159 – 参 – 総務委員会 – 12号 平成16年04月15日
平成十六年四月十五日(木曜日)
午前十時一分開会
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委員の異動
四月十三日
辞任 補欠選任
日笠 勝之君 草川 昭三君
四月十四日
辞任 補欠選任
山下 善彦君 野沢 太三君
高橋 千秋君 佐藤 雄平君
草川 昭三君 日笠 勝之君
四月十五日
辞任 補欠選任
野沢 太三君 有村 治子君
佐藤 雄平君 高橋 千秋君
谷林 正昭君 岩本 司君
内藤 正光君 小川 勝也君
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出席者は左のとおり。
委員長 景山俊太郎君
理 事
柏村 武昭君
岸 宏一君
山崎 力君
小川 敏夫君
広中和歌子君
委 員
有村 治子君
狩野 安君
片山虎之助君
久世 公堯君
椎名 一保君
世耕 弘成君
吉村剛太郎君
岩本 司君
小川 勝也君
高嶋 良充君
高橋 千秋君
松岡滿壽男君
渡辺 秀央君
鶴岡 洋君
日笠 勝之君
八田ひろ子君
宮本 岳志君
又市 征治君
国務大臣
総務大臣 麻生 太郎君
副大臣
総務副大臣 山口 俊一君
政府特別補佐人
人事院総裁 佐藤 壮郎君
事務局側
常任委員会専門
員 藤澤 進君
政府参考人
人事院事務総局
人材局長 藤野 達夫君
人事院事務総局
公平審査局長 潮 明夫君
総務省自治行政
局公務員部長 須田 和博君
厚生労働大臣官
房審議官 大石 明君
厚生労働省雇用
均等・児童家庭
局長 伍藤 忠春君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○地方公務員法及び地方公共団体の一般職の任期
付職員の採用に関する法律の一部を改正する法
律案(内閣提出)
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<大臣が人質家族の心情を無視した答弁>
宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
冒頭一問、通告していないことを大臣いらっしゃいますのでお伺いをしたいと思うんですね、大臣ね。
大臣は、十三日の閣僚会議後の記者会見で、この今のイラクにおける三人の人質事件、そしてその御家族の問題について、何だか知らないけど、イラクの話を北海道東京事務所でやっている、不思議に思わないかと、こうお述べになったと。これに対して、直ちに高橋はるみ知事は、十三日、記者会見で、私も子を持つ母であり、家族のいろいろな気持ちは理解できる、できる限りのお手伝いしたいのは我々の気持ちだと家族を気遣ったと、こう報じられておるんです。
それで、大臣の御発言の後から、相当やっぱり北海道庁にはメールやファクスでいろんな声が届いていると。もちろん、このことについて声を上げることはあっていいことだと思いますけれども、中には差出人不明の誹謗中傷の封書が被害者の実家に届くとか、あるいは死ねというような嫌がらせ電話が掛かるとか、こういう事態にまで発展していると報じられているわけです。
大臣もまさかそういうようなことを想定して、そういうことをあおろうとしておっしゃったわけじゃないと思うんですけれども、こういったことが今現に行われているということについて、それはやっぱりよろしくないと、そういう嫌がらせだとかそんなことは本意でないと、これは大臣も間違いないと思うんですけれども、いかがでしょうか。
国務大臣(麻生太郎君) この話は、私、その北海道東京事務所の隣なんです、うちの事務所は。えらく迷惑しております。はっきり申し上げて、道路は全く遮断、全然通れない。そこに通っております人方は、もうほとんどマスコミで埋まっておるんです。物すごい数。で、私は、首都高に抜けられないために、ずっと遠回りしていかにゃいかぬということに毎日なっております、私の実態といたしまして。これを、私の置かれております状況でありますから、少なくともこの方の所属しておられるNPOとか、これらの方々を支援しておられる団体が何らかの面倒を見られるとか、外務省が何とかされるというのは分かりますよ。何で北海道東京事務所なのかというのが私にとっては正直疑問だったから、何で北海道東京事務所なんですかねと申し上げて、別に不思議なことは何もないんじゃないでしょうかね。
それをどうとらえるかまで分かりませんけれども、私のところにも同じように、おまえは血も涙もないみたいなファクスは一杯来ましたよ、毎度のことですけれども。そういうのはよく来ますんで、私の方はその種のファクスに慣れておりますので、ファクスの紙代は向こうに持ってもらうと助かるんですけれども、紙代はこっち持ちなものですからいつもたまらぬなと、正直思っております。
宮本岳志君 これは被害者の方が、北海道の方がいらっしゃるから知事がそういう措置を取っておられると思うんですね。是非、その御発言の結果、やっぱりそういうことも現に起こっているわけですから、今後是非お気を付けいただきたいというふうに私は思っております。
<民間企業で不安定就労が拡大している>
宮本岳志君 さて、そもそも今回の改正案ですけれども、一九九九年の地方公務員制度調査研究会報告をベースにして、昨年既に作成されておりました地方公務員法改正案のうち、能力等級制に係る部分を外して法案化したものというふうに思います。そして、地方公務員の任用・勤務形態の多様化ということが言われているわけですけれども、私は、今回の法案は、地方公務員の一般職にまでこの間に大問題になってきた有期雇用契約を拡大しようというもので、到底認めることはできないと考えます。昨年、労働基準法の改悪というのがやられましたが、正にこの点が激しい議論になったわけであります。
今日は厚生労働省に来ていただいておりますが、まず確認をさせていただきたい。昨年六月十二日、参議院厚生労働委員会で我が党の小池議員が、三年有期労働契約の導入は常用代替を促進するものではないかと、こう質問したのに対して、坂口厚生労働大臣は、今はパートやアルバイトという不安定雇用を三年任期とはいえ正規労働者に置き換えるものであって一歩前進だと、しかし、その先にさらに常用雇用の方向に向けて流れを作っていくのが厚生労働省に課せられた仕事だと、こう答弁をされておりますけれども、間違いないですね。
政府参考人(大石明君) ただいま委員御指摘のように、当日の坂口厚生労働大臣は、今フリーターと言われる人が増えてきている状況の中で、パートやアルバイトを少なくとも三年あるいは五年の正規の職員にという方向で新しい働き方を認めて、そしてできるだけ常用雇用の方向に向けた流れを作っていくことが我々に課せられた仕事であると思っておりますといった旨の答弁をいたしております。
宮本岳志君 改悪労基法は今年一月の一日から施行されました。
今日は、新宿労基署が行った改正労基法への対応及び健康管理対策に関する調査、この調査結果を資料の一と二に付けてございます。新宿、中野、杉並、三区内の百人以上の事業場を中心とする一千四十六事業場を対象に調査を行ったと。五百十三事業場から回答を得ております。驚くべきことに、現在、有期労働契約者の雇入れがあると答えたのは八五・六%、ないはわずか一四・四%です。そして、今回の法改正で上限期間が三年に延長されたが、現契約の契約期間の延長を考えているかとの問いに早くも二〇%が延長を検討していると答えております。
また、日本IBMは、今年二月から幹部社員らを対象に有期雇用契約を導入。新プロフェッショナル人事制度と称して、当初は三年契約、その後毎年更新する有期雇用契約と一年ごとに更新する準業務委任契約の二種類で構成されるというもので、約二千人がその対象となっております。
それで、厚生労働省にお伺いするんですけれども、昨年の答弁では常用代替を進めるものではないと繰り返し答弁されたわけですけれども、実態は我々が指摘したとおり常用代替が大手を振ってまかり通っていると思うんですが、いかがですか。
政府参考人(大石明君) 委員御指摘のように、改正労働基準法、本年一月から施行されたばかりのところでございます。
今御指摘のありました新宿監督署のアンケート調査、事業主に対するアンケート調査によりましても、これは法の施行前のアンケート調査ということで、事業主もまだ状況が必ずしも分かってない中での意向の表明かと思いますけれども、そうした中で、現行のままとし、延長は検討しないというものが三分の二等々からそういったこともうかがえるわけでございますが、いずれにいたしましても、人を雇うということというのは各企業の言わば総合戦略、経営戦略の一環でございます。そうした中で、どういう人をどういう形でどのぐらい雇うかということというのは非常に総合的に決められていくものというふうに考えております。
有期契約の上限が三年に延ばされたということによって直ちに個々の企業において常用労働者から有期契約労働者の方に移っていくという状況では必ずしもないというふうに考えております。
いずれにいたしましても、今後、有期労働契約の契約期間の上限の延長に伴う問題につきましては、昨年の基準法案の質疑のときに附帯決議で指摘されておりますけれども、トラブルの状況というものを、発生について、その状況の把握というものに今後努めてまいりたいというふうに思っております。
宮本岳志君 三分の二が考えていないと答えていると先ほどおっしゃったけれども、その理由は事情変更に伴う中途解約のリスクがあるためだということで、時期が来ればということでもありますし、IBMの二千人というのは、全社員二万人ですから一割に達するわけなんですね。私は、あなた方が言うようにそれが影響ないというふうには決して言えないと思います。
<短期任用でも正規の職員と同等の職務>
宮本岳志君 それで、今回、正に公務員にもこういう任期付採用と、つまりは三年有期契約というものを持ち込むという法案が出されてまいりました。私の地元大阪でも、太田府知事は関経連など経済団体に、高校新卒者の正規雇用について申入れや要請を行っております。それが十分かどうかは別として、地方自治体にとってその地域の新卒者の就職難というのは深刻な問題であります。大阪など大都市では相手は経済団体なんですけれども、地方都市に行くとそれこそ一層問題は具体的で、顔が見える話になってまいります。地方都市では市町村長さんが地元の高校の新卒者の就職について、その地方の企業に対して、是非きちんと正社員や常用雇用で雇ってやってくれと、こういうふうに繰り返し要請をされている、そういう御苦労をいただいているというふうにも私、聞いているんですね。
ところが、今回、地方公務員の一般職職員にまでこのような三年任期という有期雇用を導入すれば、正にその町長さん、あなたのところも国が旗を振ってやっているじゃないかと、これでうちも大手を振って三年任期の雇用社員でやらせてもらいますよということになるのではないかと。これではまるで公務から常用雇用の代替を奨励するような結果になるのではないかと私は思いますが、これは総務省、いかがでしょうか。
政府参考人(須田和博君) 今回の任期付採用法の改正に当たりましても、基本的な考え方としまして公務の中立性の確保、職員の長期育成を基礎とする公務の能率性の追求、こうした観点から、公務の運営は任期の定めのない常勤職員を中心として行われるべきであると、この基本的考え方は変わるものでないと考えております。
ただ、一方で、地方公共団体におきまして公務の能率的運営の観点から、その職あるいは業務が一時的又は時限的なものであり、任期の定めのない職員によって対応するものであるために、その常勤の職員をそのまま充てると必ずしも効率的でないと、こういうふうな場合も考えられるということで、任期を定めた常勤の職員の採用についての要望等あったところでございます。
したがいまして、今回の新たな任期付採用制度は、このような地方公共団体におけるニーズを踏まえまして、任期の定めのない常勤職員による公務の運営はこれは基本としつつも、一定の期限を要する、一定の、特定の業務に対しまして、こういったものに従事する場合に限って任期付採用を可能とするものでございます。
宮本岳志君 その今回新たに設けられる三年任期の一般職職員というのは、しかしこれは従来の臨時職員とは違って本格的業務、これに就くものとされております。ということは、つまりは任期のない一般職職員と同じ仕事ができると、つまりこういうことですね。
政府参考人(須田和博君) 今回の新たに設けられる任期付職員でございますけれども、一定の期間におけます特定の業務に関して、任期の定めのない常勤職員と同様の本格的な業務を行うことが可能になるというものでございます。
宮本岳志君 これまで作られてきた研究職の任期付職員や外部の専門家を対象とした制度と違って職種の限定はないわけであります。したがって、例えば保育所を三年後民営化するとか、公民館の運営を三年後指定管理者制度に移行するとか、そういう方針を立てれば、当該の保育所や公民館はこの制度の適用対象となる。任期のない一般職員が行っているのと同じ職務を任期付職員が担うということになってまいります。
<給与は正規職員より低くなると想定>
宮本岳志君 そこで、これも総務省にお伺いしますけれども、任期付職員の給与水準はどのようなものになると想定しているのか。もう一問、任期付職員の俸給表にもそれぞれの市町村の人事委員会の勧告によって適正な水準が確保されるのか。この二つについてお答えいただけますか。
政府参考人(須田和博君) 新しい任期付職員の給与水準についてでございますが、これは任期の定めのない常勤職員と同様、職務と責任に応じ、また国、他の地方公共団体の職員、民間事業者の給与などの事情を考慮して定められるべきものと考えております。
ただし、この任期付職員は、一定の任期の下、特定の職務に就くことを前提として採用されておりますので、任期の定めのない常勤職員と比して、おのずとその給与水準に違いは出てくるものと考えております。
いずれにしましても、その具体的な給与水準につきましては、各地方公共団体におきまして、当該職員の就く職務を念頭に、職務と責任の度合いを判断して決定されるべきものと考えております。
宮本岳志君 もう一問、給与勧告。
政府参考人(須田和博君) 失礼いたしました。
人事院勧告の関係につきましては、この新たな任期付職員の給与につきましても、任期の定めのない常勤職員と同様、基本的には人事委員会の勧告の対象事項でございまして、これにより適正な水準が担保されるものと考えております。
宮本岳志君 この任期付職員も労働基本権の制約を受けるわけでありますから、勧告の適用は当然だということになろうかと思います。
ただ、冒頭おっしゃったように、給与の水準は要するに低い、低くなることを想定していると、こういうことでありますし、しかし私は、この制度というのは自治体の本格的業務を担うということがあなた方から繰り返し説明されているわけですよね。つまり、任期の定めのない職員と同様の職務に就くわけであります。それで、一定期間内に終了するとか業務の増加が一時的だというのは、それはその職務の質の、内容の問題じゃなくて、雇う側の都合といいますか、つまり何年後にその職場をどうこうするとか、こういう話でありますから、任期の定めのない正規の職員、例えば保育所であれば保育士と何の仕事の中身に違いもないわけですね。
同一の仕事をするのであれば、当然任期の定めのない正規の自治体職員と同等の給与水準が保障されるべきだと、私はこう自然に思うんですけれども、そうならないのはどういう理由ですか。
政府参考人(須田和博君) 繰り返しになりますけれども、今回のような形で任期を付けた常勤職員ということでございますので、一般の任期の定めのない常勤職員におきましては、全体のキャリアローテーションという中で様々な仕事を経験したりしながら、またそういうふうな過程でその成熟度なども高めながら地方行政に貢献することを想定しておりますが、この任期付きの者は、あくまで一定期間に特定の者、それがその時期だけ増えてくるというものでございますので、その仕事にそのまま対応する者として、そういった職務に対応するような者として給与が決定されるのが適当ではないかと考えているところでございます。
宮本岳志君 多様な任用形態とか行政のニーズとおっしゃるわけですけれども、結局は自治体の本格的業務にまで安く、いつでも要するに任期付きで首の切れる不安定な労働力を導入しようというものにほかならないと思うんですね。そういうことを進めていくとどういうことが起こるかということで、一例を挙げたいと。
<職員の身分保障が個人情報保護に重要>
宮本岳志君 この調査室の資料によると、この法案提出の経緯の中に構造改革特区の問題が出てきております。それで、私の地元堺市では、正に、さかいバリュアブル・スタッフ特区というものが認定されているわけですけれども、これはまず公務員部長、承知していただいていますね。
政府参考人(須田和博君) はい。堺市で、さかいバリュアブル・スタッフ特区としまして、構造改革特別区域法に基づき、地方公務員の臨時的任用事業としまして平成十五年十一月十八日に認定されているものと承知しております。
宮本岳志君 堺市当局は、昨年度の職員の新規採用を全く停止する一方、昨年二月五日、突如としてバリュアブルスタッフなる制度の導入を発表しました。
これは、従来のアルバイトと同等の賃金で正職員に準じた仕事を行うというものでありまして、従来、正規職員が担ってきた合併問題、危機管理、国際交流、生活保護受給者自立支援、DV対策、児童虐待対策、税務徴収体制強化などの業務に職員とともに従事していただく方だとされていると。正に本格的業務ですね。
それにもかかわらず、この募集要項、今日はお付けしたんですが、資料の三と四に付いていますけれども、賃金、日額五千六百円と、こうなっているんです。資料四、バリュアブルスタッフの賃金、日額五千六百円、勤務時間は八時間ですから時給七百円と。この前、私、大阪の駅前でチラシ配りをしている学生に聞いたら、時給千円からですと言うていましたから、これは学生アルバイト以下の勤務条件で、今ずらずらと申し上げたような、危機管理に至るまでの自治体の本格的業務をやらせようという話になってきているわけですね。
これは総務大臣に、経営者ですから、総務大臣は、一方で、お伺いしたいんですが、こういう雇い方で、しかも本格的業務をやらせるということについて、大臣はどのようにお考えになりますか。
国務大臣(麻生太郎君) 一番最初に、私、この話よく詳しく知りませんけれども、それが本当にバリュアブルかどうかが問題ですな、一番の問題は、と思いました、最初聞いて。それは堺市にとりましてもそちら側にとっても、名前はえらくいいけれども、この名前の英語の意味が分かって使っておるのかなというのは正直な、今、話を伺ったときの感想なんですけれども。
いずれにしても堺の場合のあれなんで、いろいろ、特区関係でいろいろ考えられたうちの一つなんだとは思いますけれども、まあ臨時的採用というものを特区制度の中に活用しようとしたというところはそれなりに分からぬことはありませんけれども、こういうのは、宮本先生、これは結果が出てこぬと何とも言えぬところで、今の段階でちょっとどうだこうだというのは、ちょっと正直、現場を見ておらぬし、内容を余り詳しく知りませんので、どう思うかと言われると、ちょっと結果次第としか言いようがないかなというのが正直なところです。
宮本岳志君 そういうことをやっていくとどういう話になっていくかと。堺で大問題になったのは、税務職場なんですよ、このバリュアブルスタッフをめぐって。
昨年四月の採用を当初百人と見込んでいたんですが、七人は税務署へ配属を予定していたと。しかし、税務の職場は自治体の住民の極めてナイーブな個人情報ですね、取り扱うと。堺市の職員団体は直ちに、短期臨時職員を徴税吏員として任命するなどというのは地方税法に違反する暴挙だと抗議をして、さすがに税務職場の管理者も含めてこれはちょっとまずいなということになり、市長に撤回を申し入れた結果、少なくとも税務の職場にはバリュアブルスタッフの配置はしないということになりました。
徴税業務だけではないんです。バリュアブルスタッフの配属先には生活援護部門とか家庭内暴力、児童虐待についての相談部門というのも含まれております。ケースワーカー的な仕事は正規職員がすべきという声が今多数出てきているんですね、現場から。
やっぱり僕は、プライバシーにかかわる業務というのは非常にこういう問題大事だと思っているんですね、大臣、私。私、郵政や情報通信の分野をこの間国会で受け持たせていただいて、信書の秘密、通信の秘密というようなものをしっかり守るというときに、それを担う職員の身分的な安定というのは本当に大事だということをつくづく思うんです。個人情報保護の要諦は正にそれを担う人にあるわけですよ。つまり、おかしなことをすればただ立ち所に発覚し、そして一生を棒に振るという立場の人が担わないと、もう期限付で、その次はどこへ行くか分からないという人が担うということになると様々な問題が起こってくるというのがこの間の最大の教訓だと思うんですね。
だから、幾ら頑張ってもどうせこの職場にいるのはあと何か月だというような公務員を増やしていく、そしてそれを本格業務のそういうセンシティブな情報に触れる場所に配置していくと様々な問題が生じると私は思うんですけれども、そういうことについて総務大臣はそうお思いになられませんか。
国務大臣(麻生太郎君) これは臨時的な任用職員ということになるんでしょうけれども、これは守秘義務はどうなっています。それはそのまま守秘義務はかぶさることになっていますでしょう、とは思うんですね、ちょっと堺市の内容をよく知りませんので答えようがないんですが。守秘義務が付いている場合ですとそれは一応担保されることにはなるんだとは思いますんで、住民のプライバシーを扱うという職場に任用、赴任した場合においては、特にその点がきっちりされておかぬと問題起きるなというのは率直な実感です。
宮本岳志君 守秘義務はもちろん掛かっているわけですけれども、それはそういう意味ではヤフーBBだろうが何だろうが全部守秘義務掛かっているわけでして、そこで起こっているわけですね。漏らしていいというようなところで漏れて問題になっているんじゃなくて、漏らしたら駄目というところで漏れているから問題になっているわけですから、守秘義務を掛けるだけでは駄目で、やっぱりこういった不安定な労働形態というものによって担わせるということがやっぱり今問題あるんじゃないかという議論になっていると思うんですね、大臣も御理解はいただいていると思うんですけれども。
<保育士の経験が地域の子育てにも重要>
宮本岳志君 実際、この法改正で今後、任期付任用が歯止めなく広がっていくだろうと一番危惧されているのは保育の現場なんですね。今社会問題となっている保護者による児童虐待の背景に、子育てに悩んでいる、あるいはまあ虐待にまでは至らなくても子育てがうまくできないで苦労している、そういう親御さんの姿があることが指摘をされております。
今日はもう一問、厚生労働省に聞きたいんですが、そういう父母の悩みにこたえる上で保育士の役割は大きい、とりわけ経験ある保育士の役割が従来にも増して重要だと、これは間違いないと思うんですが、いかがですか。
政府参考人(伍藤忠春君) 家庭あるいは地域の子育ての力が低下をしておるというのが昨今の状況でございますから、そういった中で地域における子育ての力を高めていくために保育士の役割が重要になっておるというのは私どもも全く同じ認識でございます。
そういった観点から、既に平成十三年の児童福祉法の改正におきまして、保育所に勤務する保育士につきましては、相談あるいは助言を行うための知識や技能の向上に努めなければならないという努力規定が入っておりますが、こういった趣旨を踏まえて今いろんな各種研修事業等を行っておりますので、こういったことでいろいろ工夫をしていきたいというふうに思っております。
宮本岳志君 資料の五に、三重の保育団体連絡会が三重の県内全市町村の保育行政担当者と保育者を対象に行ったアンケート調査を付けたんです。このアンケートを見ても、経験を積んだ保育士ほど子供と家庭をめぐる様々な問題点をよく気付くということが分かります。それだけ早く手も打たれているということであります。
例えば、児童虐待のサインを見付ける上でも経験というのは非常に大事なんですね。私、先日、私の地元岸和田で起こった虐待事件を調査する中で痛感しました。やけどの傷一つとっても、それを見分ける目というのは経験の中で培われると。例えば、子供のやけどが直線的に手にやけどが付いているという場合は、これは虐待の可能性が強いというんですよ。熱湯につけられている可能性が強いと。ハプニングで起こったやけどの場合は飛び散った形でやけどができるんだけれども、真っすぐやけどをしている場合は疑うものだと。こういうこともやっぱり長年の経験の中で培われると思うんですね。もちろん、どんな場合でも臨時職員の保育士がいてはならないなどと私は言いません。しかし、公立、民間問わず臨時的な職員ばかりでは、保育の質は確保されないことは明らかだと思うんですね。
そこで、大臣に、この制度が保育の現場に無限定に短期職員を増やすものであってはならない、その点では、くれぐれも総務省は法律の二つの要件を守るように自治体にきちっと周知すると、これは大臣、お約束いただけますね。
国務大臣(麻生太郎君) 御指摘の保育の話ですけれども、基本的には任期、任期というか、任期の定めというもののない常勤職員というものを中心として行われるべきというのは当然のことだと思いますんで、また任期付きが、任期付きの採用が拡大されるということになるんだと思いますけれども、これは無限定にどんどんどんどん広げていいというものではないということははっきりしておりますんで、今御趣旨の点踏まえまして、地方公共団体に対してその点に関しては周知を徹底したいと思っております。
宮本岳志君 本法案は、これまで専門的な職員に限定した特例的な制度であった任期付採用の制度を一般職にまで拡大し、二つの要件を付けたとはいえ基本的に容認するものであります。本格的業務にこのような制度を導入すれば、公務の継続性や住民のセンシティブな個人情報の保護などが危険にさらされ、結局は住民サービスの後退につながることは明瞭だと考えます。さらに、公務にまで有期雇用計画を導入することによって、昨年の労基法改悪時に我々が繰り返し指摘したような常用雇用の代替を一層あおる結果となりかねないと考えます。そして、これは保育所や公民館などを廃止、民営化していくためのてことして用意されたものであることも明瞭です。
これでは、住民サービスの後退だけでなく、一層社会全体に不安定雇用を蔓延させ、地域経済に打撃を与えるとともに、地方税収を落ち込ませることによって、結局、自治体財政にも悪影響が及ぶということを指摘して、私の質問を終わります。