159 – 参 – 農林水産委員会 – 19号 平成16年06月03日
平成十六年六月三日(木曜日)
午前十時一分開会
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委員の異動
六月一日
辞任 補欠選任
段本 幸男君 松谷蒼一郎君
千葉 国男君 弘友 和夫君
六月二日
辞任 補欠選任
松谷蒼一郎君 段本 幸男君
弘友 和夫君 千葉 国男君
市田 忠義君 宮本 岳志君
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出席者は左のとおり。
委員長 岩永 浩美君
理 事
加治屋義人君
段本 幸男君
常田 享詳君
小川 勝也君
紙 智子君
委 員
市川 一朗君
太田 豊秋君
小斉平敏文君
松山 政司君
郡司 彰君
信田 邦雄君
羽田雄一郎君
簗瀬 進君
千葉 国男君
福本 潤一君
宮本 岳志君
岩本 荘太君
中村 敦夫君
国務大臣
農林水産大臣 亀井 善之君
副大臣
農林水産副大臣 市川 一朗君
大臣政務官
農林水産大臣政
務官 福本 潤一君
事務局側
常任委員会専門
員 高野 浩臣君
政府参考人
法務省刑事局長 樋渡 利秋君
農林水産省生産
局長 白須 敏朗君
農林水産省経営
局長 川村秀三郎君
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本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○政府参考人の出席要求に関する件
○農業協同組合法及び農業信用保証保険法の一部
を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。
同僚議員の時間をいただいて、BSE対策の買上げをめぐる牛肉偽装事件について質問いたします。
<受託収賄の可能性がきわめて強い接待>
宮本岳志君 五月十九日の決算委員会で、我が党の小林議員の質問に、白須生産局長は当時の農水省畜産部長が浅田容疑者らと会食していた事実を認めました。
この会食に参加した畜産部長や他の官僚の飲食費は一体だれが負担したんですか。
政府参考人(白須敏朗君) 当時の担当部長、それから担当者に確認をいたしましたところ、いずれも飲食代を支払った覚えはないということでございました。
宮本岳志君 高級すき焼きはただではないんですね。本人が払っていないならば、浅田容疑者ら、つまり業者が払ったことは間違いない。浅田容疑者から酒食のもてなしを受けて、このBSEの牛肉買上げ事業について談合して、その結果、浅田容疑者は自分が国に買わせたい偽国産牛について見通しを付けたということになります。
これは、大臣、明白な贈収賄ということになるんじゃないですか。なぜ告発しないんですか。
国務大臣(亀井善之君) 今、検察でいろいろ調査が行われておるところでございまして、私どもはそれに協力をすると。
ただ、今、会食に、飲食店での会合に参加したと。こういうことは国家公務員倫理規程に抵触する、こういうことであるわけでありますが、その内容等につきましては、現在捜査中でありますので、私どもが申し上げることはできないところであります。
宮本岳志君 会食が行われたのは最高級の霜降り肉が味わえることで知られる都内の高級割烹と、こう報道されております。
これはどこの何という店か、御答弁を。
政府参考人(白須敏朗君) 場所につきましては、今、大臣からも申し上げましたとおり、国家公務員倫理審査会の方に、全体として倫理法、倫理規程に抵触しておるおそれがあるということで、その疑いがあるという報告とそれから調査開始の通知を行ったところでございます。
そういうことでございますので、その店なり場所等につきましてはまだ調査が十分行われておりませんので、この場でのお答えは差し控えさせていただきたいというふうに思う次第でございます。
宮本岳志君 受託収賄の可能性が極めて強い、極めて重大な接待にかかわる問題なんです。どれほど高級な店なのか、そこで食事すればどれほどの金額になるのか、これは決定的な問題なんです。こんなものは一般論ではなくって、明らかにするのは当然なんです。結果として五十億円という国民の血税が不正に詐取されたという重大問題です。
大体、これまでも旧大蔵省の問題など、口に出すのもはばかられるような、まあ何とかしゃぶしゃぶというような接待事件、数知れない霞が関の汚職腐敗事件が起こってまいりました。
そこで、今日は法務省に来ていただいているのでお聞きしたい。
九八年三月に逮捕された大蔵省のキャリア官僚、榊原隆らを被告とする大蔵省汚職事件では、遊興飲食などの供与も賄賂に当たると判断され、有罪が確定しておりますね。
政府参考人(樋渡利秋君) お尋ねの事件につきまして、東京地方裁判所において有罪判決が言い渡され確定しているものと承知しております。
宮本岳志君 こんなものは収賄以外の何物でもないと私は思います。
<届け出をせず隠れて接待を受けていた>
宮本岳志君 大体、本人がそう自覚していたんですよ。五月二十一日付け産経によると、この部長とその部下は国家公務員倫理法で義務付けられている届出をしていなかったと報じられました。これは事実ですか。
政府参考人(白須敏朗君) この当時の担当部長に当時の事情につきまして確認をいたしましたところ、浅田容疑者と部長室で打合せをいたしまして、その後にその関係団体間の飲食店での会合に職務として参加をしておったということでございます。
宮本岳志君 届出、届出。
政府参考人(白須敏朗君) この利害関係者との飲食につきましては、国家公務員倫理規程で一般的にはもちろん禁止をされておるわけでございますが、ただ、夜間におきます飲食でございましても、自己の費用を負担し、また倫理監督官の許可を受けたものにつきましては禁止行為の例外ということもあるわけでございます。
したがいまして、もちろん委員御指摘のとおり、国家公務員倫理規程に基づく必要な手続がなされておらなくて、同規程に抵触するおそれがあるということは考えておるわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、現在、倫理審査会に対しまして調査の端緒の報告を行いますとともに、調査開始の通知を行っておるということでございますので、まだ調査も始まったばかりでございますので、ひとつ御理解をいただきたいということでございます。
宮本岳志君 そんなもの、届出なんかできるわけないじゃないですか。やましいことがないなら、それは届出できますよ。しかし、こんな高級すき焼き店で高級すき焼きの牛肉のお呼ばれにあずかるというようなことが届出できるような中身じゃないことは明らかですよ。
つまり、当時の畜産部長自身がこの会合はとても届出できる会合などではないと自覚していたということじゃないですか。いかがですか。
政府参考人(白須敏朗君) いずれにしましても、先ほど申し上げましたとおり、倫理審査会に対しまして調査開始の通知を行ったばかりでございます。ただいま御指摘のある点も踏まえまして、そういうことも含めまして、調査の中で事実確認をする必要があるというふうに考えている次第でございます。
宮本岳志君 だから、そんなことを言っているから、農水省は、この問題でいうと、自ら不正を明らかにするのではなくって、かばっているんじゃないかと言われるんですよ。
じゃ、聞きますけれども、そういう飲み食いの接待を受けるようなことが日常的にやられているんですか。じゃ、そんな届出をして高級すき焼きを、例えば生産局長、あなたは届出をして業者と夜間に飲み食いしたことおありですか。あるいは、下から高級すき焼きなどを食べに行くという届出を許可したことが一度でもありますか。
政府参考人(白須敏朗君) 肉の行政を担当する職員も含めまして、国家公務員が利害関係者からの供応接待を受けることは倫理規程上禁止されているところでございまして、こういった接待を日常的に受けているということはないというふうに考えている次第でございます。
宮本岳志君 そうでしょう。だから、届出できないんですよ。
つまり、この当事者はこれは大っぴらに出席できるような会合でないと分かって出席したわけですから、正にこれは私は受託収賄そのものだと言わざるを得ないと思いますね。
それで、この会合、二〇〇一年十月中下旬の会合、昼間には畜産部長室、夜にはこの高級すき焼き店と二回持たれているわけですが、非常に不思議な点があるんです。この全国食肉事業協同組合連合会、全肉連の幹部をこの夜の高級すき焼き店に呼んだのは一体だれですか。
政府参考人(白須敏朗君) その点につきましては、当時の担当部長、それから担当者にも確認をしたわけでございますが、団体間の話でもございまして、承知していないということでございました。
宮本岳志君 承知していない。決定的な話なんですけれどもね。その当事者がそのことを承知していないと答えたと。それで納得したんですか、あなた方は。
政府参考人(白須敏朗君) いずれにしても、確認いたしましたところ、承知しておらないということでございました。
宮本岳志君 おかしいじゃないですか。ここに先日理事会で農水省が報告した当時の担当部長・担当者から聴取した結果概要という文書を私は持っております。この文書によると、この十月中下旬、昼の畜産部長室には浅田被告ほか数名が来訪としている一方で、飲食店、つまり高級すき焼き店での会合は全国食肉事業協同組合連合会、全肉連と浅田被告ら全同連との会合と、こう記述されているわけですね。
ですから、この昼の畜産部長室は浅田容疑者ら正に全同連の関係者だけであり、夜の高級すき焼き店に初めて全肉連幹部が参加した、これが事実じゃありませんか。
政府参考人(白須敏朗君) そこの出席者につきましては、そういうことも含めまして、現在調査を始めたところでございますので、そこの出席者については私どもとしてはまだ確認ができておりません。
宮本岳志君 到底まじめに調査をしているとは思えないですよ。担当者にまで聞いているわけでしょう。それで、そんなことも分からない。そして、覚えていない、分からないと言われて、はあ、そうですかと。それは、本当にまともにあなた方が調査しようとしているとは言えないと私は言わざるを得ないと思っています。
<当時の畜産部長の参考人招致が必要>
宮本岳志君 それで、実に不自然な話なんですよ。この浅田容疑者は、全同連、全国同和食肉事業協同組合連合会の食肉業者が持っている国産牛肉を買い上げてほしいということを、この全同連自体が事業主体になれるように農水省に繰り返し要求したわけです。それに対して農水省は、業界六団体の一つである全肉連の事業委託でならば事実上の事業主体になれるだろうということで浅田容疑者を納得させたと。
それで、この五月の二十七日付け毎日によりますと、これは、全肉連の福岡伊三夫会長は全肉連の総会で、五月の二十六日、全肉連の買上げ枠は二千トンだったが、農水省から全同食の肉も受け付けるよう依頼されたと、そうなると枠が膨らむがいいかと尋ねると、農水省は了承したんだと、こう説明しているんですよ。
つまり、あなた方の側から引き受けてやってくれと、枠も増やすからということを言い、そしてこの夜の高級すき焼き店でその言わば手打ち式というか割り振り式をやったんじゃないですか。違いますか。
政府参考人(白須敏朗君) 当時、保管事業、この保管事業でございますが、この検討に当たりましては、営業倉庫を中心に聞き取り調査を行ったわけでございます。そこで国産牛肉の在庫数量一万三千トンというふうに推計をいたしたわけでございますが、この事業の実施に当たりましては、可能な限り多くの事業の対象牛肉を市場から隔離する必要があったというわけでございます。つまり、消費者を始めといたしまして、与野党挙げて皆さん方から、とにかく可能な限りそういう全頭検査前の牛肉を集めて隔離しろと、こういうふうな要請が全国からあったわけでございます。
したがいまして、そういうことで、私ども、その申請量というものにつきましては上限ということじゃございませんで、その申請量の総計がこの数量を超えた場合には、予算の、当然のことながら予算の増額要求するということにしておったということでございます。
したがいまして、ただいま委員からお話ございましたような、そういう、何といいましょうか、団体内で割当てをするとか、そういうふうなもちろん事実もございませんが、そういう必要性について、あるいはそういうことにつきまして何らかの利益供与を行うといったような関与を行う余地はなかったというふうに考えている次第でございます。
宮本岳志君 そんな説明通らないんですよ。大体、可能な限り多くの牛肉を隔離する必要があったと言うけれども、輸入牛肉や全頭検査が始まった後の肉もどんどん隔離しようとしたわけじゃないでしょう。全頭検査が始まる前の国産牛だけを隔離するんでしょう。上限なんてあるに決まっているじゃないですか。それをひとまずあなた方は倉庫関連団体からつかんで、一万三千トンと推計したわけですよ。こんなもの幾らでも多けりゃ多いほどいいと、そんな了見で事業やったわけじゃないでしょう。そうでしょう。そして、その目安に基づいて買取り事業というのを進めたわけですから、そんな、枠はなかったんだと、多ければ多いほど良かったんだと、そんなばかな話はないんです。
それで、そんな、じゃ一体、夜の高級すき焼き店に、そうしたら何をあなた方の担当、畜産部長は説明に行ったんですか。
政府参考人(白須敏朗君) 現時点で、当時の担当者からの聞き取りによりますと、畜産部長室では、牛肉在庫の保管事業につきましての趣旨なり内容なり、あるいは事業対象となる牛肉、そういった全般的な説明を行いまして、種々質問に対して回答したということでございます。
その後、全肉連と全同連の幹部数名が都内の飲食店におきまして保管事業の取り進め方についての打合せの会合を持つということで畜産部長が同席を求められ、できる限り多くの対象牛肉を市場から早急に隔離すると、そういう事業目的を達成いたします上で、全同連が全肉連の事業委託を受けて取り進めていくことにつきまして十分な理解と協力が必要であったということでございます。さらに、事業全般につきまして詳細な説明が求められるのではないかということで、そういうふうに判断をいたしまして会合に出席したとのことでございます。会合では両者に対しまして事業への協力を再度求めたというふうに承知をいたしております。
宮本岳志君 事業全般にわたる詳細な説明をして、そしてこの二つの業界団体と議論したと。正に、一万三千トンというあなた方の推計もここでは出されたでしょう。それをどんなふうに進めるかという相談、やったんでしょう。
そんなもの、この昼間やったのと同じ一般論の説明を晩も繰り返しに行ったと言うんだったら、それこそ、高級すき焼きを食べに行ったということじゃないですか。昼間できなかった更に突っ込んだ相談するから夜も行ったんでしょう。つまり、夜にはそういったことを具体的に更に詳しくやったということは明瞭です。だから、そんな言い逃れのようなことを言ったって国民はだれも納得しないということははっきり申し上げておきたいと思います。
五月の二十八日付けの毎日新聞にこういう報道がありました。雪印食品の偽装事件は二〇〇二年一月二十三日に発覚したと。国会で取り上げられ、問題になった。関係者によると、浅田容疑者は府肉連などの偽装が発覚すれば大騒ぎになると考え、農水省幹部に、申請した肉を戻そうかと取下げを相談。幹部は、絶対にそんなことはするな、そのままにしておくようにと反対したということだと。
これについて農水省は、先ほどのこの文章で、雪印食品事件が発覚した平成十四年一月当時の幹部から事実関係を聞き取ったところ、そのようなやり取りを行った事実はないとのことであったと書いてあります。
問題のすき焼き屋へ行った畜産部長は平成十四年一月八日付けで退職をしております。この平成十四年一月当時の幹部というのは後任の梅津準士畜産部長のことですね。
政府参考人(白須敏朗君) ただいまお話しのとおり、雪印事件発覚しましたのは十四年の一月二十三日でございますが、その後、ただいまお話しの浅田被告が農水省幹部に申請取下げの相談を行ったとされる件につきまして、そういう相談があったかどうか、畜産部長を始めとする当時の幹部に聞き取りを行ったわけでございます。その結果、そのようなやり取りを行った事実はないというふうなことでございました。
宮本岳志君 梅津さんのことですかと聞いているんですよ。
政府参考人(白須敏朗君) 畜産部長は梅津でございますが、その他にも審議官なり食肉鶏卵課長等々、そういった幹部全員について聞き取りを行ったわけでございます。
宮本岳志君 あの雪印食品の事件のさなかに申請取下げの申出があったということは、言わば、申請した牛肉が偽物だと言っているようなものなんですね。しかし農水省は、すぐに事実を明らかにするのではなく、隠しておくという方を選んだと報じられているわけです。そうしている間に、問題の牛肉そのものは、決算委員会で我が党小林議員が明らかにしたように、浅田被告の息の掛かった焼却場で極めて不自然な形ですべて灰にされてしまいました。
少なくとも、薄々はですよ、農水省、浅田容疑者が買取り申請した牛肉の一部分は偽物であるとあなた方は早い段階から気付いていたんじゃないですか、いかがですか。
政府参考人(白須敏朗君) ただいま私申し上げましたとおり、いずれにしても、幹部からの聞き取りによりますと、ただいま委員の御指摘のような取下げの相談自体がなく、これにそういうふうに答えた記憶もないということでございました。
宮本岳志君 とにかく、先ほどからお伺いしていて、そんな、あなた方に聞き取ってもらったものをここで言っているようでは、もうこの問題は解明できないと。ここに元畜産部長始め関係者を参考人として出てもらって、直接お伺いする以外ないというふうに思います。
この問題は霞が関だけの問題ではありません。浅田容疑者と政治家の癒着も背景にある。例えば、中川経済産業大臣もハンナングループの三つの企業に合計三百万円のパーティー券を買ってもらっていたことが明らかになりました。また、浅田容疑者が民主党の衆議院議員のパーティー券八十万円購入した際に、この議員を浅田容疑者に紹介したのは問題の元畜産部長だったということも明らかになっています。
石原事務次官は記者会見で、公務員は政治的中立が求められる、そのようなことがあったとすれば問題だと答えておりますけれども、正にこういう政官業の癒着が貴重な国民の税金を五十億円も食い物にするような不祥事の土壌を作ってきたんです。改めて元畜産部長の参考人招致と全容の徹底解明を求めて、私の質問を終わります。