育休保障へ増員必要
宮本岳志氏 男性地方公務員めぐり
改正法案衆院可決
地方公務員の育児休業取得回数を増やす地方公務員育休法改正案が12日の衆院本会議で全会一致で可決されました。7日の衆院総務委員会で日本共産党の宮本岳志議員は、立ち遅れている男性職員の育休取得のための職員増員等を求めました。
政府は2025年までに男性の育休取得率3割を目指していますが、男性地方公務員の取得率は低く、期間も短いことが課題です。
宮本氏は「女性は1カ月以下が0・5%、9カ月以上が89%だが、男性は1カ月以下が54・6%、うち1割以上が5日未満」だと指摘。「子育てのための休業が1カ月以下などありえない」とただしました。金子恭之総務相は「男性の取得の仕方に課題がある。期間をいかに取ってもらうか、環境をどう整えるか検討しなければならない」と応じました。
宮本氏は育休取得を進めるには、代替職員の配置と仕事を引き継ぐ体制づくりが必要だと強調。上司に「残業を減らせ」と言われても業務量が多く応じられないという保健師の実態を示し、「育休取得も同じで掛け声だけでは進まない。定数管理を抜本的に見直すべきだ」と迫りました。金子総務相は「各自治体の事例を周知し横展開したい」と述べるにとどまりました。
(しんぶん赤旗2022年4月15日)
配付資料 20220407総務委員会配付資料
議事録
○宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。
本法案は、地方公務員の育児休業を取得しやすくするものであり、賛成でございます。
今日は、男性職員の育休取得のために必要な対策について議論をしたいと思います。
総務省は、昨年十二月二十四日、男性職員の育児休業等の取得促進に向けた取組の一層の推進についてと題した通知を発出いたしました。
総務省、直近の調査結果で、男性職員の育休の取得率は何%でございましょうか。
また、今日は人事院にも来ていただいております。人事院に、国家公務員全体の男性職員の取得率をお答えいただきたい。
○山越政府参考人 お答えいたします。
令和二年度の地方公務員の育児休業取得率は、女性職員が九九・七%、男性職員は一三・二%となっております。
○荻野政府参考人 お答えいたします。
令和二年度におきます、一般職でございますが、一般職国家公務員の育児休業取得率は、女性は九九・六%、男性は五一・四%となっております。
○宮本(岳)委員 一般職の五〇%を答えられましたね。全体では、先ほどから出ている二九%だというふうに思います。
第五次男女共同参画基本計画で、二〇二五年までに地方公務員の男性の育児休業取得率を三〇%にするという目標を掲げております。それに比べて、男性地方公務員の育児休業取得率は半分以下ということでありますけれども、これはまた総務省に改めて聞きます。本当に二〇二五年度、三割、達成できますか。
○山越政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、第五次男女共同参画基本計画において、取得率三〇%という地方公務員の男性職員の育児休業の取得率の目標が掲げられておりまして、取得促進に係る取組を一層加速しなければいけないというふうに考えております。
先ほど御紹介いただいたとおり、昨年十二月二十四日に各地方公共団体に対しまして通知を発出し、まずは国家公務員の取組を参考に、男性職員の育児休業等の取得促進に向けた取組を一層推進するように助言を行いました。
具体的には、組織としてまず男性職員の育児休業等の取得促進に係る数値目標を設定し、全ての職員に対し当該目標を周知していただくこと、地方公共団体の首長を始め幹部職員が休暇、休業の取得方針、目標の明確化を行うこと、また、管理職員が対象職員の意向に基づく取得計画を作成する主体となること等について積極的に検討するように助言を行ったところでございます。
加えまして、取得率が近年大きく上昇いたしました地方公共団体の取組事例を紹介し、また、取組促進の機運醸成が必要だという観点から、総務省としてポスターを作成いたしまして地方公共団体に提供し、積極的に活用いただくよう周知をしたところでございます。
今改正案の成立した暁には、その内容も踏まえて、地方公共団体に更に積極的な取組を促してまいりたいと考えております。
○宮本(岳)委員 なるほど、国家公務員の方も三割にほぼ達しておりますし、先ほど一般職が五割という話もございました。意識改革の旗を振り続けたら三割ぐらいは達成できるのではないかという話も聞きました。
そこで、この中身を見たいと思うんですね。
資料一を見てください。
育児休業等の取得状況、令和二年度には、詳細な内訳の数字が示されております。男性の育休取得状況を見ると、一か月以下が、赤いアンダーライン、五四・六%を占めております。ちなみに、女性の場合、一か月以下は〇・五%で、九か月以上が八九%であります。男性の育休一月以下の内訳も下に更に公表されておりまして、五日未満という男性職員が一割以上もいることになっております。
聞きますけれども、女性の場合には一か月以下などという育児休業は一%にも満たないのに、男性職員の場合は過半数が一か月以下となり、五日未満というようなものまでこのようにあるのはなぜだと総務省は考えておりますか。
○山越政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、男性育児休業の取得の期間につきましては、女性職員に比べて極めて短い状況にございます。
これは様々な事情があると思われますが、民間と公務員と共通して言えることとしては、男性の職員が収入面で心配になるとか、あるいは、今後自分の職、復帰したときの職場環境がどういう感じになるのかという御心配があるというような御意見もあるところでございます。
いずれにしろ、この取得期間を少しでも長くするということは、私ども、ちゃんと取り組んでいかなきゃいけない課題と思っておりまして、今回の改正案の中で、取得回数を増やすという形でより柔軟に取得しやすいような仕組みも取り入れているところでございまして、回数もさることながら、期間も長くできるような取組を推進してまいりたいと思っています。
○宮本(岳)委員 三割はおろか、五割を一般職では超えている、国はよくやっていると思ってしまいましたけれども。
人事院にも同じように聞こうと思います。
資料二を見ていただきたい。
育児休業期間の状況を示す円グラフ、男性と女性で、一か月以下、つまり五日未満三・五%と、五日以上二週間未満一八・四%と、二週間以上一か月以下五〇・六%の合計七二・五%、男性は。これも大きな違いなんですね。
人事院の次長に聞きます。この違いはどこにあるんですか。
○荻野政府参考人 お答えいたします。
育児につきましては男女が協力して行うべきものというふうに思いますけれども、我が国におきましては、育児の負担は依然として女性に偏っている実態がございます。
男性職員の育児休業取得率は着実に増加してきておりますけれども、女性職員と比べまして低い水準にありまして、また、御指摘のとおり、休業期間も短い状況にあります。
育児休業取得の更なる向上を目指すに当たっては、制度をより柔軟に利用できるものとする必要があります。また、職員が一層制度を利用しやすい職場環境を整備していくことも重要であろうというふうに考えてございます。
こうした課題に対応するために、昨年八月、人事院におきましては、育児休業の取得回数制限を緩和する育児休業法改正についての意見の申出を行いまして、先般、法改正について可決していただいたところでございます。
これに基づく今回の法改正によりまして、カップルが交代して取得するなど、柔軟な育児休業の取得が可能となり、男性職員の育児休業の取得の促進が期待されるというふうに考えてございます。
以上でございます。
○宮本(岳)委員 育児休業五日未満というのが、男性では国家公務員でも地方公務員でも一定数出てまいります。五日未満ということは最大四日でありますから、土日を加えても丸々一週間も休んでいないということを意味するわけですね。
現場から聞いた話では、男性地方公務員の中には、育児休業一日という例さえあるというふうに聞きます。
大臣、私も二人の子供を育て終え、今では孫も二人いるわけでありますが、一日や一週間で子供が育つかといえば、一日分は育つんでしょうが、休業して育てたという話にはならぬわけですね。これを、これまで一回だったものを仮に二回にしたところで、ほとんど意味がないということになると思うんですけれども、金子大臣、そう思われませんか。
○金子(恭)国務大臣 先ほど来、育児休業の取得率等々についての数字を出しましたけれども、今先生からこういう細かい数値を見せていただくと、やはり男性の取得の仕方に、大変、今後、課題を残しているなと思います。
もちろん、回数もそうでありますが、一回の時間をいかに取ってもらうか、そのための環境をどう整えていくのか、これはしっかりと我々も検討していかなければいけないというふうに思っております。
○宮本(岳)委員 本当に子供を育てようと思えば、女性職員の結果に出ているように、九か月以上、九割というのが普通、当たり前なんですね。一か月以下などというのは、私はないと思います。
男性職員の育児休業というのは、実は、育児のためというのはあるんでしょうけれども、それよりも、男性職員の育児休業取得率の三割とか五割とかをクリアするためにやっているのではないかと言わざるを得ないような数字の出方をしております。
配付資料三を見ていただきたい。
これは滋賀県が行った職員アンケートの結果です。滋賀県のクレジットが入っておりますから、これは県がやったものですね。
子供が生まれた男性職員のうち、育休取得希望は四一・五%、実際に取得できたのはそのうち六三・〇%で、四割は育休を取得できておりません。取得できなかった理由のトップは「仕事を引き継げる人がいない等、職場に迷惑が掛かると思ったから」が六二・六%、取得の際の不安が「仕事の引き継ぎ」で七五・五%、育休取得に効果的な取組が「育児休業中の代替職員の確保、仕事を引き継ぐ相手の明示」七四・一%となっております。
仕事を任せられる体制がなければ取得をためらうのは当然でありまして、公務員部長は職場の雰囲気と言うんですけれども、まさに雰囲気の中でも大事なのは、あの人が後を受け継いでくれるから大丈夫だ、こういう安心感だと思います。
確認しますが、育休取得を進めるためには代替職員の配置と仕事を引き継ぐ体制づくりが鍵だと私はこの資料から読み取るんですけれども、そうは思われませんか。
○山越政府参考人 お答えいたします。
男性育児休業の取得のアンケートにもありますとおり、一つは、やはり周囲の理解というものが必要であるということと、また、特に管理職など上司がどういう立場で、きちんと育児休業取得促進に向け動いてもらえるかということが鍵になると思います。
加えまして、代替職員をきちんと確保するということによりまして、安心して育児休業を取得する環境を整備すること、これも重要なポイントだというふうに思っています。
○宮本(岳)委員 上司の意識改革ということもあるんですけれども、やはり代替職員の確保、ゆとりある人員体制が大事だと思います。
資料の四、五を見ていただきたいんです。
これは「コロナ対応最前線 仕方ないからあきらめないへ」と題した大阪府の職員団体が出版された本の中の、大阪の保健師の方々のリアルな声ですね。生の声をここに挙げておきました。
見ていただいたら分かるように、資料四の赤い印、十九番。
あちこちの保健所で、二十一時までしか残業しないよう工夫しろ、タクシー代ないから使わない時間に帰るようにと言われている。上からの指示で言ってるのでしょうが、現場の気持ちを少しでも酌んでほしいし、保健師を追い込む行為はやめてほしい。
それから、資料五。もう一枚めくっていただいた資料五の二十六番になると思います。
子育て中や家族の介護をしている人も、少しでも他の職員の負担を減らしたいと無理して土日祝出勤している中、土日祝出勤しない上司から、残業減らせ、夏季休暇を消化しろと言われる等々が出されております。
大阪の保健所の現状は、この間、私が当委員会で取り上げてきたとおりであります。私の手元に届いた、ある保健師さんの三月のある一週間の勤務実態、これは間違いなくそういう方がいらっしゃるということで、私、聞きましたけれども、日曜日は朝八時五十分に出勤して、退勤時間は午前零時十分。月曜日は午前九時出勤で、午前一時四十五分退勤。火曜日はやっと午後十二時三十分出勤で、午前零時二十分退勤。水曜日、午前九時十分出勤で、午前一時二十分に退勤。木曜日、九時十五分出勤で、二十三時五十分退勤。そして金曜日は、午前九時十五分出勤ですが、退勤時間は何と午前三時二十分。
こんな勤務実態の保健所で、残業を減らせ、こう言うわけですね。もちろん、休暇を取れ、残業を減らせ、これは上司としても言わなきゃならないから、言っておかなければならぬからおっしゃっているのは分かるけれども、減るわけないんですね。
ですから、育休もそうですよ。そういう方向で頑張る、頑張らねばと、意識改革と、管理職がとおっしゃるけれども、それは、こんな状況の下でこんなことを言わなきゃならぬ管理職もつらい。言われて誰もなるほどと思っていないわけですよね。
こういう本当に情けない実態が現場で起こっているということを、公務員部長は御存じですか。
○山越政府参考人 お答えいたします。
今回のコロナ禍におきましては、保健所などにおきましての地方公共団体の役割は非常に大きなものでございます。
総務省におきましても、この実態を把握する必要があるということで、昨年四月から六月までの間の勤務状況について特別に調査をいたしております。上限超えの実態等を中心に特別に調査をしたところでございます。
その結果も見ますと、やはり上限を超える時間外勤務を余儀なくされる職員が多く生じるなど、非常に対応が困難であった自治体が見られたというところは認識をしておりまして、私どもとしては、各団体に対しましては、こういった上限超えの個々の職員の勤務実態をきちんと把握、また検証していただいて、必要な体制を確保していただくことが重要であるということをお伝えしているところでございます。
○宮本(岳)委員 要するに、育児休業を取得するように何度口を酸っぱくして触れ回っても、駄目なんです。
五日未満どころか、中には一日育休というような、アリバイ工作みたいな育休取得ではなくて、安心して育休を取るためには、代替要員がいて、安心して任せられるようにすることが決定的であります。
結局、人員配置と財政支援がないと、かけ声倒れで進まないことになります。男性も育児休業を取れというなら、その代替の職員が確保されていなければなりません。そして、代替のための地方公務員を増やそうと思えば、財政措置は欠かせません。定数管理をやはり抜本的に見直す必要があると私は思うんですね。
最後に、この問題での総務大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わります。
○金子(恭)国務大臣 宮本委員には、これまでも、この委員会で現場の生の声をお聞かせいただきました。不十分だとお叱りを受けるわけでありますが、保健師さんの増員もやってまいりました。しっかりやはり現場の実態を知ることが一番重要なことだと思っております。
その上で、今回、育児を行う職員の仕事と家庭の両立というのは官民共通の重要な課題であり、また、地方公務員においても、職員が育児休業を取得しやすい職場環境を整備することが重要というふうに認識をしております。
自治体の現場においては、職員が育児休業を取得するに際して、代替の任期付職員を採用する、あるいは、育児休業を取得する職員が毎年度一定の数見込まれる場合には、その分、常勤職員を確保しておくなどの対応を行っている自治体もあると承知をしております。
これらの取組例は、育児休業などの取得促進と業務に支障の生じない体制の確保の両立を図るものでありますが、総務省としても、各自治体の取組事例を周知し、横展開することで、自治体の更なる取組を後押ししてまいりたいと思います。
○宮本(岳)委員 しっかり頑張ってください。
以上で終わります。ありがとうございました。