが、義務教育費国庫負担制度については、地方の自由度を高めるという観点から、必要な見直しは行いながらも、義務教育について国の責任を果たすことが大事であると、このように考えております。
このために、義務教育の機会均等と、その水準を確保する国としての責任を果たすという制度の根幹を堅持するんだという観点に立って適切に対応してまいります。(拍手)
〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
国務大臣(谷垣禎一君) 宮本議員にお答えいたします。
まず、公共事業の補助金についてのお尋ねですが、国庫補助負担金については、地方の権限と責任を拡大するとともに、国、地方を通じた行政のスリム化を行うという観点から、廃止、縮減等を行う補助金改革を進めておりますが、公共事業についてもこういった観点から、十六年度予算において約三千二百億円の補助金のスリム化を図っております。しかし、それと同時に、地方の自主的な取組による全国の都市再生を支援しようということで、まちづくり交付金を創設するといった地域経済の活性化にも意を用いております。
それから、地方財政計画における投資単独事業につきましては、国の補助事業の削減状況や、それから投資単独事業の実際の執行額が計画額を大きく下回っているということを踏まえて削減したものであります。
関西空港につきましては、十六年度に第二期事業の用地造成を予定しておりますけれども、今後、供用開始に必要な施設の整備については、需要動向や会社の経営状況などを見つつ行うということにしております。
それから、紀淡海峡道路については、関係省庁と協議しながら、その必要性を十分慎重に判断して検討してまいりたいということでございます。
それから、税源移譲についてのお尋ねがございました。
基本方針二〇〇三で、税源移譲は、廃止する補助金の対象事業の中で引き続き地方が主体となって実施する必要のあるものについて行うということにしておりますが、十六年度は、こういう原則の下で、補助金改革一兆円のうち、事業が引き続き地方に残るものについて所得譲与税と税源移譲予定特例交付金によって財源を手当てしておりますが、今後、十八年度までに、補助金改革と併せて、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を確実に実行してまいりたいと考えております。(拍手)